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3. CPU Museum と Silicon Zoo

この章では CPU テクノロジの基本中の基本を取り扱います。 すでに技術的なバックグラウンドをお持ちであれば読み飛ばして頂いて構いません。

3.1 CPU Museum

CPU Museum は

3.2 トランジスタはどのように動作するか

マイクロプロセッサは私達が毎日使う TV や自動車、ラジオ、家庭用機器、 そしてもちろんコンピュータなどの多くの製品にとって欠かせないもの となっています。 マイクロプロセッサは主にトランジスタで構成されています。 もっとも基本的なレベルにおいては、トランジスタは単純に見えるかも知れません。 しかしながら、トランジスタの開発には実際何年にもわたる綿密な調査が必要でした。 トランジスタの登場以前は、コンピュータは情報を処理するのに、 遅くて役立たずの真空管と機械的なスイッチ(訳注:リレー)に頼っていました。 1958 年に技術者達は (そのうちの一人は Intel の創設者の Robert Noyce ですが ) 一つのシリコン結晶上に二つのトランジスタをのせる事に成功し、 後にマイクロプロセッサへと導く、最初の集積回路を作りました。

トランジスタは小型の電子スイッチであり、コンピュータの頭脳である マイクロプロセッサの基本要素です。 ごく普通の電灯のスイッチと同じように、トランジスタは ON と OFF の二つの作動位置をもっています。 トランジスタの、この ON/OFF すなわち 2値をもつという機能によって コンピュータは情報を処理する事ができます。

電子スイッチの動作原理

コンピュータが理解できる唯一の情報は、ON か OFF かの電気信号だけです。 トランジスタを理解する為には、電子スイッチ回路の動作原理を知る 必要があります。 電子スイッチ回路はいくつかの部分で構成されています。 そのうちの一つは、電流が流れる通り道です - 代表的な例は電線です。 もう一つはスイッチ、すなわち電流を止めたり流したりする装置で、これは 回路の通り道をつないだり切り離したりして行ないます。 トランジスタは機械的動作部分をもたず、電気信号で ON/OFF の切替を行なう 事ができます。 トランジスタの ON/OFF 切替によってマイクロプロセッサは仕事をこなして いるのです。

3.3 トランジスタはどのように情報を扱うのか

トランジスタの様にたった二つの状態しかもたない物は、2進数であると いえます。 1 がトランジスタの ON 状態を表し、0 が OFF 状態を表します。 複数のトランジスタによって作られる 1 と 0 の特定の順番と組合せで 文字や数字、色そして画像などを表す事ができます。 これは、2進表記法として知られています。

3.4 2進数の情報を表示する

あなたの名前を2進数で綴ってみましょう

アルファベットの文字にはそれぞれ対応する2進数があります。 以下に JOHN という名前と、それに対応する2進数を示します。


        J  0100 1010
        O  0100 1111
        H  0100 1000
        N  0100 1110

より複雑な、画像やオーディオ、ビデオ等の様な情報も 2進数、 すなわちトランジスタの ON/OFF 動作を使って表すことができます。 ページをスクロールして下のアルファベットと2進数の対応表を見てください。

文字
2進数 文字 2進数
A 0100 0001 N 0100 1110
B 0100 0010 O 0100 1111
C 0100 0011 P 0101 0000
D 0100 0100 Q 0101 0001
E 0100 0101 R 0101 0010
F 0100 0110 S 0101 0011
G 0100 0111 T 0101 0100
H 0100 1000 U 0101 0101
I 0100 1001 V 0101 0110
J 0100 1010 W 0101 0111
K 0100 1011 X 0101 1000
L 0100 1100 Y 0101 1001
M 0100 1101 Z 0101 1010
アルファベット - 2進数対応表

3.5 半導体とは何か ?

導体と絶縁体

ほとんどの金属をはじめ、電気を通す物質はたくさんあります。 それらは導体として知られています。 電気を通さない物質は絶縁体と呼ばれます。 大部分のトランジスタのベース素材である純粋なシリコンは半導体と 考えられます。 なぜならば、不純物を添加することで導電性を変化させることが できるからです。 (訳注:半導体と呼ばれる理由ではこれではないような気がします。)

トランジスタの分析

半導体と電気の流れ

ある種の不純物をトランジスタのシリコンに添加すると、結晶質が変化して 導電性が向上します。 ホウ素不純物を添加したシリコンは p 形シリコンと呼ばれます。 - p は正 (positive) すなわち、電子が不足しているという意味です。 (訳注: 正の電荷、すなわち電子が欠けた穴を「正孔(positive hole)」といいます。) リン不純物を添加したシリコンは n 形シリコンと呼ばれます。 - n は負 (negative) すなわち、多数の自由電子をもっているという意味です。

動作中のトランジスタ

動作中のトランジスタ - トランジスタの ON/OFF 状態

トランジスタには多くのタイプがありますが、ここでは例として 半導体の集積回路によく使われている n チャネル MOS FET(nMOSFET) について解説します。 MOS とは Metal-Oxide-Semiconductor の略で、<金属> - <酸化物 (多くの場合 SiO2 で絶縁皮膜を形成 )> - <半導体> いうサンドイッチ構造 (MOS 構造 )をもっている、という意味です。 MOSFET ではゲート端子が MOS 構造となっています。 以後、この nMOSFET のことを単に「トランジスタ」と表記します。

このトランジスタは下図のような構造をしており、ソース(S)、ゲート(G)、ドレイン(D) という3つの端子をもっています。

  S     G     D
       ###
      =====
-----------------
| n+ |@@@@@| n+ |
|____|     |____|
     p+ area  
-----------------
n+ : 電子密度の高い部分
p+ : 正孔密度の高い部分
== : 酸化物絶縁皮膜
## : 金属電極
@@ : 電流の通り道
このタイプのトランジスタでは、ソースとドレインは負に帯電していて、 p 形シリコンの正に帯電したくぼみにのっています。 ゲートに正電圧が加わると、p 形シリコンの中の電子がゲートの下の領域に引き付けられ ソースとドレインの間に電子の通り道を作ります。 ドレインに正電圧が加わると、電子はソースからドレインに向かって引っ張られます。 この状態にある時、トランジスタは ON です。 ゲートに加わっている電圧がなくなると、ソースとドレインの間の領域に電子が 引き付けられなくなります。 電子の通り道は閉ざされ、トランジスタは OFF となります。

トランジスタの衝撃

トランジスタの衝撃 - マイクロプロセッサがどれほど私達の生活に影響しているか

トランジスタの2進機能のおかげでマイクロプロセッサは、単なるワープロから ビデオ編集まで、多くの仕事をこなす事ができます。 マイクロプロセッサは、1つのチップで 1秒間あたり何億という命令をトランジスタ が実行する、というところまで進化しました。 自動車、医療機器、テレビ、コンピュータそしてスペースシャトルでさえ マイクロプロセッサを使っています。 それらは全て、トランジスタによって可能となる2進情報の流れに頼っています。


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