オーム社 様のご厚意により,
書籍 "DNS & BIND 入門" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
オーム社 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
本書は入門であるものの, 読者に対してある程度のレベルを求めている. 「初めての管理者に向けた DNS 入門書」としたのは, Unix ユーザーとして常識とされるネットワークのプロトコルや, 語句の意味までは解説に及んでいないからだ. 本書は Unix の日常の管理や設定はできるが, DNS は初めてという人向けの入門書である. ぜひ, 社内で Unix の管理をまかされた人は一読されるのをお勧めしたい. しかし, 会社等の本格的な DNS の運用を踏まえたレビューは他の方にお願いするとして, 私の方は, 個人で DNS を立ち上げる視点でこのレビューを行いたいと思う.
ある程度のレベルが必要と前述したが, 本書は図表に比べて文字が多い. 図表が少ないということは, 入門書としては問題でもある. 文字だけではどうしても理解しづらいものや, 図にすることで容易に理解できるものもあるので今後図式を充実させて欲しい. 加えて, 多少見づらいという感じがあった. 設定ファイルの例などは枠で囲むなどして, 文章とはっきり区別すると見やすくなるのではないだろうか. さらに設定例を解説する際にページを行きつ戻りつさせる構成は, ページが無駄になっても両開きになるようにして欲しかった. 分量的には豊富だが, かえって前述したように Unix について知識がある人にとっては, くどくどと解説がなくて読みやすいのではないだろうか. また技術書にはよくあることだが, 始めから順序良く読むと語句の意味がわからず, その語句解説が後ページなってあることが多々ある. たとえば本書でも SOA レコードの解説を行う前に, 周知の事実のごとく使用している箇所があった.
個人で DNS サーバーを立ち上げる際に, 本書は役にたってくれるであろうか? 個人で DNS サーバーをもつ目的は, 次のようなものが考えられる.
1, 2 については簡単に項目を設けて解説を行っているが, 一般的な BIND の設定法を前の章で理解していれば問題ないだろう. 3 については解説を避けて DHCP の資料を紹介して, それを参照するよう促している. BIND について深く理解せずともよく, 個人で DNS サーバーを立ち上げたいだけならば, 本書を読む作業は大変すぎるのではないだろうか. DNS の初歩的かつ概念的なものは, 他の書籍もしくは雑誌の特集で掴んでおき, より広く知識を得ることが必要なら 2 冊目として購入することをお勧めしたい. まぁ読み物としても面白いので, そういった目的で購入されるのもいいのかもしれない.
本書は, BIND の使い方はさることながら, DNS の歴史や機能の実装上の経緯など, 全般的なことを網羅している. DNS の概念を理解し, 深く知識を得るための足がかりにもなる. なにより書籍や RFC などの参考資料の項目をまとめてあるので便利だろう. また金額的な点でも, 会社の金と自分の金では尺度が変わってくるものである. 本書は分量的には 2 冊分はある. ちょっと詰め込みすぎという感はあるが, 値段については個人で負担しても 3000 円と納得のいくものである. 最近の技術書には, 満足な索引が用意されていないものが多い中で, 今回の本は十分な索引があり, 入門後のリファレンスとしても用いることができるのではないだろうか.
やはり, 本書は「入門」であっても初心者向けとは言いがたい. Unix 入門やネットワーク入門は当然の如く卒業している人向けである. どうしても DNS について深く知識を得なければならない 「初めての管理者向け」である. 個人の環境にもいろいろあると思うが, 一般的に ISDN や ADSL などのダイアルアップ接続の環境ではここまでの知識は必要なく, 雑誌の特集レベルで十分であるというのが私の考えである. しかし, 初めての管理者にとっては買って損はしない書籍なので, ぜひ購入をお勧めしたい.
DNS の基礎となる部分に重点を置き, BIND を管理, 構築するためのノウハウを細かく説明しています. そして, 基礎と書いていますが, 「簡単な部分だけ」という意味ではなくて, 「基礎=土台」の意味ですので安易な DNS の入門書とは全く異質なものです. 「DNS&BIND 入門」のタイトルだけで購入してしまった DNS 初体験な人がいたとすれば, この本は持て余す内容であると思います.
書のスタイルとして, 決して設定ファイルの雛形を提供して必要な部分を書き換えれば, 「ハイ, お終い」ではなくて, 読者のスキルを上げる為の説明に重点を置いてあり, とても好感をもてます. とりあえずで動かす為の最低限の知識しか必要としないのであれば, この本は非常に読みにくいかも知れませんが, 管理する人にとっては, 意味のある理解しやすい内容になっていると思います.
とにかく, DNS を理解したいと思っているのなら読んでおいて損はないでしょう.
書で「参考になります」や 「読んでおいた方が良いでしょう」と紹介されている RFC のドキュメントを, 付録として掲載されていると, より情報源として有効だったかもしれません. 私の場合, 書籍は電車の中で読む機会が多く RFC に目を通しておこうと思っても, Web に接続することが出来ず少し不満に思いました.
ダイナミック DNS の章は, これからの ADSL 接続の一般化を考えると大変興味のある内容で, 大きな期待をしていたのですが, 接続回線の状態の違いなのか, 元本が 1 年前の物のせいなのかは分かりませんが, 他の章と比べると内容が薄めで少し残念でした.
ある程度 DNS を理解し, DNS を管理, 構築される方には, 痒いところに手の届く非常に心強い内容です. 逆に, 初めて DNS を構築される方には, 説明を読むだけでかなりの負荷になるのでお勧めできません.
もう少し具体的な例が多ければ, もっと多くの方に読みやすい本になると思います.
本書が翻訳本であることで, かなり構えて読み始めたのですが, 非常によく翻訳されており, 普通の技術書と比べても違和感なく, 読み進める事が出来ました.
私の場合すでに, DNS システムを構築管理していましたが, 実際のトラブルの経験がなくトラブル発生を考えると憂鬱な思いをしていたのですが, 本書を読むことでトラブルの時のテストすべき項目等を事前に知ることができ, トラブル発生時には何とか自力で問題を切り分け解消できるのではないか と思えるようになりました.
また, より規模の大きなネットワーク構築を任せられたとしても, 基本的な事は本書でおさえられたので, 慌てることなく基本設計が可能になったと思います.
「DNS&BIND 入門」を読んだことで, DNS の全体的なスキルアップができて満足いく内容でした.
Linux 関連の雑誌や書籍に書いてある情報を掻き集め, なんとか動いているマイサーバ (RedHatLinux7.1). しかし, 理由なき不安が….
この本は, そんなサーバの運用に自信の持てなかった私が「これでいいのだぁ!」と, 胸をはっていえるようになる, そんな 1 冊だ.
サーバの構築・運用の初心者は, 最初から最後まで読み通すことで, DNS&BIND の運用を確実なものにすることが可能である.
翻訳本ということで, 正しい日本語となっているのか? というのはかなり気になる部分であったが, これに関しては全く問題なく, 細部にまで気を配っているのが良くわかる.
最初に嬉しいのは, あるドメインの設定サンプルを元に, 丁寧な解説があることだ. BIND の設定には省略できる項目が多いため, 詳細な解説は大変ありがたい. 私は, すでにされているマイサーバの設定と照らし合わせながら, 不要な項目を削ったり便利な設定を追加することができた.
また, 設定した内容を確認する方法も解説されており, 実際にマイサーバの設定を確認しながら読み進めていくことができた.
設定および確認ができると, 現実にサーバを運用するときにはどのようなところに気をつけなければいけないか, また気をつけるべきかの説明があり, より現実的な設定方法になってくる. 今まで存在しなかったマイサーバの運用方針を検討することもできた.
自分なりの満足のいく設定ができあがりはしたが, 今後エラーなどが発生した時はどのように対処していいのやら不安である. が, ポイントごとに整理されたエラーログの解説があるので安心だ.
サーバの構築にセキュリティはつきものだが, 勿論, BIND で可能なセキュリティの解説も存在する.
さて, DNS サーバを安全に運用するには, ここ (8 章) までで充分である.
では, この先は何? というと, 「なるほど〜, こんなこともできるのかぁ〜.」 といった具合のノウハウがみっちり解説されている.
個人的に興味深かったのは, 固定の IP アドレスが取得できない場合や, 格安にサーバを運用したい場合には便利な機能のダイナミック DNS の運用と, 最新版 BIND9 の新しい機能の解説だ.
この 2 つに関しては記事に取り上げている雑誌も見掛けたが, 前置きや依存関係がないため私にとっては理解しにくいものであった. しかし, この本では, 全体的な BIND の設定方法の流れの中で解説されているため, 無理なく理解することができた.
また, サーバの移動や BIND4 から 8 への移行, プログラムと DNS の連携など, 今後 DNS サーバを運用するにあたり是非参考にしたい項目もある.
総ページ数は 300 ページと薄い印象ではあったが, 最初から最後まで順番通り読み進めていくことにより, 読み終えた今では脱初心者の気分である.
「ちと, ほめすぎなんでないのぉ〜?」と, 思われる方もいらっしゃると思う. しかし, 「ほんとに, だいじょぶかいな?」と思いながらマイサーバを運用していた 私の不安がすっかりなくなったのは事実である. また, 私なりに欠点探しをしてはみたが, それも見当たらない.
初心者にもわかりやすく, 質の高い, それでいて無駄のない書籍であると断言できる.
先日, 自分のドメインが外部から参照できなくなるトラブルにあいました. メールも届きませんし, Web も見に行けません. DNS が動かなくなると, 本当に何もできなくなるんですね. 頭では分かっていても, 実際に経験すると非常に焦ります. 本書を読んで, 実は DNS がセキュリティ的にそれほど強靭なわけではないことを知りました. 世界中の DNS が毎日安定して稼働している事実に, ちょっと感謝しています.
DNS は比較的地味な存在で, Web のように多様なサービスを提供するわけではありません. そのせいか, DNS の情報は非常に少なく, 書店に行っても DNS 関連の書籍は 2-3 冊しか見つからないと思います. オンラインショップのアマゾン <http://www.amazon.co.jp/> で DNS をキーに検索しても, 10 冊しか出てきませんでした.
本書はその数少ない DNS 関連書籍の中で, オライリー社の "DNS & BIND" と双璧をなす 貴重な 1 冊といえるでしょう. 購入するなら, 事実上, 本書かオライリーのどちらかになるでしょう. この 2 冊以外の書籍は買う価値があまりないかと思います.
本書は DNS のもっともメジャーな実装である bind を対象としています. そのなかでも, bind8 と bind9 の記述が大半を占めています. bind4 には, 本書はそのまま役に立つというわけではありません. 現時点で稼働している DNS はほとんど bind8 か bind9 でしょうから, 妥当な記述内容だと言えるでしょう.
本書を読んで最も目新しかった点は, ダイナミック DNS の記述です. 最近はグローバル IP アドレスを動的に割り当てる常時接続が普及してきており, ダイナミック DNS に興味を持つ方はかなり多いでしょう. ですが, 本書で取り上げているダイナミック DNS は, DHCP を使用した動的割当てを行っている場合についてのみです. 最近注目を集めているような, 個人でサーバを公開するようなダイナミック DNS の使用方法とは若干異なります. しかし, 基本的な考えは同一であり, 私には非常に役立ちました.
最近はあまり聞きませんが, 「Linux には HOWTO 文化があって, HOWTO を参照していればそれなりに使いこなせるようになる」 などという言い伝えがありました. 本書の著者は DNS-HOWTO の著者でもあるということもあるのか, 本書は HOWTO 文化の傾向を強く持っています.
設定ファイルの内容やコマンドの実行結果が文中の随所に度々挿入されており, 本書の記述がそのまま実際の DNS 構築作業へ利用できます. このような構成ですと, 作業を行っている最中は非常にうれしいものです. しかし, 普通に読む際には設定ファイルの内容を解読しながら読み進める必要があり, bind の設定に慣れていない方は読みにくいかもしれません.
また, 直接的な解が文中に書いてあることで, 初学者が自ら考えて正解を導く過程を阻害してしまう可能性もあるのではないか, と感じました. 本書に限らずいえることなのですが, 最近の書籍は手っ取り早く正解にたどり着くことのみを求め, 読者へ思考を促す記述がおろそかになっている気がしています. このような考えが, 私の杞憂なら良いのですが.
ごく最近のオーム社の翻訳書は, 本職の翻訳家が翻訳し でびあんぐる が監訳するというスタイルが定着してきたように思います. 優秀な技術者集団である でびあんぐる が監訳することで, 翻訳の品質が非常に高くなっていると思います.
全般的に見れば, 他の追随を許さない良書と言えるでしょう. 唯一のライバルはオライリー社の "DNS & BIND" でしょうか. ゆくゆくは DNS を管理したい方, あるいは実際に管理している方には, 本書は非常にお勧めの書籍ではないでしょうか. とはいえ, すべての方に本書の購入をお勧めはできません. 市井の利用者ならば, 他の適切な一般ユーザ向けの書籍が望ましいと思います. ただ, そのような一般向けのまともな DNS 解説書は見たことがありません. どなたか書いてみませんか.
本書は, 数多くあるインターネットサービスのうち, DNS の概念とその実装としてのデファクトスタンダート である BIND の解説にのみ的を絞った良書である.
「BIND を *** に書いてあるままに設定したらうまく動作したが, どういった仕組で DNS が成り立っているのか 分からないままでは納得がいかない」といった知識欲旺盛な 中級 webmaster にお勧めしたい.
逆に初めてサーバを立ち上げるような初心者には, 内容的に敷居が高いように感じた. 本書をストレスなく順序立てて読み進める為には, DNS/BIND に関するそれなりの前提知識が必要である事を強調しておく.
17 章 + 付録 A/B で 300 ページといえば, 読破するために少し腰を据えてかからなければならない分量である. しかし, 目次と対比させながら読み進めていくと, 非常にうまく章立てされている事に気付く.
純粋に前から順番に読み進めれば良いのだ. このごく当たり前の事をさせてくれない技術書籍のいかに多い事か.
第 5 章は dig & nslookup のみで独立した章となっており, webmaster であれば是非とも習得しておきたい即戦術として大いに役立つ. コマンドラインオプションが細かく解説されている事には好感をおぼえた.
第 6 章のトラブルシューティングでは逆引き参照の重要性など, サーバ管理をしていれば必ず一度は躓く部分をポイントを押さえて 解説してある.
第 13 章のリソースレコード一覧や, 付録にある named.conf のリファレンスなどは, 本書をサーバマシンの脇に常備させるには充分の説得力となるだろう.
後半部分は時間に余裕のある時に読み進めると良い. 今流行りのダイナミック DNS の解説などは興味深く読ませて頂いた.
レイアウトも目に優しく, 訳語の選択も適切であると感じた. この手の翻訳本の中では非常に読み易い部類に入るだろう.
ただでさえ希少な (執筆しにくいのだろう) DNS/BIND 解説本が これだけのレベルで書き上げられ, また日本語に翻訳され, 出版された事には大きな喜びを感じる.
第 12 章での Ruby の socket モジュールを用いた DNS との通信方法や, 第 16 章での BIND9 についての解説など, 内容が比較的新鮮であるという事に対しても安心感をおぼえた.
要所要所で書き加えられた監注 (脚注) もポイントを押さえてあり, 訳者の細かい配慮が伺われる.
息抜き程度にコラム的な要素も盛り込まれていれば, もっと楽しく読み進める事ができたかもしれないが.
DNS/BIND が攻撃対象となるサービスの筆頭である事は, この世界では誰もが知る常識である.
しかし, 第 8 章で述べられているセキュリティについての薀蓄に 24 ページしか紙面を割かれていない事に関しては少し残念に思う.
バッファオーバーフローの実際を目で見える形で解説するくらいの オープンさ (気合い) があってもよかったように思う.
DNS の仕組も分からないままで MTA を設定し, メールが届かないなどとメーリングリストに駆け込む御仁などは まず本書を読んで頂きたい. 本書がメーリングリストなどを騒がせる *俄か webmaster* の スキルアップに貢献する事は間違いないであろう.
DNS/BIND に関する基本的な知識を持ち合わせている前提で あれば, ずばり *買い* である. この内容で 3,000 円は安い.
今回のレビューの機会を与えて下さった株式会社オーム社, Webmasters ブックレビュー担当者の方々への感謝の言葉と共に 本レビューを締めくくりたい.
先日他界した祖父に最大の畏敬の念を込めて本稿を捧ぐ.