11.4. シリアルケーブルの作成

ラックに詰め込んだコンピュータでシリアルコンソールを使う場合は、 最終的にはヌルモデムのシリアルケーブルを何本も作ることになります。 このセクションには、 シリアルケーブルを作る上でヒントになることがいくつか載せてあります。 10 本以上ケーブルを作るつもりで、しかも都会に住んでいる場合は、 たぶん気が付くでしょうが、 専門のケーブル製造業者でケーブルを作らせる方が経済的です。

RS-232 規格では、 シールド付きのケーブルを、最低でも 15 メートル駆動できます。 もっと正確に言えば、 RS-232 のラインドライバは 2500 ピコファラッドまでのキャパシタンスに対して動作します。 ですから、低キャパシタンスのケーブルを選べば、 駆動距離はもっと延ばせます。

例えば、ANSI/TIA/EIA-568-A のシールド無しツイストペアのカテゴリ 5 ケーブルでは、 キャパシタンスは最大で、1 メートルあたり 55pF になっています。 ですから、この一般的な “UTP cat 5” ケーブルだと、45 メートルまで安全に駆動できます。それ以上の場合は、 ケーブルの最大長である約 50 メートルで、 実際の “シャントキャパシタンス” (一般的な数値は 47.5 pF/m) がどうなっているかを、ケーブルの製造業者の仕様で確認してください。 しかし RS-232 の信号は平衡伝送ではないので、 シールド無しのケーブルを長く延ばすと、簡単にノイズを拾ってしまいます。 ケーブルの製造業者によっては、 低キャパシタンスのシールド付きケーブルを販売しており、 これを使えば 100 メートルまで駆動できます。

ケーブル配線の仕方を工夫して、ノイズが最低になるようにしてください。 BIOS やブートローダーの多くは、 ラインノイズで何か一文字受信してしまうと、 永久に待ち状態になってしまいます。

仕様以上の使い方をしていることに、何の不安も感じていなくても、 心に留めておいてほしいことがあります。 RS-232 規格が、 もともとは同期 48kbps で動作するように設計されたもので、 ケーブルの必要条件にこのことが反映されているのです。 企業のネットワークオペレータの経験によれば、 ビル内でストラクチャードケーブリングをレイアウトする際の制限になるのは、 カテゴリ 5 のケーブルを使った、 ファーストイーサネットの最大長が 100 メートルだということでした。 カテゴリ 5 ケーブルを使った 9600bps の RS-232 非同期信号で達成している、 実際の距離ではなかったんです。

もっと距離を延ばしたい場合は、RS-232 のラインドライバを使って下さい。 こうすれば、カテゴリ 3 の UTP ケーブルで、一般に 2000 メートルまで駆動できます。 さらに延長したければ、 光ケーブルモデムや広域電話網、モバイル電話網、衛星通信、 あるいは無線を考慮して下さい。

その環境に高周波ノイズが充満している場合は、 シールド付きのケーブルとコネクタを使って下さい。 ケーブルのシールドを一方の端のコンピュータに接続します。 これはシールドのドレインワイヤを、(もしあれば) "保安用グランド" に接地するか、 あるいはそのドレインワイヤをコネクターのボディに半田付けすればできます。 それでもまだノイズが相当量ある場合は、 そのケーブルの両端を、シールドしたケーブルの上から、 フェライトコアで覆って下さい。 それから、ケーブルを正しい長さにして、 D コネクタをシャーシにしっかりねじ留めするという、 普通の正しい慣例に従ってください。

こういったケーブルのどれかを作るつもりで、しかも半田付けの技量があれば、 DB9 や、あるいは DB25 のバックシェルにある信号線をジャンパーで飛ばすのも簡単にできます。

大量のケーブルを作るつもりなら、 半田付けよりも圧着システムの方がずっと速くできます。 繰り返しになりますが、ピンをジャンパーで飛ばすのは、 バックシェルの内部でできるんです。

どんなものを使うにしても、テスターで抵抗を測り、断線や線間短絡を チェックしてください。ここで1分ケチると、あとで数時間浪費するかも しれません。

ストラクチャードケーブリングシステムでは、 DB9/RJ-45 バックシェル内のスペースは狭いです。ですから、 パッチパネルの裏でジャンパーを飛ばすともっとうまくいきます。 DB9/RJ-45 コネクタは、 DB9 コネクタでは IBM PC のピン配置なっており、 RJ-45 コネクタでは、 Yost あるいは Cisco のピン配置になっています。

ストラクチャードケーブリングシステムで両立しないデバイス

ストラクチャードケーブリングシステムをパッチする場合、 RS-232 デバイス同士を接続するよう注意して下さい。 他のはたぶん、イーサネットや ISDN、電話、アラーム、それに DC の電源電圧を伝送しているケーブルだと思いますから、 互換性のない電圧をつないでしまうと装置が壊れてしまうかも知れません。