3. Linux の設定

モデムを接続して同期が取れたなら、Linux を設定して ISP へ接続するところ まで来たことになります。Linux システムを引き合いに出しますが、モデムに 10baseT で接続するタイプのものなら、たぶん何でも接続できるでしょう。ルーター やハブ、スイッチング・ハブ、PC などなどお望みのシステムを。ここでは、当然 Linux という側面から取り上げていきます。

Warning

ISP に接続する前に、セキュリティ関連事項をすべて 完璧に理解してください。DSL 経由でインターネットに直接接続する際に必要 になります。ISP にもよりますが、外部のユーザのほとんどはあなたのシステム にアクセスできます。何らかのフィアーウォールを設置して、ポートやサービス を落とし、たとえどこから来ようとも、あなたのマシンに接続する前にパスワード を入れるようにすべきです。 下記のセキュリティ・セクションを見てください。 また、リンク・セクションには、セキュリティに ついてさらにとても重要なトピックが書いてあります。 後の祭にならないように、事前に準備してください!

3.1. ブリッジ vs PPPoX ネットワーク

とうとう設置とシステム設定の最終段階に来ました。DSL 対応の様々な ISP が どのようにネットワークを構築しているか見ていきましょう。ISP がどのように 構築しているのかを知っておくのは、とても大切なことです。というのは、 それぞれのケースで様々な方法とステップが存在するからです。ここに書いて あることは ISP が公表している内容とは限りません。また Windows を使っていない ので、ISP が支給するセットアップディスクは役に立たないでしょう。怪しい と思うなら、ISP のテクニカルサポートや他のユーザに聞いてみてください。

さらにややっこしいことに、ISP の中には複数のサービス(様々な速度プランに 加えて)を提供するところもあります。たとえば、Verizon(旧 Bell Atlantic)は、 もともと固定の IP をブリッジ接続で提供していました。現状はすべて PPPoE で動的な IP を提供するようになっています。設置、設定面からすればこれは まったく別物です。

DSL ネットワークの 2 本柱は、ブリッジと DHCP の組み合わせと PPPoX です。 どちらのしくみも IP アドレスを取得とネットワーク設定に関連した細かな機能 がありますので、この点を心配する必要はないはずです。しかし他に心配事が あります。それは普通は気にしもしない接続手段についてです。必要なのは、 適切なクライアントを見つけだし、するべきことをして、接続を済ませ、動作 させることです。共通事項についてはこの後に議論します。

重要! まず ISP がネットワークに接続する設定をしているか を確認することが必要です。繰り返しますが、利用可能な主な接続方法は、 ブリッジと DHCP の組み合わせと PPPoE です。これらは相互に相乗りできないしくみ になっています。また実際には他の選択肢も存在します。ですから事前にこのしくみ が何であるかを正確に理解しておく必要があります。これは正攻法に他ならず、そう しなければ無駄な時間と労力を費やすはめになるかもしれません。手段に選択の余地 はありません。ISP がネットワークをどのように構築しているかに依存している からです。PPPoE はブリッジされたネットワーク上でも動作します。ただ、そこで ブリッジされているのか、されていないのかを知ってもあまり良いとはいえません。 プロバイダがルーターを提供してきたなら、チャンスです。そのルーターで自分の ファイアーウォールを構築できるかもしれません。

米国の Baby Bell(Regional Bell Operating Company の別名)のどこかと契約した なら、恐らく PPPoE を利用することになるでしょう。つまりそれは PPPoE クライアントが必要になることを意味しています。

いくつかのプロバイダ固有の FAQ や HOWTO は、下記の リンク集・セクションにあります。

3.1.2. PPPoX

現在主流となっているのは PPPoX で、これは PPPoE(PPP over Ethernet)と PPPoA (PPP over ATM)を指します。同類であるこれらのプロトコルは広がりつつあります。 ただすぐに PPPoE が主流となるでしょう。 PPPoX は割合と新しい技術で、その名の表す通り、Point-to-Point Protocol の 亜種で、DSL ネットワーク向きのプロトコルです。

Linux 用の PPPoE クライアントはいくつかあります(下記 参照)。PPPoX は疑似的にダイやルアップタイプの環境をつくります。ユーザ はユーザ ID とパスワードを使って認証します。この認証には RADIUS サーバを 利用しており、まさに古き良きダイヤルアップ PPP と同じしくみを使っています。 IP アドレスやその他関連の情報をクライアントに返します。もちろんダイヤルする という動作は必要ありません。どのようなメカニズムで実行しているかについては、 クライアントごとに違いますので、マニュアルを良く読むのが一番です。普通は pap-secrets のような設定をいくつかすることになります。 【訳註: RADIUS の詳細は、RFC2868 をご覧ください 】

PPPoE が USB のようなイーサネット以外のデバイスで動いたとしても意味がない でしょう。ドライバが正しくインストールしてあってもです。

ISP 側からすると、PPP はとても簡単にメンテナンスや障害解決が可能なしくみです。 ユーザ側からすると、PPP の分だけ設定に余計に手間がかかる上、CPU も使い、接続 もブリッジタイプと比較して安定していないようです。そのようなわけですが、 流行りになってきているようです。世界中の大規模な電話会社の多く、とりわけ米国 の RBOC(Regional Bell Operating Company の略称。Baby Bell とも言う)は、PPPoX を既に全面的に採用しています。PPPoX で接続する設定は、ブリッジと DHCP の組み 合わせの設定とは似ても似つきません。

3.2. WAN インタフェースの設定

DSL モデムで最も一般的な設定は"ブリッジ"モードです。 PPPoX や DHCP でもこの設定が必要になります。このやり方だと、普通 NIC が WAN のインタフェースになります。ここの部分で外の世界とシステムがつながって います(ルーターを持っているなら下記のルーター固有の説明を見てください)。NIC の設定は避けて 通れません。たいていは、"eth0" がイーサネットのインタフェース になっています。

PPPoX の場合、いったん接続が確立すると "ppp0" もしくはそれと似た インタフェースが現れます。これはダイヤルアップの場合とまさに同じです。これで PPP サーバと WAN 側のインタフェースとの接続がいったん確立します。この後は "eth0" に関連した設定をすることになります。

ISP が IP 接続を設定する方法は様々です。

個々に見て行きましょう。

3.2.1. 固定 IP の設定

"固定" IP アドレスは、アドレスの変更がないことを保証しています。 これはドメインを立てたり、公開サーバを運用したりしたい場合に都合が良い方法 です。 しかし、ISP すべてにおいて利用できるわけではありません。固定 IP アドレスには 際立った利点がありますが、アドレスの存在を"隠し"続ける ことがさらに難しくなるという欠点もあります。悪意を持った故意の攻撃から 身を隠すことは困難です。固定 IP アドレスを持っていなかったり、ルーター を持っていて、そのルーターに固定 IP が割り振られていたりするなら、この セクションは飛ばしてください。

ISP から指定された IP アドレスやサブネットマスク、デフォルト・ゲートウェイ、 DNS サーバなどの情報を設定してください。Linux ディストリビューション (Redhat、Debian、Slackware、SuSE 等)には、それぞれの設定方法がありますので、 お使いのディストリビューションのドキュメントをチェックしてください。それぞれ 独自のツールがあります。たとえば Redhat は netcfg を持って います。もちろん ifconfig route コマンドを使ってマニュアルでも可能です。Net HOWTO を見ればさらに詳しい情報があります。コマンドラインを使って、仮の IP を使った 例をお見せします。


 # ifconfig eth0 111.222.333.444 up netmask 255.255.255.0
 # route add default gw 111.222.333.1 dev eth0
 

正しいネームサーバを必ず /etc/resolv.conf に追加して ください。

3.2.2. ブリッジと DHCP を組み合わせた場合の設定

ブリッジしたネットワークを使った ISP は、普通 DHCP を使って IP アドレスと 認証をユーザに提供しています。ディストリビューションすべてには、少なくとも 1 つは DHCP クライアントがついています。最も一般的なのは dhcpcd のようです。 pump は Redhat ベースのディストリビューションについて きます。これは Redhat 6.0 時点での話です。DHCP クライアントは ISP のサーバ から IP とそれに関連した情報であるゲートウェイ・アドレスと DNS サーバ、 ネットワーク・マスクを"借りて"きます。ISP の設定にしたがって、 定期的に情報が"更新"されます。

DHCP クライアントをブート時に起動したいなら、ディストリビューションが用意 している方法を使ってください。普通 DHCP についてはほとんど設定することは ありません。というのも簡単に使用できるからです。"eth0" 以外に NIC を割り当てているなら、どのインタフェースを使うのかを指定する必要が あるでしょう。もちろんコマンドラインから指定することも可能です。詳しくは それぞれの man を見てください。

固定 IP でないなら、ISP はなんらかの方法で接続してきた相手が誰なのかを 知る必要があります。DHCP を使った認証プロセスには 2 つの方法があります。 まず最も一般的な方法は、ネットワークデバイスの MAC(ハードウェアの)アドレス を使うものです。普通これは NIC のアドレスになります。MAC アドレスは一意に 決まる値で、ブート時のメッセージの中に現れます。また ifconfig を使って、00:50:04:C2:19:BC のような 表現で見られます。はじめて接続する時には、ISP に MAC アドレスを知らせなけ ればなりません。

もう 1 つの DHCP による認証方法は、ホスト名の割り当てを使って行います。 この場合、ISP はホスト名の情報を伝えてきます。接続するに当たって、DHCP クライアントはサーバに対してこの情報を渡さなければいけません。 dhcpcdpump どちらとも "-h " というコマンドライン上のオプションでこの機能を実現しています。 詳細は、クライアントの man かディストリビューションについてくるドキュメント を見てください。

3.2.3. PPPoE の設定

PPPoE(PPP over Ethernet)は、ISP が接続を制御するもう 1 つの方法で、ISP 業界 では一般的になりつつあります。上記の固定 IP や DHCP と設定方法が全く異なり、 手間が少々かかります。最近のディストリビューションのリリースには、PPPoE クライアントが付いてきます。もし付いていなかったなら、ダウンロードしなければ ならないでしょう。http://freshmeat.net のような Linux の アーカイブサイトをチェックして見るか、下記を見てください。

GPL な PPPoE クライアントがいくつか利用できます。

  • The Roaring Penguin (rp-pppoe): http://www.roaringpenguin.com/pppoe/ は David F. Skoll 氏によるものです。とても簡単に設定ができるようで すので、まずこれからはじめてみてください。 これは Linux の PPPoE として、非常に評判の良いクライアントです。理由は、 簡単にインストールできる点と、現状いくつかのディストリビューションに バンドルしてあることです。rp-pppoe は ユーザモードで動くクライアントで、 カーネル 2.0 と 2.2 で動作します。カーネル 2.4 ではカーネルモードで 動作します。

  • PPPoEd: http://www.davin.ottawa.on.ca/pppoe/ は Jamal Hadi Salim 氏に よるものです。人気のあるもう 1 つの Linux クライアントで、いくつかの ディストリビューションにバンドルしてあります。カーネル 2.2 でカーネル モードによる実装になっています。設定スクリプトが入っているので、パッチ は当てる必要がありません。したがってインストールが早く、簡単です。また、 rp-pppoe(カーネル 2.0 もしくは 2.2 kernels)のようなユーザ空間で動くもの に比べて CPU を使いません。

  • PPPoE Redirector: http://www.ecf.toronto.edu/~stras/pppoe.html。これは pppd-2.3.7 以降のバージョンを使って、PPPoE を利用できるようにする リダイレクタです。 これ以外のシステム構成を再コンパイルする必要はありません。 カーネル 2.4 がカーネルで PPPoE もしくは PPPoA をサポートするまでのつなぎ です(現状活発に開発が進んでいるとは言えないようです)。

  • カーネル 2.4 は PPPoE をサポートします。2.4 用の PPPoE は http://www.shoshin.uwaterloo.ca/~mostrows にあります。Michal Ostrowski 氏がカーネルレベルの PPPoEのメンテナーです。

  • EnterNet は NTS(http://www.nts.com が開発した PPPoE クライアントで、GPL ではありません。ISP の中には Linux クライアント として配布しているところもあります。ソースコードも付いてきますが、 自由にダウンロードはできません(EnterNet については誰からも情報を 得られません でした)。

どのクライアントを選んだかによって、次の INSTALL の説明 とその他パッケージにあるドキュメント(READMEFAQ 等)が違ってきます。

PPPoE クライアントで一度接続すれば、下記の例(Roaring Penguin の出力例) ような状態になるはずです。この例では "eth0" にモデムが接続して あります。


$ route -n

Kernel IP routing table
Destination    Gateway      Genmask         Flags Metric Ref Use Iface
192.168.0.254  *            255.255.255.255 UH    0      0     0 eth1
208.61.124.1   *            255.255.255.255 UH    0      0     0 ppp0
192.168.0.0    *            255.255.255.0   U     0      0     0 eth1
127.0.0.0      *            255.0.0.0       U     0      0     0 lo
default        208.61.124.1 0.0.0.0         UG    0      0     0 ppp0


$ ifconfig
  
eth0    Link encap:Ethernet  HWaddr 00:A0:CC:33:74:EB
        UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
        RX packets:297581 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
        TX packets:266104 errors:1 dropped:0 overruns:0 carrier:2
        collisions:79 txqueuelen:100
        Interrupt:10 Base address:0x1300

eth1    Link encap:Ethernet  HWaddr 00:A0:CC:33:8E:84
        inet addr:192.168.0.254  Bcast:192.168.0.255  Mask:255.255.255.0
        UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
        RX packets:608075 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
        TX packets:578065 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
        collisions:105408 txqueuelen:100
        Interrupt:9 Base address:0x1200

lo      Link encap:Local Loopback
        inet addr:127.0.0.1  Mask:255.0.0.0
        UP LOOPBACK RUNNING  MTU:3924  Metric:1
        RX packets:1855 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
        TX packets:1855 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
        collisions:0 txqueuelen:0

ppp0    Link encap:Point-to-Point Protocol
        inet addr:208.61.124.28  P-t-P:208.61.124.1  Mask:255.255.255.255
        UP POINTOPOINT RUNNING NOARP MULTICAST  MTU:1492  Metric:1
        RX packets:297579 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
        TX packets:266102 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
        collisions:0 txqueuelen:10

注意: PPPoE はイーサネット・フレームに余計なオーバーヘッドを多少入れてしまい ます。したがって ppp0 インタフェースの MTU は、正確には 1492 という設定に なります。 MTU がこれより大きいと、Web ページを閲覧しようとした時に、見られないサイト が出てくるかもしれません。また他にも問題が発生して、いらつくことになる かもしれません。また LAN 接続をマスカレードしているインタフェースの MTU を 1452 に設定する必要があるかもしれません。この件は PPPoA やブリッジの設定 には当てはまりません。対象は PPPoE だけです!

実のところ PPPoE の設定にとって要となるのは、ローカル側と接続する相手側間に あるインタフェースが通常より少なくとも 8 バイト小さくする必要があるという点 です。普通、ルーターはすべて 1500 に設定してあります。ですから 1492 と いう値は、ローカル側としては正しい値です。しかし、もしかするともっと小さい値 の設定をしているルーターがあるかもしれません。これが Web ページを閲覧したり、 他のトラフィック上の問題を引き起こす可能性があります。この問題をテストする には、MTU の大きさをうまく動作するまで小さくしてください。

3.2.4. PPPoA

PPPoA(PPP over ATM)は、PPPoE よりも洗練された方法です。ハードウェアがほとんど 処理をしてしまうからです。また DSL のトラフィックが ATM に乗る点も優れた点 です。PPPoE のように接続する際にユーザ空間で動くクライアントを必要としません。 またイーサネット層にさらに余計なプロトコルを追加する必要もありません。 ただ認証は同じしくみです。ユーザ ID とパスワードを使って接続します。しかし イーサネット上でカプセル化は行わない点が異なります。

PPPoA は、ハードウェアですべての処理を完結するか、特別なドライバをデバイス に実装するかどちらかで実現します。PPPoE のようなクライアント・ソフトウェア は PPPoA には存在しません。ATM 用のパッチは、カーネル 2.2、2.4 用に用意 されています。また Efficient Networks 3010 のような ATM カードをベース としたプロジェクトも活動しています。Linux 上で ATM を使う ための ホーム・ページは http://lrcwww.epfl.ch/linux-atm/ です。またさらに情報が欲しいなら、 http://www.sfgoth.com/~mitch/linux/atm/pppoatm/ というホーム・ページ もあります。ここはこのプロジェクトでカーネル関係の開発をしてる方のサイトです。 現状の PPPoA の実装は、ハードウェアもしくはドライバをベースにしています。 Linux 用の PPPoA モデムのドライバは現状ではほとんどありません。上記のモデム は、一般の小売りでは流通していないようです。ISP がこれだけをサポートして いるとなると、困ったことになるでしょう。PPPoA が利用可能な外付けモデムは 利用できません。

PPPoA が ISP の唯一のオプションなら、PPPoA 接続ができるルータやモデムを 検討する方がいいでしょう。そうすればハードウェアがすべてをカバーしてくれ ます。

3.2.5. Alcatel イーサネット・モデムを使った PPTP と PPPoA の組み合わせ

Alcatel SpeedTouch Home イーサネット・モデム(Alcatel 1000 の後継機)はブリッジ と PPPoA の両接続方法に対応しています。モデム自体で、PPPoA プロトコル をサポートしています。PPTP と PPPoA の組み合わせの場合(RFC1483 に定義して あるブリッジ機能ではなく)は、Linux は PPTP(マイクロソフトの VPN)経由で モデムに接続します。Linux 用の PPTPのホーム・ページは、http://cag.lcs.mit.edu/~cananian/Projects/PPTP/ を使えば、快適に動作します。 PPTP のインストールに加えて、カーネルが PPP をサポートしていなければいけ ません。

このモデムは内部に設定のためのホーム・ページを持っており、ブラウザを 使って設定できます。デフォルトでは http://10.0.0.138 というアドレスに なっています(もちろん NIC のアドレスを 10.0.0.1 というような 10.0.0.0 のネットワークアドレスに設定する必要があります。これはモデムの設定用ホーム・ ページにアクセスするためです)。PPPoA で接続するには PPTP 形式で接続します。 もしデフォルトで動かなければ、プロバイダからまた別の設定を落としてくることに なるかもしれません。「VPI/VCI」や「カプセル化」の設定は、プロバイダに よって様々です。むろんモデムがプロバイダから届くのなら、既にすべて設定 が終わっているはずです。 【訳註:VCI(Virtual Channel Identifier)は、ATM で使用される仮想チャネルを 識別する番号です。VPI(Virtual Path Identifier)は、ATM で使用される 仮想パス(経路)を識別する番号です。いづれも ATM セルのヘッダに含まれており、 VCI は 16 ビット、VPI は 8 ビット長です。】

次のステップは pptp の設定です。これは pppd の設定ファイルである /etc/ppp/pap-secrets (もしくは chap-secrets) や /etc/ppp/options を設定に使います。このファイルにユーザ名と パスワードを設定してください。下記が例になります。

/etc/ppp/pap-secrets:


# client secret server IP address 
login@isp.com  *    my_password_here    *

   

そして /etc/ppp/options には下記のように設定します。

 
name "login@isp.com"
noauth
noipdefault
defaultroute

   

すべて正確に設定したなら、後はモデムのアドレスを指定して、PPTP をただ 起動するだけです。


 #pptp 10.0.0.138

注意: Alcatel はこのモデムの型番違いを数多く販売しています。すべてのモデムで この機能は利用できないかもしれません。またデフォルトの設定が違っているかも しれません。中古のモデムを購入する場合には、注意してください。

このモデムは、PPTP を同時に 1 接続までしかサポートしていません。

3.2.6. モデム組み込みルーターの設定

ISP の中には"ルーター"を接続デバイスとして提供するところが あります。普通はモデムを内蔵した小型ルーターです。またイーサネットベースの デバイスも持っています。Linux にとっては非常に都合が良い構成です。 やはりこのケースでも、動作するのに最も大切なのは互換性のある NIC です。

"ルーター"にはたくさんの長所があります。優れた点として、接続管理 や IP のカプセル化、認証があります。さらに外部のトラフィックから LAN を分離 できます。その他にも色々挙げられます。簡単に言えばすべてが可能です。ISP が 接続に必要なプロトコルに何を指定してきても、すべてに対応できる点は際立った 長所です。

ISP が PPPoX を必要としているなら、少しは楽ができます。ネットワークを利用 するのに、追加で何のソフトウェアもインストール・設定する必要がないから です。モデムのファームウェアで対応するからです。ただマイナス面もあります。 それは Linux をルーターとして使った場合や他のソフトウェア的な対応と比較 して、柔軟性を持ち合わせていないものがほとんどだからです。もちろん、 ルーターの背後に Linux をルーターとして設置すれば、どちらのネットワーク にとっても最高の環境となります。

ルーターを設置する作業はモデムと非常に似ていますが(上記参照)、ルーターの 設定自体は異なっています。1 "ホップ"目はルーター のインタフェースで、ISP のゲ−トウェイではありません。ルーターは 2 つの インタフェースを持っています。1 つはあなたのマシンがつながっている LAN 側、 もう 1 つは ISP がつながっている WAN 側です。外部にさらされているところは ルーターの WAN 側のインタフェースになります。

ルーターには事前にプライベート IP アドレスが設定してありますので、LAN 側からは接続ができるでしょう。これがゲートウェイになります。公開する IP アドレスは、WAN 側のインタフェースに割り当てます。通常これらのデバイス は、LAN 側の DHCP サーバとしても機能しています。したがって、DHCP クライ アントを dhcpcd もしくは pump (Redhat ベースのディストリビューションの場合)として起動しなければいけ ません。まずモデムやルーターの同期を確かめてください。間違いなく設定 するには、ユーザーズ・マニュアルやプロバイダからの情報を確認する必要があり ます。

PPPoX を使っていて、ここで触れている接続機能をルーターがサポートして いるなら、ユーザー ID とパスワードは少なくとも接続前に設定してください。 ブリッジと DHCP の組み合わせなら、ルーターの DHCP 機能を起動して、その MAC(ハードウェアのアドレス)をプロバイダに登録してください。ルーターの中には "MAC アドレスの複製機能"を使って NIC の MAC アドレスを伝える ものもあります。固定 IP でも同様に設定していください。

ルーターに直接アクセスする必要があれば、メーカーが設定したデフォルトの IP アドレスを知っていなければいけません。マニュアルを見るか、プロバイダに問い 合わせてください。NIC のインタフェースにはルーターと同じネットワーク・ アドレスを割り当てる必要があります。たとえば、ルーターが 10.0.0.1 という IP アドレスに設定してあるなら、インタフェースには 10.0.0.2(普通は eth0)を 設定してください。ネットマスクは、255.0.0.0 です。


 # ifconfig eth0 10.0.0.2 up netmask 255.0.0.0
 # route add -net 10.0.0.0
 $ ping 10.0.0.1

すべて順調にいったなら、ルーターは ping に応答するはずです。いつものことです が、この設定方法はディストリビューションごとに異なります。したがって、 ディストリビューションに付属のドキュメントをチェックしてください。 もうこれでモデムやルーターに ping できるようになっているはずです。うまく 行ったなら先に進んでください。telnet や Web ブラウザを使ってさらにルーター の設定を行ってください。

ISP がルーターを使用するオプションを何も提供していないとしても、サードパーティ メーカー製のルーターがあります。サードパーティメーカーとは、Netgear や Linksys、 Cisco、Zyxel、Cayman、Alcatel 等を指します。 すでにこれまで話してきた機能をすべてこれらの製品が実現しているだけでなく、 恐らくそれ以上の機能を持っています。プロバイダの DSL で本当に使用できるかどうか を必ず確認してください。ルーターは PPPoX 関連の心配の種を解消するのに適しています。

Caution

メーカーの中には、"ファイアーウォール"も行える製品として これらを位置づけているところがあるかもしれません。中には基本的な NAT (Network Address Translation or masquerading)以外の何もでもない場合もあり ます。これらはファイアーウォールとしてフルスペックでもなく、そもそも ファイアーウォールですらありません。購入する前には但し書きを良く読んで、 本当にファイアウォールとして機能するのに充分かどうかを理解しておいてください。

3.3. 接続

これで条件はすべて整いました。接続テストはすぐそこまで来ています。ISP の ゲートウェイへ ping をすると、そのラウンドトリップタイムが 10 から 75 ms になっているはずです。何かおかしいところがあるなら接続できないはずです。 上記のステップを見直すか、下記のトラブル シューティングセクションを見てください。