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5. ハッカー文化での地位

貨幣経済を伴わない文化にはよく見られることですが、ハッカーたちの国 では名声で地位が決まります。あなたが興味ある問題を解決しようと試みてい ても、それらがどれほど興味深いものなのか、また、あなたの解決が本当に素 晴らしいものであるかどうかということは、あなたの技術的な仲間や先輩たち だけが正当な判定を下すことができるものなのです。

ですからあなたがハッカーゲームをする時は、他のハッカーたちがあなたの 技術をどう考えるかによっての評価点を維持することをまず学びなさい。(こ れが、他のハッカーたちが一致してあなたに声をかけるまで、あなたがなぜ本 当にハッカーではないかという理由です。)ハッキングを孤独な仕事としてイ メージすることでこの真相がわかりにくくなります。また自尊心や人から認め られることはすべて人の動機づけに必要であると認めているのに、ハッカー文 化をタブーにすることによってもあいまいになってしまいます(現在ではしだ いに弱まっていますがまだ根強くあります)。

具体的に言うと、ハッカーの国というのは、人類学者がいわゆる供与の文化 だと呼んでいるということです。あなたはそこで他の人々を力で支配するので も、美しくあることによってでもなく、また他の人々が欲しいものを持ってい るというようなことによってではなく、何かを提供することによって、名声や 評判を得るのです。とりわけ、時間やあなたの創造性、そして技術の成果を提 供することで、評判を得るのです。

ハッカーたちから尊重されるためにあなたができる5つの基本的な事柄があり ます。

5.1 オープンソースソフトウェアを書きなさい

まず初めに(最も主要なことで、もっとも伝統的なことですが )他のハッカー たちが喜ぶ有益なプログラムを書くことです。そしてハッカー文化全体で使用 されるようなプログラムソースを提供することです。

(このような作品を "フリーソフトウェア"と呼んできましたが、この言葉はフ リー free " が意味していることは何なのかをきちんと理解しない人を混乱さ せてきました。現在では "オープンソース" ソフトウェアという言葉を使う人 が多くなっています。)

ハッカーの国での最も神格的な英雄は、広範囲のニーズに合った無償の、そ して規模の大きい有用なプログラムを書く人です。そうすれば誰もがそのよう なプログラムを使用します。

5.2 オープンソースソフトウェアのテストやデバッグを援助する

さらにハッカーから尊重されるような人というのはオープンソースソフトウェ アに立ち向かいデバッグにも貢献します。このような不完全な世界では、ソフ トウェア開発の大部分の時間をデバッグで費やすのです。こういうことがあり ますから、物事を考えるオープンソフトウェアの著者たちは、良いベータ版テ スター(症状を適切に指摘し、問題のある箇所を探しだし、急ごしらえのリリー ス版にはバグがあることを承知できる人であり、ある程度の診断テストをして くれる人)というのはルビーの重さに匹敵する価値があると言うわけです。こ のような作業のひとつでさえも、際限なく続く悪夢にうなされる作業になるか、 あるいはちょっとした軽い面倒事程度の仕事になるかの分かれ目になり得るの です

あなたが新米なら、興味が持てる開発途中のプログラムを見つけて、よいベー タ版テスターになりなさい。テストプログラマを援助する段階、それらのデバッ グを援助する段階、そしてそれらの改変を援助することへというように自然に 進むでしょう。あなたはこの方面でたくさんのことを学ぶでしょう。そしてあ とに続く人たちによい手本になるでしょう。

5.3 有益な情報を公開する

もうひとつ別のよいことは Web ページの興味ある情報や FAQ (Frequently Asked Questions lists) のような文書を収集し厳選することです。そしてそれ らを多くの人が利用できるようにすることです。

多くの技術的な FAQ 類の維持に当たることはオープンソースソフト ウェアの著者と同じくらいの尊敬を得ることです。

5.4 基礎の仕事の維持を援助する

ハッカー文化(さらに言うとインターネットの技術的開発)はボランティアに よってなされています。多くの必要があるので維持管理をしなくてはいけない 仕事、たとえば、メーリングリストを管理したり、ニュースグループの議長を 勤めたり、アーカイブサイトで大きなソフトウェアを維持したり、RFC 類やそ の他技術的な基準化を開発したりするようなことはあまり魅力的ではありませ ん。

このような種類の仕事をする人々は多大な尊敬を受けるでしょう。なぜな らすべての人はこのような仕事にはとほうもない時間を失い、コードで遊ぶこ とほどおもしろいことではないのを知っていますから。彼らに感謝しましょう。

5.5 ハッカー文化そのものへの貢献

最後に、あなたは文化それそのものに貢献しそれを広めることができます (たとえば、ハッカーになる方法についてちゃんとした入門書を書くというよ うなことによっても貢献できるのです)。このような仕事は、あなたがいろん な経験をし、そして最初の4項目のひとつについてよくわかるようになるまで は、やらなくてはいけないというようなものではありませんが。

まさしくハッカーの文化には指導者はいませんが英雄やその種族の歴史があ り、伝承者がいます。あなたが長い時間塹壕で過ごしてきたなら、みはりのひ とりくらいには成長するかもしれません。ハッカーたちは彼らの種族の長のう ぬぼれには疑いを持ってきたので、このような名声のようなものが目に見える ようになるのは危険なのです。注意しなさい。名声を得るような努力をするく らいなら、あなた自身の地位を手に入れなければなりません。そうすれば思い 通りになりますから、そうなったら、自分がいる地位について謙虚で好意的で ありなさい。


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