改訂3版 標準 Red Hat Linux リファレンス

改訂3版 標準 Red Hat Linux リファレンス レビュー記事

[ ブックレビューコーナー 目次 ]

株式会社インプレス 様のご厚意により, 書籍 "改訂3版 標準 Red Hat Linux リファレンス" を ブックレビューコーナー にご献本いただきました. この本のレビューをして頂くべく, Linux Users ML や本サイトにおいて公募を行い, これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.

ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)

株式会社インプレス 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.

なお, 以下のレビューは初版を対象としています.


Reviewed by 前原 正英 (maechan@mnet.ne.jp) さん

「Red Hat Linux の全体像が見えてくる一冊」

Linux の使用歴
4 年
UNIX の使用歴
3 年
Linux Box の主な用途
電子メールの読み書き, Web 閲覧等
Linux 以外に利用している OS
Windows NT/98
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
2 : 8

はじめに

本書の「はじめに」には, 対象とする読者として中級から上級のコンピュータユーザを対象としているとある. しかし, 第 2 章の「インストール」などを見ると, 分かりやすく説明してあり, はじめて Linux をインストールするユーザで, Linux に関する参考書をお探しの方にも良い書籍ではないかと感じた.

本書の長所

本書は, 4 パート, 26 章から構成されている. インストールの方法から, 各種サーバの設定, 印刷, セキュリティに関することまで Linux で出来ることの多くが網羅されているのではと思う.

特に私のように, 職場では, Linux を利用している人が少なく, Linux を使って何ができるのかといったようなことがなかなか情報として入ってこない方, まわりに Linux について詳しい人がいない方などには, 本書のように 1 冊の本の中にいろいろな情報がつまっていると, Linux 全体を見渡せるので良いのではと感じた.

実際, 今までは, 校内向けの WWW サーバや Proxy サーバ程度にしか Linux を利用していなかったが, Samba を利用して Windows マシンとファイルを共有したり, DNS サーバを構築することができた. また, エミュレータについても VMware という名前は聞いたことがあったが難しそうなイメージを持っていて手を出せずにいたが, 本書では丁寧に解説してあるので今度, 挑戦してみようと思った. このように, 本書は, いろんなことに挑戦してみようと私に思わせてくれた一冊でした.

また所々に Note と書かれた欄で関連情報を補足してあったり, 実行画面が多く載せられており読者の理解を助けてくれると思う.

本書の短所

Samba の章は, 非常に密度が濃いと感じたが, ウィンドウマネージャの章は, 限られたページ数の中に, GNOME, Sawfish, KDE, fvwm2, twm などが簡単に紹介されているだけであり, 第 2 章はインストールについて書かれているが, 本書を手にするであろう読者なら知っていることが書かれているだけのような気がしました. リファレンス本なので, いろんなことに触れなければならないのかなという気もしますが, このようなことは入門書に譲っても良いのではと感じました.

まとめ

本書は, Red Hat Linux について幅広く解説した本であり, Part2 の「サービスの設定」, Part3 の「システムの管理」はよくまとめられていると思います. この本が 1 冊あると, Linux にどのような機能があり, どのようなことができるのかという全体像をつかめると思います. とくに私のように, 周りに Linux について詳しい人がいない場合, 新たに刺激を受けるということが少ないのですが, 本書を読んで, 今まで知らなかった知識を, 多く得ることができたと思います.


Reviewed by 岩田 治 (tosei@mocha.freemail.ne.jp) さん

「Red Hat, サーバ管理の初心者にお薦めの一冊」

Linux の使用歴
今回はじめて
UNIX の使用歴
なし
Linux Box の主な用途
実験的な Web サーバの立ち上げ
Linux 以外に利用している OS
Windows Me
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
50% : 50% (8 月現在)

はじめに

本レビューは, 以下のような状況のもとで行ったものである:

本書のねらい

本書のねらいとしては冒頭で, DNS の設定, Apache のコンフィギュレーション, システムサービスの管理方法といった高度な問題について技術的なアドバイスを提供する事と, セキュリティについてのアドバイスが目的であると示されている.

対象となる読者

対象としては, 「中級から上級のコンピュータユーザを対象とする」とあり, Linux か UNIX オペレーティングシステムに馴染みがあることが前提としている.

ただし, 新規ユーザーの場合にも, 「Intel ベースのコンピュータに Red Hat Linux をインストールしたり X Window System のコンフィギュレーションを行ったりするのに役立つだろう」と付記されているので, 評者のようなケースも対象として該当するだろう.

内容について

本書は 930 ページに渡り, Red Hat Linux 7.1 のシステム設定を記述したリファレンス本である. 手にとった第一印象は「かたそうな訳書」だったが, 翻訳は比較的こなれており頭痛にならずに読むことができた.

本書の内容は, Apache, Samba, SMTP, FTP, DNS, INN, NIS, NFS 等 「各種サービスの基本的な設定の方法と主要コマンドの使い方」がメインであり, 加えて, OS と X の導入 & 設定の方法, インターネット接続と Web ブラウズ, チャットの簡単な解説, セキュリティ設定の方法, カーネルコンパイルの方法, そして, 第 20 章には TCP/IP の基礎が解説されており関連するコマンドが説明されている.

Red Hat 6.x を対象としている旧版に対し, 本書は Red Hat 7.1 を対象に加筆修正されたものである.

良い点

評者は ADSL を利用した Web サイトの立ち上げが目標であるため, 今回 apache を用いて LAN 環境で Web サーバ を構築してみたが, 導入の方法と Apache のディレクトリ構造, 各コンフィギュレーションの記述については, 「第 12 章 Apache サーバー」が役に立った. これらの解説を参照するだけで問題なく動作させることが出来た.

OS の導入からコマンドの使い方, ネットワークの基礎, そして各種サービスにいたるまで, ほぼ全体に渡って Red Hat Linux 7.1 の設定の方法が網羅されているのが良い. 特にネットワーク関連のサービスはよく解説されており, 初心者でも本書を片手に rpm から導入すれば, 初歩的な設定までは問題なくできる. それ以上の詳しい設定については各サービスの専門書が必要であり, 本書の範疇ではない.

また, サービスの使い方が章ごとにきれいに分かれており, 自分のしたい事を実現するのに何を用意すれば良いかが一目でわかるのもよい.

ADSL の導入についても, 第 6 章に「 6.3.1 PPPoE 接続のセットアップ」があり, rp-pppoe クライアントの導入方法が紹介されているので, フレッツ ADSL などの PPPoE を用いた ADSL 接続の導入の予定がある場合は役に立つと思われる.

強いて言えば, ADSL 接続サービスは PPPoE だけではないし, PPPoA など新しい用語も出てきており, 接続形態も DSL モデム + ルータ, ルータ内蔵 DSL モデム, USB など多岐に渡るので, 「ほとんどのプロバイダが PPPoE 」と言い切ってそれだけ解説するのではなく, 全体的な状況を説明した上で, 可能な選択肢を示してくれればありがたい.

改善して欲しい点

大きく分けて 2 点ある.

まず, 本書には CD-ROM が添付されていない. 旧版では FTP 版が付属していたと思うが本書にはない. インプレスからは代りに CD-ROM 2 枚組のインストール本, Bob Rankin 著 『こんなにかんたん!Red Hat Linux 7.1』が出版されており, 今回そちらを用いる事にして別途用意したが, FTP 版が存在するのだから添付して欲しかったと思う.

第二に, フォントまわりの解説が無いことである.

評者の場合, X を導入して最初に感じたのが「フォントが粗い」だったので, KDE コントロールセンターでアンチエイリアスのチェックを入れてみたところ, 日本語が表示されなくなってしまった (アルファベットのみアンチエイリアス表示された). Web で情報を検索し freetype, xtt の設定を知り, あれこれ試みたがダメであった.

本書には, なぜか freetype, xtt, そしてフォントサーバである xfs 関連の情報が抜けているため, フォント周りの設定や問題の解決のための参考にはならないのが珠にキズである.

また, よくある Windows とのマシンの共有についてだが, デュアルブートについては lilo での解説があり本書を参考に問題なく出来たが, HDD の中身の mount については, 記述を参考にしても日本語のファイル名やディレクトリ名が文字化けして読めなかった. 調査してオプションに "codepage=932, iocharset=euc-jp" とすれば解決すると判ったが, この情報なしに FAT32 をマウントして使い物になるのか疑問である.

まとめ

本書は Red Hat ディストリビューションの「詳しい導入マニュアル本」である. Bob Rankin の前掲書と併せて用いれば FTP 版からでも Web サーバ等の初期導入まで支障なく行う事ができるので Linux および Red Hat の初心者に薦めたい.

本書は訳書ではあるが, 日本の読者のため「第 24 章 日本語環境の設定」が追加されている. だが, 実質 2p. ほどで日本語入力のキー操作程度で終わっており, 日本語表示やフォント関連の情報がない. インストールしたら誰もが陥るであろう上記の点について追加して頂ければ, リファレンスとしての本書の価値はぐっと上がるのではないだろうか.

その点を除けば Red Hat Linux ディストリビューションの導入から各種サービスの設定, 使い方にいたるまで, 値段的にみてもかなりのボリュームを贅沢につめこんだ良書である. 本書を頼りに Red Hat でのサーバ管理を入門するのにちょうどよい.

最後に, レビューの機会を下さったインプレス社, ブックレビュー担当者の方々に感謝します.


Reviewed by 小島洋介 (lasg@mutt.freemail.ne.jp) さん (HomePage)

「この本からはじめよう!」

Linux の使用歴
4 年
UNIX の使用歴
5 年
Linux Box の主な用途
文章作成, プログラミングなど
Linux 以外に利用している OS
Windows98SE
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
7 : 3

まずはじめに

最も人気のあるディストリビューションは? と聞かれれば, 誰しもが RedHat Linux であると答えるだろう. そうであるならば, 本当に必要とされているのは RedHat Linux の解説書である, というのもまた正しいであろう. そういったユーザー (この場合は中上級者が対象である) に対しての解答となるものであるか? と考えながら, この本を読んだ.

手にとってみて

最初にこの本を手にとって驚かされるのが, その分厚さである. 「標準的な参考書」はやはりこれくらいの厚さが必要なのかもしれないが, なかなか重さもあって電車の中で立って読むには相当な根性が必要であり, 正直私にはツライ. 「本書を選んだのも正しい選択だ.」という冒頭の一文に圧倒される前に, 実はこの分厚さに圧倒されてしまうのは, なんとも悲しいことである.

個別の内容について

初心者にとってまず必要となるのがインストールに関する項目である. ここで, とても参考になるのが著者の設定や経験を元にしたアドバイスである. たとえば, Swap はどういった基準で大きさを決めたら良いかなども, 具体的に書いてあってとても良かった. また, 巻末にある RPM リストも参考になるかもしれない. ただし, これは DISK 毎に書いてあるので読みづらい.

残念なことにラップトップにインストールする場合に必要となる情報については, ほとんど触れられてない. ラップトップに関する情報へのリンクもあるのだが, 不十分であると思う. 今後の版に期待したい.

また, kernel 2.4 に対してのより深い記述が欲しかった. 申し訳程度にリンクがあったり, 表面的な記述に留まったりしているのが非常に残念である. USB への対応や pcmcia 機能のカーネルへの統合など, 非常に大きな変化が起こったのにも関わらずそれに対する説明が無いのはさびしいと思う.

ファイヤーウォールとセキュリティーに関するページには, firewallconfig に関しての記述がもう少し詳しくほしかった. インストールの際に決めた設定が firewallconfig の画面には出てこない事などは誤りやすく, そういうことほど載っていてほしいと思う.

また, 日本語環境に対する記述も皆無に等しい. これは翻訳本であるので, ある程度は仕方の無いことであるが emacs における日本語入力についてだけでは物足りない.

総括

以上かなり厳しく書いてみた. しかし, それらを差し引いても十分に手元におく価値のある本である.

まず, 今までやりたくてもどうしても出来ないことがかなり減った. 例えば Samba である. 家庭内 LAN を組んでいて 2 台目は Linux を使っている私のようなユーザーにとって, Samba でファイルの共有さえ出来れば, と思うことは多いのだが簡単に出来ないのもまた事実である. しかし, この本を読んで今は Windows マシンから SWAT を用いて設定することが出来るようになった. また, 魅力的な文章で読むのも全く苦にならない. 読むうちに Linux がますます魅力的に思え, 使いこなせるようになっていけると思う.

ただし, この本さえあればよいというものでもない. 例えば, NFS の項を読んで NFS サーバーが動くかと言われれば ちょっと難しいのではないか, と言わざるをえない. しかし豊富なリンクをたどっていくことによって, 必ずや解決の糸口にたどり着けるであろう. そういったやり方が UNIX や Linux の伝統的な学び方であるし, それが標準リファレンスとしてベストな書き方でもある, と強く感じた.

この本は標準的な参考書として, 非常に大きな役割を果たすであろう. そして Linux を本当の意味で使うユーザーが増えることにもつながると思う.


Reviewed by 渡邉 啓二 (watanabe@infobase.ne.jp) さん

「初心者マークは外れるかも」

Linux の使用歴
約 5 年
UNIX の使用歴
約 7 年
Linux Box の主な用途
ファイアウォール, DNS/Mail/WWW/ftp サーバー
Linux 以外に利用している OS
Microsoft Windows NT 4.0
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
2 (Linux) : 8 (NT)

1. はじめに

私は主にサーバー用途として Linux を使用しているので, その観点からレビューさせていただいた.

2. 全体的な感想

対象とする読者は「中級から上級」と記述されているが, 全体的に広く浅い印象を受けた. 1000 ページ弱でサーバー用途とクライアント用途との機能を解説するには無理があるのではないか.

ただし, 図が豊富であり, 各個所で参考 URL が明記されているため, 「 Linux 入門」系の書籍からのステップアップには有効だろう.

しかし一番気になったのは, 「将来のディストリビューションでは Linuxconf がなくなる可能性がある」と記述されているにも関わらず, GUI 設定は Linuxconf を使っている個所が多い点である. レッドハット株式会社監修であれば, 将来的にどう考えているのか (旧来のように直接ファイルを書き直すのか, GUI メインにするのか) を明記して, そちらでの設定方法も併記してほしかった.

3. 良い点

基本的な部分は網羅されていると思う. DNS/Mail/WWW サーバを「普通に」構築するには便利な書籍だろう.

セキュリティやカーネル再構築などに 1 章を立て, かなりのページを割いて解説されている. こういう部分はインストール時にしか気にしない部分であるため, 何度インストールしても忘れがちで, いつも HOWTO を印刷して作業している. この部分がまとめられているため, いざという時には助かると思う.

4. 改善して欲しい点

第 6 章「インターネットへの接続」では, モデムによる PPP 接続を中心に解説されている. しかし, CATV/xDSL 接続のユーザも増えてきたのではないだろうか. 専用線接続・NIC2 枚を使用した IP マスカレード・ファイアウォールについても, もう少し言及してほしかった.

xinetd については 1 ページほど割かれている. が, これでは不十分である. Red Hat Linux 7 への移行で, xinetd に戸惑った人が一番多いのではないだろうか. 旧版との違いである部分こそ, もう少し深く記述してほしい. せめて「"disable = no" にすればよい」くらいの記述はほしい.

旧版と違い, 日本語環境についても数ページ割かれている. が, IME・kon・kterm の 5 ページ程度では不十分である. さらなる改善を望みたい.

また, 最近では Web プログラミングも盛んになってきているので, PostgreSQL・MySQL・PHP などについても, 初期設定や参考 URL 程度の解説があれば良いと思う.

5. 最後に

やはりどうしても気になったのが Linuxconf. この点だけ改善して頂ければ, 皆に薦められると思うと残念である.


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