3.1. なぜ iproute2 なのか?

ほとんどの Linux ディストリビューション (およびほとんどの UNIX) では、伝統ある arp, ifconfig, route といったコマンドを現在でも用いています。 これらのツールは動作はするものの、 Linux 2.2 以降ではときどき期待通りの働きをしないことがあります。 例えば、GRE トンネルは今日ではルーティングの一部となっていますが、 これには完全に別のツールが必要です。

iproute2 を用いれば、 トンネルの部分もツールセットに組み込まれます。

2.2 以降の Linux カーネルには、 完全に再設計されたネットワークサブシステムが含まれています。 この新しいネットワークコードによって、 Linux には性能と機能との (特に機能に関しては一般の OS のなかにほとんど競争者がいないくらいの) 向上がもたらされました。 実際のところ、新しいルーティング・フィルタリング・クラス付けのコードは、 ルータやファイアウォール、 帯域制限などの専用製品の多くに比べても、 より高機能になっています。

ネットワーキングに関する新たな概念が発明されるにつれ、 それらは既存の OS の既存のフレームワークの上に塗り固められてきました。 このようなシステムの多層化が進むことによって、 ネットワーキングコードは (人間の言語の多くに非常によく似た) たくさんの奇妙な振る舞いだらけになってしまいました。 過去には、Linux は SunOS の処理の多くをエミュレートしてきましたが、 これは理想的なこととは言えませんでした。

この新しいフレームワークは、 以前の Linux が及ばなかった機能を、 明確に表現することを可能としたのです。