Japanese Printing mini HOWTO

はね ひでや

wing@flatout.org

wing@lain.org

Rel.0.0.1a 1996/08/22

このドキュメントは、Linux 上で日本語を印字する方法について説明します。 英語版の Printing HOWTO(日本語訳) とは無関係に記述したものです。

Note: この文書はかなり以前に書かれたものなので、 いまどきの Linux 環境にはあてはまらない箇所があります。 (JF Project)


Table of Contents
1. プリンタ使用の基礎知識
1.1. テキストファイルの種類
1.2. プリンタの種類
2. lpr システム
2.1. lpr システムとは
2.2. lpr システムの仕組み
3. lpr によるテキストファイルの印字方法
3.1. /etc/printcap の設定
3.2. スプールディレクトリの作成
3.3. デーモンの起動
3.4. 印字テスト
4. PostScript の使用
4.1. PostScript とは
4.2. GhostScript とは
4.3. GhostScipt の動作
4.4. GhostScript + lpr による印字
5. 終わりに

1. プリンタ使用の基礎知識

まず始めに、プリンタを扱う上で、知っておいた方が良いことをまとめました。


1.2. プリンタの種類

よく、テキストファイルを

   cat file > /dev/lp1

等とやって、英数字は出るが漢字が出ません、と言った質問を目にします。こ れは、ファイル上の漢字コードをプリンタが理解できないために起こります。 例えば、EUC でエンコードされたファイルは、最上位ビットが立っていれば漢 字となりますが(正確にはチョッチ違いますので、興味がある方は調べて見て下 さい)、それをプリンタが理解できないわけです。そこで、プリンタが理解でき るようにテキストファイルを変換しなければなりません。 変換は、プリンタ制御コードの埋め込みと漢字コードの変換等の処理を行ない ますが、これらはプリンタが、どの制御コードをサポートしているかにより異な ります。次に、国内の主要なプリンタ制御コードを示します。

実際の変換は、次の章で説明する lpr のフィルタが行なってくれますから、 普段は意識する必要はありませんが、所有のプリンタが、どの制御コードを持っ ているかは * 必ず * 把握しておかねばなりません。


2. lpr システム

lpr の概要について説明します。lpr は Linux 独自のものではないので、 UNIX 一般の書籍も参考になるでしょう。また、システムの設定は root (スーパー ユーザ) で行うことを忘れないでください。


3. lpr によるテキストファイルの印字方法

lpr を使い、テキストファイルを印字ための設定方法を説明します。2 章で説 明したとおり、ここでポイントとなるのは、印字しようとするテキストファイル の種類と、プリンタの種類です。プリンタは BJ10VLite を想定していますが、 ESC/P の制御コードを持つものなら同様です。


3.1. /etc/printcap の設定

使用するフィルタ、スプール等の定義を、/etc/printcap ファイルで行ないま す。printcap の記述例を示します。記述するとき、既に lp があった場合には、 削除するか、# でコメントアウトしておいて下さい。

   1     lp| ESC/P filter :\
   2             :lp=/dev/lp1:\
   3             :sh:\
   4             :if=/usr/lib/escpf:\
   5             :of=/usr/lib/escpf:\
   6             :sd=/var/spool/lpr/lp:\
   7             :pw#90:pl#66:\
   8             :mx#0:\
   9             :lf=/var/spool/lpr/lp/lpr-error:

これらは次のような意味になっています。

  1. lp は lpr システム上のプリンタ名(エントリ)です。また、lp は、プリン タ名を指定しなかった場合にデフォルトで使用されます。| 以降はコメント です。

  2. スペシャルファイルを指定します。プリンタポートの I/O アドレスによって、 0x3bc:/dev/lp0, 0x378:/dev/lp1, 0x278:/dev/lp2 となります。

  3. カバーシート(出力したホスト名やユーザ名が印字される)の出力を抑制します。

  4. Input Filter です。文字通り入力データのフィルタです。例えば課金情報 等を処理する場合に使用されます。ここでは JE に含まれる ESC/P 用のフィ ルタを指定していますが、特別何もしていません。

  5. Output Filter です。出力データのフィルタです。ここで 1.2 節で説明し た変換などをおこないます。JE に含まれる ESC/P 用のフィルタを指定して いますが、特別何もしていません。

  6. スプールディレクトリを指定します。これは 1 のプリンタ名毎に作成しま す。

  7. pw が印字桁数、pl が印字行数の指定です。 この指定は、escpf フィルタにおける A4 でぎりぎりのサイズです。

  8. スプールする最大ファイルサイズの指定です。0 を指定すると無制限になります。

  9. ログファイルの指定です。エラー発生時に記録するファイルです。

書式の詳細は、man printcap で表示されます。

使用したフィルタ、escpf は、EUC と JIS コードのファイルを、ESC/P の制 御コードに変換します。

escpf は PCPR201 を処理できないので、同じく JE に含まれる pf コマンドを利用して、次のようなシェルスクリプトをフィルタにすると良いでしょう。

   #!/bin/sh
   /usr/bin/pf -DPCPR -IEUC
   exit 0

* 最近の NEC プリンタは、ESC/P をサポートするものも発売されており、 PCPR201 を使う機会は減ってきているでしょう。


4. PostScript の使用


4.3. GhostScipt の動作

GhostScript の動作は単純です。

                      PostScript
                          ↓
                 GhostScript にて処理
                          ↓
    各種プリンタ制御コード/画像フォーマットに変換

これだけなのです。面倒なのは、各種プリンタ制御コード/画像フォーマット に変換に変換する時の設定/指定です(設定/指定は次の節でやります)。 JE-0.9.7z に収録された GhostScript の、主な出力デバイスを次に示します。

これらは、gs -h で確認できます。

静的に組み込まれたもの

   x11         S X Window System
   dmprt       P dviprt 用のコンフィグレーションファイルを利用した印字

動的に組み込まれたもの

   bj10v       P Canon BJ10系
   bjc600j     P Canon BJC600 用カラー対応(610 の 720dpi は不明)
   dj505j      P HP Desk Jet 505
   epag        P EPSON ESC/Page
   linux       S linux console
   lips        P Canon LIPS
   lips2       P Canon LIPS II
   lips3       P Canon LIPS III
   mjc180      P EPSON MJ800C/700V2C/900C/5000C 等のカラー 180dpi
   mjc360      P EPSON MJ800C/700V2C/900C/5000C 等のカラー 360dpi
   mjc720      P EPSON MJ800C/700V2C/900C/5000C 等のカラー 720dpi
   pr150       P PC-PR150
   tiffg3      S TIFF G3 FAX

dmprt が使用できるので、ほとんどのプリンタは使用できると思います。


4.4. GhostScript + lpr による印字

GhostScript は、プリンタが即理解できるコードを生成しますから、直接スペ シャルファイルに入力しても印字は出来ます。しかし、これではスプーリングも できませんし効率良く使用できないと思います。ですから、GhostScript を lpr のフィルタとして使用します。

ここでは、True Type フォントを用いて、BJ10VLite + dmprt と LP1700 + epag で印字する例を紹介します。なお、GhostScript は JE-0.9.7z に収録され たものを使用します。

共通設定(その一)BJ10 or LP1700の設定 → 共通設定(その二) の順で作業し ます。


4.4.1. 共通設定(その一)

まず共通設定として、GhostScript が使用する日本語フォントの設定を行ない ます。

kconfig.ps の設定

GhostScript は kconfig.ps により、どの日本語フォントを 使用するか決定します。kconfig.ps は、/usr/local/lib/ghostscript/kanji 以下に作成するシン ボリックリンクです(もちろんコピーしても構いませんが、それはださいですよ ね:-)。/usr/local/lib/ghostscript/kanji 以下には、 zeit.psvflib.ps 等 のファイルがあり、使用するものにリンクを張ります。

ここでは、vflib.ps を使用します。vflib.ps とは、広島大学の角川さんが作成された、ベクトルフォントをビット マップデータに変換するライブラリ VFlib を使用するものです。

よって、次のようにシンボリックリンクを張ります。

   # cd /usr/local/lib/ghostscript/kanji
   # ln -s vflib.ps kconfig.ps

vfontcap の設定

VFlib を使用することを設定したので、こんどは VFlib が使用するフォント の設定をします。つまり、

    GhostScript → VFlib → 各種ベクトルフォント

のようになっていて、GhostScript がみているのは VFlib だけなのです。

さて、VFlib が使用するフォントは、/etc/vfontcap ファイルで設定します。vfontcap の 70 行目付近の ff を次のように修正します。この例では、フォン トが /home/sys/fonts2/ 以下にある 場合ですから、各自の環境にあわせてパスを設定して下さい。

   ### TRUETYPE FONT (Windows fonts)
   r-microsoft-mincho|MicroSoft mincho:\
           :ft=truetype:\
           :ff=/home/sys/fonts2/msmincho:  ← ここと
   r-microsoft-gothic|Microsoft gothic:\
           :ft=truetype:\
           :ff=/home/sys/fonts2/msgothic:  ← ここね

さらに、TrueType フォントの場合にはインデックスファイルが必要になりま す。フォントが存在するパス(例では /home/sys/fonts2/ )に移動したら、

   # ttindex msmincho.ttc
   # ttindex msgothic.ttc

を実行してインデックスファイルを作成します。フォントが Windows3.1 の場合 には、拡張子が ttc ではなく、ttf になります。

次に、160 行目付近の次の部分をコメントアウトします。

   # zeit-maru
   min|min5|min6|min7|min8|min9|min10|min12|min17|Mincho Font:\
           :fc=zeit-mincho:
   goth|goth5||goth6|goth7|goth8|goth9|goth10|goth12|goth17|Gothic Font:\
           :fc=zeit-gothicMH:
   tmin|tmin5|tmin6|tmin7|tmin8|tmin9|tmin10|tmin12|tmin17|Mincho Font:\
           :fc=zeit-mincho:
   tgoth|tgoth5||tgoth6|tgoth7|tgoth8|tgoth9|tgoth10|tgoth12|tgoth17|Gothic Font:\
           :fc=zeit-gothicMH:
   bmin:\
           :fc=zeit-mincho:
   bgoth:\
           :fc=zeit-gothicMH:

こんどは、209 行目付近の # TrueType から *次の行以降* のコメントを外します。

   # TrueType
   #min|min5|min6|min7|min8|min9|min10|min12|min17|Mincho Font:\
   #       :fc=microsoft-mincho:
   #goth|goth5||goth6|goth7|goth8|goth9|goth10|goth12|goth17|Gothic Font:\
   #       :fc=microsoft-gothic:
   #tmin|tmin5|tmin6|tmin7|tmin8|tmin9|tmin10|tmin12|tmin17|Mincho Font:\
   #       :fc=microsoft-mincho:
   #tgoth|tgoth5||tgoth6|tgoth7|tgoth8|tgoth9|tgoth10|tgoth12|tgoth17|Gothic Font:\
   #       :fc=microsoft-gothic:
   #bmin:\
   #       :fc=microsoft-mincho:
   #bgoth:\
   #       :fc=microsoft-gothic:

以上で共通設定(その一)は完了です。ここでテストをしてみましょう。

/usr/local/lib/ghostscript 以下に移動して、次のコマンド を実行してみて下さい。

画面上に日本国憲法が表示されればOKです。もしうまく行かない場合、which gs として、どこの gs を実行しているか チェックして下さい。JE の gs は、 /usr/local/bin/gs(gslx) です。

Canon BJ10VLite + dmprt driver

dmprt は dviprt の設定ファイルを利用するドライバです。この設定ファイルは、 /usr/local/lib/prtcfg/ 以下にあります。 cfgsrc のサブディレクトリがありますが、前者は後者をバイナリ変換した ものです。筆者は変換が面倒なので、src (ソース)を利用しています。このファイルを利用することは、 /usr/local/lib/ghostscript/dmp_site.ps で設定します。

dmp_site.ps には、

   /printer (/usr/local/lib/prtcfg/src/bj_10v48.src)
とだけ書いておけば、一応動きます。しかし、これだけでは大抵印字がずれる ので、オフセットやマージンも定義します。
   /margin  [ 3.675 mm 12.7 mm 0.0 mm 0.0 mm ]
   /offset  [ 0.0 mm -4.0 mm ]
ですから、3 行もあれば十分でしょう。

dmp_site.ps が修正できたら、フィルタを作成します。 フィルタは /usr/local/lib/gsf に、次のように作成すると 良いでしょう。作成後 chmod 755 とするのを忘れないで 下さい。

   #!/bin/sh
   /usr/local/bin/gs -q -dNOPAUSE -sDEVICE=dmprt -r360 \
   -sPAPERSIZE=a4 -sOutputFile=- -
   exit 0
2 行目の -r360 は、解像度(dpi)ですから、プリンタにあわせて 決定します。

EPSON LP1700 + epag driver

この組合せでは、GhostScript 組み込まれたドライバがそのまま使用できます から、次のように /usr/local/lib/gsf でフィルタを作成し、 chmod 755 として おきます。

   #!/bin/sh
   /usr/local/bin/gs -q -dNOPAUSE -sDEVICE=epag -r300 \
   -sPAPERSIZE=a4 -sOutputFile=- -
   exit 0


4.4.2. 共通設定(その二)

残るは lpr の設定です。3.1 章, 3.2 章で説明したとおり、printcap とスプールディレクトリを作成します。

printcap の設定

/etc/printcap に、次のリストを追加します。記述するとき、 既に ps のプリンタ名(エントリ)が無いことも確認して下さい。

   1     ps|gs|GhostScript printer:\
   2             :lp=/dev/lp1:sh:mx#0:\
   3             :if=/usr/local/lib/gsf:\
   4             :sd=/var/spool/lpr/ps:\
   5             :lf=/var/spool/lpr/ps/lpr-error:

スプールディレクトリの作成

スプールディレクトリを作成します。

   # mkdir /var/spool/lpr
   # mkdir /var/spool/lpr/ps
作成したら、3.3 章と同様に lpc を実行して下さい。


4.4.3. テスト印字

全ての設定が終ったので、テスト印字をします。さきほどと同様に /usr/local/lib/ghostscript 以下に移動して、次のコマンド を実行してみて下さい。

   # lpr -Pps article9.ps

これで、共通設定(その一)の画面と同様に、日本国 憲法がプリンタから出力されます。

うまく印字されない場合、gs -h を起動して、ドライバー がサポートされているか確認して下さい。JE-0.9.7z の GhostScript では、次のよう になります。

   Ghostscript version 2.6.2 (4/19/95)
   Copyright (C) 1990-1995 Aladdin Enterprises, Menlo Park, CA.
   Usage: gs [switches] [file1.ps file2.ps ...]
   Available devices:
       x11 dmprt
   Dynamic modules:
       bit       bj10v     bj10vh    bjc600j   bjc600jc  bmp16     bmp16m   
       bmp256    bmpmono   cdj560    dj505j    dj505jc   epag      escp     
       escpc     jj100     linux     lips      lips2     lips3     mag16    
       mag256    mjc180    mjc360    mjc720    pbm       pbmraw    pcx16    
       pcx256    pcxgray   pcxmono   pgm       pgmraw    ppm       ppmraw   
       pr150     tiffg3    x11       dfaxhigh  dfaxlow   以下省略


5. 終わりに

本ドキュメントのバグレポート/応用事例は歓迎します。うまくいかないとき は、使用した環境と設定を明確にして、fj.os.linux 等で質問すると良いでしょ う。直接質問することは御遠慮ください。

(SGML conversion: Mar 2001, Yuji Senda)