Turbolinux 8 Workstation オフィシャルマニュアル

Turbolinux 8 Workstation オフィシャルマニュアル レビュー記事

[ ブックレビューコーナー 目次 ]

株式会社インプレス 様のご厚意により, 書籍 "Turbolinux 8 Workstation オフィシャルマニュアル" を ブックレビューコーナー にご献本いただきました. この本のレビューをして頂くべく, Linux Users ML や本サイトにおいて 公募 を行い, これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.

ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)

株式会社インプレス 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.

なお, 以下のレビューは初版を対象としています.


Reviewed by 藤村 雄希 (yukifj@imkk.net) さん (HomePage)

「Windows から Linux への移行組におすすめ」

Linux の使用歴
2 年半
UNIX の使用歴
3 年
Linux Box の主な用途
Web/ファイル/メールサーバ, プログラミング, メール, Web 閲覧
Linux 以外に利用している OS
Windows XP (主に挙動や Web ページの見え具合のチェックに使用)
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linux : Windows XP = 95 : 5

1. はじめに

本書が解説している Turbolinux は初心者向けのディストリビューションとして定評があるので, 初心者がクライアントマシンとして使用することを念頭において本書を読みすすめることにしました. Linux の主な用途である各種サーバとして使用する際に本書から十分な情報が得られるか, ということについても注目してみました.

2. 感想

2.1 構成について

Linux ベーシックガイド, インストールガイド, ... などと大まかなテーマで分けられ, それぞれの章がキチンとまとまっているので非常に読みやすく感じました. ただ, 早くインストールを始めたい初心者もいると思うので, インストールに必要な最小限の基礎知識だけにして, のこりはインストールガイドの後に回して, 飽きないような構成にすればよかったかな, と思います. アプリケーションガイドにあるコンパニオン CD から入手できるアプリケーションについては, 本書にコンパニオン CD が付属していないことも考えて, 思い切って全部バッサリと省いても良かったのではないでしょうか?

2.2 インストールガイド

初心者が一番始めにつまずくであろう, パーティションについての説明がかなりしっかりしていて, インストールの時に戸惑うことがなく良く考えられていると思います. Windows 環境との共存方法も書かれているので, マシンが 1 台しかないけど試してみたい, という人にも良いでしょう. インストール時に X の設定がうまく行かない場合も多々あると思うので, CUI でのインストール方法が細かく書かれていたのは好感が持てました.

2.3 ユーザーガイド

本書で一番ページ数が割かれているテーマです. Web の閲覧やメール, オーディオファイルの再生など, デスクトップ環境として必要であろう全ての機能について詳しい説明が書かれています. インターネット接続の方法として主流になっている ADSL での接続方法も 専用のツールを使った分かりやすい解説になっていて重宝するでしょう. kernel 2.4.x で正式サポートされた USB 機器についての説明もあって, Windows からの乗り換えを検討している人には十分な内容になっています.

2.4 コマンドガイド

初心者が Linux を使用する分には十分のコマンドと, shell やオンラインマニュアルについての説明もあって リファレンスとして使用できると思います. アルファベット順ではなく用途別に説明されているので, 目次を見れば簡単な逆引きも可能です. これに加えて shell スクリプトの説明があっても良かったのではないでしょうか? vi についての説明がちょっと少ないような気がします. Unix 系 OS に必ずといっていい程入っているエディタなので, これはユーザーガイドのエディタの章に回して詳しく説明解説すれば良かったと思います.

3. 総括

サーバ管理としてのツールは基本的に TurboTools だけとなっていて, 基本的にはクライアント用途として使用されるのを前提に書かれているようです. 本全体を通じてスクリーンショットが多く, それらが的確に挿入されているので戸惑うことはないでしょう. CD-ROM が付いていることも考えると, 4,200 円に見合うだけの内容だと言えます. これから Linux を始めたいけど, Windows は手放せないし…といった人は是非一度目を通して見てください.

最後に, このブックレビューの機会を与えて頂いた, 株式会社インプレス様, および, www.linux.or.jp Webmasters Bookreview 担当の方々に, この場をお借りして御礼申し上げます. ありがとうございました.


Reviewed by 河内真哉 (udo@echna.ne.jp) さん

「『Linux でパソコン入門』を可能にする一冊」

Linux の使用歴
1/2 年
UNIX の使用歴
なし
Linux Box の主な用途
デスクトップの OS として
Linux 以外に利用している OS
Windows
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linux : Windows = 9 : 1

デスクトップ環境が整備されてきたと言っても, 初めてパソコンを買う人に Linux を勧める人はいないだろう. ところが, もはやそれが可能な段階まで来ていることを知らしめてくれるのがこの本である. 言い切るのは, 筆者が「Linux でパソコン入門」というナメた真似をしたひとりであり, 普通は悩まないような基本的なことでさんざん悩んできた人間だからだ. 「半年前にこんな本があれば!」というのが, 一読しての感想である.

とにかく初心者にやさしい本だ. インストール中のネットワーク設定の際, インターネットに繋ぎたいだけなら ここでの設定は必要ないことを明記したインストール本はこれまで見たことがなかった. 他にも「IDE の CD-R には SCSI エミュレーションが必要」なことなど, ひと昔前までは常識だったかもしれないが初心者には (絶対) 分からないことが, きちんと述べられているインストール本は意外なほど少ない. 「半年前の超初心者」である僕の目にも初心者が困りそうな説明不足は皆無であり, 普通に「パソコンする」ための環境を, 読者のほぼ全員が手に入れることができる.

これは何を意味するか. たとえば「パソコンやりたいけど高いし」という知り合いがいたら, とりあえず安いハードを入手させ, あとはこの本を貸してやるだけでいい. なにも知らない彼 (彼女) は, あなたに感謝するはずだ. これは恐るべき成果であり, この本の真骨頂はそういうところにあるのだろう.

ところで, 「Linux の初心者ユーザーであっても Turbolinux 8 Workstation なら簡単にインストールでき, またひととおり使ってみることができるということを知っていただくため」とは, 本書の冒頭「発刊によせて」の一文だが, まさにそのとおりの構成になっている. 著者の方々の狙いがそこである以上, 私は「見事」と手を叩いて筆を置くべきなのかもしれない.

しかし正直, 私は考え込んでしまった. 私の前にたとえば「Linux やりたいっす」という若者が現れたとして, この本を「読んでみな」と渡す気にはならないだろうと思うのだ. そんなわけで, 書評としては少々逸脱するが, ひとつだけ指摘させてもらいたい.

それは, この本が「Linux ならではの良さ」にほとんど触れていないことだ.

プログラミングやサーバーなど, Linux に求めるものがはっきりしたユーザーならそれでいいが, そういう人はこの本を買うまい. この本の恩恵を最も受けることができる「Linux やってみたいなあ」レベルの初心者に, 「なるほど Linux とはよいものだ」と思わせる工夫がないと, 彼らの興味はインストールまでで途切れてしまうのではないか.

じゃあ「ならではの良さ」ってなに? と聞かれれば, それはまた人それぞれで困ってしまうが, たとえばコマンドガイドに実用的なシェルスクリプトをいくつか例示するだけでも シェルへの興味は随分ちがってくると思うし. CGIを apache で気軽に試せることさえ、教えてくれなければ気づかないのが初心者というものだ. 私はもともとプログラミング志向のためこのような例しか出せないが, 他にもいろいろあるはずだろう. しかしそういう記述はない.

「マニュアル」という言葉には「ひととおりの説明が載っている」という意味合いがある. そういう意味で「Linux のマニュアル」がもはや実現不可能なことは自明であり, ことをデスクトップ OS としての使用に絞った本書の方針は正しいのだと思う. 結果それが「パソコン入門の書」といった趣になるのも自然な流れだ.

しかしそのことが, Windows をひととおりやって「おれも Linux」と勢い付いた人たちに, もの足りなさを与えかねない状況を生んでいる. このことを「Linux もここまできたか」と喜ぶべきなのかどうか, 実際この本を読んだ人の判断におまかせしたい.

日頃, ちっとも思慮深くない私だが, この本には随分, 考えさせられた.


Reviewed by 宮田 克弘 (k_miyata@ps.ksky.ne.jp) さん

「もう Windows はいらない?」

Linux の使用歴
3 年
UNIX の使用歴
0 年
Linux Box の主な用途
メールの読み書き, Web 閲覧等
Linux 以外に利用している OS
Windows 2K/98/XP
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
3 : 7

はじめに

本書を読み, Turbolinux8 をインストールしたのですが, 不都合は全くありませんでした. またアプリケーションソフトの活用についても, 大変分りやすかったです. 本書を通じて, 多くの人に Linux を身近に感じて欲しいと思います.

基礎知識とインストールの章

基礎知識の箇所は少ないページの中に必要な知識が詰め込まれています. インストールは最初 Turbo インストールを試みました, これは Microsoft Windows のインストールと比較してみたかったためです. 結果として非常に簡単でした. 設定したのは root のパスワードと一般ユーザーのアカウントのみで, インストールが完了してしまいました. 驚いたことにスクロールマウスも最初から使えました. 私の環境では Sound が認識されませんでしたが, インストールの次章の TurboTools ガイドで簡単に解決してしまいました. TurboTools は Turbolinux に限定されるけれども, 非常に便利なツールであり, 設定で躓いて先へ進まないなんて困ったときにこの章を参照すると結構解決しそうです.

ユーザーガイドとアプリケーションガイドの章

ユーザーガイドの章は KDE の解説から始まり色々書いてありますが, 必要な場所を読めば十分でしょう. KDE は Microsoft Windows に操作性が似ているため (似せているため?) 使ってみるのが一番と思います. 内容としては基本のアプリケーションを押えてあり日常の使用には間に合うのではないでしょうか. アプリケーションガイドは商用アプリの Disk が付属していませんが, 私は Acrobat Reader と RealPlayer のインストールが参考になりました.

コマンドガイドの章

コマンドガイドについては, 結構気に入りました. コマンドの種類も初心者が押えておくには十分ではないでしょうか. また, 本格的なコマンドリファレンスのように, オプションの解説が多く, 何がなんだか分らなくなってしまうことはありません. 内容については, 具体例を示しての説明となっているため, 分りやすいと思います.

良い点

ほとんどの章が, 分りやすく, 必要な情報が網羅されています. Linux の解説本の一部にはインストール中心に編集してあるものがありますが, そのような本はインストールが済んだ時点で御役御免となってしまいます. 本書は全体のバランスがとれていて, うまくまとまっているのではないでしょうか. 特にコマンドガイドは良い出来で, 便利に活用させて頂いています. 出来れば別冊にして索引を付けてほしかったです.

気になった点

インストールの項目が少しまとまりが無いように思えました. これはインストールパターンが多様であり, 全てに対応しようと努力した結果だと思いますが, もう少し整理しても良かったのでは無いでしょうか. それほど悪い点とは思いませんが他の章がまとまっているだけに気になった点です.

まとめ

「Turbolinux8 Workstation は Windows と同様に, 普段使用する OS として十分選択可能なのです.」

この「発刊に寄せて」の言葉が本書のコンセプトであり, この本をガイドとしてインストールを行った後の正直な感想でもありました. これまで Linux といえば「マニアックなサーバー用 OS」であり, 良く分らない設定ファイルを書き換えて環境設定をしなければ, 日本語入力もできない という概念があったと思います, しかしいまや Turbolinux8 Workstation によって状況は一変しました. 実際この本を読んでインストールすると「Microsoft Windows はもういらない」と思えて来るから不思議です. Linux User のみならず Microsoft Windows User へも推薦できる良書と思います.


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