8. NET/ROM ポートの設定

NET/ROM プロトコルは、あなたがここまでで設定を行なってきた AX.25 ポー トを使用し、その AX.25 プロトコルの上で動作します。 AX.25 インターフェイスに NET/ROM ポートを設定するには二つのファイルを 編集する必要があります。 一つは NET/ROM インターフェイス自身についてのファイルで、もう一つはど の AX.25 ポートが NET/ROM を通すようにするか、についてのファイルです。 複数の NET/ROM ポートをそれぞれ別のコールサインとエイリアスで設定する こともできます。 それぞれについて同じような手順で設定すれば可能です。

8.1. /etc/ax25/nrportsを編集

まずは /etc/ax25/nrports ファイルです。 このファイルには /etc/ax25/axports に AX.25 ポート の設定を記述したのと同じような感じで NET/ROM ポートの設定を記述します。 使おうとする全ての NET/ROM デバイスが /etc/ax25/nrports ファイル中に記述されなければなり ません。 ですが、通常は一台の Linux マシンには複数の AX.25 ポートを使用できるよ うにした NET/ROM デバイスを一つ設定するのが普通です。 ただし BBS みたいな特別なサービスを別の NET/ROM エイリアスにしたい、と かいった理由で複数の NET/ROM デバイスを作成することもあるかも知れませ ん。

ファイルの書式は以下の通りです。

ポート名 コールサイン エイリアス パケット長 説明

ここで

ポート名

このポートを参照するときの名称。

コールサイン

このポートの NET/ROM トラフィックが使うコールサイン。 ノードにアクセスするためユーザーが接続するアドレ スとは違うことに注意 (ノードについては後ほど説明)。 この SSID 付きコールサインは /etc/ax25/axports/etc/ax25/nrports の他のポートで使われているものと 重複してはならない。

エイリアス

このポートに割当てる NET/ROM のエイリアス。

パケット長

このポートが送信する NET/ROM フレームの最大長。

説明

このポートの説明。書式は任意。

例を示せばこんな感じです。

netrom  VK2KTJ-9        LINUX   236     Linux Switch Port

この例では NET/ROM ネットワークの他のノード局に 「LINUX:VK2KTJ-9」として認識される NET/ROM ポートを作 成します。

このファイルは call を初めとするプログラムによっ て使われます。

8.2. /etc/ax25/nrbroadcast の設定

次は /etc/ax25/nrbroadcast ファイルです。 このファイルには複数の項目を記述できるのですが、通常は NET/ROM トラフィッ クを流したい AX.25 ポートについて一つだけ項目がある状態だと思います。

このファイルの書式は以下の通りです。

axport min_obs def_qual worst_qual verbose

axport

/etc/ax25/axports ファイルに記述されたポート名。 /etc/ax25/axports の対応する項目が /etc/ax25/nrbroadcast になければ、そのポートは NET/ROM のルーティングを行わず、そのポートで受信された NET/ROM ブロー ドキャストも無視されることを意味する。

min_obs

このポートの最小退行値 (obsolescence value)。(訳注:ルーティング情報を ブロードキャストするときにテーブルから削除する数のこと)

def_qual

このポートのデフォルトクオリティ。

worst_qual

このポートのクオリティの最低値。この値以下のルーティング情報は無視され る。

verbose

このポートで NET/ROM の全ルーティング情報をブロードキャストするのか、あ るいは自分のノードについてだけブロードキャストするのか、を決めるフラッ グ。

例を示すとこんな感じです。

radio    1       200      100         1

8.3. NET/ROM ネットワークデバイスを作る

先の二つのファイルの設定が終われば、AX.25 デバイスのときと同じように NET/ROM デバイスを作ることができます。 NET/ROM デバイスの場合は nrattach コマンドを使い ます。 このコマンドは「nr[0-9]」という名前の NET/ROM ネッ トワークデバイスを作るというところ以外は axattach コマンドと全く同じ動作をします。 (訳注:axattachコマンドは現在では使われていません。kissattachのような ものと思ってください。) 最初にnrattachコマンドを使うとデバイス 「nr0」が作られ、次に使うとデバイス 「nr1」が作られ、といった具合です。 上の例で示した NET/ROM ポートをネットワークデバイスとして設定するには こんな感じです。

# nrattach netrom

このコマンドは /etc/ax25/nrports ファイルで設定され ている netrom という名前の NET/ROM ポートを、ネット ワークデバイス (nr0) として起動するものです。

8.4. NET/ROM デーモンの起動

Linux カーネルは NET/ROM プロトコルの全体やスイッチングの仕事をします が、カーネルが面倒を見てくれない機能も一部あります。 NET/ROM デーモンは NET/ROM ルーティングテーブルの管理とルーティング情 報のブロードキャストを行います。 NET/ROM デーモンの起動は以下の通りです。

# /usr/sbin/netromd -i

すぐに /proc/net/nr_neigh ファイルが NET/ROM 隣接局 の情報で埋まっていくのが分かることでしょう。

システムの再起動時に自動的に起動するよう rc ファ イルに /usr/sbin/netromd コマンドの行を追加しておき ましょう。

8.5. NET/ROM ルーティングの設定

特定のホストに対する NET/ROM の経路を静的に設定したいこともあるでしょ う。 nrparms コマンドを使えば可能です。 くどいですが、man ページには完璧な説明が載ってい ます。 ですが、まぁ簡単な例を示すとすればこんな感じでしょうか。

# /usr/sbin/nrparms -nodes VK2XLZ-10 + #MINTO 120 5 radio VK2SUT-9

このコマンドでは #MINTO:VK2XLZ-10 への NET/ROM の経路を「radio」という名前の AX.25 ポートで隣接す る VK2SUT-9 に設定します。

nrparms コマンドを使って新たな隣接局を手動で設定 することも可能です。例えば、

# /usr/sbin/nrparms -routes radio VK2SUT-9 + 120

このコマンドでは VK2SUT-9 をクオリティ 120 の隣接局 として登録します。 このような項目は自動的に変更されたり削除されたりすることはありません。