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8. インストールの詳細

8.1 準備作業

Linux は MS-DOS, Windows, NT よりも PC ハードウェアを効率的に活用しま す。したがって、些細なハードウェアの設定ミスでも見逃してはもらえません。 以下には、インストールを始める前にできることを 2, 3 個紹介しておきます。 この類の問題で引っ掛かってしまった時には、お役に立つことでしょう。

まず第一に、お使いのハードウェアに関する取り扱い説明書を一切合切集めま しょう。マザーボード、ビデオカード、モニター、モデムなど全部です。取 り扱い説明書が集まったら、手近に置いておきましょう。

次に、ハードウェアの設定がどうなっているかについての詳しい情報を収集し ましょう。MS-DOS 5.0 以上 をお使いなら、 Microsoft 診断ユーティリティ msd.exe を実行するのが早道です(TSR, ドライバ、メモリマップ、環境設定、 OS の版数 の項目は気にしないでもかまいません)。ほかのことはともかく、 ビデオカードとマウスの型式については完璧な情報が確実に手に入ります。こ の情報は、後から X を設定する際に役立ちます。

次に、Linux で使用できることになっているハードウェアをどのように設定し ているかを調べてください。これがおかしいために、 Linux のインストールが どうにもならない状態で停止してしまうこともあるからです。

可能ならば、緊急時には電話で相談できるような Linux 熟達の士から電話番 号をもらっておきましょう。十中八九、こうした手段に頼る必要はないはずで すが、持っておくと心丈夫というものです。 インストールに必要な時間ですが、簡素なシステムや全体を Linux で使用す るシステムの場合で約一時間、複数の OS からブートアップするシステムの場 合で約三時間(試行錯誤を繰り返すことがずっと多くなるからです)位でしょう。

8.2 ブート用フロッピー・ルート用フロッピーの作成

(この段階の作業が必要となるのは、CD-ROM からブートできない場合だけです) Linux の CD-ROM には、ブート用ディスク・ルート用ディスク・緊急用ディス クを対話式に作成できる「インストール援助機能」が付属しているはずです。 MS-DOS で走るインストールプログラムの場合もありますし(Red Hat の redhat.exe など)、Unix のスクリプトのこともあります。両方を提供し ているところもあるようです。

このようなプログラムを入手・使用できる場合には、この節の残りに書いてあ ることは参考知識として目を通してくだされば結構です。プログラムを実行す れば、インストール作業が行えます。こうしたプログラムを書いた人たちの方 が、個別のディストリビューションについては私よりずっと詳しいに決まって います。こうしたプログラムを使えば、手で入力する場合に起こりがちな間違 いも回避できるでしょう。 ブート用ディスク類の詳しい作成法については、Linux Bootdisk HOWTO http://www.linuxdoc.org/HOWTO/Bootdisk-HOWTO.html をお読みください(日本語訳は http://www.linux.or.jp/JF/JFdocs/Bootdisk-HOWTO.html)。

最初の作業は、お使いのハードウェアに適したブートイメージを選択すること です。この作業は手で済ませないといけないかもしれませんが、CD-ROM に載っ ているブート用ディスクのイメージには適切なものが選べるように (a) 名前 がついているのが普通です。(b) 各イメージを詳しく解説した索引ファイルが ついている場合もあります。

ブートイメージの選択が終わったら、そのイメージを使って各種フロッピーを 作りましょう。必須ではありませんが、緊急用ディスクのイメージもフロッピー にしておきましょう。この作業には MS-DOS 用プログラムである RAWRITE.EXE を使用します。(各種フロッピーには同じタイプのものを使用してください。 3.5 インチのフロッピードライブの場合なら、2HD のディスケットで統一して ください)ブート用ディスクのイメージをフロッピーに書き込む際には、 RAWRITE.EXE を使用します。引数をつけないで、次のように起動してみてくだ さい。

C:\> RAWRITE

書き込むファイルと書き込みの対象となるフロッピードライブの名称(例: A:)を尋ねるプロンプトがでますので、それに答えてください。 RAWRITEはブ ロック単位でファイルを直接フロッピーに複写していきます。ルート用ディスク イメージの場合(例: COLOR144)にも RAWRITE を使用します。この作業が終わっ たら、フロッピーが二枚できているはずです。一枚はブート用ディスク、もう一 枚はルート用ディスクです。どちらのフロッピーも MS-DOS では読めない状態に なっていることにご注意ください(つまり、ある意味では Linux 形式のフロッピー になっているのです)。

dd(1) という命令を用いれば、UNIX システム上でも同じ作業ができます(もちろ ん、フロッピードライブのある UNIX ワークステーションが必要です)。Sunのワー クステーションの場合なら、フロッピードライブのデバイス名は /dev/rfd0 になっています。ですから、以下のようにすればいいわけ です。

$ dd if=bare of=/dev/rfd0 obs=18k

ワークステーションによっては、出力ブロックの大きさを適切に指定する必要が あります(例:Sun)。そうしないと失敗してしまいます。うまく行かないときには、 man dd(1) が役に立つでしょう。新品で無傷のフロッピーを使っているかどうか を確認してください。不良ブロックのあるフロッピーは使用できません。

Linux をインストールするために MS-DOS を走らせる必要などないことを覚えて おいてください。しかし Linux か MS-DOS かのいずれかが利用できれば、 CD-ROM からブート用・ルート用フロッピーを作る作業がグンと簡単になります。 お使いの機械に OS がまったく載っていない場合でも、Linux か MS-DOS を使ってい るだれかの機械でフロッピーを作り、それを用いてインストールするという手は あります。

8.3 DOS/Windows 用ドライブのパーティションを分け直す

中古システムの場合には、ハードディスク上に MS-DOS, OS/2 その他用のパーティ ションがあるのが普通です。ですから Linux 用の場所を確保するためには、パー ティションの大きさを変更する必要があるでしょう。複数の OS でブートできる ようにする時には、以下の諸 mini-HOWTO に目を通しておくようお勧めします。 いずれも、複数の OS からブートする際の設定を扱ったものです。

お使いのシステムそのものズバリではない場合でも、上記諸文書が記載してい ることを理解しておくのは有益です。

注意: MS-DOS パーティションのディレクトリにインストールする Linux もあります(MS-DOS パーティション「から」インストールするのとは別の話です) 。この場合にはUMSDOS というファイルシステムを使用することになります。こ のファイルシステムを使うと、 MS-DOS パーティションのディレクトリーのひとつを Linux ファイルシステムとして使用することになります。この方法を使えば、 ハードディスクのパーティション変更は必要なくなります。

この方法がお勧めできるのは、ディスク上にすでにパーティションが 4 つ(DOS で利用できるパーティション数の上限)ありかつ、パーティションの再分割が百 害あって一利なしの状況にある場合だけです(この方法では、Linux のファイル 名変換の効率が低下してしまうのです)。このほか、パーティションを分け直す 前にとりあえず Linux を試してみたいというときにも、この方法は有益でしょ う。しかしながらすでに述べたように、たいていはパーティション分けをやり直 さざるをえなくなるものです。それでもUMSDOS をどうしても使いたいというの なら、御自分の....でどうぞ。詳しいことは書きません。以下の記述は、 「UMSDOS を使っていない」・「パーティション変更をするつもり」を前提とし たものです。

そもそもパーティション とは、特定のオペレーションシステム用に取り分 けたハードディスクの一部分のことに他なりません。インストールしているのが MS-DOS だけならば、ハードディスクは MS-DOS 用の一パーティションだけでいっ ぱいでしょう。しかし、Linux を使うのなら、ハードディスクのパーティション 分けをやりなおす必要があります。つまり、MS-DOS 用に一パーティション、そ して Linux 用に最低一パーティションを作ることになるのです。

「パーティション」には三種類あります。プライマリー(基本)パーティションエクステンド(拡張)パーティション論理パーティション の 3 つです。簡単にいえば、基本パーティションとは、ハードディスク上 に作れる 4 つの主要パーティションのひとつです。もし一台のディス クにパーティションを五つ以上作りたいときには、一番後ろの基本区画を拡張パー ティションに変更しなければいけません。拡張パーティションには、複数の論理 パーティションを作ることができます。拡張パーティションそのものには、デー タを直接格納することはできません。拡張パーティションは論理パーティション の置場所としてしか使えないのです。データを格納できるのは、基本パーティショ ンと論理パーティションだけです。

実のところ、たいていの人は基本パーティションしか使っていません。しかし、 1 つのドライブに 5 つ以上のパーティションが必要になったときには、拡張パーティ ションを作るしか手はありません。そして拡張パーティションの一番上に論理パー ティションを作ることになるのです。こうすれば 1 つのドライブに 5 つ以上のパーティ ションを設定できます。Linux は二台目のドライブ(MS-DOS 風の言い方をすると D:)にも簡単にインストールできることをお忘れなく。Linux 用パーティショ ンを作るときには、適切なデバイス名を指定することになります。この点につい ては、以下で詳しく説明します。

ディスクのパーティション分けという問題に戻りましょう: やっかいなのは、対 象となるパーティションにあるデータを消去しない限り(簡単には)パーティショ ンの大きさを変更できないということです。つまりは、すなわちパーティション 分けをやり直す前に完全なバックアップをとる必要があるわけです。パーティショ ンの大きさを変更する時には、関連するパーティションをあっさりと消去し、小 さめの大きさで作り直すことになるのです。

注意: MS-DOS 用にはデータを破壊することなくパーティションを分け直す ためのツールである FIPS があります。 http://metalab.unc.edu/pub/Linux/system/install を探してみてくだ さい。FIPS とディスク最適化プログラム(Norton Speed Disk の類)、そしてい ささかの幸運があれば、 パーティション上のデータを破損する事なくMS-DOSパー ティションの大きさを変更できます。とはいうものの、この方法を試みる前にも きちんと完全なバックアップをとっておくよう、お勧めします。

FIPS に頼らなくても、FDISK という昔ながらの道具を使ってパーティションを変更する 方法があります。たとえば、 80 MB のディスクを全部 MS-DOS 用に使ってい るという場合を考えてみましょう。これを半々に分け、40 MB 分を MS-DOS 用に、残りの 40 MB を Linux 用にするとします。そのためには、FDISK を MS-DOS で実行し、 80 MB の MS-DOS 用パーティションを削除し、それから 40 MB の MS-DOS 用パーティションを作り直します。こうしてから、新しいパーティションをフォーマットし なおし、バックアップしてあった MS-DOS 用ソフトをのせ直すのです。残りの 40MB はまだ空白のままです。Linux 用パーティションは、あとからこの部分に作ること になります。 簡単にまとめれば、 FDISK を使って MS-DOS パーティションの大きさを変更するには以 下の作業が必要です。

  1. システムの完全なバックアップを作る
  2. 以下の手順で、 MS-DOS の起動ディスクを作る
    FORMAT /S A:
  3. FDISK.EXEFORMAT.COM をこのフロッピー に複写する。必要な別のユーティリティも複写しておく(バックアップを書き 戻すためのユーティリティなど)
  4. MS-DOS のシステムフロッピーで起動する
  5. FDISK を実行する。可能なら変更対象となるドライブを指定する (例: C: あるいは D:).
  6. FDISK のメニューで「パーティションの削除」を選び、大きさを変えたいパーティションを 消去する。この作業を行うと該当パーティション上のデータはすべて破壊されます。
  7. FDISK のメニューで「パーティションの作成」を選び、小さめのパーティションを作成し直 す。
  8. FDISK を終了し、新しく作成したパーティションをFORMAT でフォーマット する。
  9. バックアップを使って、もとのファイルを載せなおす

MS-DOS の FDISK には、「DOS 論理ドライブ」を作る機能があります。「DOS論 理ドライブ」とは、ハードディスク上の論理パーティションにほかなりません。 Linuxを論理パーティション上にインストールすることは可能ですが、MS-DOS の FDISK で論理パーティションを作ろうとは思わないでしょう。その通り。DOS 論 理ドライブを使っている状態でそこに Linux をインストールしようとする場合 には、まず MS-DOSの FDISK で論理ドライブを削除し、(そののちに) Linux 用 の論理パーティションを作成することになります。OS/2 その他のオペレーショ ンシステム用のパーティションを分け直すときにも、これと同じような手順を踏 みます。詳しくは各 OS の文書をお読みください。

8.4 Linux 用パーティションの作成

ハードディスクのパーティションを分け直したら、次は Linux 用のパーティショ ンを作成します。その方法を述べる前に、Linux のパーティションやファイルシ ステムについて説明しましょう。

パーティションについての基礎知識

Linux に最低限必要なのは、ルートファイルシステム用のパーティション だけです。Linux カーネル本体を置くのはこのパーティションの上になります。 ファイルシステム とは Linux 用にフォーマットしたパーティションのこ とだと考えても差し支えはありません。ファイルシステムにはファイルを格納す る機能があります。どのシステムでも、ルートファイルシステムだけは必須です。 しかし、ファイルシステムをいくつも用意するのを好む人の方が多いようです。 ディレクトリツリーの主要部分ごとにファイルシステムを作る、というわけです。 たとえば、/usr 以下の全ファイルを格納するファイルシステムを別に 作成するということもできます(UNIX の世界では、ディレクトリ区切り文字にス ラッシュを用います。MS-DOS 流のバックスラッシュは使用しません)。この場合 には、ルート用ファイルシステムと /usrファイルシステムのふたつが できることになります。

各ファイルシステムには、それぞれ自前のパーティションが必要です。つまり、 ルートファイルシステムと /usr システムを使うのなら、Linux 用パー ティションを二つ作る必要があります。この二つのパーティションに加え、た いていの人は スワップ 用パーティションを作成しています。これは仮想 RAM として使用するパーティションです。 4 MB のメモリを搭載している機械に スワップ用パーティションを 10 MB 分用意すれば、こと Linux に関する限り総 計 14 MB の仮想メモリが使えるのです。

スワップ空間を使用している場合、 Linux は使っていないメモリページをディ スクに追い出してしまいます。 こうすることによって、一度によりたくさんの アプリケーションを走らせることができるようになるのです。もちろん、スワッ プには時間がかかるのが普通です。ですから、スワップが本物の RAM の代わり になるわけではありません。とは言うものの、X Window System のように大量の メモリを必要とするアプリケーションを使う場合には、本物の RAMがふんだんに ない限り、スワップ空間のお世話になることもしばしばです。

Linux を使っている人は、ほぼ全員がスワップパーティションを採用しています。 4 MB以下しか RAM がない場合には、ソフトウェアを組み込むためにもスワップ 区画が必要になります。莫大な量の RAM を搭載しているのでもなければ、必ず スワップパーティションを設定するよう強くお勧めします。スワップパーティショ ンの大きさは、必要となる仮想 RAM の量次第です。本物の RAM とスワップを合 せて 16 MB は最低確保したいというのが通説になっています。もし本物の RAM が 8 MB なら、スワップパーティションを 8 MB 分用意しようということです。 スワップパーティションは 128 MB 以上の大きさにはできないので注意が必要で す。万一、128 MB 以上のスワップが必要な際には、スワップパーティションを ふたつ以上作るしかありません。スワップ区画は最大 16 まで設定できます。

スワップ空間の設計やパーティション分けに関する詳しい理論的説明については、 Linux Partition mini-HOWTO ( http://www.linuxdoc.org/HOWTO/mini/Partition.html, 和訳 http://www.linux.or.jp/JF/JFdocs/Partition.html) をお 読みください。注: いささか裏技になりますが、複数 OS ブートシステムの場合に Linux とWindows 95 でスワップパーティションを共有することは可能です。詳 しくは、Linux Swap Space Mini-HOWTO, http://metalab.unc.edu/LDP/HOWTO/unmaintained/Swap-Space (和訳: http://www.linux.or.jp/JF/JFdocs/Swap-Space.html)をご覧ください。

ご存じですか 1: EIDE ドライブの 504 MB を越える場所にパーティションを設 定しても、BIOS の関係でそのパーティションにインストールした Linux がブー トできないかもしれません。ルートパーティションは 504 MB 以下のところに作 るようにしてください。SCSIコントローラの場合には、このような問題はありませ ん。SCSI コントローラには自前の BIOS ファームウェアが載っているのが普通 だからです。技術的な詳細については、Large Disk Mini-HOWTO, http://www.linuxdoc.org/HOWTO/mini/Large-Disk.html をご覧ください(日本語訳は、 http://www.linux.or.jp/JF/JFdocs/Large-Disk.html)。 御存じですか 2: IDE ディスクと SCSI ディスクの両方をお使いの場合には、 SCSI ドライブから直接ブートできないように BIOS を設定していないかどうか を調べてください。

パーティションの大きさ

ルート用パーティションとスワップパーティションとは別に、ソフトウェアやホー ムディレクトリを格納するパーティションをいくつか作るのもよいでしょう。理 屈からいえば、巨大なルートパーティションを作ってなにもかもそこで済ませて しまうことも可能です。しかし、そんなことをやっている人はいません。複数の パーティションを作るのには、次のような利点があるからです。

近頃の大型ハードディスクをお使いの方は、ルート用の小さなパーティション (80 MB 以下)、中ぐらいの大きさの /usr 用パーティション(システムソフトウ エア用。300 MB 以下ぐらい)を作り、残り全部をホームディレクトリ用の /home にするというのが基本的設定となるでしょう。もっと凝ったこともできます。 Usenet ニュースなどを使うおつもりの場合には、それが一番ディスクを食うは ずなので、専用パーティションを作るという手もあるでしょう。メール、ニュー ス、一時ファイルなどなどのために /var というパーティションを作るという方 法もあります。とはいうものの巨大ディスクが安価に入手できる昨今では、 Linux を最初にインストールするときにこんな手の込んだことをする意味がなく なっています。初心者にとっては、単純なパーティション構成がなによりです。

8.5 インストールディスクからブートする。

まず最初のステップは、作成したブートディスクを使ってブートすることです。 通常はなにもオプションなどを指定せずにブートできるはずです。 カーネルのブートプロンプトが表示されてから10秒間待つと自動的に ブートを開始します。IDE ディスクからブートする場合には、これが 通常の動作でしょう。

ここで実際にはなにが起こっているかというと… この時点ではまだハードディスクは使えないので、ブートディスクの中の 小さなオペレーティングシステムが RAM を仮想的なディスク(RAM ディスクと 呼ばれます。)として使いながら起動しているのです。

ブートディスクは、小さな一揃いのファイルとインストールに必要な ツール類を RAM ディスクにロードします。ここでロードされるツール類 を使って、ハードディスクのインストール準備をしたり、CD-ROM から 実際の Linux をインストールしたりするわけです。

(昔は、2段階の過程が必要でした。「ルートディスク」という 2番目のフロッピーディスクが必要だったのです。カーネルモジュール が実装されたことによってこの必要がなくなりました。)

カーネルの名前の後に引数を与えることによって、Linux カーネルが ブートする前にいろいろなハードウェアパラメータを指定することができます。 たとえば、SCSI コントローラの割り込み番号やアドレスの設定、 ハードディスクのジオメトリ情報などです。 SCSI コントローラを正しく認識できなかった場合などには これらの情報を指定する必要があるかもしれません。

特に、BIOS の搭載されていない多くの SCSI コントローラを使うとき には、ブート時にポートアドレスと IRQ 番号を指定する必要があります。 同様に、IBM PS/1 や ThinkPad や ValuePoint などのマシンでは ハードディスクのジオメトリ情報が CMOS に格納されていないため、 これらの値をブート時に指定する必要があります。(インストールを 完了した後に、これらの値を自動的に認識するよう設定できます。)

システムがブートしている時に表示されるメッセージをよく見ていてください。 これらのメッセージは、カーネルが認識したハードウェアに関する情報を 表示しているのです。特に SCSI コントローラを使っている場合には、 検出された SCSI ホストの一覧が表示されるはずです。

SCSI: 0 hosts

このように表示された場合には、SCSI コントローラは検出されなかった ことを意味します。SCSI コントローラの存在をカーネルに教えてあげる 必要があります。 また、ドライブのパーティション情報や、検出されたデバイスに関する 情報も表示されます。もしこれらの情報が誤っていたり表示されない 場合には強制的にハードウェアを検出させなければなりません。

すべてのハードウェアがきちんと認識されているようでしたら、 次の「ルートディスクをロードする」の章は読まなくてもよいでしょう。

強制的にハードウェア検出をおこなうためには、ブートプロンプト で適切なパラメータを指定する必要があります。次のような形式です:

linux <パラメータ...>

非常にたくさんのパラメータが存在しますがその中から 主なものを例として示します。最近の Linux のブートディスク では、ブート前に指定可能なカーネルパラメータに関するヘルプ機能 が備わっているものも多くあります。

これらのブート時オプションに関してわからないことがあったら Linux SCSI HOWTO を読んでみてください。このドキュメントは たいていの Linux アーカイブサイトにあるはずです。(今お読みの 文書をダウンロードしたサイトにもあるはずです。) SCSI HOWTO には SCSI のコンパチビリティに関してもっと詳細な 情報が記述されています。

EGA か X でのインストールを選ぶ

古い Linux (Slackware のような)では、ここでシェルが起動されて、 決まった順番でインストールのためのコマンドを手動で入力する 必要があります。今でもこの(古い)方法でインストールすることは 可能ですが、より新しい方法があります。 新しい方法では、スクリーン指向のインストールプログラムが起動され、 対話的にいろいろな設定をすることができます。ヘルプも充実しています。

おそらくこの時点で、X Window System ベースのグラフィカルなインストール プログラムを起動するかどうかを尋ねてくると思います。 これを選んだ場合には、マウスとモニターの設定に関する質問が 表示されるはずです。Linux をインストールした後にもここで 設定した内容は保存されて有効になりますが、あとから変更も可能 ですのでここでは標準的な 640x480 の VGA モードを選択して おきましょう。

インストールするために X Window System は必ずしも必要ではありませんが、 (マウスとモニターの設定をあらかじめ知っておく必要はあるとはいえ) グラフィカルなインターフェースはとても便利です。 また、最終的には X Window System を使うつもりなら、この時点で 試しておくのも有意義なことだと思います。

さて、インストールプログラムにしたがってインストールを進めてください。 ディスクの設定、最初のユーザ設定、CD-ROM からのソフトウェアパッケージ のインストールというように進むはずです。

以下の章ではインストールでわかりにくい点に関して解説します。 たとえば手動でいろいろなパラメータを設定しなければならない場合 などです。おそらく、インストールプログラムがどういう仕組みで 動作していて、なぜそうなっているかなどの理解の助けにもなると 思います。

fdisk または cfdisk を使う

ルートディスクから Linux をブートしたらまず最初におこなうステップは ディスク上のパーティションテーブルを作成するか編集することです。 以前に FDISK でパーティションテーブルを作成ずみの場合でも、 Linux 用の情報を入力する必要があるでしょう。 Linux パーティションを作成・編集するには、Linux 版の fdisk プログラムか、スクリーン指向になった cfdisk を使います。

通常インストールプログラムは、すでに存在しているパーティション テーブルを探して、そのディスクに対して fdisk または cfdisk を 起動します。これら2つのプログラムのうち、cfdisk の方が はるかに使いやすいのですが、現在のバージョンは、パーティションテーブル が存在していなかったり壊れていたりした場合にはうまくいかないことが あるかもしれません。

このため、(特にまっさらなハードウェアにインストールする場合など) まず fdisk を使ってイニシャライズをおこなった後に、 cfdisk を使うなどの手順が必要かもしれません。 まずは cfdisk を起動して、文句を言われたら fdisk を 起動しましょう。 もしあなたがディスク全部を Linux 用に使うつもりで cfdisk が文句を言ってきた場合には、 まず fdisk を使って現在存在するパーティションをすべて削除し、 cfdisk を起動してパーティションテーブルを 編集するのがいい方法ではないかと思います。

fdiskcfdisk に共通した注意です。どちらの プログラムもこれから Linux パーティションを作成するための ドライブを指定する必要があります。ハードディスクの名前は:

のようになっています。

たとえば、最初の(一台目の) SCSI ドライブに Linux パーティションを 作成するためには(もしかするとインストールプログラムがメニューで 選択できるようにしてくれるかもしれませんが)、次のコマンドを 使います:

cfdisk /dev/sda

fdisk または cfdisk を引数なしで起動した場合には /dev/hda を指定したものとみなされます。

2台目のハードディスクに Linux パーティションを作成したい場合には /dev/hdb (IDE ドライブの場合) または /dev/sdb (SCSI ドライブの場合)を 指定してください。

すべての Linux パーティションが同じドライブ上にある必要はありません。 たとえば、/dev/hda にルートファイルシステムをおいて /dev/hdb にスワップパーティションをおくということも もちろんできます。この場合には、それぞれのドライブに対して fdisk または cfdisk を起動してください。

Linux では、それぞれのパーティションに対してドライブの名前に 応じた名前が付けられます。たとえば、/dev/hda 上の 最初のパーティションは /dev/hda1 であり、 二番目のパーティションは /dev/hda2 ... 以下同様... といった具合です。 論理パーティションを使った場合には、/dev/hda5 から 始まり、以下 /dev/hda6 ... となります。

注意: Linux の fdiskcfdisk で、 Linux 以外の OS の パーティションを作成したり削除したり してはいけません。つまり、MS-DOS のパーティションを作成したり 削除するには、MS-DOS の FDISK を使うべきです。 Linux の fdisk を使って MS-DOS パーティションを作成した 場合、MS-DOS がそのパーティションをうまく認識してくれない 可能性があります。

以下に fdisk の使用例を示します。この例では、61693 ブロックの MS-DOS パーティションをひとつ作成し、残りを全部 Linux に割り当てます。 (Linux ではひとつのブロックは 1024 バイトですので、61693 ブロックは ほぼ 61M バイトです。) この例ではスワップとルートの2つのパーティションを作成します。 これを応用して、前に述べたようなおすすめのパーティションである: スワップ、ルートファイルシステム、システムソフトウェア、 ホームディレクトリ領域、という4つのパーティションを作成することが できると思います。

まず最初に、``p''「現在のパーティションテーブルを表示する」 を実行します。以下の通り、/dev/hdaの最初のパーティションである /dev/hda1が 61693 ブロックの DOS パーティションとして 表示されます。

Command (m for help):   p
Disk /dev/hda: 16 heads, 38 sectors, 683 cylinders 
Units = cylinders of 608 * 512 bytes

     Device Boot  Begin   Start     End  Blocks   Id  System
  /dev/hda1   *       1       1     203   61693    6  DOS 16-bit >=32M

Command (m for help):

次に、``n''「新しいパーティションを作成する」を 実行します。ここでは Linux の 80M バイトのルートパーティションを 作成します。

Command (m for help):  n 
Command action 
    e   extended 
    p   primary partition (1-4)
p

ここでは、拡張パーティションを作成するか、基本パーティションを 作成するかを尋ねられています。このドライブに4つ以上のパーティション を作成する必要がなければ、ここは基本パーティションでしょう。 これに関してもっと詳細な情報は、前の「パーティションの切り直し」の 章を読んでください。

Partition number (1-4): 2
First cylinder (204-683):  204
Last cylinder or +size or +sizeM or +sizeK (204-683): +80M

ここで指定するシリンダ番号は、最初のパーティションの最後のシリンダ以降 のシリンダ番号でなければいけません。 この例の場合には、/dev/hda1の最後のシリンダ番号は 203 ですから 新しいパーティションのシリンダ開始番号は 204 にします。

見てわかるとおり ``+80M'' という記法を使った時には、 80M バイトのパーティションを指定したことになります。 同様に ``+80K'' の場合には、80K バイトのパーティションであり、 ``+80'' の場合には 80 バイトのパーティションとなります。

Warning: Linux cannot currently use 33090 sectors of this partition
このような警告メッセージは無視してかまいません。これは昔 Linux の ファイルシステムが 64M バイトまでしか割りつけることができなかった ころの名残です。現在の新しいファイルシステムではそのような制限は ありません。4T バイトまでのパーティションを扱うことができます。

次に、10M バイトのスワップパーティションを/dev/hda3に 作成します。

Command (m for help): n
Command action 
    e   extended 
    p   primary partition (1-4) 
p

Partition number (1-4): 3
First cylinder (474-683):  474
Last cylinder or +size or +sizeM or +sizeK (474-683):  +10M

さてふたたびパーティションテーブルの内容を表示させてみます。 この情報は書きとめておきましょう。特に、それぞれの パーティションのブロック数は重要です。後ほどこの情報が 必要になりますので。

Command (m for help): p
Disk /dev/hda: 16 heads, 38 sectors, 683 cylinders 
Units = cylinders of 608 * 512 bytes

     Device Boot  Begin   Start     End  Blocks   Id  System
  /dev/hda1   *       1       1     203   61693    6  DOS 16-bit >=32M
  /dev/hda2         204     204     473   82080   83  Linux native
  /dev/hda3         474     474     507   10336   83  Linux native

スワップパーティション(ここでは/dev/hda3)が ``Linux native'' タイプであることに注意してください。インストールプログラムにこの パーティションをスワップパーティションであることを認識させるためには これを、``Linux swap'' に変更する必要があります。このためには、 fdisk の、``t'' コマンドを使います。

Command (m for help): t
Partition number (1-4): 3
Hex code (type L to list codes): 82

``L'' コマンドを使ってタイプコードの一覧を表示させることが できます。たとえば、タイプ 82 は Linux swap であることがわかります。 変更をセーブして fdisk を終了するためには、``w'' コマンドを 使います。変更をセーブせずに(変更せずに)終了するためには、``q'' コマンドを使います。

fdisk を終了した後に変更を有効にするためにはシステムをリブート するように促されますが、普通はリブートする必要はありません。 最近の fdiskcfdisk はリブートしなくてもすむように うまくできています。

パーティションを切った後には

パーティションテーブルを編集した後にはインストールプログラムが テーブルを認識して、スワップパーティションを有効にするかどうか 尋ねてくるはずです。ここでは Yes と答えましょう。

(スワップパーティションがなぜ自動的に有効にならないのかというと、 たとえばデュアルブートマシンなどの場合、Linux 以外のパーティションを 間違ってスワップパーティションと認識してしまう可能性がないとは言えない からです。)

次にスワップパーティション以外のパーティションそれぞれをどの Linux ファイルシステム(たとえば /, /usr, /var, /tmp, /home, /home2 などなど) に割り当てるかを尋ねてきます。

ここではひとつだけ確実にやっておかなければならないことがあります。 ルートファイルシステム(/)を割り当てて、ここをブート可能(bootable)に しておかなければなりません。他のパーティションに関しては お好きな名前にしてかまいませんが、通常の名前付けスタイルにしたがっておけば あとでいろいろと楽です。

前の方で3つの基本的なパーティションを作成するようにおすすめしました。 つまり、小さなルート、中くらいの大きさのシステムソフトウェア用、 大きなホームディレクトリパーティションです。 伝統的にこれらはそれぞれ、/, /usr, /home と呼ばれています。 今となってはこの `/usr' という名前は直感的ではない名前になって しまっています。 これは昔の(もっとずーっと小さな) Unix システムでは、ルート以外の 単一のパーティションにシステムソフトウェアとユーザのホームディレクトリ を一緒に置いておいたころの名残です。歴史的な理由とはいえ、 この名前付けに依存しているソフトウェアもまだ存在しますのでしたがって おきましょう。

2 つ以上のホームディレクトリ領域が必要な場合には、慣例的に /home, /home2, /home3 などなどと名前をつけるのが普通です。 ふたつ以上の物理的なディスクを使う必要がある場合にはこんな風に する必要があるかもしれませんね。 私の個人マシンではこんな風なレイアウトになっています:

Filesystem         1024-blocks  Used Available Capacity Mounted on
/dev/sda1              30719   22337     6796     77%   /
/dev/sda3             595663  327608   237284     58%   /usr
/dev/sda4            1371370    1174  1299336      0%   /home
/dev/sdb1            1000949  643108   306130     68%   /home2

二番目のディスク(sdb)は実際にはすべてが /home2 に割り当てられている わけではありません。sda と sdb にはそれぞれスワップパーティションが 存在するのですが、ここにはそれは表示されていません。 sda 上の /home には大きな空き領域があって、sdb 上の /home2 は、ユーザの領域であることがわかりますね。

作業用やスプールや一時的な用途やメールやニュースのための領域を 作成したい場合には、/var という名前にしましょう。または、/usr/var を作成して、/var からそこにシンボリックリンクを張るという手もあります。 (インストールプログラムが自動的にやってくれるかもしれませんが)

8.6 ソフトウェアパッケージをインストールする

さて、パーティションの準備ができればあとはほぼ自動的に実行できる はずです。EGA ベースでも X ベースでもインストールプログラムは どの CD-ROM からインストールするか、どのパーティションを使うかなど をメニューで導いてくれるはずです。

この文書ではここの部分に関しては詳細に述べません。 Linux のそれぞれの配布系(ディストリビューション)によって微妙に 違いがある(伝統的に、それぞれのベンダーはこのあたりで 差別化をおこなってきました。)ためですが、まあ結構わかりやすい 部分ですから。また、インストールプログラムは画面上にわかりやすい 情報を表示してくれるので大丈夫でしょう。

8.7 パッケージをインストールした後

インストールがうまく完了したら、初めてハードディスクからブートする 前にシステム関連のいくつかの設定をおこないます。

LILO (LInux LOader の略です)は、ハードディスクから(MS-DOS などの 他の OS と同様に) Linux をブートするためのプログラムです。

ハードディスクに LILO をインストールするかどうかは選択可能です。 もし OS/2 を使っていないならば、ここでは `yes' と答えましょう。 OS/2 に関してはちょっと特殊な要求事項があります。 以下の Custom LILO Configuration を参照してください。

LILO をプライマリローダとして使えば、ブート用のフロッピーが 不要になり、ブート時にどの OS をブートするかを指定する ことができるようになります。

ブートディスクの作成(選択可能)

「標準的なブートフロッピーディスク」を作成する画面が現れる かもしれません。このフロッピーディスクは新しくインストールした Linux システムをブートするために使えるディスクです。 (これはちょっと古くて今となってはあまり便利な方法ではありません。 普通は DOS でブートして使うが、ときにはフロッピーで Linux もブートする、 といった場合のためのものです) (訳注: ぜひ作成しておくことをお奨めします。 なにか問題があった時のために、回復用のディスクとしても使えますから。)

このためには、新しい MS-DOS フォーマットの高密度(訳注:2HD) フロッピーディスクが必要です。インストールプログラムが要求 してきたところでフロッピーディスクを挿入すれば、ブートディスクが 自動的に作成されます。(これはインストール用のブートディスクとは 異なります。逆にこれをインストール用のブートディスクとして 使うこともできません!)

その他のシステム設定

この後、インストール後のいろいろな設定のためのメニューが 表示されるでしょう。たとえばモデムやマウスやタイムゾーンなどなどの 設定です。メニューが表示するオプションにしたがって正しく設定をおこなって ください。

また、ルートユーザのパスワード設定や新しい一般ユーザの設定などの 画面が表示されるかもしれませんが、これも画面の指示にしたがって 設定をおこなってください。


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