(本文中 JLUG Web Site とは, 現在の www.linux.or.jp にあたります. JLA (日本 Linux 協会) の Web site は jla.linux.or.jp に 移管されました.)
JLUG web サイトの管理グループ (以下, 単に Webmasters と呼ぶ) には, 「管理のお手伝いをしたいのですが, JLUG の web サーバというのはいったいどこにあるのですか?」 という質問メールが時々届く.
物理的な意味合いから言えば, プライマリサイト(一次サイト)は 島根県の松江市に存在する Linux マシンだ(1999年2月現在). これに加えてネットワーク的なトポロジーに配慮して 4つのミラーサーバを稼働させ, アクセスの分散を図っている. 一方, 誰がコンテンツを管理しているのかという意味では, 北は仙台から南は福岡までの全国各地に在住する, 数十名のユーザ有志のグループだ. 地理的に離れているために, 互いに会ったことのないメンバーも多い.
通常なら, マシンのあるところに行って作業すると考えるのはごく自然だから, どこにあるのかという質問には意味があるだろう. しかし, Webmasters での作業はちょっと異なり, あまり意味をなさない. だからむしろ, そんな離ればなれのメンバー達がどうやって共同で管理作業を 行なっているかの方に焦点を移してみたい.
他の同種のプロジェクトと同じく, Webmasters メンバー間の意見交換の手段としては 基本的には管理用のメーリングリストを作って利用している. しかし, 実際のコンテンツ更新作業には, CVS というシステムを利用して 省力化・効率化を図っている.
CVS (Concurrent Versions System) とは, ネットワーク対応のバージョン管理システムのことである. もともと CVS はプログラム開発に利用されることが多いシステムであり, FreeBSD 方面では 以前から広く利用されていた. また, Mozilla, Apache, KDE, GIMP (その他の利用例は Cyclic software の "Projects and Companies" ページ を参照) などでも利用されるなど, 特に大規模ソフトの開発を効率よく進める上で 最近では欠かせないシステムである. (なお, CVS の技術的な側面からの解説は機会を改めたい. )
さて, CVS を利用すれば,
といった数々の恩恵を受けることができる. そこで, Webmasters ではソフト開発でなく webサイトの コンテンツ管理のために CVS を全面的に導入している.
既に, 各HTMLの一番下のフッタ部分に
$Id: 19990210.html,v 1.23 2008/01/02 17:22:58 takei Exp $
という暗号のような文字列が書かれていたことにお気付きだったろうか? 実はこれが CVS システムが管理しているID番号なのである. (正確には RCS で管理していても良いが).
現在 Webmasters には数十名のメンバー中, 10数名の CVS committer (コンテンツを変更する権限を持っている人)がおり, 各自の余暇を使ったり仕事の合間をぬって コンテンツの維持管理作業に日々いそしんでいる. ただ, もちろん CVS だけではどうにもならない問題も多い. そのため, 活発な意見交換がメーリングリストも併用して行なわれており, そこでまとまった結果を CVS を使って実際のサイトに反映させている.
CVS という, 一見複雑で面倒そうな管理システムを, なぜわざわざ導入しているのか? それは, 「人的リソースが分散している状況でも, 多人数での共同編集作業をきわめて効率的に行えるから」だ. このような CVS を使った web コンテンツ管理というのは 何も新しいアイデアではない. 今では知的労力を効率的に集約する一般的な手法の一つだと言えるだろう.
これまで数ヵ月にわたって実際に CVS を使ってコンテンツの更新作業を 行なってきたが, 作業効率は確実に良くなった. これは, 鮮度の良くなったページ群を見て頂ければわかるだろう. ニュース & アナウンスは その典型で, 数名であちこち非同期につっつき回しているのにも関わらず 破錠せずにうまく更新できているのは CVS のおかげに他ならない.
実際, コンテンツの改善作業はいっとき停滞しかけたのだが, CVSの導入にあわせて急激に作業が進んだという事実がある. もちろん, CVS導入だけが作業を後押しした要因ではなくて, もっとも重要だったのは, 焦れたメンバー間での 「何としても改善するぞ」というモチベーションの高まりだった. しかしそれをある程度割り引いたとしてもなお, CVS が作業の円滑化に大きく寄与したことは疑いない.
JLUG web サイトのような, 分野的に多岐にわたるコンテンツを維持改善していく上で, 一番大切なことは 「ユーザからのフィードバック」である. しかしそのフィードバックを受け付けて取り入れる仕組みが, 以前は残念ながら整っていなかった. そのためどうしても更新が滞りがちであったのである. 作りっ放しでメンテされなかったり いつまでも工事中のコンテンツが存在すると, サイト全体の信頼度を落としたりユーザ離れを招くことにつながる. その結果は改めてここで言うまでもない.
しかし現在では CVS を使うことで, 有志のボランタリな活動だけでも活発に更新することのできる 強力な仕組みを整えつつある. もちろん, まだまだ不備な点は残されており万全とは言えないが, それでもかなりの部分は改善されたとおもっている.
だから, あなたがwebブラウザで見ていて気になった点がもしあれば, 何はともあれ, まずは Webmasters に報告して欲しい. たとえばミスタイプやリンク切れを見つけたのだったら,
http://www.linux.or.jp/foo/bar.html の下の方では, ... となっていますが, 正しくは ... です. とりあえず報告まで.
というメールを投げるだけで構わない. あるいは, 当然紹介されていてしかるべきページへのリンクが 無かった場合でも同様だ.
あなたの報告は, (取り入れるべきと判断されればだが, ほとんどの場合はそう判断する), 報告を見た committer のうちの誰かが速やかに, そして確実に反映するだろう.
どんな些細なことでも構わないから, 積極的なご意見を頂くことを私たちは願っている. JLUG web サイトは, まだまだ成長の途上にあるのだ.