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2. 一般的情報

この章ではラップトップ用電池に関する若干の技術情報、一般的な電力節約法を 取り扱います。ここで提供する情報は Linux に特化したものではありません。 ラップトップ通の方ならとっくに御存じのことばかりでしょう。

2.1 電池の種別

現在ポータブルコンピューターが一般的に採用している電池には三つの種類があ ります。

NiCd 電池は長年にわたって標準的な技術でした。しかし今日では時代遅れになっ てしまい、新型のラップトップはこれを採用しなくなっています。NiCd 電池は重 い上に、「メモリー効果」を生じやすいのです。完全に放電していないNiCd 電 池を充電すると、電池は充電前の充電度を「メモリー」していて、この値を次の 充電時にも使い続けてしまうのです。

メモリー効果が発生する原因は、電池の成分が結晶化することにあります。この 結果、電池の寿命が短くなってしまったり、著しい場合には完全にだめになって しまうのです。これを回避するためには、電池を完全に放電させてから、再び完 全充電するという作業を少なくとも数週間に一度は行う必要があります。

(メモリー効果に関する註記: Jomes Youngman さんは下記のようなかなり大胆な 電池の修理理法」(というべきかどうか)を御存じです。「NiCd 電池にメモリー 効果の影響がでてきたら、電池をコンピューターから取り外し30cm ぐらいの高 さから机か床の上に落としてください(水平に落とすようにしてください)。」と のことです。同氏がおっしゃるには、こうすると電池の中にできているメモリー 効果の原因となるヒゲ状の部分が壊れるのだそうです。この方法が NiCd 以外の 電池にも通用するかどうかは分からないようです)

カドミウムはたいへんな猛毒です。ですが、販売店に返却なさればカドミウムの 大部分を再生再利用に供することができます。

興味がおありかもしれないので、Nicd 電池の定格を掲げておきます。

セル電圧: 1.2 V
単位重量当り電力量: 40 Wh/kg
単位容積当り電力量: 100 Wh/l
最大電力量: 20 Wh
充電可能温度: 10 to 35 C (50 to 95 F)
放電可能温度: -20 to 50 C (-5 to 120 F)
貯蔵可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F)

現在低価格ラップトップが多用しているのが NiMh 電池です。この種類の電池に はNiCd より小型でメモリ効果の影響が小さいという特徴があります。

この温度の範囲内でも、室温が高すぎたり低すぎるときには障害が発生すること があります。NiMh にはそれほど危険ではなく毒性もない物質が使用されていま すが、再生・再利用を完全に行うことはできません(しかし、将来にはこの状況 にも変化があるでしょう)。

NiMh の定格:

       
セル電圧: 1.2 V
単位重量当り電力量: 55 Wh/kg
単位容積当り電力量: 160 Wh/l
最大電力量: 35 Wh
充電可能温度: 10 to 35 C (50 to 95 F)
放電可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F)
貯蔵可能温度: 0 to 30 C (30 to 85 F)

最近の高性能電池はリチウムイオン技術を採用しています。この電池には理論上 メモリー効果はありません。しかし場合によっては、同様の問題に見舞われるこ とがあります。リチウムイオン電池には環境に有害な物質は含まれていません。 とはいっても他の電池と同様に、再生・再利用向けに回収する必要があります。

LiIon の定格:

セル電圧: 3.6 V
単位重量当り電力量: 100 Wh/kg
単位容積当り電力量: 230 Wh/l
最大電力量: 60 Wh
充電可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F)
放電可能温度: -20 to 60 C (-5 to 140 F)
貯蔵可能温度: -20 to 60 C (-5 to 140 F)

電池の箱が同じように見えたとしても、他の種類の電池に取り替えることはでき ません。御使いの電池の種類とは充電の仕方が違うからです。さらに、大部分の 製造元が充電回路をラップトップに内蔵しているのも、他の種類に取り替えられ ない理由の一つです。疑問がある場合には、御使いのラップトップでもっと新し い種類の電池使えるかどうかを製造元に問い合わせてみてください。

長い間使用していなくても電池は少しづつ自己放電しています。またどんなに注 意を払っていても、500-1000 回充電すると電池を取り替える必要が生じます。か といって今のところ、交流に接続している間電池なしてラップトップを使用する ことはお奨めできません。電池はピーク電圧に対する保護機能をも果たしている ことが多いからです。

メーカーは数ヵ月ごとに電池の形状を変更しているので、数年前のラップトップ 用の予備電池を見つけるのは難しいかもしれません。在庫がなくならない内に、 予備電池をすぐ手にいれておくべきです。

2.2 電力の節約 - わかりやすい方法

システムの電力消費を削減するもっとも簡単な方法を以下に示します。もっとも、 そう多くの人がこのやり方を採用しているわけではないので「自明」のものとは いえないかもしれませんが...。

必要がないときには、ディスプレーのバックライトを暗くするか消してしまうか にしましょう。また TFT は DSTN より電力をたくさん消費します。(なぜ安いラッ プトップを買ったのかを説明するときの格好の口実になりますね)

(David Bateman さんからは「電池オン、ラップトップのディスプレーオフの状 態にして CRT スクリーンを使えば、電池の持ち時間が30%程度長くなる」との御 便りを頂きました。しかしこれはあまり役に立つ工夫ではありません。CRT につ なぐ電源があるなら、ラップトップ用の電源もあるはずですから。)

本当に必要な処理能力はどれだけかということを考えましょう。文書編集を大き く越えるような作業を家の外でやっていますか。(まあ私に限って言えば、家の 外で linux カーネルの構築をしたりはしませんね)電池で駆動している間 CPU の クロックを遅くしてやっても電力消費を削減できるのです。CPU のクロックを通 常速と低速に切り替えることができるラップトップはかなりたくさんあります。

電池駆動時には外付け機器類(印刷機、CRT モニタ、ZIP ドライブ、携帯カメラ など)の使用を控えましょう。私のラップトップの場合標準的なインクジェット プリンタを接続すると、電池の持続時間は120分から20分にまで減少してしまい ました。

内蔵機器類(ディスケットドライブ、ハードディスク、CD-ROM) の使用を必要最 小限にとどめましょう。特に CD-ROM にアクセスすると電池の持続時間は著しく 短くなってしまいます。

PCMCIA カードも大量の電力を消費します。ですから、不必要なときにまでモデ ムやネットワークカードを差しっ放しにしないようにしましょう。しかしながら この点に関しては PCMCIA カードメーカー間の違いも大きいので、購入する前に 製品の特徴をよく調べるようにしましょう。(使用していないときにも「切」状 態にならないようなカードもあるということです。)

軽いソフトを使いましょう。肥大したマルチメディアソフトは軽いワープロとは 比べ物にならないほどシステムやハードディスク/ CD-ROM を酷使するのです。

これからラップトップを購入しようとする場合、電池の持ちを重視するならセカ ンドレベルキャッシュつきのものは避けましょう。これがついていると速度は一 ないし二割上昇し、マルチメディアソフトが快適に利用できるようになります。 しかしそのかわり、電池の使用量も著しく増大します。Bjoern Kriews 氏による と、「ほぼ同一の機種で比較した場合、キャッシュなしが4時間半使えたのに対 し、キャッシュつきのものは2時間半しか使えなかった」とのことです。

購入を検討している方には、もう一つ助言を差し上げましょう。それは「最高速 の CPU を搭載した最新型には手を出さないように」というものです。大抵の場 合、メーカーは特に公表することなく既発売機種の改良を実施しています。古い CPU を採用した「新バージョン」の方は、同一機種の初期バージョンより発熱量 や電力消費量が小さくなっているのです。確かにラップトップ用に改良された CPU を使用していない「自滅型ラップトップ」も出回っています。本稿執筆時点 の最新世代ラップトップには Pentium-200 が搭載されていますが、電池の持ち 時間は20分ほど、膝を焦がしかねないほど発熱するという代物です。

さて、御分かり頂けましたでしょうか。Linux 搭載したラップトップで複雑な仕 事をするのは断念しようと考えるに十分な制約は上記のようにいくつも存在する ようです。(電池を節約する裁量の方法は、何もしないことです。そうすれば、電 池が上がるまでの時間をほぼ100%延長できるでしょう)

それでは、次に仕事の能率を犠牲にすることなく電力消費量を削減するために役 立つもっと実用的な方策を御紹介することにしましょう。


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