2. 設置

サービスを申し込む前に、多少調べておいた方がいいでしょう。それは適合試験 や設置手続きを電話会社が様々に取り決めているからです。米国ではこのセクション で説明することの多くが一般的に行われています。

2.1. 事前設置作業

DSL を選択する余地がない国は世界中にあります。お馴染みの電話会社もそうかも しれません! より対銅線を所有していますから、すべてを握っているわけです。

しかし米国ではそうではありません。規制緩和によってそうなりました。料金に ついてだけはなく、その地域で DSL サービスを提供している他のプロバイダを 調査すべき理由はたくさんあります。大規模な電話会社はあちこちにあって、 恐らく盛んに宣伝しているでしょう。しかし、小規模な独立系の ISP がますます 増加しています。これが DSL 市場の多様性を産み出しています。 多様性は良いことなのですが、多少混乱を引き起こしているかもしれません。 逆に言えば、その地域において 1 つしかなければ、選択の余地はありません。 しかしサービスが何であれ、受けることだけはできます。

電話会社が電話や DSL サービスを独占しているなら、このセクションの後半と それ以後数セクションは飛ばしてください。電話会社は適合試験や設置に かかわる作業を確実に行いますので、ただ終わるのを待っていれば大丈夫です。

DSL サービスすべてがこうであるとは限りません。地域で 2 つの企業が " ADSL" を提供していても、なすべきことが共通しているとは限りません。 実際にはたくさんの要因が存在しており、それがある ADSL プロバイダのサービス と他のプロバイダのサービスが異なっている要因となっています。考慮しなければ いけないことは、下記の通りです。

これら検討すべきこと、関連したことについては、 DSL の概略の付録にある モデム サービス品質プロバイダを選ぶ において更に詳しく議論していますので、読んでください。

プロバイダを決めて、サービスを申し込んだら、次は電話会社が回線が適合して いるかをチェックします。この作業で電話線をテストし、DSL の信号を扱うことが できるかをチェックし、どの程度のサービスが提供可能なのかを確認します。 この作業は多少時間がかかるかもしれません。電話会社が回線上の問題に出くわした 場合にはなおさらです。この段階で何も問題がない場合は、おそらく 2、3 週間後に 設置されます。ケース・バイ・ケースですが。

電話会社が回線の試験を行い、電話局側の終端の準備が完了すると、次のステップは 顧客側に必要になる機器の設置となります。配線工事とスプリッタ、フィルタの設置 を行います。もちろんモデムとソフトウェアの設定も行います。

2.2. 設置にあたってのオプション―自分でするか、しないか

既にどのように設置するのか、誰が設置するのかを決めたかどうかという段階 ではないでしょうか。この件はプロバイダの裁量任せになります。大半の国では、 電話会社がこの役を負っていて、ほとんど融通が効きません。米国のプロバイダの 多くは、"ユーザによる設置"オプションを用意していて、それで問題 ありません。この方法ですとプロバイダは接続キットを送るだけで、技術者を派遣 する手間が省け、コストを下げることができます。一般的にはユーザ設置キット には POTS(Plain Old Telephone Service)用のマイクロフィルタと電話ジャック、 モデム(もしかすると NIC)、そしてドライバが入った CD-ROM 等が入っています。 場合によってはマイクロフィルタの替わりにスプリッタが入っているかもしれません。 いずれのケースでも、DSL ラインでない方に、何かしらかのフィルタが必要になり ます。DSL の信号で発生したノイズが POTS デバイスに影響を与えるかもしれない からです。

その他の選択肢として、プロバイダが設置するパターンもあります。繰り返します が、これはオプションです。コスト高になりますが、訓練を積んだ技術者がどの ような配線作業もしてくれます。さらに素敵なオプションを受けられるかもしれ ません。それは "スプリッタ設置付き"オプション(素晴らしい!) です。このオプションを使うと、回線が何かおかしかったり、電話会社が回線を 適切に敷設していなかったとしても、技術者が素早くオンサイトで正常な状態に できる可能性があります。

ユーザ設置用のキットには、詳細な解説がついてくるはずです。設置がスプリッタ・ タイプであろうとフィルター・タイプであろうと関係はありません。したがって、 ここではこれ以上詳しく触れません。

2.3. 配線と設置のオプション

配線のしかたは、どのようにサービスが提供され、誰が作業を行うかによって さまざまです。また誰が DSL サービスを提供するかにもよります。電話会社が 設置を行うなら、このセクションは飛ばしてください。

図 1: DSL のブロック図 スプリッタ有りの電話回線 (NID は図示せず)


       <--------Home/Office-----><---Loop---><--Central Office-->

 POTS  X-------+
 phone,        | 
 fax,          | 
 etc,          | 
               |                                 CO
               |                               -------
               |                               |     |
               |                               |     |
               |            -----              |     |
 POTS  X-------+----Voice--=| S |              |  D  |
                            | P |              |  S  |=- Voice Switch
                            | L |    2 wire    |  L  |
                            | I |=------------=|  A  |
                            | T |  Local Loop  |  M  |=- ISP --> INET
           ---------        | T |              |     |
 Linux X--=| Modem |=-Data-=| E |              |     |
           ---------        | R |              |     |
                            -----              |     |
                                               -------

    

図 2: スプリッタ無しの DSL (別名 フィルタタイプ) のブロック図


       <--------Home/Office-------><----Loop---><--Central Office-->
                                      
 
 POTS  X--Voice---[RJ11]------+
 phone,          (filter)     | 
 fax,                         D                      CO
 etc,                         a                    -------
                              t                    |     |
                              a                    |     |
 POTS  X--Voice---[RJ11]----- &                    |  D  |
                 (filter)     V  -----             |  S  |=- Voice Switch
                              o  | N |   2 wire    |  L  |
                              i-=| I |=-----------=|  A  |
                              c  | D |  Local Loop |  M  |=- ISP --> INET
                              e  -----             |     |
           -----------        |                    |     |
 Linux X--=|  Modem  |=-------|                    |     |
           -----------                             -------
 
 
    

2.4. ユーザが自分で設置―配線について

自分で設置をしないのなら、このセクションは飛ばして Linux の設定に進んでください。マイクロフィルタを使って設置するなら マイクロフィルタのセクションに進んでください。 これから説明するのは、配線のしかたについてです。ご自分の場所とは違った説明 になるかもしれないので、ご了承ください。これから説明する注意事項や安全に 関する説明には必ず従ってください。マニュアルをしっかり読んで、電話会社が 行う配線方法にも精通していてください。

まず最初にプロバイダに接続することからはじめましょう。回線上でサービスが はじまっているのか確認してください。あわせてスプリッタや DSL 用のジャック が設置してあるかということも確認してください(もしかするともっと良い配線 方法があるかもしれませんので、下記の「ホーム・ラン」セクションをすぐに 見てください。

電話会社のより対線は、一般的に束線当たり 1 対以上の線になっている点を 知っておいてください。2 対が普通ですが、それ以上の場合もあります。1 本の 電話回線しか使っていなければ、残りの対は未使用です。この場合だと DSL 用に 配線ができます。線の対は色分けしてあり、簡単に区別できます。SDSL と IDSL は、専用もしくは "電話サービスでは使っていない"より対線が 必要になります。 使用していない対線が使えるなら、配線をし直す必要はまったくありません。既存 のジャックにより対線を間違いなく挿して、モデムを取り付けるだけです。

2.4.1. ホーム・ラン

 

" 電話局が通りの反対側にあったなら、マイクロフィルタを使っていなかった でしょう。スプリッタが唯一の手段です。 "

 
--BellSouth の ADSL の設置(撤退済み?)  

DSL モデムを配線する最適な方法を"ホーム・ラン(homerun)" と呼ぶこともあります。 どうしてこう呼ばれているかというと、1 本の短いストレート・ケーブルをスプ リッタからモデムの DSL ジャックに直結するからです。こうすることで、既存の 宅内配線を通らずに済み、密かにかかえている問題―POTS ジャックのどこかが 腐食しているとか―を回避できるかもしれません。宅内配線の欠陥は、DSL の 信号を減衰させます。

またこうすることで、無線周波妨害(RFI。Radio Frequency Interference)による 障害も避けられます。経路のどこに RFI があっても DSL にとっては致命的です。 モーターやトランス、電源装置、高輝度の照明器具、調光機等からケーブルを 離して配線してください。それが懸命な方法です。まれにマイクロフィルタが壊れて 障害を引き起こすこともあります―複数箇所が壊れるのではなく、1 箇所が おかしくなるケースです。また カテゴリ 5 のようにグレードの高いケーブルを 使うように してください。

既設のものが"スプリッタ無し"(つまりマイクロフィルタを複数使う) 場合は、ホーム・ランへ移行するのにスプリッタを購入せざるを得なくなります。 もちろんそれには配線も新規にする必要があるでしょう。 またマイクロフィルタは有効回線長を伸ばします。ケースにもよりますが、 スプリッタ当たり 700 フィートほどになります! 複数のマイクロフィルタが設置 してあり、同期速度や距離が限界に近いなら、フィルタを取り外せばかなり改善 するかもしれません。

安上がりなスプリッタには、NID 内部にマイクロフィルタを使ってごまかしているもの があります。"本格的"ではありませんが、たいていはうまくいくよう です。

2.5. 配線とスプリッタ

スプリッタ無しの場合(たとえば"マイクロフィルタ"利用)や専用線 の場合は、この部分を飛ばしてください。

スプリッタは普通 2 つに分けられます。それはスプリッタ自身と屋外に設置する 小さな筐体です。Network Interface Device (NID)(SNI や ONI とも呼ぶ)の場所 に電話会社が指定した単位ごとにスプリッタとともに筐体を取り付けます。通常は 屋外の電話線があるところに取り付けます。NID のそばに付けてください。 電話会社がスプリッタのメンテナンスをできるようにする必要があるので、家の 外でいじれるところにあった方がいいでしょう。しかし必ずしも外にある必要は ありません。

束線は、少なくとも 2 本の独立した対線であるはずです。スプリッタにはその内 1 対必要で、それを 2 本の単線に対して信号を分離します。束線の内 1 対は すべての POTS ジャックに、残りは DSL モデムのジャックにつながります。 電話会社からの回線をスプリッタの LINE 側に接続してください。内側の線は 電話を VOICE 側に、モデムを DATA 側に接続してください。

チェックポイント。この段階でスプリッタの 音声側からダイヤル音がしているはずです。そうなっていなければ、間違って配線 してしまったことになります。またモデムを NID のテスト用ジャックに挿すことも 可能です(こうすべきです)。モデムの電源コードを挿してください。回線が準備され ていれば、数分もしない内に"同期"が取れるはずです。このテスト にはモデムだけが必要です。(内蔵もしくは USB タイプのモデムは同期を行う前に ドライバをロードしておく必要があります。これはコンピュータも同じ場所にある ということを意味します)。

2.6. DSL ジャックを配線する

DSL の宅内ジャックをコンピュータの場所に配線しましょう。すでにスプリッタ の DATA 側には接続を済ましてあるはずです。細かいところはそれぞれの状況に よって違いますが、一般的には 1 対の線を DSL ジャックに接続しているのでは ないでしょうか。接続する向きをしっかり確認してくだ さい。DSL と RJ11 間の配線は、電話と DSL ジャックとは異なるかもしれない からです。 加えて―モデムによって信号が乗る対が異なります― ほとんどのものは内側の対ですが、中には外側の対を使うものもあります。

図 3: RJ11 の配線例

 
    ||
    ||
    ||
   /  \
  |RJ11|   
  |    |  
   ----
   ||||
    ^^  <-- 内側    ほとんどのモデムは内側の対を使う
   ^  ^ <-- 外側    中には外側を使用するものあり。たとえば Alcatel 1000 や 
                  SpeedTouch Home

   

2.7. マイクロフィルタの設置

ここはとても簡単です。"スプリッタ無し"タイプを設置するなら、 支給されたマイクロフィルタを電話ジャックすべてに取り付けてください。 ただし、DSL モデムがつながっているところは除きます。 FAX 機器やアナログモデムのようなデバイスもお忘れなく。フィルタは DSL が使う高周波をカットし、POTS 機器が DSL のノイズと干渉しあわないようにします。

注意! 何らかの警報システムを使っている場合、マイクロ フィルタは使わない方が懸命です。警報システムは様々な問題を引き起こす可能性 があり、警報のタイプやどのような設定をしているかによって異なります。この ケースはスプリッタの使用を推奨します。

2.8. イーサネット・モデムの設定

設定する時はモデム(またはルーター)の電源コードをつないで、DSL の宅内 ジャックとモデム間を電話線で結びます。このケーブルは支給されます。もし されなかったら、普通の電話線で充分です。イーサネットのインタフェースを 持ったモデムなら、イーサネット・ケーブルを NIC とモデム間を結びます (この時点でイーサネット・モデムの動作を必ずしも確認する必要はありません)。

チェックポイントここでは、モデムが 電話会社の DSLAM の信号と同期することを確認します。たいていモデムは 緑色の LED があり、信号が良好な時に点灯します。赤もしくはオレンジ色 の場合は同期していません。モデムのマニュアルには LED についてさらに 詳しい説明があると思います。同期しなければ配線をチェックして、DSL の 信号が届いているかどうかを確認してください。信号の確認をするには、 電話会社に電話して、サービスがはじまっているか聞いてください。 もしくは NID(上記参照)にあるテスト用ジャックにモデムを挿してテスト してください。回線にダイヤル音が乗っていても、それは DSL の信号がきて いることの確認にはなりません。逆も同様です―ダイヤル音があって DSL 信号 が無い、DSL 信号があって、ダイヤル音が無いということは充分 起こりえます。設置や動作が完璧なら、音声回線上には空電やノイズは 出ないはずです。

2.8.1. イーサネット・ネットワーク・カード(NIC)の装着

当たり前ですがイーサネット・モデムにはイーサネット・ネットワーク・カードが 必要です。 まだ持っていないなら、Linux マシンに NIC を入れて、カーネルを再構築し、 モジュールをロードする等してください。時にはこれが大きな悩みの種になります― NIC を認識して動作させることが。Linux には参考文献がたくさんありますので見て ください。たとえば Ethernet HOWTO には更に詳しい情報が載っています。下記の トラブル シューティング・セクションもあわせて見てください。すでに NIC を持って いるなら、もしかすると意外に早く解決するかもしれません。

NIC とモデム間を RJ45 ケーブルを使って接続していることを確認してください。 ケーブルは"電源をいれたまま抜き挿し"できます。つまりこのため に電源を落とす必要はありません。

ここで NIC が確かに動いているかどうかをすぐにテストできます。まずインタ フェースをアップしてみましょう。ping を打って見てきちんと 反応するかを見てみましょう。最後に ifconfig でエラーを チェックしてみましょう。


# ifconfig eth0 10.0.0.1 up


$ ping -c 50 10.0.0.1
PING 10.0.0.1 (10.0.0.1) from 10.0.0.1: 56(84) bytes of data.
64 bytes from 10.0.0.1: icmp_seq=0 ttl=255 time=0.2 ms
64 bytes from 10.0.0.1: icmp_seq=1 ttl=255 time=0.2 ms
64 bytes from 10.0.0.1: icmp_seq=2 ttl=255 time=0.1 ms
<snip>

- 10.0.0.1 ping statistics -
50 packets transmitted, 50 packets received, 0% packet loss
round-trip min/avg/max = 0.1/0.1/0.2 ms


$ ifconfig eth0
eth0    Link encap:Ethernet  HWaddr 00:50:04:C2:09:AC  
        inet addr:10.0.0.1  Bcast:10.255.255.255  Mask:255.0.0.0
        UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
        RX packets:428 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
        TX packets:421 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
        collisions:0 txqueuelen:100 
        Interrupt:10 Base address:0xc800 

"eth0" がエラー無しに立ち上がれば、ping を 打ってもエラーは出ないはずです。ifconfig が何もエラー を出していなければ、ハードウェアは恐らく仕様通りにすべて動いています。 ここまでで Linux を設定しはじめる状態にまできました。そうでなければ下記のトラブルシューティング・セクションを見てください。

知っていれば: モデムの中にはすでに 10baseT を クロスの状態に配線してあるものがあります。これは直接 カテゴリ 5 ケーブルを NIC に接続し、クロス・ケーブルは使用しません。私はこれがわかるまで 12 時間 近くも時間を無駄にしました。同じ間違いをしないように―まずマニュアルをきちんと 読みましょう。

2.9. USB モデムの設置

USB モデムの設置は、イーサネット・モデムの場合とほとんど違いはありません。 イーサネット・カードがいらなくなっただけです。電話線を DSL の宅内ジャック とモデムの DSL ポートの間に接続してください。そして USB ケーブルを コンピュータの USB ポートに取り付けてください。

USB モデムがきちんと同期して動作するには、ベンダーやそのモデルごとに専用の ドライバが必要になります。Alcatel の SpeedTouch USB を使っていると仮定すると、 ドライバは Alcatel のドライバのホーム・ページ(http://www.alcatel.com/consumer/dsl/supuser.htm#driver) から落とせます。 このドライバはカーネル・モジュールで、バイナリとソース両方を用意してあります。 このドライバにはカーネル 2.4.1 以上が少なくとも必要となります。必要な機能を 生かすには、さらに追加のソフトウェアとカーネル・パッチをインストール しなければなりません。ドライバには簡単な説明がついています。コードの大部分 はまだ実験段階で、完璧に安定してるとは言えないようです。初心者用ではありま せん!

このドライバは PPPoE と PPPoA 両方ともサポートしていますが、それぞれが動作 するステップはまったく異なります。ステップ・バイ・ステップで説明している 付録を見てください。