A.11. モデムと国際電話の必要条件

モデムが電話ネットワークに接続するのに適していると証明するような、 国際的な承認手順はありません。技術的な共通規格が揃っており、 モデムを世界規模の電話の交換ネットワーク上で使用する際は、 その規格を満たさなければならないのですが、 その存在を無視しているのです。ですから、 ある国で承認したことが他の国の標準で認知されるということはほとんど、 あるいはまったくありません。

モデムを使う上で必要となる国内の技術要件はあります。 共通の必要条件は、 2回目の呼出音の後で応答するように、 モデムとそのソフトウェアを設定することと、 同じ話中の番号あるいは間違っている番号に、 連続 6 回以上はかけないことです。

通信用機器の承認

ほとんどの国では、 未承認の通信装置を使用したりあるいは輸入したりするのは犯罪になります。

さらに、ある種の装置を操作するには認可が必要になる場合があります。

プライバシーに関する法律によって、 発信者識別記録でできることが規制されているかもしれません。

プッシュホンの電話が世界中どこでも使えると決めてかかってはいけません。 十進法に基づいたダイヤルに関しては、共通の標準が無いのです。 ゼロの列が一番長い国々もあれば、ゼロの列が一番短い国々もあります。

国内の電話番号プランには、国際的な協調があまりありません。 国際識別番号をダイヤルするつもりで、 国内の緊急サービス番号に電話しないよう注意して下さい。 一般的な緊急サービス番号は、112, 911, 000 ですが、 国際識別番号は国によって違います。

無料電話のようなインテリジェントネットワークの機能は、 国外から発信する電話では普通は利用できません。

国際電話は海底光ケーブルや衛星通信、 あるいは短波無線を通ってくることがあります。 このような伝送方式では、使用可能なビットレートにかなり違いがあります。 海底光ケーブルだとエラーがなく、スループットも最大になると思って下さい。 衛星通信だと 1200bps から 2400bps までで、エラーもいくらかあるでしょう。 HF 無線だと 75bps から 300bps までで、 エラーも多くなります。

距離によっては遅延も相当出てくるでしょう。 モデムのエラー訂正ウィンドウよりも遅延の方が大きくなった場合、 モデムの HDLC ベースのエラー訂正を無効にすれば、 Zmodem のファイル転送性能はもっと良くなります。

国際電話ではその信号がかなり変わってしまうかも知れません。 従来国際電話はエコーを最小限にするために、 アナログのコンディショニング回路を通るようになっています。 このコンディショニングのせいで、 モデムで使用できるビットレートの最大値が制限されているのです。 たぶん 9600bps 未満でしょう。 ガードトーン を出すようなプログラムを作って、 アナログのコンディショニングを無効にできるかも知れません。 でもこれは通信会社によって様々だし、 ガードトーンを送出するコマンドはモデムによっていろいろです。

最近の国際回線、特に国際コーリングカードでアクセスする回線では、 デジタル音声圧縮を使っています。 こういったデジタル圧縮している回線では、 信頼できるモデム間接続は確立できません。 現時点でこういったデジタル圧縮の回線を識別する一番いい戦略は、 バックグラウンドのノイズを聴くことです。 つまり誰も話していない時には、 バックグラウンドノイズは合成されたバックグラウンドノイズ (サイレンスサプレッション という圧縮技術) に置き換わります。