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8. GRASS の未来は?

これは鋭い質問です。考えられる答は次の通りです。

  1. USA/CERL がアナウンスした意図は、組織内部では GRASS とその商用パッ ケージ版を使用すること、GRASS のパブリックな Web と ftp サイトを自分たち から完全に切り離すことにあった。そのために共同研究と開発についての契約を 下記の 3 つの企業と結んだ。
    1. the Environmental Sciences Research Institute (ESRI)
    2. Intergraph
    3. Logiciels et Applications Scientifiques (L.A.S.) Inc
    最初の 2 社との契約では、GRASS のコンセプトを ESRI と Intergraph の商用 GIS に組み込むことを奨励する、となっていた。3 つめの契約では、GRASS のコンセ プトとコードを活かして、L.A.S. が新しい商用 GIS を開発するというものだ。 L.A.S はまたパブリック・ドメインな GRASS についても、引続き協力関係を持つと している。それは L.A.S. が GRASS を将来性のあるシステムであり、L.A.S. の GRASSLAND に役立つ可能性のある新しいアイディアやコードの情報源として認めて いるからだ。ある観測筋によれば、最初の 2 つの契約は、Linux を Microsoft に売り渡すようなものだ、と述べている。また L.A.S. によるこの試みは、パブ リック・ドメイン版と商用版の 両 GRASS の共存についての興味深い実験だ、とも 述べている
  2. USA/CERL によって管理されていないと GRASS は衰退していってしまう、 という見方もある。 Open GIS Consortium がすべての開発者とユーザにとって利益 となるオープンなアーキテクチャとなるように業界をまとめあげていく、という見方 もある。また OGIS の活動は結果的には、ほとんど同じ内容だが(しかし共有する ところがほとんどない)、ベンダー固有の「標準化」に終り、オープンな開発プラット フォームとしての GRASS の役割は失われてしまう、という見方もある
  3. しばらくは各大学やサイトでの開発が行われ、それぞれの場所で GRASS を 維持していく。しかし、結局標準化が行われないまま「細胞分裂」状態に陥って しまう。最終的にはそれぞれの場所では有用だが、外部では利用されない GIS になってしまう、という見方もある
  4. 希望的観測として、USA/CERL が行ってきた運用モデルは、これから出てくる 新しいモデルの前身に過ぎないという見方もある。おそらく下記のような形だろう。
    1. 新しい主導組織のもとに入る。たとえば 航空宇宙局(NASA, National Aeronautics and Space Administration)のような、地球観測システムで使える ような画像処理システムを持つ、オープンでパワフルな系統立った GIS を必要と している組織がそれにあたる
    2. ディストリビューション管理モデル。Linux のような?
    3. 混合モデル? おそらく Web 方式から発展して、usenet のグループに ができあがる。まず comp.infosystems.gis.grass ができた後、
      • comp.infosystems.gis.grass.academics
      • comp.infosystems.gis.grass.publicservice
      • comp.infosystems.gis.grass.commercialvalueadde
      • comp.infosystems.gis.grass.commercialdistributors
      • comp.infosystems.gis.grass.programming
      • comp.infosystems.gis.grass.users
      • comp.infosystems.gis.grass.centralcommittee
      が開設される。
      はっきり言って、ちょっと不真面目に書いたが、ここから真面目に。 この管理モデルでは、Central Committee がすべての開発とテストを指導する。 Central Committee は、教育機関、公共機関(政府、非政府機関とも)、商用版を 提供している企業、その他 GRASS に寄与している企業、プログラマ、ユーザの 代表者から構成される。その他の特定の目的を持つグループは、その内部でユーザ 組織を持つ。例えば Academics は GIS と GRASS の教育を担い、あわせて自分たち の目的にあった GRASS の開発も主導して行なっていく。GRASS に付加価値を付ける 商用のデベロッパーは、彼らのビジネスに寄与する GRASS の開発を含む、自分たち の目的にあった開発を主導する。Users は、協力しあって GRASS の学習を行ない、 バグとり、その他の作業を行う
GRASS は注目に値する下記の可能性を秘めています。

この管理モデルにおいて、誰が Linus Torvelds 氏の役目をするのでしょうか? おそらく個人ではないと思います。10 年近く GRASS に関わってきましたが、 科学的なデータ管理と GIS 環境で、私が満足できた GIS は GRASS だけです。 本当のところ GRASS が UNIX を勉強しろ、と強制するまでは、ユーザフレンドリ とはいえない UNIX を敬遠してきました。古くからの GRASS の開発者たちの中 には今でも GRASS 関連の活動を熱心に行っている方もいて、オープンな GRASS がしぶとく生き残るところを見たいと思っています。新生 GRASS がたくさんの 愛好家を引き付けるようになれればと。このようにして、共同体としての 「Central Committee」というコンセプトが、よりオープンな運用・開発スタイル へと GRASS を導いていくのではないでしょうか。

早い話が、Linux コミュニティがその傘下に「キラーアプリケーション」を従わ せることができるチャンスなのです。パブリック・ドメインである現在の GRASS は Linux の権利形態とわずかに異なります。しかしそれは議論すればいいはずで...

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