To: Linux-Activists@BLOOM-PICAYUNE.MIT.EDU From: torvalds@klaava.Helsinki.FI (Linus Benedict Torvalds) Subject: Birthday (was Re: Uptime found. Thanks to all) Date: 31 Jul 92 22:15:20 GMT |
> MINIXと違い、割り込みも好んで使うようになり、割り込みを扱う時
> に、原因を隠蔽しようとしないようにしました。(私は特に自作のハ
> ードディスクドライバを気に入っています。誰か割り込みドライバを
> ステートマシンにしませんか?)
> どこをとっても、移植しようとする人にとっては悪夢となるでしょう
>
> >仮想端末(pseudo ttys)BSDソケット、ユーザーモードのファイル
> >システム (/dev/tcp/kruuna.helsinki.fi/fingerを cat したの
> >で言えるのですが),tty 構造体の中のウインドウサイズ、POSIX.
> > 1 をサポートできるようなシステムコール。それから、BSD ス
> >タイルの長いファイルネーム。
>
> ほとんどのことが可能だと思いますが、(TTY 構造体には既にウイン
> ドウサイズのメンバがあります。)ユーザーモードのファイルシステ
> ムは別でしょう。POSIX についてですが、あればいいと思ってはいま
> すが、POSIX の刊行物は有料ですから、現在のところ選択の余地はあ
> りません。いずれにせよ、まだしばらくの間サポートしないものもあ
> ります。(まずはじめに、MINIX そっくりにしようと思っています)
>
> Linus (torvalds@kruuna.helsinki.fi)
>
> PS. ここで、物事を明らかにしたいと思います。勿論 LINUX 上で
> GCC や BASH、その他 GNU の [bin/file]utilities が走っていま
> すが、それほどデバッグは進んでいませんし、ライブラリも必要最低
> 限のものです。今の所、フロッピーディスクさえサポートしていませ
> ん。あと 2, 3 か月は配布する準備は整わないでしょう。それに加え
> て MINIX で出来る以上のことは、それほど出来ないでしょうし、
> MINIX に遠く及ばない点もあるでしょう。それでも、フリーではあり
> ます。(おそらく、GPL かそれに似たものの下で。)
確かに何かが私のマシンで動いていました。しかし、LINUX の上でコンパ
イルした GCC をその時すでに持っていたかは怪しいものです。(というよ
りも、LINUX を自慢しようという気持のあまり、このことは言わなかった
のかもしれません。)まだ、リリース前のことでした。
そして、10月5日には 0.02 をリリースしたようです。前にも書きました
が、0.01 ではバイナリでの配布はいっさいしませんでした。つまり、ソー
スコードのみで配布していて、LINUX がどんな様子か知りたい人を対象に
していました。0.01 にはあまり自信がありませんでしたから、興味をみせ
た人だけに覚書を送ることにしました。
> From: torvalds@klaava.Helsinki.FI (Linus Benedict Torvalds)
> Newsgroups: comp.os.minix
> Subject: Free minix-like kernel sources for 386-AT
> Message-ID: <1991Oct5.054106.4647@klaava.Helsinki.FI>
> Date: 5 Oct 91 05:41:06 GMT
> Organization: University of Helsinki
>
> 人は人として自ら望むデバイスドライバを書いていたMINIX-1.1の古
> き良き時代が懐かしくはありませんか? ちょうど良いプロジェクトが
> なくて、幼い頃から慣れ親たしんだ OS に手を加えようとして死んで
> いませんか? MINIX の上で全てがうまく行っている時にふとやり場の
> 無い気持に捕らわれませんか?夜行性の人間が素晴らしいプログラム
> に命をそそぎこむことはもうないのか? この投稿はそんなアナタのた
> めなのです:-)
>
> 一月(?)ほど前にも言いましたが、386 の AT 互換機用のフリーで
> MINIX にそっくりな OS を作っています。それが、とうとう(なにを
> 望むかにもよりますが)使えるという段階に達しましたので、ソース
> を大々的に配布したいと思います。今回はバージョン 0.02(+1(非常
> に小さい) パッチがあたってます)ですが、
> BASH/GCC/GNU-MAKE/GNU-SED COMPRESS 等を走らせることができまし
> た。
>
> この小さなプロジェクトのソースはnic.funet.fi(128.214.6.100)の
> /pub/os/linux にあります。このディレクトリには、README ファイ
> ルとLINUX上で動くバイナリが少々あります。(BASH, UPDATE, GCC,
> これ以上は尋ねて下さい :-)カーネルのソースも完全な形で上げてお
> きました。その中ではMINIXのコードはいっさい使っていません。し
> かし、ライブラリのソースは部分的にしかフリーでないので、今の所
> 配布するわけにはいきません。このシステムは、そのままコンパイル
> することができ、尚且つ動くことが確認されてます。ふぅ。(BASH や
> GCCのソースはやはり nic.funet.fiの/pub/gnu にあります。
>
> 警戒! 警告! 注意! これらのソースをコンパイルするには、まだ
> MINIX-386(と GCC-1.40 おそらく 1.37.1 でも可。しかしテストして
> ません。) が必要で、LINUX を走らせるのにも MINIX でセットアッ
> プしなければなりません。つまり、MINIX を持ってない人にとって
> は、今の所スタンドアロンではありません。現在なんとかしようと
> しています。また、今の所 LINUX はハッカーの「何か」がないと
> セットアップできません(?)。そういうわけで、MINIX86 の代わりに
> なるものが欲しいひとは、どうかこの書き込みは無視してください。
> LINUX 0.02 は、OS と 386 に興味があって MINIX が使えるハッカー
> を対象にしているのです。
>
> また、このシステムには、AT 互換のハードディスク(IDE はもってこ
> いです) と EGA か VGA が無くてはなりません。ここまで読んでまだ
> 興味のあるかたは、README や RELNOTES を読んだり、もっと知りた
> いとこがある人は私にメールしたりしてください。
>
> 「何故?」という言葉が聞こえて来るようです。HURD は1年(2年かも
> しれないし、2 か月かも知れないです。)以内には出てきそうです
> し、すでに MINIX があります。しかし、これはハッカーによる
> ハッカーのためのプログラムなのです。だから、私も楽しみながら
> 作りましたし、きっと誰かは見て喜ぶだろうし、その人自信のために
> 改造したりもするでしょう。まだ、規模が小さいので理解したり改造
> するのに困るようなこともないでしょう。そのようなわけで、皆さん
> のコメントを首を長くして待っています。
>
> それから、MINIX のユーティリティやライブラリ関数を書いたことの
> ある人はメールして頂けませんか? もし、それら皆さんの努力の産
> 物が自由に配布して良いなら(著作権の下ででも、パブリックドメイ
> ンのものでも)お知らせ下されば、件のシステムと一緒に配布するこ
> とができます。現在は EARL CHEWS ESTDIO を使ってます (EARL
> さん、素晴らしい、そして、使えるシステムをありがとう)し、この
> ようなものは大歓迎です。勿論皆さんの「(C)」はそのままです。自
> 分のコードを使ってもらって構わないという人は、お手紙ください。
>
> Linus
>
> PS. PHIL NELSONさんへ! 音信不通になってますよ。ずっと
> "forward error - strawberry unknown domain" 等のエラーを受け取
> ってます。
確かに動いていましたし、それを自分で確認した人もいます。しかし、
0.02 には酷いバグもいくつかあって(おまけにフロッピードライバも無け
れば、VM(仮想記憶)も無いというないない尽くしの状態)、あまり使い勝手
はよくありませんでした。
その後すぐに 0.03 がリリースされ(その当時でさえ 2 つのリリースの間
は最大に見積もっても 2,3 週間でした。)、非常に使勝手の良いものでし
た。そして、次のバージョン番号は 0.10 になり、この時から実際非常に
安定して動作するようになりました。次の投稿には、それから 2 か月の間
に出来るあるもののアイディアがありました。
> From: torvalds@klaava.Helsinki.FI (Linus Benedict Torvalds)
> Newsgroups: comp.os.minix
> Subject: Re: Status of LINUX?
> Summary: Still in beta
> Message-ID: <1991Dec19.233545.8114@klaava.Helsinki.FI>
> Date: 19 Dec 91 23:35:45 GMT
> Organization: University of Helsinki
>
> In article <469@htsa.htsa.aha.nl> miquels@maestro.htsa.aha.nl (Miquel van Smoorenburg) writes:
> >こんにちは *,
> > LINUXという386/486用のフリーのOSを作っている人々がい
> >ると聞いてました。どんな様子かと思って nic.funet.fi をぼち
> >ぼち見にいってました。ところが、私は生まれた時から FTP を
> >使える環境にないものですから、今現在何が起こっているのか、
> >知る由がありません。どなたか、そのことを知らせくれません
> >か?
> >おそらく、私がここで書いていることは的を射ているのではない
> >でしょうか。というのも、このニュースグループを読んで、密か
> >に期待してるひとが大勢いると思うからです。斯く言う私も、
> >>=386なマシンを持ってませんが、近い内に手に入れることに
> >しています。
>
> LINUXはまだベータで(もちろん、勇敢な人は FTP して利用できます
> が), バージョン 0.11 になりました。まだ、386-MINIX ほどの完成
> 度ではありませんが、勝っている点あります。 そのうち "Linux
> info-sheet" をその管理者が投稿するでしょう。それまでのつなぎに
> 私からなにか少し言えるでしょう。
>
> まず悪いニュース:
>
> - SCSIが無い: 現在作っていますが、まだ出来ていません。
> そういうわけで、AT互換のハードディスクが必要です
> (聞いた所によると、とある EISA 486 の上で AT ディスク
> をエミュレートするとある SCSI ディスクが動くそうです
> が、単に運が良かった以外の何者でもないでしょう。
ここまで見て来た通り、0.11 では既に小数ながら賛同者がいました。充分
とは言えませんでしたが、ちゃんと働いてくれました。
> init/login が無い: 立ち上げたら ROOT で BASH に入る。
次のリリースでもこれが普通でした。
> - 動いてるようなVM(ディスクにページングする)があります
> が、まだ配布はできません。そんなわけで、LINUX で GNU の
> バイナリ (GCCは格別) 走らせるには最低4M必要です。2M でも
> 立上りますが、コンパイルできません。
実際は 0.11+VM を 91 年のクリスマス直前にリリースしました。とはいっ
ても、私には必要の無いものでした。しかし、2MB でカーネルをコンパイ
ルしようとして失敗する人がいたので、VM をインプリメントしないわけに
はいきませんでした。0.11+VM のバージョンはテストしたいという小数の
人の手にしか渡りませんでした。しかし、思った通りに動いたのは、今で
も脅威です。
> - まだ MINIX を使う人のほうが大勢いる: サポートを万全に
> すべき。
>
> - 沢山の人々による長年に渡るテストを受けていないので、ま
> だ非常に沢山のバグがあるはずである。
>
> それでは、良いこと....
>
> - フリーである(著作権は私にありますが、極めてゆるやかな
> 著作権の下で自由に配布できます。
黎明期の著作権は GNU のコピーレフトに比べるとはるかに厳しいものでし
た。LINUX が人手に渡る時に金銭がやりとりされることを完全に禁止しま
した。
> - 楽しくハックできます
>
> - 本もののマルチスレッドのファイルシステム
>
> - 386 の特徴を活かしてます。だから、386/486 ファミリーに
> 固定されてます。しかし、他のチップに移植しようと思わなけ
> れば、非常にスッキリしています。
>
> LINUX は私に言わせれば、MINIX よりも良いです、勿論、私は少々贔
> 屓してますけど。
> LINUX は HURD が(来世紀かその頃に:)目指しているようなプロフェ
> ッショナルな OS にはなることは無いでしょう。しかし、LINUX は学
> 習用にもってこいですし( MINIX よりも向いていると思います。
> IMHO)、楽しみながらいじれます。
>
> Linus (torvalds@kruuna.helsinki.fi)
>
> --- 以下は私の .plan --------------------------
> フリーな 386 用の UNIX 91年第4四半期か92年第1四半期に登場
>
> 現在 LINUX はバージョン 0.11 で、UNIX のカーネルに必要なものじ
> ゃあらかた揃っています。init と login を作り、もう少しのテスト
> を経た後、1.0 をリリースできる予定です。現状ではブートの後で
> シェルに飛び込むことになります。
>
> LINUX は 'nic.funet.fi' (128.214.6.100)のディレクトリ
> '/pub/os/linux' から anonymous FTP で取って来れます。そのディ
> レクトリのなかに LINUX 上で動くバイナリもあります。現在は GCC,
> BASH, UPDATE, EMACS, TAR, MAKE, FILEUTILS があります。
> 走るシステムを手に入れた人もいますが、まだハッカーのシステムで
> す。
>
> LINUX をまともに使うには、今のところ AT ディスクが必要です。
> SCSI ドライバを作っている人々もいますが、いつ出来上がるかは定
> かではありません。
>
> 他のいくつかのサイトでも LINUX を置いてあります。というのも、
> NIC にはなかなかコネクトできませんから。そのサイトは
> Tupac-Amaru.Informatik.RWTH-Aachen.DE (137.226.112.31):
> directory /pub/msdos/replace
> tsx-11.mit.edu (18.172.1.2):
> directory /pub/linux
>
> 'Linux-activists@niksula.hut.fi' にセットアップされたメーリン
> グリストもあります。登録は、'Linux-activists@niksula.hut.fi'
> にお願いして下さい。
> 私にメールしてきても無駄です。実際私はこのメーリングリストとは
> 関係ありません。(私自身ごく普通のメンバであることを除いては)
>
> これ以上のことが知りたければメールを下さい
>
> Linus (torvalds@kruuna.Helsinki.FI)
>
> 0.11 で新しくなったこと
>
> デマンドローディング
> - 無関係なプロセス間でのコード/データの共有
> - 格段にましなフロッピードライバ (ほぼ完全に動きます)
> - バグがとれました
> - Hercules の MDA, CGA, EGA, VGA をサポートしました。
> - コンソールがBEEPするようになりました。
> (わお! 凄えカーネル :-)
> - mkfs, fsck, fdisk がつきました
> - アメリカ、ドイツ、フランス、フィンランドのキーボードが使えま
> す
> - COM1/2のスピードがセットできます
御覧の通り: 0.11 は本物のスタンドアロンでした。LINUX 用に初めて
mkfs, fsck, fdisk のプログラムを書きました。もう、セットアップに
MINIX は要らなくなりました。また、シリアルドライバも 2400BPS (私が
持っていたのはこれだけ)用にハードコーディングしました。
> まだ無いものは
> - init, login
> - renameシステムコール
> - 名前つきパイプ(named pipe)
> - シンボリックリンク
今ではこれらのものは全て揃いました。init, login は 0.12 のころは完
全にはできていませんでした。rename() は 0.12 と 0.95 の間のどこかで
組み込まれました。シンボリックリンクは 0.95。名前つきパイプに至って
は 0.96 の時でした。
> 0.12 は 1 月(15日あたり)に出るでしょう。そしてこんなことが実現
> されるはずです。
> - POSIX のジョブコントロール(tytsoより)
> - VM (ディスクへのページング)
> - 細かい点での修正
実際に 0.12 が出たのは 1月 5日のことでした。中には大きな修正もあり
ました。0.12 は非常に安定したカーネルでした。色々なハードの上で動く
ようになりましたし、長い間パッチが要りませんでした。また 0.12 のカ
ーネルは「遂にここまで来たか」というものでした。この時から LINUX が
広がるのが急激に加速しはじめました。初期のカーネルはまさにハッカー
専用でしたが、0.12 は本当によく動きました。
ここまでで 1991 の話はおしまいです - これでなにか答えになった思いま
す。
[1] | 編 注: LINUX は新しいバージョンになって移植性が向上しました。つま り、初期のバージョンでは、非常に沢山アセンブラで書かれた部分があり ました。しかし、今になってさえ正気の人間なら移植しようなどとはしな いでしょう。 |