女性を Linux に招くための HOWTO
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1. 導入

2002年に Ottawaで開催された Linux シンポジウムで、私は LinuxChix BOF (Birds Of Feather) セッションの司会をしましたが、 BOFとカンファレンスの会場では次のような質問が繰り返されました。

「僕の彼女はWindowsを嫌っているんだけど、Linux を使うように勧めるにはどうしたらいいんだろう？」

「僕らの地域の LUG には女性が全然いないんだが、どうやったら女性の会員を勧誘できるのかな？」

「オープンソースコミュニティに女性が少ないのはなんでだろう？」

Linux コミュニティに属している人たちがもっと女性が Linux に参加して欲しいと思っているのは明らかですが、女性がコミュニティに参加しない理由も、この状況を変える方法も知らない人がほとんどです。本稿は Linux コミュニティに関心を持ったり加わっている女性による解説と助言、意見を集約したものです。この文書は LinuxChix BOFに参加した一女性の助言を正確に記録したものから始まり、その後数ヶ月に亘って更に大勢に女性達の意見を加えたものです。言い換えれば本 HOWTO は実際に Linux コミュニティに加わっている女性達の感想や評価を表したものです。私達は Linux コミュニティで「うまくやっている」女性達の言葉を書き留める一方で、他の女性達が Linux コミュニティから去っていった、あるいは加わろうとしない理由に対して考察を加え、さらに私たち自身をコミュニティから押し出すような圧力についても明快に分析しています。

ここでは女性がコンピューターを手に取ろうとしない理由についてまず一般論を述べ、特に Linux に対して近づこうとしない理由と、女性が Linux を手に取るように励ますやりかたについて述べます。この HOWTO を読んで、更に多くの女性が Linux を使い、インストールしあるいは開発に加わるようになれば喜ばしいことです。

1.1. 対象とする読者

本稿が第一に対象としているのは Linux コミュニティにもっと女性を参加させたいと思っている男性 Linux 愛好家であり、第二の対象は Linux やコンピューターを楽しむのに忙しい男性と女性で、女性のほとんどが Linux に興味を持たない理由について落ち着いて思いをめぐらす時間を取ってこなかった人々です。本 HOWTO を読んで女性が Linux を敬遠する理由について多少なりとも理解し、それを覆す方法が思い浮かべばよいでしょう。

本 HOWTO は女性が Linux コミュニティに加わらなくても気にならない、あるいは女性はLinuxに手を出さない方が良いと思う人に向けたものではありません。あなたが女性が Linux やコンピューターを敬遠するのが外的な要因のせいだということを今すぐには信じられないのであれば、たぶんこの HOWTO があなたを納得させることもできないでしょう (もっとも追究すべき新たな研究領域を見出すかもしれませんが)。

さらにこの HOWTO は男性の Linux 愛好家がデート相手の女性 Linux 愛好家を見つけるには全く役に立ちません。女性と Linux の関係を語る上で最も不幸な事実は、Linux コミュニティに女性が参加するよう心を配る人が図らずも女性を遠ざけていることが少なくないということです。女性が Linux コミュニティに参加して欲しいと考えている男性がガールフレンドを手に入れる好機だと考えているだけであり、そのように振舞った挙句に女性が Linux から遠ざかってしまったということがしょっちゅうです。この HOWTO では女性を Linux から遠ざけるような行動とより多くの女性に参加を促すような行為について説明を試みるつもりです。

1.2. 問題なんか無いはずだ？、性差別ってのは死語だろう！

私が良く耳にするのは「問題なんか無いはずだ？、性差別ってのは死語だろう！、女性がLinuxを敬遠しているのは女性自身がそう望んでいるからじゃないのか！」といった発言です。もしあなたがこのような考えの持ち主であるならばこの HOWTO を読み終えた頃には考えを変えているでしょう。私自身も性差別は過去の物だと考えていましたが、コンピューター業界の女性が参加するメーリングリストに参加してみたところ、誤りにすぐに気付かされました。毎週毎週、女性達が女性であるという理由でのけ者にされ、侮辱される現場を目の当たりにしました。これは何十年も前の出来事ではなく性差別が当たり前だった時代に育った人達の間に起こったことを言っているわけでもありません。現在彼女達が毎日経験している事実であり、現実に彼女達自身が選択した職業からはじき出されているのです。これは理論上の話ではありません― 職場や学校での上司や先輩を含む厚かましい性差別主義者の存在のせいで、女性たちがコンピュータの分野から去ってしまうということが現実に起きているのです。

下記のリンク先は最近起こっている性差別の好例なので目を通しておいてください

Sydney LUG (シドニー Linux ユーザーグループ)メーリングリストで問題が起こったときの最初の女性の投稿

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00286.html

「ヒステリー女」という言葉を持ち出した最初の投稿に対するコメント―

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00290.html

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00312.html

やれやれ驚いた。この2件の投稿のせいで最初に投稿した女性は追い出されてしまいました―

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00313.html

ユーモアたっぷりだが勇敢なほかの女性からの反撃―

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00317.html

痛いところを見事に突いた皮肉にも気付かない、にぶい男のコメント―

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00319.html

言わんとするところに気付いた男性からのコメント―

http://lists.slug.org.au/archives/slug-chat/2001/October/msg00321.html

性差別はいまだに健在で、Linux から女性を締め出しています。あなたは「ヒステリー女」というジョークを投稿した Linux ユーザー達を「無学だ」とか「馬鹿だ」とか「本当は悪い奴じゃない」と言い、どうにかして彼らが「性差別主義者」のレッテルを免れることはできるように弁解はできますが、実際には彼らの行動の結果、女性が Linux を敬遠することになり、私達にとって望まざる結果になります。

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