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2. ハッカーとは何か

Jargon File には `ハッカー hacker' という言葉について、ほとんどは技術的な熟達者になること、 そして問題を解くことや限界を克服することを楽しみとする者というような一連の定 義が収録されています。あなたがハッカーになる方法を知りたいなら、2つの ことだけが実際に関係します。

熟達したプログラマやネットワークの天才たちからなる、文化を共有した コミュニティがあります。その歴史は初期のタイム・シェアリング・ミニコン ピュータや、黎明期の ARPAnet ( 2) の経験にまで遡ることができます。このような 文化を担ってきた者たちが `ハッカー hacker' という言葉を造語しました。 ハッカーたちがインターネットを築きあげました。ハッカーたちが今日のUNIX オペレーティングシステムを作りました。ハッカーたちが Usenet を動かし、 World Wide Web を作っているのです。 あなたがこのような文化に参加し貢献 し、その世界の住人で、あなたをハッカーと呼ぶ人がいるなら、あなたはハッ カーなのです。

ハッカー精神の根底にあるのは、このようなソフトウェアハッカーの文化に は限りません。ハッカー的態度をエレクトロニクスや音楽のような他のことに 応用する人たちもいます。実際にどのような理科系科学や人文系や文科芸術系 の分野でも非常に高度なレベルで"ハッカー"を見つけることもできます。ソフ トウェアのハッカーたちは同類の態度はどこにでもあることを認めており、そ れらもまた"ハッカー hackers" と呼ばれるでしょう。さらにハッカー的な特 質というのは本当は個々の環境に依存しないものだという人もいます。しかし この文書ではこれから、ソフトウェアハッカーの技術と態度、そして`ハッカー hacker' という言葉を生み出した文化を共有する伝統について話の焦点をあわ せましょう。

自分自身をハッカーと声高に呼ぶ別の集団が存在しますが、彼らはハッカー ではありません。彼らはコンピュータを破壊するような攻撃をしかけ、電話シ ステムをフリーキング ( 3) (あるいは cracking。 セキュリティ破りのような行為) する人々(主に青年男性たち)です。本物のハッカーはこのような人々を `クラッ カー crackers' と呼び、彼らと一緒に何かをやりたいとは思っていません。 本物のハッカーたちはたいてい、クラッカーというのはだらしない人間で、無 責任で賢くないと思っています。車の点火回路をいじれるようになっても車を 扱うエンジニアにはなれないのと同様、セキュリティ破りを目論んでもハッカー にはなれません。残念なことに、多くのジャーナリストや著述家たちはクラッ カーについて書くために `ハッカー hacker'という言葉を誤用し、使い続けてき ました。この事実は、いつまでも真のハッカーたちにとって悩みの種となって いるのです。 基本的な違いはここにあります。すなわち、ハッカーは物事を築きあげます が、クラッカーは破壊するのです。

ハッカーになりたいならこの文書を読み続けなさい。クラッカーになりたい なら、alt.2600 ニュースグループを読むことです。そして、もしあなたが考 えているほど頭がよくないことがわかったなら、5年や10年、刑務所で暮ら す覚悟をしなくてはいけません。クラッカーについてこれ以上言うことはあり ません。

(訳注2) ARPAnet: ARPA ネットワークとは国防省の ARPA の研究委託を受けた大学 や政府研究機関を政府関係の研究で相互に情報を交換するために構築されたも ので、インターネットの技術的基盤になった。RFC 991

(訳注3) phreaking: セキュリティ破りのような行為「ハッカーズ大辞典」 (アスキー出版)を参照。


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