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1. はじめに

ここで述べたコンフィグレーションは1996年の夏にジュネーブ大学 University of Geneva の CUI で研究開発されました。コンピュータ科学科 The Computer Science Department は Novell Netware サーバ、 NFS ( #) サーバと多数の PC を使っており、これらは以下の用途に 分類されます。

われわれは次の目的で現行のコンフィグレーションを開発しました。

以上のような制約があったので Koeppen EDV-Beratungs-GmbH の優れた製 品である TCP/IP Bootprom をわれわれのコンフィグレーションのベースに用 いることにしました。bootprom は オペレーティングシステムの種類を問わな いので、とりわけ興味あるものです。ちょうどフロッピーディスクに匹敵し、 DOS や Windows 95 と同様に Linux の起動のためにより簡単に使用できます。

# NFS(Network File System)(用語集): Sun Microsystem により開発された透 過ファイルアクセスシステムの実装。広く普及している。 NFS-Root、NFS-Root-Client mini-HOWTO があります。

1.1 ネットワーク

われわれの PC は2つのネットワークプロトコル、IPX ( #) と IP ( #) を 配慮して いるだけです。 IPX 側では、DOS や Windows のソフトウェアとユーザファイ ルを共有するために単体の Novel Netware を3つ使用しています。IP 側では、 NFS を使って Linux用 のソフトウェアとユーザ区画を共有するために SUN サー バを使用しています。ジュネーブ大学はいくつかのサブネットに小分けされたク ラス B ドメインを持っています。CUI は4つのサブネットを使用しており、 そのうちの1つが学生専用になっています。

# IP (Internet Protocol)(用語集):インターネットプロトコル。TCP/IP プロト コルモデルの名かのインターネット層のプロトコルの1つ。

# IPX (Internet Packet eXchange): Novell 社の Neware 製品でサポートして いるインターネットプロトコルのひとつ。IPX は IP プロトコルと類似したも の。Linux IPX-HOWTO と Linux NET-3-HOWTO を参考してください。

1.2 運用方法

  1. クライアントの PC が起動すると、TCP/IP bootprom に制御が渡る前に、 最初に通常のシステムチェックが行われます。
  2. bootprom はその IP 設定のパラメーターを得るために BOOTP ( #) 要求を出します。
  3. クライアントが Novell サーバと同じサブネット上にない限り、その要求 はサーバ自身への BOOTP gateway を通して Novell サーバに送られることに なります。
  4. Novell サーバが その要求を出している PC を認識するなら、BOOTP reply を返します。BOOTP reply には、クライアントの IP アドレス、デフォルト gateway 、どのブートディスクイメージを使うかのような情報が含まれます。 一方、認識されないなら、サーバは要求を破棄します。
  5. それから bootprom は TFTP プロトコルを使って、Novell サーバからブー トディスクイメージをロードします。そしてこのイメージでフロッピーディス クを BIOS レベルでエミュレートします。
  6. PC はこのディスクイメージで起動します。このディスクイメージはブート プログラム(まだオペレーティングシステムは入っていません)が入っているだ けのものを作ります。
  7. その PC が学生のコンピュータなら、プログラムはローカルなハードディス クのパーティションテーブルをリセットし、そして DOS 領域を高速フォーマッ トして始動します。ここまではコンピュータが起動してから3秒以内に終了します。
  8. それからプログラムはその作業に対してオペレーティングシステムの選択 をユーザに提供します。
  9. ユーザの選択によって、新しいブートディスクが TFTP を使って Novell サーバからロードされます。
  10. ユーザが Linux を使うと決めた場合、ブートイメージは少し変更された 圧縮カーネルになります。このカーネルは、 NFS ルート機能とキャッシュファ イルシステムをサポートします。
    1. 最初に Novell サーバから受けた BOOTP reply によって IP 設定が行われ ます。
    2. そうすればカーネルは NFS を使って、小さい、リードオンリーの root ファイルシステムをマウントできるようになります。
    3. 小さな ramdisk が作られ、write access が望まれるディレクトリを ラムディスクにシンボリックリンクします。
    4. システムは、すべてのシステム依存でないソフトウェアを含む パーティションを NFS でマウントします。
    5. スワップパーティションがローカルハードディスク上にあればアクティブに されます。
    6. Linux パーティションがローカルディスクにあればマウントされ、NFS の キャッシュパーティションになります。
    7. IP 設定が完了すると、サービスが始まり、xdm が起動します。
    8. ユーザは Linux login を求められます(SUN サーバで NIS で維持されてい る)。ワークステーションは準備完了します。
  11. ユーザが DOS と Windows 3.1 を使おうとするなら、ブートイメージは 従来の DOS のブートディスクになり、 ブートマネジャー、 Novell クライア ントと FTP Inc.TCP/IP スタック ( #) が 入っています。
    1. bootprom は RAM のどこかにそれ自身をコピーするので、使用する 32Kb の アドレススペースは EMM386 で復帰させることができます。
    2. キーボードドライバやネットワークドライバのようなデバイスドライバが ロードされます。
    3. ユーザは Netware に login を促されます。
    4. サーバログインスクリプトが ウイルス検出をする Vshield をロードします。
    5. bootprom フロッピーディスクエミュレーションはもう必要がないので、 それが占めている RAM は解放されます。
    6. クライアントローカルファイルがハードディスク上に存在しなければ、 Netware サーバからコピーされます(Windows 3.1 と Netscape に対して約 350Kb 必要:1秒ほどかかります)。
    7. ローカルディスクキャッシュが有効にされます。
    8. FTP Software の TCP/IP スタックがデフォルトの設定でロード されます。
    9. IP 環境が Netware サーバ上で BOOTP 設定ファイルから読み込まれ、IP カーネルを直接更新します。
    10. ユーザはフリーコンベンショナルメモリ 543'000 バイトで DOS プロンプト を与えられます。TCP/IP カーネルをロードすれば、コンベンショナルメモリ 617'000 バイトになります。
    11. ユーザは従来の win コマンドを入力して Windows を起動できます。
  12. ユーザが Windows 95 を使うなら、ブートイメージは Windows 95 の サーバ を利用するセットアップで作られるブートディスクを少し変更したものになります。 このブートイメージは Microsoft 版 Novell Netwareクライアント と Microsoft TCP/IP スタックが用いられます。
    1. まず始めに、Windows 95 のロゴがスクリーンに表示されます(それを取っ てはいけません。さもないと、 DOS に似たような画面になってしまいますから)。
    2. それから Netware クライアントと同様に OS がロードされます。
    3. ユーザは Netware に login を求められます。
    4. クライアントローカルファイルがハードディスクに存在しないなら、 Netware サーバからコピーされます( Windows 95 と Netscape に対して約 2.5Mb 必要:数秒かかります)。ロングファイルネームは修復されます。
    5. 先の BOOTP reply に基づいて適切な IP 環境でコンフィグレーションパッチ が作られます。
    6. パッチは Microsoft の REGEDIT を使って windows 95 のシークレット レジストリに適用されます。
    7. Windows マシンのディレクトリがローカルのハードディスクに設定されます。
    8. Windows 95 が起動します。ワークステーションは用意が整います。

学生のコンピュータはハードディスクが各自の起動時にその都度初期化され るので、リスクなしにいつでも電源を切ってしまうことができます。

突然電源を切られてローカルディスクにゴミが残っているコンピュータの場合、 その設定が混乱しているなら、次回の始動で新しいインストールをするために、 関連のあるオペレーティングシステムを含むすべてのディレクトリツリーを消 してしまえばよいのです。

# BOOTP: ブートストラップを転送するためのプロトコル (The Unix Super Text 下563頁) RFC ( #)(Request for Comments) :1048 も参考にして ください。
# RFC Request for Comments コメント要求(用語集): 主に TCP/IP プロトコル 族の標準仕様を規定するドキュメント群。
# TCP/IP stack: スタック(参考)プロトコルスタック 1つのプロトコル体系から選び抜かれた プロトコル群(インターネット構築入門:25頁)


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