Chapter 1. はじめに

Linux における日本語ロケールには統一された名称が存在せず、どのような ロケール名称を使用すべきかについて色々な場所でたびたび議論されてきた。

日本の Linux の黎明期には真鍋氏の手による JE がほぼ唯一の日本語環境 であり、それが採用していた "ja_JP.ujis" が事実上の標準のロケール名称 であったという歴史的経緯がある。しかし現在では、様々な Linux ディス トリビューションが提供されるようになってきており、これにともなって日 本語環境も多様になってきた。

また過去においては Linux の C Library にはロケール機構の実装は行われ ておらず X Window System の提供するロケール機構を使用していた。近年 になって X のロケールから GNU C Library version 2 に実装されたロケー ルへの移行が進んでいる。残念ながら現時点では日本語をはじめとする多バ イト文字のロケール機構は機能していないが実装作業が進行中であり、近日 中に利用可能になるものと思われる。

この時期に日本語ロケール名称の不統一という状況を放置していた場合には 各ディストリビューションの日本語環境で独自の名称や機能が採用されるこ とになり、不要な差異をもたらすことになる。このためアプリケーションの 開発者や利用者に混乱をもたらすことにもなりかねない。この問題を指摘し、 混乱を事前に防ぐのがこの文書の目的である。