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2. サウンドカードに採用されている技術

この章では、今後この文書で使用する概念の理解を助けるために、 コンピュータのオーディオ技術についてのごく簡単な説 明を行ないます。もっと詳しいことを知りたい方は、ディジタルオーディオま たはディジタル信号処理に関する書籍を参照してください。

音はアナログの性質を持っています。つまり、連続した範囲中の いかなる値をも取ることができます。一方、コンピュータが扱えるのは ディジタルです。つまり、離散的な値を扱うことが得意です。サウ ンドカードは、アナログ・ディジタル・コンバーター(A/D または ADC)というデバイスを使って、アナログサウンド波形に対応した電圧をディジ タル値に変換します。この値はメモリに保存することができます。同様にディジタル・アナログ・コンバーター(D/A または DAC)というデバイス は、ディジタル値をアナログ信号に変換します。このアナログ信号がスピーカー を駆動して音が発生します。

アナログからディジタルへの変換プロセスはサンプリングと呼ば れますが、この際多少の誤差が生じることは避けられません。 サンプリングされた信号が元の信号をどれだけ忠実に表現しているかというこ とを決定する二つの重要な要素があります。 一つはサンプリングレートで、これは単位時間あたりに行なわれる サンプリングの回数のことです(普通はサンプル数/秒、またはヘルツを単位と して表されます)。 サンプリングレートが低いと、元のアナログ信号を忠実に再現す ることができません。 もう一つはサンプリングサイズ、つまりひとつひとつのサンプルを 表現する値の範囲で、普通ビットを単位として表されます。 サンプリングサイズが大きいほど、デジタル化された信号は正確になります。

サウンドカードは通常、8 ビットまたは 16 ビットで、一秒あたりおよそ 4000 から 44,000 回のサンプリングを行ないます。 サンプリングは 1 チャンネル(モノラル)のこともあれば、2 チャンネル (ステレオ)のこともあります。

FM 音源は、サウンドを生成するために古くから使われ ている技術です。FM 音源は、異なる波形(例えば正弦波、三角波、矩形波など) を合成することでサウンドを生成します。 FM 音源は D/A 変換に比べてハードウェアによる実現が容易です が、プログラムが困難で柔軟性に欠けるという欠点があります。 サウンドカードの多くは、古いカードやソフトウェアとの互換性のために FM 音源を用意しています。 通常は、複数の独立したサウンドジェネレータ(ボイスとも呼ばれま す)が利用できます。

ウェーブテーブル音源は、D/A 変換の柔軟さと FM 音源の複数チャンネルを扱う機能を組み合わせた技術です。 ウェーブテーブル音源技術においては、ディジタイズされた音声を専用のメモ リにダウンロードし、ほとんど CPU に負荷をかけることなく再生・合成・変更 を行うことができます。 最新のサウンドカードはすべてウェーブテーブル音源をサポートしています。

ほとんどのカードはミキサー機能、つまり複数の入力源からの信号 の重ね合わせとそれぞれのゲインを制御する機能を持っています。

MIDIとは Musical Instrument Digital Interface(楽器 ディジタルインターフェース)の略で、楽器どうしが互いに通信するためのハー ドウェアとソフトウェアプロトコルの規格です。MIDI バス上に送信されたイ ベントは MIDI ファイルとして保存され、後で編集したり再生することができ ます。多くのサウンドカードは MIDI インターフェースを持っています。 インターフェースがないサウンドカードでも、サウンドカードが備えている機 能を使って MIDI ファイルを再生することが可能です。

MOD ファイルは、コンピュータで生成された楽曲の共 通フォーマットの一つです。 音符に関する情報の他に、ディジタイズされた楽器(または声)のサンプリング データが含まれています。 MOD ファイルは最初 Amiga コンピュータで使われはじめたものですが、適切 なソフトウェアを用いれば Linux など他のシステムでも再生することができ ます。


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