エーアイ出版 様のご厚意により,
書籍 "Linux 怒涛のQ&A" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて公募を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
エーアイ出版 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
本のタイトルを見たときはインストールや運用中のトラブルについての Q&A をまとめたハウツウ本かなと思っていました. 次に, 「はじめ」から読み始め Chapter2 ぐらいまで読んだところで, この本は「Linux の解説」を主題とした本だなと解釈しました. Linux の歴史的背景や Windows との相違点, あるいは機能の仕組みの説明といった 単なる入門書以上の内容がちりばめられています. 一方, 全体を通して読んでみると構成的に「おや?」と思うところが所々あります. 以下に本書のよかったところと気になったところを説明します.
普段何気なく使用している機能について 詳細な解説が行われている点がよかったと思います. 特に, 次の項目については私自身も認識を新たにしました.
「はじめに」でも少し述べましたが, 構成上で気になる点がありました.
単純なミスではないかと思えるところが数点目に付きましたので 報告させていただきます.
ページ | 行 | 誤りと思われる記述 | 正しいと思われる記述 |
---|---|---|---|
51 | 17 | 作れています | 作れてしまいます |
226 | 11 | 何もしない場合は | 何もオプションを指定しない場合は |
236 | 1 | cat -n +1 uriage.txt | sort | cat uriage.txt | sort -n +1 |
236 | 8 | cat -n +2 uriage.txt | sort | cat uriage.txt | sort -n +2 |
251 | 2 | どうみえても | どうみても |
274 | 17 | 付随した含まれている | 付随して含まれている |
285 | 12 | dif -cr w3m.org w3m.patch | diff -cr w3m.org w3m > w3m.patch |
290 | 19 | falut などという | fault などという |
322 | 4 | ESC キーを 2 回押すと以下のような画面に切り替わります. | 対応する画面がない |
327 | 10 | LILO: old | LILO: linux |
358 | 12 | contro | control |
369 | 23 | ホスト testa の利用者のうち | ホスト hosta の利用者のうち |
408 | 12 | 自分のだけで | 自分だけで |
本書を「Q&A 形式の Linux 紹介」の本と捉えた場合, 目次の見易さ, 各 Chapter の読みきりのよさ等 考慮の余地があるのかなと思っています. 上記の気になる点は全体の整合性からやむをえない面もあると思いますが 参考にしていただければ幸いです.
最後に, ブックレビューの機会を与えて下さいましたエーアイ出版様と www.linux.or.jp 管理グループの皆様に感謝するとともに, 著者ぱぱんだ様のいっそうのご活躍をお祈りし ブックレビューの報告とさせていただきます.
みなさん初めまして, 久保雅裕と言います.
Mac の使用歴が長く, そのためすっかりズボラが身に付いてしまいました. Linux のインストールではなんでもデフォルト攻撃がきかず, ずいぶんこけました. 不本意ながらマニアといえるぐらいの回数インストールしています. この本の帯は「インストールでくじけた貴兄の疑問, 全解決!」です. まさに僕のために書かれたかのようです. インストールに苦しんだ一人として, 大きな期待を持って読みました.
good です. 「これから Linux をインストールしようかな」, 「Linux について知りたいな」という方にはお勧めできると思います. すっかり感心してしまったので甘いレビューになっています. この批評は僕の個人的な経験をベースにしていますので, 皆さんにどこまで当てはまるかはわかりません. 良いと感じたことはできるだけ理由を挙げます. 興味を持たれた方は直接書店で手に取ってご自分で吟味してみてください.
書店で見つけたらまず「はじめに」を読みましょう. 本書が執筆されたコンセプトが書かれています. ここを読まないと有り難みが半減してしまうと思います. 読んでみて何か頭にひらめくものがあれば, あなたに必要な本なのかもしれません.
ここには本書が既存のマニュアル本, インストール本, アプリケーション本と補完関係にあると書かれています. この点は非常に重要です. また本の内容構成は Q&A 方式で, Vine Linux-1.1 をベースに解説されています. だからといって Vine でなくてはダメと言うわけではありません.
Mac がらみの話はほとんどでてきません (^_^;). しかし, 全体を通読することでインストール前後の Linux の全体像がつかめるというメリットがあります. これは Linux PPC のインストール本やコマンドを解説した書籍では なかなか得られないものです. Mac は Windows 以上にソフトもハードもクローズされた世界ですから, Linux への移行は結構カルチャーショックがあります. 何でもかんでもオープンで, テキストベースで, 多様な Linux の世界に親しむために本書は参考になると思います.
僕は通読することで, マニュアル本, インストール本, コマンド本で得たバラバラだった知識に見通しをつけることができました. とくに各章の最後に「解説」があり, ここで説明されている内容がとても役に立ちました.
初心者にとってわかりやすく良い本だと思いますが, これ一冊ですべて解決できるわけではありません. 何でもかんでも期待するのは, 本書のコンセプトにも合いませんし.
具体的には, インストール本にあるようなアプリケーションの解説はありません. また X Window System についてはさらりと, GNOME などのデスクトップ環境についてはほとんど触れられていません. これらについては別の書籍にあたる必要があります.
Windows や MacOS から Linux への橋渡しに重点が置かれるため, 割り切りのいい内容になっています. このことからも中級者以上の人には向かないと思います.
ほとんどの初心者の方には役立つ本だと思いますが, やはり書店で実物を手にとって見ることをお勧めします. 「はじめに」と「もくじ」を眺めれば自分に必要な本かはすぐにわかると思います.
さて本書を読んでインストールでくじけた疑問が全解決したでしょうか?
世の中そんなに甘くないです (爆). ハードウェアの環境が特殊なせいもあるのでしょう. でもインストールでくじけた心は救われましたし, Linux の方が面白いと思いはじめました.
Mac の起動画面・boot X でついつい Mac を選択してしまう皆さん, 一度読んでみませんか. Linux も悪くないと思えるかもしれませんよ.
このレビューを最後まで読んでくれた人, ありがとう. また, このような機会を与えてくださった関係者の皆さんにも感謝します. m(__)m
毎朝, 一通りメールをチェックした後に, おもむろにウェブ・ブラウザを起動して 「ぱぱんだ日記」を見てから仕事に入る. そんな人は私だけではないだろう. 私がぱぱんだ氏を知ったのは, 私が作成したソフトウェア がぱぱんだ日記で何度か紹介され (1, 2, 3), その読者の一人の方が, 電子辞書メーリングリスト で動作報告をしてくださったのがきっかけだったが, それ以来氏のウェブ・サイトは私の楽しみであり, 情報源の一つでもある.
さて, この『Linux 怒涛の Q&A』は, 対象読者こそ「Linux 初心者 (not パソコン初心者) *」となっているが, インストールについてはほとんど書いていないし, 付録に Linux ディストリビューションがついているわけでもない. そんなものはそこら中にあふれているだろう, と言わんばかりの思いきったわりきりが産んだ「すきま本」なのである. そうは言っても, 本書はかなり分厚いし中身も濃い. つまりこれまで置き去りにされていた「すきま」がいかに大きかったかの証拠である.
しかも単に丁寧にすきまを埋めただけの本ではない. 本書は, 大半のコンピュータ関連書籍がとっくに失った「誠意」にあふれている. 以下の引用だけでもその点がうかがえるであろう.
筆者は, 初心者にとって Linux が不可解で難しいものに見えてしまう理由を 「なぜそう設計されているのか理解できないから」ではないか, と考えました. (p. 3)
本書に含まれるコマンドなどの解説は, 既存のマニュアルページを代替するものではありません. 本書とマニュアルページは補完関係にあり, 本書は分散して配置されているマニュアルページを読むための 一定の手順を与えています. (p. 4)
これと比べれば, 何の根拠も示さずに「〜は〜すれば O.K.」などと書いてはばからない 「初心者用」の本など, 信用できる代物ではないし, また決して初心者用でもないことがわかるだろう. 昨今のブームに乗っかってこういういいかげんな仕事をしている 自称テクニカル・ライターや編集者の人たちには, 自分達のプロとしての誠意についてあらためて考えていただきたいものである.
コンピュータ関連の書籍は, 中身がすぐに時代遅れになるだけでなく, その大半はゴミ同然だと思っていた私にとって, 本書の存在はとても嬉しい. こういう良書が少しでも増え, また悪書がさっさと駆逐されることを祈る.
本書はねらいの大きな本です. 「はじめに」で, ぱぱんださんはいいます. 「Linux 予備軍に対して」, 「Linux でできることとできないこと, ……他の OSと比較して優れている部分と劣っている部分を, 可能なかぎり記述」し, 「Linux を本当に理解したい人」に対しては 「Linux システムの各要素の役割や関連, 全体の仕組みや歴史的背景の説明を行う」. 入門以前の人と, 初心者を卒業しつつある人のいずれも満足させることは, 一見相反する目標にみえます. しかし, 類書ががいいかげんにすましがちな点をきちんと説明することで, いずれの目標も達成しているというのが私の結論です.
たとえば, 44 ページの GUI (マウス中心の操作) と CUI (キーボード中心の操作)では, 慣れれば CUI (キーボード) の方が高速になることが指摘されています. このこと自体はみんながいっていることです. しかし, 十分に納得できる根拠が示されなければ, キータイプが 1 分 60 ストロークがやっとの初心者にとっては, そのような助言はピアノの上級者が「メリーさんのひつじより, ベートーベンのほうがやさしいから, ベートーベンをやりなさい」 といっているように聞こえているのではないでしょうか. これに対して, ぱぱんださんは, 非常にコンパクトな図と箇条書で, おそらくほとんどの初心者も納得する説明を展開しています. また, 50 ページのオープンソースの議論も, さすがプログラマとして活躍を思わせる 現実の開発プロセスを踏まえた興味深いものです.
類書の中には商用の UNIX の経験が 明らかに皆無な著者によって書かれたものさえしばしばみられます. しかし, この本は入門者が読める本としては 例外的に商用 UNIX と Linux の技術的な特質の違いを丁寧に説明しています. 類書の多くは, Windows や MAC だけと Linux を比較するか, 技術をみないでオープンソースやそれに付随したビジネスモデルなどの 社会・経済側面にかたよって Linux を評価する傾向があるように思います.
類書でもよく説明されている項目についても, 自分が理解していると思いこんでいたものが 実は勘違いであることが初めてわかったということが, 私は何回かありました. そうした丁寧さをたもちながら短い簡潔な文章でかかれています. 「類書が見逃している点をきちんと説明している」というと 相当「くどい」本を想像されるかもしれませんが, 違います.
その簡潔さが多くの方が書名から期待するであろう トラブルシューティング本としての価値を高めています. へたくそな著者によくありがちな, 解説に対策が埋もれてしまうといったことからは無縁な文章です. そのうえ, 実用性の観点から, 必要十分な情報を厳選しています.
まとめると, 本書は入門書としてもトラブルシューティング本としても価値が高く, その上, (初心者に毛が生えた私がいうのもなんですが) 初心者以上の人には, すでに知っている事項の理解も深める, 前書きにある目標を十二分に果たした本といえます.
とりわけ, 私のようにコンピュータの専門家ではないが, 仕事で日常的に Linux にさわる人は必ず買って欲しい本です. また, 教師もふくめコンピュータの使い方を他人に指導しなければならない立場の人は この本をよめば勉強になるはずです.
しかし, いい本だとあらがかえって目立ってしまいます. 第一に, この本はリファレンスでも, インストール本でもありません. この本をよめば大きな恩恵がうけられるはずの初心者が, 結局この本をよまないことにならないかと心配です.
とりわけ, デスクトップの環境として Linux を必要とし, 実際に活用している者の多くは, 学生です. 金がかけられないぶん, 手間暇かける貧乏学生にこそ, 基礎を分かりやすく書き, きちんとした本書が役立つでしょう. しかし, 貧乏学生の多くはこの本を選択肢からすらはずすかもしれません. コンピュータが専門の学生ならいざしらず, 自分の専門の書籍の金にさえ困っている大学院生などは コンピュータ書籍の数千円の価格の差に敏感です. そうした学生の立場からすると, 本書は説明のうまさにひかれても, リファレンス的要素がすくなく (アプリケーションの使用法の説明はほとんどありません. Vi や Emacs の説明は, それぞれほとんど見開きで終ってしまいます), また, インストールの説明も少ない点だけで 選択肢から外れてしまうのではないでしょうか. これは内容そのものへの批判とはいえませんが, 本を買う側にすれば切実な問題です.
ただし, この本は, 厚さとその内容の豊富さに比べれば, 非常に安いです. 安めのアプリケーションの使い方を説明した本とセットで買っても, Linux入門 (小山裕司,斎藤靖,佐々木浩,中込知之著,トッパン) と同じくらいの額です.
また, ぱぱんだ日記の愛読者の一人として, 日頃のゲームやハードウェアにおはまりになっている成果が 生かされていることを期待していたのですが, せっかくの経験豊富な分野が生かされていないのが残念です.
最後に bookreview の機会をあたえてくださった, エーアイ出版, ぱぱんださま, および, www.linux.or.jp のスタッフの皆様にお礼申し上げます.
初心者度 | ★★★★★ |
持ち運び度 | ★☆☆☆☆ |
お買い得度 | ★★★★☆ |
使い勝手度 | ★★★☆☆ |
みなさんこんちわ! 高橋勇樹です, どもども.
以前, こちらで「Linux コマンドリファレンス」という本の ご紹介をさせて頂いたことがありまして, 今回は 2 回目のレビューをさせて頂くことになりました. よろしくお願いしますね.
「Linux を使っていたらこういうふうになって困った!」 っていうことみなさんはよくありませんか?
ボクは Linux に関して (Windows に関してもそうですけど) まーったく詳しいひとではありませんので, よくありました. いや, それはいまでも現在進行形です.
困って困って, ホームページやら本で調べるんだけど, どうしても分からない. で, 先輩に聞いたり初心者向けのメーリングリストで聞いて 「こうしたら直る」って教えてもらい助かったことが何度もあります. 正直な話, もうどーにもこーにもならなくて 再インストールをしたこともたっくさんあります. そしていっぱいいっぱい泣きました.
この本はそんな初心者に多い質問・疑問の大特集といった本です.
・初心者に対して初心者に分かりやすく説明
してくれています. そして,
・どうしてそういう現象が起こったかを説明
してくれています. 雑誌や他の本にも初心者をターゲットにした同じようなのがある中, こ の本がずば抜けてよい点はズバリそこなんですね.
前置きがいつも長くてごめんなさい. んじゃ, 紹介していきましょう! (ここからは冒頭の「5 つ星チェック」を参考に読んでみてください).
この本は以下の 12 章構成の Q&A で構成されています. 所々に Linux に関して非常に初心者にとっては興味深いコラムが入っており, また章の最後にはその章のまとめが簡単に書かれています. 目次には質問・疑問がピックアップされ, 最後には用語からの索引があります.
第 1 章 | Linux のインストール前に知っておきたいこと |
第 2 章 | Linux が起動するまで |
第 3 章 | Linux のファイルとディスク |
第 4 章 | ログインとログアウト |
第 5 章 | コンソール |
第 6 章 | マルチタスク |
第 7 章 | シェル |
第 8 章 | 基本コマンド群 |
第 9 章 | インストールとコンパイル |
第 10 章 | Linux カーネルの構造 |
第 11 章 | X Window System |
第 12 章 | Linux ネットワーク環境 |
使い方ですが, 質問・疑問が生じたら, この本の目次もしくは索引から調べます. ボクの場合は, 目次からすんなりと該当ページを見つけることが出来ました. そして通勤や時間があるときに, 他のページを読むといった使い方で利用しました. 全ページを読んでみて分かったことは, 知っていることも過信しないで読めば自分がいかにテキトーに Linux を理解していたかということです. そして Linux をきちんと勉強することが出来て泣きました.
全 463 ページで 2800 円 + 税で, 内容からいうと安い, 決して高くないと思います. ただ難をいうならば, 本が重過ぎるという点で, 上・下として 2 冊に分けてもらえたら持ち運びに便利だったかなとも思います. 通勤時に読んでいたんですが, 結構きつかったですよぉ. Q&A として利用するのはもちろん, Linux 入門書として利用するのも手だと思います. Linux を使いたての時にこの本と出会っていたら どんだけ良かったかと非常に悔しい思いをしています.
是非, Linux 初心者の皆さんは「ぱぱんだ先生 (たれぱんだ先生じゃないですよぉ!)」 に出会ってみてください. 先輩やメーリングリストに闇雲に聞く前にこの本を読んでみましょう. やさしく分かりやすく教えてくれますよ.
ある程度 Linux のことが分かってきたひとは この本を読んで初心者の質問に対する準備をしておくといいかもしれませんよぉ. この中の質問・疑問にだいたい答えられるようになったら それはアナタが Linux の初心者から ようやく脱皮できたということなのかもしれません.
それじゃ, またお会いしましょう, チャオ!