Alpha Miniloader Howto

David A. Rusling, david.rusling@reo.mts.dec.com

v0.81, 17th April 1996

松本庄司,shom@i.h.kyoto-u.ac.jp

1996年6月15日
この文書には、 Alpha ベースの機械を初期化して Linux をロードする プログラム、Miniloader のことが書いてあります。 Alpha Linux Miniloader は Milo と呼ばれています。

注意: この文書はかなり以前に書かれたものなので、 いまどきの Linux 環境にはあてはまらない箇所があります。 (JF Project)

1. イントロダクション

2. Milo って何?

3. コンパイル済みの標準的な Milo のイメージ

4. Milo の作り方

5. Milo の読み込み

6. Milo のユーザインターフェース

7. フラッシュメモリマネージメントユーティリティの実行

8. 制限事項

9. 解決済みの問題

10. 謝辞


1. イントロダクション

この文書では Alpha AXP で動く Linux のための Miniloader (Milo) について記述しています。このファームウェアは、 Alpha AXP ベースのシステムの初期化、Linux の読み込み、起動、 Linux 用の PALcode の準備に使われます。

1.1 著作権

The Alpha Miniloader (Milo) HOWTO is copyright (C) 1995, 1996 David A Rusling.

Copyright. Like all Linux HOWTO documents, it may be reproduced and distributed in whole or in part, in any medium, physical or electronic, so long as this copyright notice is retained on all copies. Commercial redistribution is allowed and encouraged; however the author would like to be notified of such distributions. You may translate this HOWTO into any language whatsover provided that you leave this copyright statement and disclaimer intact, and that you append a notice stating who translated the document.

著作権:他の Linux HOWTO ドキュメントと同様に、この著作権表示が 入っていれば、本文の全てまたは一部にかかわらず、また物理的にも電子的にも、 複製したり配布したりできます。 商業的再配布も奨励しますが、できれば著者に連絡してください。 この HOWTO はどんな言語に訳してもかまいません。 ただしこの著作権表示と免責事項はそのまま残しておき、 翻訳者が誰であるかを明示した注意書きを加えてください。

[訳注:日本語訳/松本庄司@京大人間環境 (Translation into Japanese : MATSUMOTO Shoji, Graduate School of Human and Envilonmental Studies, Kyoto-Univ, Japan, shom@i.h.kyoto-u.ac.jp)]

Disclaimer. While I have tried to include the most correct and up to date information available to me, I cannot guarantee that usage of information in this document does not result in loss of data or equipment. I provide NO WARRENTY about the information in the HOWTO and I cannot be made liable for any consequences resulting from using the information in this HOWTO.

免責事項:私はできるだけ正確で新しい情報を収めるようにしていますが、 この文書の情報によってデータや設備がいかなる損害を受けようとも、 責任は持ちません。HOWTO にある情報については保証できませんし、 情報を利用した結果についても責任は持てません。

1.2 この文書の最新版

この文書の最新版は ftp://gatekeeper.dec.com/pub/Digital/Linux-Alpha/Miniloader/docs にあります。また、David Mosberger-Tang 氏の好意により、この文書の html 版が彼の素晴しい Linux Alpha FAQ サイト http://www.azstarnet.com/~axplinux に置いてあります。

2. Milo って何?

Intel ベースの PC システムでは、 BIOS のファームウェアがシステムをセットアップし、 DOS ファイルシステムのブートブロックから実行イメージを読み込みます。 これは Milo が Alpha ベースのシステムで行っていることとそれほど変わりません。 しかし、 Milo と BIOS ファームウェアには、いくつかの興味深い相異点があります。 その一つは、 標準的な Linux のデバイスドライバが手を加えずに組み込まれているということです。 また、自分自身の読み込みを BIOS ファームウェアに頼っている LILO とは違って、 Milo はそれ自身がファームウェアです。Milo の主な機能は次のようなものです:

  1. PALcode
  2. メモリセットアップコード(ページテーブルを作り、仮想アドレッシングを有効にする)
  3. ビデオコード(BIOS エミュレーションコードと TGA(21030))
  4. Linux カーネルコード(これには、割り込み処理などの実際の Linuxカーネルコードと擬似カーネルコードが含まれます)
  5. Linux ブロックデバイスドライバ(フロッピードライバなど)
  6. ファイルシステムサポート(ext2・MS-DOS・ISO9660)
  7. ユーザインターフェースコード(MILO)
  8. カーネルインターフェースコード(Linux 用のメモリマップと HWRPB のセットアップ)
  9. 環境変数を制御する NVRAM コード

以下にこれらの機能の詳細を述べます。

PALcode とは、 チップを特定のオペレーティングシステムに合わせる 単純なソフトウェアレイヤと考えることができます。 PALcode は PALmode という特殊なモードで動きます。 このモードには制限がありますが、 標準の Alpha 命令セットと 5 つの拡張命令のみで動作します。 このモードを使うことによって、Windows NT、Open VMS、 Digital Unix、 そしてもちろん Linux といった様々なオペレーティングシステムを Alpha チップ上で実行させることが可能になります。 Milo の使う (すなわち Linux の使う) PALcode は、 Milo の他の部分と同様にフリーウェアです。 この PALcode は Digital 社の評価用ボードの Digital Unix PALcode の例を元にしています…。 Alpha チップと種々の Alpha ベースのシステムにある I/O アドレスのマッピングや割り込み処理の違いによって (21066 ベースのシステムは 21064+2107x ベースのシステムでは I/O マップが違います)、 PALcode が変わってきます。

Milo が正しく動作するためには、 メモリのどの部分が利用可能かわからねばなりませんし、 Linux の実行開始位置も知っておかねばなりません。 また、 Linux のデバイスドライバ用に、一時的にメモリを割り当てる必要もあります。 Milo のコードは、 常に確保しておくページや一時的に確保するページのエントリを管理します。 Milo は起動直後に自分自身を物理メモリの適切な場所に展開します。 次に自分を圧縮しておけるだけのメモリと、 (カーネルが必要とする) PALcode といくらかのデータ領域を確保し、 Linux カーネルに制御を渡します。 これによって、Linux 自身にメモリのほとんどを残しておきます。

メモリコードの最後では、 Linux が必要とするデータ構造が仮想メモリの 適切な位置にくるように仮想アドレッシングを設定します。

Milo にはシステムのビデオデバイスを初期化し利用するビデオコードが 含まれています。ビデオコードは、まず VGA を使おうとし、 見付からなかったら TGA (21030) ビデオデバイスを使おうとします。 それでも失敗すると、グラフィックデバイスはないものと見なします。 標準のコンパイル済み BIOS エミュレーションコードには Digital 社の BIOS エミュレーションコードが含まれています。 このエミュレーションコードを使えば、全てとはいいきれませんが、 ほとんどの標準的なグラフィックデバイスを使うことができます。

Linux のデバイスドライバはカーネルに埋め込まれていますので、 サービスの一部はカーネルにに任せてしまいます。 例えば割り込みのハンドルなどは、 カーネルの擬似ルーチンだけが入っています。

Milo の最も強力な点は、選択されていない [訳注:カーネルに入っていない] Linux デバイスドライバを内蔵できるところです。 これによって Linux の全てのデバイスドライバに対応できる可能性が出てきます。 Milo には、Linux カーネル内の多くのブロックデバイスに対応する ブロックデバイス(例えば ll_rw_blc())が組み込まれています。

Milo は、ブートブロックや他の特殊な場所 [訳注:SRM など]からではなく、 実際のファイルシステム、すなわち MSDOS、EXT2、ISO9660 ファイルシステムから Linux のカーネルを読み込みます。 gzip で圧縮されたファイルも読み込めますので、 特にフロッピーから読み込む場合にはお薦めです。 Milo はファイル末尾が .gz であるファイルを 圧縮ファイルだと認識します。

Milo は単純なキーボードドライバとビデオドライバを内蔵しており、 それらを使って簡単なユーザインターフェースを実現しています。 このインターフェースによって、設定済みのファイルシステムのリストを取ったり、 Linux をフラッシュメモリから起動したり、 ユーティリティをアップデートしたり、 システムの起動を制御する環境変数を設定したりできます。 LILO のように、カーネルに引数を与えることもできます。

Milo はシステムの種類・塔載メモリの量・フリーメモリの量を Linux カーネルに渡します。 これは HWRPB (HardWare Restart Paramater Block) というデータ構造体と メモリクラスタの記述を使って実現されています。 これらは、 Linux カーネルに制御が移る直前に、 仮想メモリの適切な場所に配置されます。

3. コンパイル済みの標準的な Milo のイメージ

Linux を標準的な Alpha ベースのシステムで動かすのならば、 既製の"標準" Milo イメージを使うことができます。 Milo イメージは、ソースその他と共に ftp://gatekeeper.dec.com/pub/Digital/Linux-Alpha/Miniloader にあります。

images というサブディレクトリには、 標準的なシステム(例えば AlphaPC64 など)ごとにそれぞれのディレクトリがあります。 そこにある Milo のイメージには次のような規則で名前が付けられています:

  1. milo - Miniloader 実行イメージ (このイメージは色々な方法で読み込むことができます)
  2. fmu.gz - フラッシュメモリマネージメントユーティリティ
  3. milo.dd - ブートブロックフロッピーディスクイメージ (これは rawrite.exe や Linux 上の dd で書かねばなりません)

images ディレクトリと同じような test-images という ディレクトリもあります。ここに置いてあるイメージは試験的なものですが、 最新の機能が備わっているでしょう。

4. Milo の作り方

Milo はカーネルとは別に作ります。 Milo にはカーネルの一部(例えば割り込み処理など)が必要ですので、 まず作りたい Milo に合うカーネルを作っておかねばなりません。 ほとんどの場合、バージョンが同じカーネルを作ることになります。 例えば、 milo-1.3.76.tgz は linux-1.3.76.tar.gz に対応するものです。 もしかするとバージョンのもっと高いカーネルにも使えるかもしれませんが、 駄目かもしれません。 以下、カーネルのソースとオブジェクトファイルは /usr/src/linux にあると 仮定して話を進めます。

Milo を作るには、まず Milo のソースのあるディレクトリに移動して、 下のようにします:

     make KSRC=/usr/src/linux config

Linux のカーネルを作る時と同じように、いくつかの質問に答えます。

     Echo output to the serial port (MINI_SERIAL_ECHO) [y]

カーネルの printk を /dev/ttyS0 に出力するのは悪くないでしょう。 できれば(そして望むなら)"y"と答えます。

     Use Digital's BIOS emulation code (not free) (MINI_DIGITAL_BIOS_EMU) [y]

このコードには、 Alpha ベースのシステムで使う限りは自由に配布できる ライブラリが含まれています。しかし、ソースは配布できません。 もし"n"と答えれば、 代わりにフリーの BIOS エミュレートコードが使われます。 ソースは Milo と同じ場所にあります。

5. Milo の読み込み

ほとんどのシステムが Windows NT ARC ファームウェアを載せていますので、 Milo を読み込む方法として最も汎用的です。 Windows NT ARC ファームウェアを含め、 以下のような様々な方法で Milo を読み込むことができます:

5.1 Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込む

Alpha AXP ベースのシステムのほとんどには Windows NT ARC ファームウェアが載っています。 これは Milo や Linux を起動する手段として十分に薦められます。 Windows NT ファームウェアが動いており、 自分のシステムに適した Milo のイメージがあるならば、 どのシステムでもこの方法でうまくいきます。

Windows NT ARC ファームウェア環境では、プログラムを動かしたり ファームウェアを動作させるコールバックを作ったりできます。 これを行うのが Windows NT OSLoader です。 単に Milo の読み込みと実行だけをするのが linload.exe です。 linload.exe は適切なイメージファイルをメモリの 0x00000000 に読み込み、 それに対して swap-PAL PALcall を発行します。 この swap が必要なのは、Milo が Linux と同様に Windows NT とは異る PALcode を使うためです。 [訳注:ARC コンソールの段階では PALcode が WinNT 用になっているため、 これを Linux</Milo 用に置きかえなければいけません]。 Milo は自分自身を 0x200000 にリロケートし、 リセットエントリポイントから PALcode を再実行します。

Linux の選択項目をつけ加える前に、 Windows NT ARC ファームウェアが読み込める形の Milo と linload.exe をコピーしておかねばなりません。 DOS フォーマットのフロッピーから起動するような例を挙げておきます:

  1. ブートメニューで "Supplementary menu..." を選びます。
  2. "Supplementary menu""Set up the system..." を選びます。
  3. "Setup menu""Manage boot selection menu..." を選びます。
  4. "Boot selections menu""Add a boot selection" を選びます。
  5. "Floppy Disk 0" を選びます。
  6. osloader directory と name に "linload.exe" を入力します。
  7. operating system being on the same partition as the osloader には "yes" と答えます。
  8. operationg system root directory には "\" を入力します。
  9. name for this boot selection には私は "Linux" を入れています。
  10. you do not want to initialise the debugger at boot time には "No" と答えます。
  11. "Boot selections menu" に戻り、"Change a boot selection option" で 今作った項目を選びます。
  12. 下の矢印キーを押して "OSLOADFILENAME" を選び、 "noname.arc" のように使いたい Milo のイメージの名前をタイプします。
  13. "Boot Selections menu" に戻るために ESC を押します。
  14. "Setup Menu" を選ぶか ESC を押すかして、"Supplementary menu, and save changes" を選びます。
  15. ESC を押して "Boot menu" に戻ると、Milo が使えるようになります。 もしデフォルトで Linux を起動したくなければ、"Boot selections menu" で 優先順位を変えることができます。

上の作業が全て終わると、boot selection は次のようになっているはずです:

LOADIDENTIFIER=Linux
SYSTEMPARTITION=multi(0)disk(0)fdisk(0)
OSLOADER=multi(0)disk(0)fdisk(0)\linload.exe
OSLOADPARTITION=multi(0)disk(0)fdisk(0)
OSLOADFILENAME=\noname.arc
OSLOADOPTIONS=

これで Milo と Linux を起動できるようになりました。 Windows NT が認識できる NTFS や DOS のファイルシステムから直接 linload.exe と Milo を読み込むこともできます。

OSLOADOPTIONS はコマンドとして Milo に渡されます。 Milo を止めずに Windows NT から Linux を直接起動するためには、 OSLOADOPTIONS を次のように設定します:

boot sda2:vmlinux.gz root=/dev/sda2

どのようなコマンドが使えるか、詳しくは Milo のユーザインターフェース を 参照してください。

WNT ARC ファームウェアを通して Milo を読み込む(ちょっと姑息な)手段として、 Milo を MS-DOS フロッピーに fwupdate.exe という名前で書き込み、 "Upgrade Firmware" を選ぶという技もあります。

5.2 評価用ボードデバッグモニタから Milo を読み込む

評価用ボード(もしくはその互換ボード)は Alpha 評価用ボードデバッグモニタをサポートしています。 この方法で Milo を起動しようとする前に、 自分のシステムに付いているドキュメントを参照してください。 次のシステムがデバッグモニタをサポートしていることが判っています:

この方法を試す前に、 現バージョンの評価用ボードデバッグモニタにビデオドライバや キーボードドライバが入っていないことを確認しておきましょう。 また、デバッグモニタを使えるように、 シリアルポートに他のシステムを繋げておいてください。 このインターフェースは非常に単純で、 help と打てば使えるコマンドが全て表示されます。 そのうち、 bootload という文字が入っているコマンドがよく使われます。

評価用ボードデバッグモニタは、 ネットワーク (netboot) やフロッピー (flboot) から イメージを読み込むことができます。 どちらの場合でも、イメージを起動する前に > bootadr 200000 として、 ブートアドレスを 0x200000 にしておかねばなりません。

もしイメージがフロッピーにある場合(DOS フォーマットのフロッピーにのみ対応)、 次のようなコマンドを打込みます:

     AlphaPC64> flboot <Milo-image-name>

5.3 緊急用(failsafe)ブートブロックフロッピーから Milo を読み込む

AxpPCI33 だけが 緊急用(failsafe)ブートブロックフロッピーをサポートしていることが 判っています( Nonameを参照)。

もしコンパイル済みの標準的な Milo の .dd イメージがなければ、 SRM ブートブロックフロッピーを作らねばなりません。 Milo がすでに作ってあれば、 Digital Unix が動いているマシンで次のようにします:

     fddisk -fmt /dev/rfd0a
     cat mboot bootm > /dev/rfd0a
     disklabel -rw rfd0a 'rx23' mboot bootm

もしくは Linux が動いているマシンで次のようにしても良いでしょう:

     cat mboot bootm > /dev/fd0 

もし標準 Milo イメージ(ここでは milo.dd としましょう)があるならば、 次のコマンドでブートブロックフロッピーを作ることができます:

     dd if=milo.dd of=/dev/fd0 

5.4 フラッシュメモリから Milo を読み込む

Windows NT ARC ファームウェアを使う代わりに、 フラッシュメモリに Milo を入れて直接起動できるシステムも数多くあります:

5.5 SRM コンソールから Milo を読み込む

SRM (System Reference Manual の略) コンソールは ファイルシステムやパーティションは認識しないことがわかっています。 SRM は、 2 番目のブートストラップローダが、 物理ディスクのあるオフセットから連続した領域を確保すると仮定しています。 2 番目のブートストラップローダの情報(大きさとオフセット)は ブロックの先頭から512 バイトに収められています。 SRM を使って Milo を読み込むには、SRM がアクセスできるデバイス (例えばフロッピーディスク)に mbootbootm と呼ばれるストラクチャを作らねばなりません。 mboot は最初のブロック(もしくはブートの記述領域)で、 Milo イメージを 512 byte 境界で切り上げたものです。

Milo をブートブロックデバイスから読み込むには、 mbootbootm を作り、 次のコマンドで起動デバイスに書き込みます:

        $ cat mboot bootm > /dev/fd0

もしくは、適切な milo.dd を Web サイトから取ってきて、 RAWRITE.EXEdd を使って起動デバイスに書き込んでください。

これで SRM コンソールを起動して そこから Milo を起動できるようになりました。 例えば、ブートブロックフロッピーから Milo を起動するには 次のコマンドを使います:

        >>>boot dva0
        (boot dva0.0.0.0.1 -flags 0)
        block 0 of dva0.0.0.0.1 is a valid boot block
        reading 621 blocks from dva0.0.0.0.1
        bootstrap code read in
        base = 112000, image_start = 0, image_bytes = 4da00
        initializing HWRPB at 2000
        initializing page table at 104000
        initializing machine state
        setting affinity to the primary CPU
        jumping to bootstrap code
        Milo Stub: V1.1
        Unzipping Milo into position
        Allocating memory for unzip
        ####...

次のシステムが SRM コンソールをサポートしていることが判っています:

5.6 システムに固有の情報

AxpPCI33 (Noname)

Noname ボードは Milo を Windows NT ARC ファームウェア ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)、 SRM コンソール ( SRM コンソールから Milo を読み込むを参照)、 緊急用ブートブロックフロッピー ( 緊急用ブートブロックフロッピーから Milo を読み込むを参照) から読み込めます。

Noname の起動を制御するには、 ボード上のジャンパ J28,J29 を設定します。

                    4
        J29     2 x x x 6
                1 x x x 5

        J28     2 x x x 6
                1 x x x 5
                    3

J28 の 1-3 ピンを繋げるとフラッシュメモリから起動します。 J29 の 1-3 ピンを繋げると ブートブロックフロッピーから起動します。 後者は Noname ボードで最初に Milo を起動するのに必要な設定の一つです。 [訳注:私は Windows NT ARC ファームウェアからいけましたが…]

ジャンパでフロッピーからの起動を選んだら、 Milo を書き込んだ SRM ブートブロックフロッピーを フロッピードライブに入れて再起動します。 しばらくするとフロッピーのライトが消えて画面が白く点滅し、 Milo のプロンプトが出ます。

技術的な説明をします。 Noname はフロッピー上のイメージを物理アドレス 0x104000 に読み込み、 フラッシュメモリ上のイメージを 0x100000 に読み込みます。 そのために、Milo はその PALcode が 0x200000 から始まるように作られています。 Milo は最初に読み込まれた時に、 自分自身を適切な場所へ移動します(リロケートを参照)。

AlphaPC64 (Cabriolet)

AlphaPC64 は NT ARC ファームウェア ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)と SRM コンソール ( SRM コンソールから Milo を読み込むを参照)と 評価用ボードデバッグモニタ ( デバッグモニタから Milo 読み込むを参照)を サポートしています。 これらのイメージはフラッシュメモリに格納されており、 Milo をフラッシュメモリから直接起動するための空きもあります。 Milo が動けば Milo からフラッシュメモリマネージメントユーティリティが 実行できますので、Milo をフラッシュメモリに書き込むことができます ( フラッシュメモリマネージメントユーティリティの実行を参照)。 このシステムは Milo の環境変数に対応しています。

Milo がフラッシュメモリに入っているならば、 TOY clock の NVRAM に保存されている番号のイメージを起動するか、 フラッシュメモリの最初のイメージを起動するかを、 ジャンパの組み合わせで決めます。

ジャンパ J2 の SP の bit 6,7 には次のような意味があります:

bit 7 を外すと、 常にフラッシュメモリの最初のイメージ、 すなわちデバッグモニタが起動します。 bit 7 を入れると、 TOY clock に書かれた番号に従って起動するイメージが選択されます。 デバッグモニタ、 Windows NT ARC ファームウェア、 Milo それぞれで起動する順番を指定できますが、 十分注意して使わねばなりません。 特に、Windows NT ARC ファームウェアを動かした直後には、 起動するイメージとして Milo を選ぶことができません(??)。 次に選べるのは デバッグモニタか Windows NT ARC ファームウェアだけです。

評価用ボードデバッグモニタで Milo をフラッシュメモリに書き込むためには、 フラッシュメモリ用のイメージが必要です。 普通にイメージを作ると milo.rom という名前になりますが(??)、 ボードに付いてくるデバッグモニタにある makerom ツールを使って イメージを作ることもできます:

    > makerom -v -i7 -l200000 Milo -o mini.flash

(makerom と打てば引数の意味が出てきます。 7 は SROM が使う[SROM が TOY Clock の NVRAM の内容を見て、 起動するフラッシュメモリイメージを起動します] フラッシュメモリのイメージ番号で、 -l200000 はイメージを 0x200000 に読み込むことを意味します。)

デバッグモニタの flload や netload といったコマンドを使って、 イメージをメモリの 0x200000 に読み込み、 次のようにしてフラッシュメモリに書き込みます:

     AlphaPC64> flash 200000 8

(200000 は書き込むイメージがメモリのどこにあるかを表し、 8 はイメージを書き込むセグメントの番号を表します。 フラッシュメモリには 1024*64 バイトのセグメントが 16 個あり、 デバッグモニタはセグメント 0 に、 Windows NT ARC ファームウェアはセグメント 4 にあります。)

SROM がイメージを起動できるように、その番号を TOY clock に書き込みます:

     AlphaPC64> bootopt 131

(131 は 3 番目のイメージという意味です。 129 は 1 番目、130 は 2 番目、というふうに番号付けされています。)

電源を切って、ジャンパ 7 を on にして電源を入れなおし、 Milo が起動するかどうか見てください。 起動しなかった場合はジャンパ 7 を off に戻してデバッグモニタを起動しましょう。

EB66+

EB66+ にも他の Alpha 評価用ボードと同じように 評価用ボードデバッグモニタが付いていますので、 同じようにして Milo を読み込むことができます ( デバッグモニタから Milo を読み込むを参照)。 また、これらのボードの亜流のボードは、ほとんど全部といっていいほど NT ARC ファームウェアを載せています ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)。 Milo が動けば Milo からフラッシュメモリマネージメントユーティリティが 実行できますので、Milo をフラッシュメモリに書き込むことができます ( フラッシュメモリマネージメントユーティリティの実行を参照)。 このシステムは Milo の環境変数に対応しています。

これらのシステムはフラッシュメモリ上に複数のブートイメージを持っており、 その起動の順番をジャンパで設定することができます。 Alpha チップを上にしたときに、 ボードの下の真中あたりに、 2 つのジャンパのある J18 と J16 というバンクがあります。 これを使って、 TOY clock の NVRAM に保存されている番号のイメージを起動するか、 フラッシュメモリの先頭にあるイメージを起動するかを制御します。

J18 のジャンパ 7-8 にジャンパを入れると、 NVRAM に書かれている番号のイメージを起動します。 J18 のジャンパ 7-8 を外すと、 評価用ボードデバッグモニタを起動します。

評価用ボードモニタを使ってイメージをフラッシュメモリに書き込む方法は、 AlphaPC64 と全く同じです( AlphaPC64を参照)。

EB64+/Aspen Alpine

このシステムは、 AlphaPC64 から Milo を入れることのできるフラッシュメモリを取り除いたものです。 EB64+ には 2 つの ROM があり、 ひとつには Windows NT ARC ファームウェアが ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)、 もうひとつには評価用ボードデバッグモニタ ( デバッグモニタから Milo を読み込むを参照) が入っています。

Aspen Alpine には Windows NT ARC ファームウェアの入った ROM しか 載っていません。

Universal Desktop Box (Multia)

非常にコンパクトにまとめられた 21066 ベースのシステムで、 TGA(21030) グラフィックデバイスが載っています。 ボックスにはハーフハイトの PCI グラフィックカードがちょうど入りますが、 XFree86 が TGA に完全に対応するのを待ったほうが良いでしょう。 このシステムには Windows NT ARC ファームウェアが載っていますので、 それを使いましょう ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)。

EB164

EB164 にも他の Alpha 評価用ボードと同じように 評価用ボードデバッグモニタが付いていますので、 同じようにして Milo を読み込むことができます ( デバッグモニタから Milo を読み込むを参照)。 また、これらのボードの亜流のボードは、ほとんど全部といっていいほど NT ARC ファームウェアを載せています ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)。 また、SRM コンソールも使うことができます ( SRM コンソールから Milo を読み込むを参照)。 Milo が動けば、 Milo からフラッシュメモリマネージメントユーティリティが 実行できますので、Milo をフラッシュメモリに書き込むことができます ( フラッシュメモリマネージメントユーティリティの実行を参照)。 このシステムは Milo の環境変数に対応しています。

これらのシステムはフラッシュメモリ上に複数のブートイメージを持っており、 その起動の順番をジャンパで設定することができます。 Alpha チップを上にしたときに、 ボードの下の真中あたりに、 2 つのジャンパのある J1 というバンクがあります。 これを使って、 TOY clock の NVRAM に保存されている番号のイメージを起動するか、 フラッシュメモリにあるイメージを起動するかを制御します。

J1 のジャンパ SP-11 を入れると、 NVRAM に書かれている番号のイメージを起動します。 J1 のジャンパ SP-11 を外すと、 評価用ボードデバッグモニタを起動します。

評価用ボードモニタを使ってイメージをフラッシュメモリに書き込む方法は、 AlphaPC64 と全く同じです( AlphaPC64を参照)。

XL266

XL266 は Avanti というシステムの一つです。 このメインボードには、 Alpha チップとキャッシュを載せたライザカードが垂直に挿さっています。 このライザカードは互換性のある Pentium ボードと差し替えることができます。

Avanti には SRM コンソールが載っているものもありますが、 XL266 には Windows NT ARC ファームウェアしか載っていません ( Windows NT ARC ファームウェアから Milo を読み込むを参照)。

以下が私の調べた互換リストです:

注意:私が Milo を開発・テストしたシステムは XL266 ですから、 XL266 についてのみにしか動作保証できません。 しかし、上述のシステムは技術的には互換性があります。 同じチップセットをサポートし、割り込みのハンドリング機構も同じです。

Platform2000

233MHz の 21066 ベースのシステムです。

6. Milo のユーザインターフェース

Milo をきちんとインストール・読み込み・実行できれば、 MILO (MIni LOader の略) というプロンプトが画面に現れます。 Milo には Linux カーネルイメージを起動するための 簡単なインターフェースが備わっています。 コマンドの概略を見たければ "help" とタイプするのが良いでしょう。

6.1 "help" コマンド

たぶん Milo で最も便利なコマンドでしょう:


MILO> help
MILO command summary:

ls [-t fs] [dev:[dir]] 
                    - List files in directory on device
boot [-t fs] [dev:file] [boot string] 
                    - Boot Linux from the specified device and file
run [-t fs] dev:file 
                    - Run the standalone program dev:file
show                - Display all known devices and file systems
set VAR VALUE       - Set the variable VAR to the specified VALUE
unset VAR           - Delete the specified variable
reset               - Delete all variables
print               - Display current variable settings
help [var]          - Print this help text

Devices are specified as: fd0, hda1, hda2, sda1...
Use the '-t filesystem-name' option if you want to use
  anything but the default filesystem  ('ext2').
Use the 'show' command to show known devices and filesystems.
Type 'help var' for a list of variables.

注意:bootopt コマンドは AlphaPC64 (互換)システムにのみ存在します。

デバイス: デバイスを使用可能にするコマンドを実行するまでは、 初期化されたデバイスがないというメッセージが出ます。 まず showlsboot もしくは run というコマンドで Milo に入っているデバイスを初期化します。 デバイス名は Linux と全く同じになっています。 最初の IDE は 'hda' ですし、その最初のパーティションは 'hda1' です。 show コマンドを使えば、どのデバイスが利用可能か表示されます。

ファイルシステム: Milo は MSDOS、EXT2、ISO9660 ファイルシステムに対応しています。 デバイスが利用可能な状態になっていれば、 そのファイルシステム上にあるイメージを list したり boot したり run したりできます。 Milo のデフォルトのファイルシステムは EXT2 で、 それ以外のファイルシステムを使うときには Milo に指定せねばなりません。 ファイル名を使うコマンドでは -t [filesystem] というオプションを使ってファイルシステムを指定できます。 SCSI CD ROM の中身を見たいときには次のようにタイプします [訳注:scd0 ではなく sr0 の場合もあります (linux/Documentation/devices.txt を参照)]:

     MILO> ls -t iso9660 scd0:

変数: Milo にはブートプロセスを補助する変数があります。 Milo を Windows NT ARC ファームウェアから読み込む場合は、 ファームウェアによって起動オプションの変数が設定されます。 AlphaPC64 のような一部のシステムでは、 変数はブートごとに変化しません [訳注:Milo がフラッシュメモリにある場合は変数が初期化されない(??)]。 変数には次のようなものがあります:


MILO> help var
Variables that MILO cares about:
  MEMORY_SIZE      - System memory size in megabytes
  BOOT_DEV         - Specifies the default boot device
  BOOT_FILE        - Specifies the default boot file
  BOOT_STRING      - Specifies the boot string to pass to the kernel
  SCSIn_HOSTID     - Specifies the host id of the n-th SCSI controller.
  AUTOBOOT         - If set, MILO attempts to boot on powerup
                     and enters command loop only on failure.
  AUTOBOOT_TIMEOUT - Seconds to wait before auto-booting on powerup.

6.2 Linux の起動

boot コマンドはデバイスから Linux カーネルを起動します。 Linux カーネルは、EXT2 フォーマットの SCSI-HDD/IDE-HDD/フロッピーディスクか、 ISO9660 フォーマットの CD の上になければなりません。 イメージは gzip で圧縮されていてもよく、 .gz という拡張子であれば圧縮ファイルだとみなされます。

起動しようとしている Linux カーネルのバージョンと Milo のバージョンが同じかどうか確認しておきましょう。 次のコマンドで Linux を起動します:

     MILO> boot [-t file-system] device-name:file-name [[boot-option] [boot-option] ...]

device-name は使用するデバイスで、 file-name は Linux カーネルのファイル名です。 それ以降の引数は Linux カーネルに直接渡されます。

もし RedHat をインストールしているならば、 次のようにしてルートデバイスを指定しなければならないでしょう:

     MILO> boot fd0:vmlinux.gz root=/dev/fd0 load_ramdisk=1

Milo には vmlinux を作るときに設定したブロックデバイスが 自動的に入っています。 私はフロッピードライバと IDE ドライバ、NCR SCSI ドライバを試し、 うまく動いています。 SCSI コントローラのホスト ID がきちんと設定されていることも重要です。 MILO のデフォルトのホスト ID は 7 です。 普通はうまくいくはずが、明示的にホスト ID を指定することもできます。 n 番目の SCSI コントローラ指定するには、 環境変数 SCSIn_HOSTID を希望の値にセットします。 例えば最初の SCSI コントローラのホスト ID を 7 に設定したい場合は、 MILO のプロンプトで下のコマンドを実行します:

     setenv SCSI0_HOSTID 7

6.3 Linux の再起動

動作中の Linux システムを再起動するには、 shutdown -r nowというコマンドを実行します。 すると、Linux カーネルは HALT CallPAL エントリポイントを経由して Milo に制御を戻します。 Milo がメモリ内に自分自身の圧縮されたコピーを残しているのはこのためです。 そして HWRPB (HardWare Restart Parameter Block) に保持されている情報をもとに、 システムが再起動中であることを検知します。 それから前回 Linux カーネルを起動したのと同じコマンドで再起動を始めます。 このプロセスを中止したり別のカーネルを起動したりするために、 30 秒間のタイムアウトがあります。

6.4 "bootopt" コマンド

AlphaPC64、EB164、EB66+ のようなフラッシュメモリが付いているシステムには いくつかの起動選択肢が用意されており、 bootopt コマンドによって変更できるようになっています。 このコマンドは一つの引数を取ります。 システムの電源をリセットしたり入れ直したりした時に起動するイメージのタイプを 10 進数で指定します:

0:評価用ボードデバッグモニタを起動する

1:Windows NT ARC ファームウェアを起動する

フラッシュメモリから Milo ファームウェアを起動するために、 N 番目のイメージを表すブートオプションを指定せねばなりません。 これは N に 128 を足した値になります。 つまり、もし Milo が 3 番目のイメージであれば、 次のコマンドを使います:

     MILO> bootopt 131

注意: このコマンドを使用する際には十分気を付けて下さい。 評価用ボードデバッグモニタを起動するために bootopt 0 とするのはやめたほうが良いでしょう。 システムのジャンパを使えば同じことができます。

7. フラッシュメモリマネージメントユーティリティの実行

フラッシュメモリマネージメントユーティリティを実行するには run コマンドを使います。 実行する前に、updateflash プログラムが入った Milo を利用可能なデバイスに 置いておかねばなりません。 updateflash プログラムは vmlinux と同じように gzip で圧縮しておくことができます。 フラッシュメモリマネージメントユーティリティを実行するには、 次のようにして Milo の run コマンドを実行します:

     MILO> run fd0:fmu.gz

フラッシュメモリマネージメントユーティリティの初期化がすむと フラッシュメモリデバイスに関する情報がいくつか表示され、 コマンドプロンプトが現れます。 ここでも help コマンドが有用です:

Linux Milo Flash Management Utility V1.0

Flash device is an Intel 28f008SA
  16 segments, each of 0x10000 (65536) bytes
Scanning Flash blocks for usage
Block 12 contains the environment variables
FMU> 

注意: AlphaPC64 などのシステムには、 複数のフラッシュメモリブロックと環境変数を保存する場所があります。 フラッシュメモリマネージメントユーティリティは Milo の環境変数が保存されているブロックを探します。 もしそのようなブロックがすでに存在していれば、 それがどこに存在しているか表示されます。 そうでない場合は、 environment コマンドを使って初期化するブロックを指定せねばなりません。 上の例ではフラッシュメモリブロック 12 に Milo の環境変数が保存されています。

7.1 "help" コマンド

FMU> help
FMU command summary:

list                - List the contents of flash
program             - program an image into flash
quit                - Quit
environment         - Set which block should contain the environment variables
bootopt num         - Select firmware type to use on next power up
help                - Print this help text
FMU>           

注意:environment コマンドと bootopt コマンドは、 EB66+、AlphaPC64、EB164 (互換)システムのみで使用可能です。

7.2 "list" コマンド

"list" コマンドは現在のフラッシュメモリの使用状況を表示します。 2 つ以上のフラッシュメモリブロックがある場合には、 それぞれのブロックの使用状況が表示されます。 下の例では、 Windows NT ARC ファームウェアがブロック 4 から 7 と ブロック 15 を使用しています。

FMU> list
Flash blocks:  0:DBM  1:DBM  2:DBM  3:WNT  4:WNT  5:WNT  6:WNT  7:WNT  8:MILO  
        9:MILO 10:MILO 11:MILO 12:MILO 13:U 14:U 15:WNT
Listing flash Images
  Flash image starting at block 0:
    Firmware Id:  0 (Alpha Evaluation Board Debug Monitor)
    Image size is 191248 bytes (3 blocks)
    Executing at 0x300000
  Flash image starting at block 3:
    Firmware Id:  1 (Windows NT ARC)
    Image size is 277664 bytes (5 blocks)
    Executing at 0x300000
  Flash image starting at block 8:
    Firmware Id:  7 (Milo/Linux)
    Image size is 217896 bytes (4 blocks)
    Executing at 0x200000
FMU>

7.3 "program" コマンド

フラッシュメモリマネージメントユーティリティは 圧縮された Milo のフラッシュイメージを持っています。 "program" コマンドはこのイメージをフラッシュメモリに書き込みます。 このコマンドを実行する前に "list" コマンドを使って Milo をどこに入れることができるか見ておきましょう。 すでに Milo がフラッシュメモリに入っている場合には、 上書きするかどうか訊ねられます:

FMU> program
Image is:
    Firmware Id:  7 (Milo/Linux)
    Image size is 217896 bytes (4 blocks)
    Executing at 0x200000
Found existing image at block 8
Overwrite existing image? (N/y)? y
Do you really want to do this (y/N)? y
Deleting blocks ready to program: 8 9 10 11
Programming image into flash
Scanning Flash blocks for usage
FMU> 

電源を切る前にこれが終わるのを待ちましょう。

注意: すでに存在しているフラッシュメモリイメージを上書きすると、 システムを壊してしまうかもしれないのはわかっていますよね。 決してデバッグモニタを上書きしないようにしましょう。

7.4 "environment" コマンド

Milo の環境変数が保存されているフラッシュメモリブロックを選択します。

7.5 "bootopt" コマンド

Milo の "bootopt" コマンドと同じです ( "bootopt" コマンドを参照)。

7.6 "quit" コマンド

あまり意味のないコマンドです。 フラッシュメモリマネージメントユーティリティから Milo などに戻る唯一の方法は、 システムを再起動することです。

8. 制限事項

残念ながら Milo はまだ完璧ではなく、いくつかの注意すべき制限があります。

Milo は Linux 以外のオペレーティングシステムを読み込むことはできません。 Milo はイメージを読み込んだあとに特定の場所 (Linux では 0xFFFFC0000310000) から実行するからです。 これはフラッシュメモリマネージメントユーティリティを実行する仕組みです。

miniboot/palcode/blah にある PALcode のソースは間違ってはいないのですが、 最新の gas を使って作ると変になります。 Alpha 評価用ボードツールセットにある古い a.out の gas を使えば大丈夫です。 私は新しい gas を誰かにフィックスしてもらおうとしています。 そうしているうちに、 サポートしているボードに対応したコンパイル済みの PALcode が出て、 David Mosberger-Tang 氏が フィックスされた gas を彼の ftp サイトに置いてくれていました。

9. 解決済みの問題

ここには多くの人が経験した問題とその解決方法が書いてあります。

・評価用ボードデバッグモニタから MS-DOS フロッピーを読む

AlphaPC64 などの Alpha 評価用ボードに載っているデバッグモニタを使って フロッピーディスクからファイルを読む際の問題が報告されています。 ふつうデバッグモニタは最初の数セクタを読めるのですが、 "bad sectors" などがあると無限ループに陥ります。 デバッグモニタが予想している DOS ファイルシステムと Linux 上の DOSFS の実装が違うことが原因であることがわかっています。 もしこの問題が起こったら、 DOS を使ってフロッピーに書き込むのがてっとり早いです。 例えば milo.cab の読み込みに失敗したら、 DOS マシンを起動してフロッピーを入れて次のようにします:

     copy a:milo.cab c:
     copy c:milo.cab a:
     del c:milo.cab

もう一度フロッピーから起動しましょう。問題ないはずです。

・Milo が O> という文字を表示しつづけ、入力を受けつけなくなる

この現象は、 主に Milo が 2 番目のコンソールとして COM1 を使うように作られている場合に起こります。 この場合、Milo は COM1 を入出力に使っています。 これはデバッグには非常に便利ですが、 接続されたターミナル以外にデバイスがある場合はそれほど便利ではありません。 もしこの問題が起こったら、 デバイスを切離すか Linux カーネルが起動するまで何度か電源を切ってください。 Linux が動けば問題はなくなるでしょう。

10. 謝辞

次の人々に感謝します:

[訳注:日本語への翻訳にあたり、 Linux-Alpha-JP メーリングリストのメンバの方々より 数々の有用な助言を頂きました。感謝の意を表します。]

Milo でやらなければならないことはまだまだあります。 もし自分で何かつけ加えたいと思ったら、私 ( david.rusling@reo.mts.dec.com) に連絡してください。 同じことをしている人がいるかもしれません。

最後に、このような素晴しいチップを開発した (そしてこの仕事に報酬を出してくれた) Digital 社に感謝します。