Webmasters コラム(1999/12/26)
Webmasters の選ぶ, 1999年 Linux 3大ニュース
はじめに
「日本の Linux 情報」管理グループ Webmasters が,
1999 年の Linux 界の3大ニュースを独自に選んでみた.
本当ならば 10 大ニュースくらいにするべきなのだろうが,
まとめるのが大変だったので, 順位づける部分は 3 つにしてしまった.
あらかじめお許し頂きたい.
選考方法は, Webmasters メンバー用のメーリングリスト内で,
ニュースのタイトルを短いコメント付で 3 項目を挙げてもらい,
それを集計したものである.
投票総数は 15 人であった.
番外いろいろ
とはいえ, さすがに今年は爆発的にニュースが増えたので,
たった 3つのニュースだけで Linux 界の動きを総括するのには
そもそも無理がある. そこで, まず最初に,
番外にはなったものの興味深かったニュースをいくつか挙げてみよう.
(括弧内の数字は, ニュースが起こった日付である).
すそ野のさらなる広がり
- 各地に Linux ユーザーグループ (LUG) が続々誕生 (1年中)
各地域での草の根的な活動が, この 1 年間の日本の Linux 界に
与えた影響は, かなり大きいと思う. (この 1 年にたくさんできたし)
/
何よりもこの1年間, Linux に興味を持つ
人に交流する機会や場が多く提供され,
また活発に活動が行われたため.
/
Linux をサーバ用途としてでなく, 常用環境としている人が全国的に増えて
きたことの表われだと思います. もちろん, デスクトップ環境やウィンドウ
マネージャが洗練されてきたのが理由でしょう.
- NHK など, TV での特集放映 (3 月〜4 月)
「コンピュータ」に日頃縁の無いような「一般」の人達にも,
広く「Linux」というものの存在を知らせる効果があったと思う.
- ソニーがプレステソフト開発者に Linux ワークステーション提供 (5/14)
実際の導入効果はともかく,
インパクトの大きさはすそ野の広がりを示すものだとおもうから.
- 国内でも Linux 関連雑誌が続々創刊 (1年中)
Linux Japan が出たときは, そりゃもう大騒ぎだったものさ…
それが今や, 月に何冊でてるんだい?
ビジネス関連
- 日本オラクル, Linux への対応を表明 (1/19)
ビジネス分野では, これは本当に大きかったと思う.
来年は, PostgreSQL vs Oracle なのか (^^;;
/
Linuxでビジネス, が盛んになるきっかけの1つにはなったと思います.
/
いろいろな製品が出ましたが, やっぱりこの一年の Linux 現象 :-) の
きっかけとなった最大の出来事かと.
- RedHat Inc. 株式公開 (8/12)
Cobalt Networks, VA Linux, など, IPO ブームの火付け役になった.
カネ儲けの手段にもなりつつあるのかなあ. 僕には関係ないけど.
/
Linux がコンピュータ業界内部だけでなく経済の一部と
認められるようになった象徴の出来事だと思います.
- LASER5, RedHat との提携を解消 (8/26)
international対domesticのドンパチ, 今後数年はいろいろありそ.
数年後, あれがきっかけだったなぁ…ということになるんじゃないかと.
プロジェクト関連
- www.linux.or.jp リニューアルから1周年 (10/21)
正直言ってこうまでうまく続けられるとは思っていなかったので.
こんなに多くの人々が *実際に* 作業に参加できる/している体制にできるとは!
- JF プロジェクト再構築 (2 月〜5 月)
なんといっても使って便利になりました :-)
/
そういえばこれも今年だったんだよね.
なんか緊急事態で一時はどうなることかと思ったりしたけど,
ああいう事件を乗り越えることができた, というのは
現在の Linux コミュニティがそれなりに力をつけてきた証拠だと思う.
その後も順調に発展を続けているのはメンバーのひとりとして嬉しい限り.
- Kondara MNU/Linux リリース (10/29)
PJE の流れを汲む Plamo/Vine や Debian とはまた別線からの
ユーザーディストリビューションの登場に, 今後の期待を込めて.
- GNOME-1.0 リリース (3/1)
これも順当かと.
- glibc 2.1 リリース (2/3)
GNU libc が 2.1 になり, 様々な機能が追加され続けていること.
また libc5 の頃と比べて, その動向が注目の的となってきたこと.
- ghostpet リリースされず!
ボケようと思ったが不発.
番外はこれくらいにしておこう.
3位 : 安定版カーネル 2.2 系列リリース (1/26)
「Oracle8 for Linux」と「地域 LUG 発足」とで争ったが,
「カーネル 2.2 リリース」がわずかに競り勝った.
- 長らく安定版が 2.0, 開発版が 2.1 の状況であったが
ようやく 2.2 がリリースされ,
多くの先進的機能が安定版でも利用可能になったため.
- V4L (Video for Linux) や IPv6 の 安定版カーネルでのサポート.
2.4 の時 USB と IEEE1394 か?
- ずっと待ってたもの. 次の 2.4 はなかなか出ないようだけれども.
- まちにまった新カーネルのデビュー.
- 外せないでしょ.
ただ, 一方には
-
あえて 2.2 カーネルを外してみました.
私は Linux を1998年12月から使いはじめたので,
待たされたという感じがしないのがその理由.
安定版カーネルのバージョンアップより USB や Winmodem が使えるように
なったということの方がスゴいことのように思えるのですが.
2.2 だろうと, 2.4 だろうと 2.x 系の話ですよね.
3.0 が出たのなら, すごいと思えるのかも.
というコメントに代表されるように,
さほどの感慨を覚えない人もいたようだ.
2位 : 大手企業が Linux に続々参入, 対応が活発に (1年中)
広い意味で, 商用 Linux アプリケーションリリース多数も含んだ.
「Oracle8 for Linux」もこれに含まれると考えて良いかもしれない.
- NEC, IBM, sgi... 大手ベンダの Linux 取り組み本格化.
- 個人利用マシン向けとしては, 日本語入力ソフトに加え,
翻訳ソフトの登場. サーバマシンとしては, データベース,
グループウェアなどの Linux 対応が進む.
- ベンダが対応すれば露出も増えて, 使い勝手も良くなって,
ユーザの裾野も広がると思うので.
- Linux 対応のアプリケーション (つーか Office もの) が少ないと
企業ではなかなか導入してくれないみたいなので. 今後に期待っす.
- 昨年までの数字と比較すると「爆発的」かも.
一般の方にLinuxが普及するための最小限の下地が
整備されつつあるって感じぃ.
- フリーじゃ出ないよな, と思っていたワープロまで
複数登場するようになったこと. 一般ユーザとしてはありがたい.
- 乱立と言えるかどうか. なんというか, 良くも悪くもって感じだけど,
動きとしてはこれが印象に残ったのはたしか. 今後が気になる.
このように, 今後への期待を込めた好意的なコメントが多かった一方で,
- Sun と Inprise のプレスリリースに Blackdown の名はなかった…
そして, Kevin は去ってしまった(12月)
ついに, 決して起きてはならない事が起きた, という印象を持った.
Linux でビジネスをする人へ警鐘を鳴らした事件かと.
というコメントを挙げた人もいた.
ユーザコミュニティとビジネスとの関わりのこれからを考える上で
大切なトピックだったことを特筆しておきたい.
1位 : 日本 Linux 協会 (JLA) 発足 (4/1)
JLUG が JLA に発展的に解消したことは, 大きな意味を持って迎えられたようだ.
JLA はコミュニティメンバーとの関わりが深いことを反映してのものだろう.
- ユーザコミュニティが日本の Linux 関連の中心にこれからもいる,
というシンボリックな意味はやっぱり大きいのではないかと思います.
- Linux をめぐって企業とコミュニティの間がうまく行っていない
国々の話を耳にするにつけ,
JLA の softlanding を喜び, 発展を期待したい.
- 一人孤独に Linux で遊んでいたころに誕生した JLUG が
Linux 環境の変化に対応してその形を変えたことに感慨を覚える.
- 国内的には, やっぱりこれかなぁと.
LC99 で admin のみなさんがサーバーの運用について真剣に
議論されているのを拝見して,
「ああ, こういうことをできるようにするために JLA が誕生したのだな」
などと寝不足の頭でボンヤリと考えたりしてました.
- アマチュアとビジネス界を包含する(ための)団体が,
主にアマチュアのコミュニティ側からできた.
これが逆だったら… って思うと怖い.
- これもビジネス面からの見方かもしれませんが,
やはり法人団体までできたというのはいいことかと.
- 法人としてこのような団体ができたことは,
あらゆる面で意義あることでしょう.
- まあいろいろありますが, 一つのニュースではあるでしょうね.
今後に大きな期待をしつつ, 自身もがんばらねば… というところです.
- やはり, JLAの今後に期待したい.
このように期待をかけられている JLA が,
今後どのように活動を進めていくのかが注視されていると言える.
編注 : 1999 年 12 月現在,
JLAは法人団体ではなく, 任意団体です.
おわりに
結果は順当な線だったと考えているが, いかがだろうか.
みなさんの考えるものと一致する部分もあるだろうし,
そうでない部分もあるだろうが, 楽しく読んでもらえれば幸いだ.
ただ 1 月のニュースである「カーネル 2.2 リリース」や「Oracle8 for Linux」
などは, 今年のニュースだったのか? とやや意外に感じられることも事実だろう.
Linux を取り巻くニュースの流れがそれだけ速いことを物語っている.
2000 年は, どのようなニュースが www.linux.or.jp のトップページを
飾ることになるのだろうか. 先のことは誰にもまったく予想できないが,
Webmasters としては, 最新のニュースをすばやくお知らせできるように
着実に活動を進めていきたい.
(Webmasters メンバー一同 = < webmaster@linux.or.jp >)
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