Linux Kernel 2.2 Documentation:
/usr/src/linux/Documentation/filesystems/fat_cvf.txt
filesystems/fat_cvf.txt
FAT ファイルシステムの Compressed Volume Files 拡張の情報
[プレインテキスト版]
- 原著作者: Unknown
- 翻訳者: 野本浩一 <hng@ps.ksky.ne.jp>
- バージョン: 2.2.20
- 翻訳日時: 2001/11/06
これは CVF-FAT ファイルシステム拡張の主要な資料です。 1998年11月18日
目次:
1. CVF-FAT の概念
2. 制限
3. マウントオプション
4. CVF-FAT インターフェースの概要
5. CVF モジュール
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1. CVF-FAT の概念
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CVF-FAT は FAT ファイルシステムの拡張で、FAT パーティションにおける
Compressed Volume Files の汎用的なインターフェースを提供します。一般的
な CVF ソフトウェアは、例えば、Microsoft の Doublespace/Drivespace や
Stac の Stacker です。CVF-FATインターフェースの使用は、圧縮および展開
を動的に行う低レベルディスクアクセスを扱うモジュールをロードすることで
できます。FAT ファイルシステムにある CVF-FAT 以外のファイルへのアクセ
スは、今までどおり FAT, MSDOS, VFAT あるいは UMSDOS ドライバが行います。
CVF アクセスは、FAT ドライバからロード可能な CVF フォーマット固有のモ
ジュールへ特定の低レベルルーチンをリダイレクトすることで行えます。この
モジュールは CVF に対して圧縮や展開のような特殊な処理を暗黙裡に行い、
FAT ドライバからは CVF が通常の FAT ファイルシステムであるかのように見
えないといけません。
2. 制限
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- BMAP の不具合
CVF ファイルシステムは bmap することができません。原理的にできませ
ん。したがって、bmap を要するすべてのアクションは動作しません (swap
や書き込み可能な mmap)。読み出し専用の mmap は、FAT ドライバがこの状
況を考慮して作られているので動作します :) また、書き込み可能な mmap
は、CVF-FAT 向けに FAT ドライバの中をいじったので、readpage のインター
フェース機能を用いれば、動作します :)
- DOSEmu ユーザへの注意
DOSEmu の設定によっては DOSEmu を実行する前に CVF パーティションをす
べて umount しなければならないかもしれません。ディスク全体もしくはパー
ティションアクセス (これは、時々 DOSEmu に圧縮されたパーティションを
アクセスさせる場合です) を使用する設定を DOSEmu にしたなら、ドライバ
が混乱し、圧縮されたパーティションの破壊やシステムがクラッシュする危
険があります。
lredir または emufs.sys と一緒に圧縮されたパーティションをリダイレク
トすることは常に安全であることを覚えておいてください。詳しくは
DOSEmu の資料を参照してください。
3. マウントオプション
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CVF-FAT 拡張は、現在 FAT ドライバの標準のオプションに加え、次のオプショ
ンがあります。
cvf_format=xxx
自動検知の代わりに CVF モジュール "xxx" を使用することをドライバに
強制します。このオプションがない場合、CVF-FAT インターフェースは現
在ロードされているすべての CVF モジュールに CVF を認識したかどうか
訊ねます。したがって、CVF モジュールのバグや非互換性のために CVF
フォーマットを正しく認識できない場合のみ、このオプションが必要にな
ります (detect_cvf コールを行いません)。"xxx" を文字列 "none" ("は
除く) とした場合、ロードされた CVF モジュールのいずれの使用も禁止
します。これは、CVF モジュールが誤解し 純粋な FAT ファイルシステム
をマウントしてしまうことを防ぎます。また、"xxx" は文字列
"autoload" でもよく、モジュールローダ用の特別な意味がありますが、
自動検知は行われます。
カーネルが kmod をサポートする場合、cvf_format=xxx オプションは
CVF モジュールのオンデマンドでのロードも制御します。このオプション
がない場合、オンデマンドでロードされるものはありません。
cvf_format=xxx を指定すると ("xxx" が "none" でなければ)、圧縮され
たファイルシステムをマウントする前に自動的にモジュール "xxx" が要
求されます。CVF フォーマット名とモジュール名とが異なる場合に備えて、
モジュール設定で別名を定義してください。文字の部分の "xxx" が
"autoload" の場合、二つ以上の CVF モジュールをロードするために特別
なモジュール設定 (alias および pre-install 命令) を組むことで、実
際には存在しないモジュール "cvf_autoload" を要求させて、自動的にマ
ウントする CVF の種類を検知させ、メモリに適切なモジュールのみを保
持します。例題は、dmsdos の資料に載っています (ftp および http の
アドレスを後で示します)。
cvf_options=yyy
オプションの文字列を CVF モジュールに渡します。つまり、"yyy" だけ
が渡されます ("は除く)。それは各 CVF モジュールでのみ解釈されるも
のなので、その説明は各 CVF モジュール用の資料でされているはずです。
文字列はカンマ (",") を含んではならないことに注意してください -
FAT ドライバが、カンマの後の文字列を FAT ドライバのオプションとし
て認識するという誤った解釈をし、混乱するか奇妙なエラーメッセージを
吐くかもしれません。CVF モジュール用の文書は (カンマとは) 異なった
分離記号を提示しているはずで、例えば、ドット "." やプラス記号 "+"
で、これは文字列 "yyy" の中だけで有効です。
4. CVF-FAT インターフェースの概要
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あなたが自分の CVF モジュールを書こうとした場合、多くのインターフェー
ス機能を書かなければなりません。大部分はネット上で探せるカーネル文書の
中に網羅されているので、それらについては記述しません。それらは "[...]"
と表記しています :-) include/linux/fat_cvf.h を見てください。
struct cvf_format
{ int cvf_version;
char* cvf_version_text;
unsigned long int flags;
int (*detect_cvf) (struct super_block*sb);
int (*mount_cvf) (struct super_block*sb,char*options);
int (*unmount_cvf) (struct super_block*sb);
[...]
void (*zero_out_cluster) (struct inode*, int clusternr);
}
この構造体は、CVF モジュールの能力を定義します。CVF モジュールはすべて
を記入しなければなりません。FAT/CVF-FAT ドライバにモジュールを導入する
ために使われる一形式とみなしてください。
次のものが含まれます。
- cvf_version:
バージョン識別子でユニークでなければなりません。何か選んでくださ
い。
- cvf_version_text:
人が判読可能なバージョンの文字列で、モジュールが実装する CVF フォー
マットについて記述する短い単語です。この文字列は cvf_format オプ
ションで使用されます。この名前もユニークでなければなりません。
- flags:
ビットをフラグに割り当てたもので、ビットは mmap と readpage の両
方の機能性を提供し readpage/mmap の考慮のためだけに現状使われて
います。CVF_USE_READPAGE がセットする場合、mmap は
generic_file_mmap に設定され、readpage は捕捉され cvf_readpage
関数にリダイレクトされます。セットされない場合、readpage は
generic_readpage に設定され、mmap は捕捉され cvf_mmap にリダイレ
クトされます (書き込み可能な mmap を望まない場合、readpage イン
ターフェースを使用してください)。
- detect_cvf:
ファイルシステムがモジュールにサポートされている種類の CVF かど
うか決定するために呼ばれる関数です。detect_cvf 関数はその種類の
CVF をサポートしていない (NO, I DON'T KNOW THIS GARBAGE) なら 0
を返し、サポートしている (YES, THIS IS THE KIND OF CVF I
SUPPORT) なら 1 以上を返さなければなりません。この関数は安全のた
めにモジュールの使用カウンタも管理しなければなりません。つまり、
始まりで MOD_INC_USE_COUNT を、終わりで MOD_DEC_USE_COUNT を行い
ます。関数は、認識が成功した後 mount_cvf 関数を呼び出すことを想
定する必要はありません。
- mount_cvf:
CVF がマウントされる時、いくつかの値の設定やその時に追加で行わな
ければならない初期化をする関数です。これは fat_read_suser の終わ
りで呼ばれ、成功時には 0 を返さなければなりません。必ず、この関
数は MOD_INC_USE_COUNT によりモジュールの使用カウンタを増やさな
ければなりません。さらに、この mount_cvf 関数は CVF モジュール固
有のオプション文字列 (FAT のマウントオプション "cvf_options=yyy"
中の "yyy") の解釈も行います。文字列はカンマを含むことができませ
ん (分離記号として例えばドット "." を使ってください)。
- unmount_cvf:
ファイルシステムが umount される時、呼ばれる関数です。たぶん、い
くつかのメモリを解放し MOD_DEC_USE_COUNT を呼び出します。返り値
は関係ありません (現在無視されます)。
- [...]:
他のすべてのインターフェース機能は FAT ドライバ関数に捕捉されま
す。つまり、オリジナルの FAT ドライバ関数の *代わりに* FAT ドラ
イバにより実行されます。NULL はオリジナルの FAT ドライバ関数を用
いることを意味します。本当に "何もしない" を望む場合、何もしない
関数を書いて代わりにそれを置いてください。
- zero_out_cluster:
FAT ドライバが 0 埋めした (新しい) クラスタを欲しい場合、
zero_out_cluster 関数が呼ばれます。ディレクトリ (mkdir) にとって
重要です。このポインタが NULL の場合、渡されたinode のクラスタ全
体が 0 で上書きされます。引き数の clusternr は絶対値であり、渡さ
れた inode に対する相対値でないことに注意してください。
注記:
1. cvf_bmap 関数は無視されるはずです。実際に、どこからも決して呼ばれ
ていないはずです。すぐにバグが判明するように、私はそれをパニック
か致命的なエラーメッセージにリダイレクトすることを薦めます。
2. cvf_writepage 関数は無視されます。FAT ドライバがサポートしていな
いためです。これは今後変わるかもしれません。私はそこに NULL を設
定することを薦めます (つまり、既定値を使ってください)。
int register_cvf_format(struct cvf_format*cvf_format);
上記の構造体に含まれる変数を設定したなら、FAT/CVF-FAT ドライバにあな
たの CVF フォーマットを導入するためにこの関数を呼んでください。これ
は、通常 init_module で行われます。必ず返り値を確認してください。ゼ
ロは成功を意味し、他の場合は、起きたエラーの詳細が syslog の中にカー
ネルメッセージとして出力されます。典型的なエラーは、
- 同じバージョン識別子を持つモジュールがすでに登録されている。
- CVF フォーマットが多すぎる。必要なら fs/fat/cvf.c を調整する。
です。
int unregister_cvf_format(struct cvf_format*cvf_format);
通常 cleanup_module の中で呼ばれます。返り値 0 は成功を意味します。
以前に登録されていない CVF フォーマットを unregister しようとした時
だけ、エラーが起こります。コードはモジュールの識別のためにバージョン
識別子を使用しますので、必ずユニークにしておいてください。
5. CVF モジュール
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実装例として dmsdos モジュール (dmsdos ファイルシステムの後継) を参照
してください。現在次のところにあります。
ftp://fb9nt.uni-duisburg.de/pub/linux/dmsdos/dmsdos-x.y.z.tgz
ftp://sunsite.unc.edu/pub/Linux/system/Filesystems/dosfs/dmsdos-x.y.z.tgz
ftp://ftp.uni-stuttgart.de/pub/systems/linux/local/system/dmsdos-x.y.z.tgz
(x.y.z は実際のバージョン番号とおきかわります)。dmsdos のすべての資料
は dmsdos パッケージに含まれていますが、さらに次のところにもあります。
http://fb9nt.uni-duisburg.de/mitarbeiter/gockel/software/dmsdos/index.html
http://www.yk.rim.or.jp/~takafumi/dmsdos/index.html (in Japanese).
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日本語訳:野本浩一 <hng@ps.ksky.ne.jp>
校正:早川仁さん <cz@hykw.tv>
武井伸光さん <takei@webmasters.gr.jp>
Akihiro KODAさん <coda@post.kek.jp>
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