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2. 端末のタイプ

2.1 ダム端末

``ダム端末 (dumb terminal)'' には様々な矛盾した定義がありますが、時が たつにつれ、ますます多くの端末がダム (愚か) と呼ばれるようになりました。 本書では主としてスクリーン上にテキストだけを表示するテキスト端末を扱い ます。本書のタイトルを ``Dumb-Terminal-HOWTO'' としてもよかったかもし れませんが、雑誌記事では、たとえフルグラフィックスユーザインターフェイ ス (GUI) を備えた賢い (smart) 端末をも含めてダムと呼んでいるのです。も し全ての端末が ``ダム端末'' なら、端末の前にダムとつける意味はありませ ん (セルコンピュータや ``スマート'' 端末のかわりのような商売上の表現を 除いては)。ダム端末の意味はあいまいなので、ここでは端末のタイプを明瞭 に区別するものではありません。

2.2 テキスト端末

テキスト端末では、コンピュータと端末を結ぶケーブル上を情報が 2 方向に 流れています。通常、この流れは各バイトが文字を表現する ASCII バイトで す。キーボードでタイプしたバイトはコンピュータに向い、コンピュータから のほとんどのバイトが端末スクリーンに表示されます。コンピュータからの特 別なバイト (もしくはバイト列) は、カーソルをどこへ動かすか、何を消すか、 どこからどこへ下線を引くか、あるいはブリンクやボールド等を端末に指示し ます。そのような特別なコマンドは 100 を越え、多くの端末ではフォントの 変更さえできます。

使用する文字セット用のコード表を使ってエンコードした文字 (文字列) を通 信に使用します。通常、使用可能な 256 バイトの内、最初の 128 バイトが ASCII コードとして使われます。Unix のようなシステムのための端末では、 ホストコンピュータと端末の非同期シリアルポート (RS-232-C = EIA-232-D) 間をケーブルで接続します。たまにモデムやターミナルサーバ等を経由するこ とがあります。

テキスト端末には他に ``シリアル端末''、``キャラクタセル端末''、``ASCII /ANSI 端末''、``非同期端末''、``データ端末''、``ビデオ端末''、``ビデオ 表示端末 (VDT)'' の名称があります。昔は ``ビデオ表示装置 (VDU)'' が端 末として使われましたが、厳密に言うと、それにはキーボードがありませんで した。

``ブロックモード'' は IBM の古いメインフレームで唯一使われましたが、最 新の多くの端末にもこの機能が備わっています (多くは使われませんが)。タ イプしたキャラクタは一時的に端末のメモリに保持されます (そして、端末に 組み込みのエディタで編集することもできます)。それから、送信キー (もし くはそれに類するキー) が押されると、キャラクタのブロック (時にキャラク タ列として) が一挙にコンピュータに送られます。ブロックモードは Linux ではサポートされていません (1998 年後半現在)。 Block Modeをご覧ください。

2.3 グラフィックス端末

ASCII 記号を使ってでもある程度までならテキスト端末上で「絵」を描くこと は可能です。矢印は <---、箱を表示するなら _ と | でできるで しょう。特別なグラフィックス文字セットを描くことさえ可能です。このようなもの は本物のグラフィックス端末ではありませんが、``グラフィックス端末'' という 用語は、テキストがグラフィックスの限定した形態であることから、テキスト 端末にもあてはまります。

グラフィックスを表示するための二つの基本的なタイプに、ラスタとベクター (稀に使われます) があります。ラスタグラフィックス (ビットマップ) は電 子ビーム (または活性化ピクセル、またはフラットスクーン上のドット) に よって描かれた水平走査線でスクリーンにドットを描いていきます。ベクタ ーグラフィックスディスプレイは、通常、モノクロで、ドットはありません。 それらは、どの方向 (どんな角度や位置) にも移動できる電子ビームで直線 や曲線を描くのにすぐれた電子デバイスを使います。ベクターグラフィック スはジグザグのない高品質の線画を描きますが、それはまたあまり使われず、 かつ高価なものです。今日、ラスタグラフィックスはほぼ一般的に使われて います。PC ではベクターグラフィックス形式でエンコードされたイメージも たまに使われますが、表示するときにラスタグラフィックス形式に (描画品 質の劣化を伴って) 変換されているのです。

シリアルライングラフィックス端末

本書の大部分も、この種の端末を対象としたものです。これらのほとんどは、 テキスト端末としても機能します。そのようなグラフィクスのプロトコルには 以下のものがあります:Tektronix Vector Graphics, ReGIS (DEC), Sixel (D EC), NAPLPS (North American Presentation Level Protocol Syntax)

高速グラフィックス端末 (しばしば他の名前で知られる)

本書ではこれについての記述はありません。賢い (smart) と呼ぶに値する端 末とは PC モニタのようにフルスクリーングラフィックスを瞬時に表示できる グラフィックス端末のことです。それはマウスもサポートするでしょう。画像 (や、その他のグラフィックス) ビットマップを表示するために、端末にバイ トを送ります。ツイステッドペアケーブルや同軸ケーブルを使ったホストコ ンピュータとの高速通信にも用いられます。X-Windows 端末はそのような 装置です。 Related HOWTO'sにある Xterminal-HOWTO への リンクをご覧ください。

MS-Windows GUI を表示するために様々なタイプのインターフェイスと端末が あります : Citrix の WinFrame を使った Winterm はその一つです。 (Citri x のコードをベースにした) 他のものとして Microsoft 社の Hydra (コード ネーム ) があります。これは MS Windows NT 4.00 以降で動く ``Windows Te rminal Server'' として知られているものです。Citrix 社は ICA プロトコル を使って、WinFrame(ICA) をベースにした端末が Hydra システムを利用でき るように、pICAsso として知られている Hydra へのアドオンを作成しました。 そして Hydra はマルチユーザでもあります。Unbounded Technologies 社には ``MultiConsole Personal Terminal'' があり、また Tektronix 社には自社 製のマルチユーザインターフェイスがありますが、現在は Hydra のサポート を表明しています。1997 年の雑誌記事では、Winterm のことを ``ダム端末'' と呼んでいますが、実際はかなり賢いものです。そのような端末のことを よく ``シンクライアント (thin clients)'' と呼びますが、シンクライアン トの幾つかはもはや端末以上で、そこに送られた Java コードを実行するこ となどができます。

2.4 ネットワークコンピュータ (NC)

これは本来の意味でのコンピュータでも端末でもなく、その中間に位置するも のです。あるタイプのネットワークコンピュータ (NC) は、(CPUはあっても) ハードディスクがないコンピュータです。NC はフルグラフィックス表示が可 能で、サーバコンピュータと接続して使用します。 NC 自身の CPU でプログ ラムを動かすことができるので、端末とは異なったものです。実行するための Java コードが送られるかもしれません。 IBM はこれを ``ネットワークステ ーション'' と呼んでいます。それは IP ネットワーク上で動作するはずなの で、Linux が動くサーバの下でも動作するかもしれません。Wintel は上述の 端末とは異った ``NetPC'' を作りました。これはほとんど PC コンピュータ です。しかしリムーバブルディスクがないので、ユーザは自分のソフトウェ アのインストールや何かのコピーを手に入れることができません。Sun JavaStation NC で Linux を使うには 2000 年 4 月 24 日にリリースした JavaStation-HOWTO をご覧ください。

NC やウィンドウ端末関係を支持する人達は、数百万台の PC と置き換えよう と計画しましたが、まだ達成していません。大きな理由として、ここ数年来 PC 価格が下落したことで NC 等より安くなってしまったことが挙げられます。 結論として,まだテキスト端末が健在なのです。

2.5 PC 上でのエミュレーション

PC は (端末として使えるように) スクリーンやキーボードを備えていますが、 さらに大きな処理能力があるので、PCの処理能力の一部を割り振るだけで、テ キスト端末の処理は簡単にできます。これは ``端末エミュレーション'' と呼 ばれています。普通、テキスト端末をエミュレートします。 Terminal Emulationをご覧ください。


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