5.6. IrDA 仕様を超えて

5.6.1. 通信距離を伸ばす

IrDA 仕様によれば、通信可能距離は 1m までです。Hewlett-Packard 社の IrDA Data Link Design Guide の p.20 には「場合によっては IrDA で保証された 1m 以上にリンク間距離を伸ばしたいことがあります。それには2つの方法があります。 一つは送信光の強度を上げること、もう一つは受信側の感度を上げることです。 リンク間距離を増加させるには、光受信感度と強度の両方を、両側の IR リンクで挙げなければいけません。標準の、最小の光強度しか持たない IrDA デバイスと通信したいなら、光受信感度を上げなければいけません。また標準 IrDA デバイスは最小の光受信感度しか持っていないないかもしれませんので、光送信強度も同時に上げなければなりません」

Andreas Butz さんによると「ばかげた質問かもしれませんが、誰か IrDA スタックが本当にすべて双方向通信に依存しているのか、それとも一部は単方向通信に無理矢理できるのかについて知りませんか? 特に、通信データにエラーが多い場合にどうなのか。現在私のところで、IR ドングルを幾つか改造して、数メートル (ほぼ一部屋) に配置された Palm Pilot に対してブロードキャスト通信をしようとしています。 Pilot の方は変更したくないし、受信側の感度を上げるほうはできそうにないので、 できるのは単方向通信に限られるんです」 この議論の続きはメーリングリストアーカイブを当たってください。

Marc Bury さんからのメールには「Philips 社のリモートコントロール向けの新技術の話を聞いたところです。 Philips 社では IRDA - Control と読んでいます。 これは双方向通信で、75kbps データレート、複数同時デバイス (最大 8) が可能で、少なくとも 6 m の距離! をサポートしているということです」 この件の情報は、IrDA.org を参照下さい。

ドイツの雑誌 ELEKTOR では、長距離 IrDA ドングル (20m、RS232、IrDA 1.0) を作るための手引き記事を載せています。ELEKTOR 97/5 月号 です。 ELEKTOR を参照下さい。

"大きな問題は、受信機の感度を上げる必要があるということです。 物理の基本は、光の強度は距離の二乗に反比例すると教えていますので、1m のものを 5m にのばそうと思うなら 25 倍の強度 (およびそれに伴う携帯デバイスでの電池の消費)、または 25 倍の感度 (およびダイナミックレンジ - 以前同様 3 inch の場合にも動作しなければなりませんから) が必要になります。 また、対向側としてみれば、単に 25 倍の感度を実現すればいいというだけではありません。 受信側では、蛍光灯やスクリーンセーバ、移動する人の影などからなる干し草の山から一本の針のような IrDA 光を見つけなければならないからです。"

これを Palm III アップグレードボードで試した人がいます。 Palm III upgrade board をご覧下さい。

また、レーザダイオード (パルス発信の) を使うことも K-H.Eischer さんが薦めています。 ただし、これは高価ですし、1mW を超える高出力を持つものは危険でもあります。 よりよい方法はレンズを使ってビームを絞り込む方法です。また、空気には 光の吸収が最小になる波長がありますので (正確な周波数は未確認ですが) IR ダイオードをその周波数で使うべきです。

James さんが書いてきています「長距離 IrDA が欲しい方のため、私たちは次のものを試しました。ベストのやり方は以下です」

どれを選んだにしても、プロトコルとして IrDA を使うのは多分よい選択です。 それは、これが単方向通信をそこそこうまく扱える少ないプロトコルの一つだからです。

5.6.2. 将来の標準 (Bluetooth と IrDA)

「ますます多くの人が、IrDA と Bluetooth は幸福に共存するだろうと考えるようになっており、Bluetooth で IrDA を置き換えようという考え方は力を失っています。 IrDA は依然として価格性能比ではるかに勝っており、標準に新たに追加された AIR や VFIR 機能を見ると、IrDA が正しい方向に進んでいっているのが分かって嬉しく思います」