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3. ハッカーらしい態度を身につけるために

ハッカーは問題を解決し、物事を築きあげます。そして、彼らは自由で自発 的な相互援助を信条としています。ハッカーとして受け入れられるようになる には、自らこのような態度を持つように行動しなければなりません。そしてあ なたがその態度を持ってふるまうには、本当にその態度を信奉するようにしな ければいけません。

ハッカー文化に受け入れられようとして、ハッカーらしい態度を身につける ようと考えているなら、あなたは勘違いをしています。ハッカーの態度を信奉 するような人になることが、学ぶ助けになり、動機となったことを持ち続ける ために大切なことなのです。すべての創造的な芸術と同様、熟達者になる効果 的な方法は 熟達者の精神状態をまねすることです。知識だけでなく感情的な 面も同様です。 ハッカーになりたいなら、それらを信条にするようになるまで次に述べること を繰り返して行いなさい。

3.1 この世界は解決を待っている魅力的な問題でいっぱいだ

ハッカーであることはとてもおもしろいものですが、その楽しみには大変な 努力が必要です。努力するには刺激が必要です。よい成績をあげるスポーツマ ンは、自分の肉体的限界を越えて鍛えることで自分の体を作り上げる肉体的な 喜びで動機づけされます。同様に、ハッカーになるためには自分の技術をみが き、知性を働かす訓練して、問題を解決することにゾクゾクするような喜びを 感じるようでなければいけません。

あなたが自然にこのように感じるような人でないなら、ハッカーになるには そのような人にならなくてはいけません。さもないとハッキングへの意欲 はセックスやお金や社会的な名声のようなつまらないことに惑わされてしまう でしょうから。

自分の学習能力は無限なんだということを信頼するようにならなくてはいけ ません。たとえ今の段階では大きな問題を解決するために必要なことすべてを 知らなくても、その問題のほんの一部から取り組んで、そこから新しい事を学 び取り、その経験をもとに次へ次へと進んで行けば、次の部分に取り組むのに 十分なだけ学ぶことができるでしょう。そのように段階的に学んでいけば最後 には大きな問題全体をも解決できるという信念を築いてください。

3.2 同じ問題を二度解くような無駄を避けなさい

クリエイティブな人材というのは貴重な限られた資源です。いまそこにたく さんの魅力ある新しい問題が解決を待っている時に、車輪をもう一度発明する ような無駄なことをしてはいけません。

ハッカーらしく行動するために、あなたは他のハッカーたちが物事を考える 時間は貴重であることを知っていなければなりません。つまり、情報を共有す ることはほとんど道徳的な義務であると言ってもいいのです。問題を解決し、 その解答を提供すれば、他のハッカーたちは古いものを引続き繰り返して扱わ なくても新しい問題を解決できるのです。

(あなたがハッカーであっても、自分で作ったものをすべて無償で提供してし まう義務があると思いこむ必要はありません。そのように行うハッカーという のは、他のハッカーたちから最高の尊敬を受けるでしょう。食費と家賃とコン ピュータ代を維持するのに必要なだけ自分の作品を売り込むことはハッカーの 価値観と矛盾しません。ハッキングしている間、自分がハッカーであることを 忘れない限り、家族を支えるために、あるいは贅沢を得るためであっても、ハッ キングの技術を使うことはハッカーの価値観と矛盾しません。)

3.3 退屈と単純作業は悪

ハッカーたち(そして一般的にクリエイティブな人たち)は決して退屈で反復 の多い仕事にこつこつ精を出すようなことをしません。なぜならそういうこと をしている時は彼らが出来ること、すなわち、新しい問題を解決するというこ とをしていないことになるからです。このような無駄はすべての人にとっても 害になります。ゆえに退屈と単純作業は喜びにならないばかりか実際には悪な のです。

ハッカーらしくふるまうために、自分自身のためばかりでなく他のハッカー の誰にとっても(とりわけ他のハッカーたち)、可能な限りたくさん退屈なこと は自動化してしまう方がいいのだという信条を持たなければなりません。

(これにははっきりひとつの例外があります。ハッカーたちは時々気持ちの切 替えのために、あるいは技術を習得するため、また人が出来ない特別な経験を するために退屈に見えるようなことをします。しかしこれは好んでするのです。 つまり、考えることができるような人なら、決して退屈を押しつけられるよう なことはありません。)

3.4 自由は善

そもそもハッカーたちは反権威主義です。あなたに命令できる人は誰でも、 あなたが興味を持っているどんな問題も解決するのを止めさせることができま す。そして権威主義者の考えを押しつけてくるので、そうなると、そういうこ とには普通あきれるほどのくだらない理由がいろいろあるのがわかるでしょう。 そこで権威主義的態度を見つけた時はいつでも戦わないといけないのです。そ うしないとあなたや他のハッカーたちを窒息させてしまいます。

(このようなことはすべての権威と戦うことと同じではありません。子どもは 導かれる必要があるし、犯罪人は拘束されなければなりません。ハッカーは自 分が命令に従うことに時間を費やすよりも、自分が望む何かを手にいれるため に、ある種の権威を承諾することもあるでしょう。しかし、それは限られた場 合のことで、有利な駆け引きをしているのです。権威主義者が望む個人的な放 棄の類は提供していることにはなりません。)

権威主義者は検閲と秘密厳守について幅をきかせます。さらに彼らは自発的 な援助や情報を共有することを怪しむのです。彼らは自分たちが管理できる提 携協力だけを好みます。そこでハッカーらしく行動するために、あなたは検 閲や秘密厳守、そして責任ある大人を強要するような圧力や惑わしを使われる ことに対して、本能的に戦いを挑まなくてはなりません。さらにあなたは信念 に基づいて行動するようにしなければなりません。

3.5 態度は能力の代用にはならない

ハッカーになるために、あなたは多少ともこのような態度を育てなければな りません。しかしスポーツのチャンピオンやロックのスターになることと同様 に、態度だけをまねてハッカーになれるわけではありません。ハッカーになる には知性、実行力、献身に加えて厳しい仕事が必要です。

ですから、あなたは疑問を持つ態度を学び、すべての種類の能力を重視しな ければなりません。ハッカーは自分の時間を無駄にさせられるのを望まないば かりでなく、能力、とりわけハッキング能力を崇拝しますが、すべての能力は 善です。あることをマスターする技術を求める能力はとりわけ善であり、精神 的に強いこと、技術や集中力を含む技術を求める能力はベストです。

能力をあがめるならば、自分でそれをみがくことを楽めるでしょう。つまり、 苦しい仕事や献身(熱中できる遊び)は、単調な骨折り仕事であるよりもむしろ もっと強烈な遊びといった種類のものになるでしょう。そうならばそれがハッ カーになる力なのです。


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