Linux の特長の一つとして, ユーザの立場に立って作成・整備された ユーザ自身の手による膨大な文書群の存在が挙げられます.
Unix では伝統的に, プログラムの利用法は man ページと呼ばれる オンラインマニュアルによって提供されてきました. しかし man ページはプログラマや経験を積んだ管理者を 読者として想定していることが多く, 初心者が man ページだけを頼りに環境構築を行うことは なかなか困難なことであると言わざるを得ません.
そこで Linux のコミュニティでは, 雑誌の記事のようにわかりやすい解説を 話題別に分類されたかたちで用意しようとする努力がなされてきました. このような文書は「HOWTO 文書」と呼ばれ, 海外では Linux Documentation Project によって, また国内では JF によってまとめられています. また, この両者ではフリーな文書を書籍として刊行する努力もなされています.
しかし, いかに解説文書が整っているとはいっても 実際にソフトウェアの細かな設定を行ったり, プログラムを作るときに関数の引数を調べたりするときには どうしても man ページを参照する必要があります. ところがほとんどの man ページは英語で提供されているため, 多くの人々にとっては大きな壁になってしまいます. これを解決すべく NetBSD や FreeBSD ですでにスタートしていた man ページの日本語化プロジェクトに触発され, Linux コミュニティでも JM プロジェクト によって鋭意 man ページの翻訳が進められています. 同プロジェクトではすでに 650 以上のページを日本語化し, これを公開しています.
なお, 市販の書籍に関する情報については, Linux 関連リンク: 雑誌・書籍一覧をごらんください.
JF Project は国内にある Linux 関連文書の集大成とでも言うべきもので, テキストを tar+gzip したアーカイブで 3 MB(!)もの分量を誇ります. それぞれの文書はトピックに絞った形で書かれており, 通読すれば経験のないユーザにも一通りのことがわかるように配慮されています. 何かで困ったり行き詰まったりしたら, まずこちらのサイトを訪ねてみましょう.
JF には下記 LDP 文書などの翻訳の他, 国内のユーザによって書かれた多くの文書が含まれています. JF の成果物は Web サイト のほか FTP でも配布されています. 具体的な JF の活動については Linux JF って何? のページと, そこから辿れるリンクを参照して下さい.
JM プロジェクト では, オンラインマニュアル(man ページ)の翻訳と配布を行っています. また翻訳された man ページを閲覧する環境の整備もあわせて行っています.
翻訳されている man ページにはシステムコール(section 2)や ライブラリルーチン(section 3)関連のものも数多く含まれており, 一般ユーザだけでなく, Linux 上でプログラムをする人々にも 役に立つものとなっています. また Linux に特化したものに限らず, GNU ツールなどの man ページも収録されています.
Linux や FreeBSD をはじめとする PC-UNIX では, XFree86 が X Window System の実装として主に用いられています. X Japanese Documentation Project では, この XFree86 の配布に含まれる膨大な文書群や MAN ページの 日本語訳を行っています. メンバーは Linux ユーザに限らず, いろいろな OS を使っている人たちが参加しています.
XFree86 のリリース 3.3.5 に含まれる README 文書群については, 全て訳出が終了しています. マニュアルページもコマンドの解説をしている section 1 のみならず, ライブラリ関数の利用方法を説明している section 3 の膨大なページを含め, そのほとんどが翻訳済みです. ただし一部のページは校正中なので, 現在のマニュアルページの 配布はβとなっています. 利用して気付いた点はどんどんフィードバックしましょう.
Linux Documentation Project (LDP) は Linux に関する良質な文書を収集しているプロジェクトで, その内容は Guide 文書, HOWTO 文書, man ページ, FAQ, Linux Gazette (オンライン雑誌), 書籍など多岐にわたります.
LDP 文書群の翻訳作業は JF や JM によって進められていますが, 必ずしも常に最新版に追随できているわけではありません. 英語を苦にしない方は, 是非こちらを訪ねてみることをお勧めします. さらに, 翻訳されていない文書で興味を持てるものがあったら, これを翻訳して JF や JM に contribution すれば, 多くの人に喜ばれることでしょう.