株式会社アスキー 様のご厚意により,
書籍 "Vine Linux 2.6 システム管理ブック" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
アスキー 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
本書は Vine Linux で基本的な操作ができるユーザが小規模なネットワークの管理, 構築をする際に必要になるであろう, Samba, Netatalk, NFS などの「ファイル共有サービス」や FTP による「ファイル転送サービス」, メールサーバの構築について, 簡単なネットワーク構成を例にあげ, 解説してある.
本書では, root ユーザとしてのスキルの向上には, 設定ファイルを直接読むことで得られるものが大きいとの視点に立ち, テキストエディタで設定ファイルを編集する方法を中心に解説している.
しかし, Webmin を使用したユーザ管理やネットワーク設定も解説してあるため, ファイル操作やテキストエディタの操作に自信の無いユーザであっても 読み進むことができるように配慮がなされている.
不要なファイルを捜し出して削除するスクリプトや ディスクの使用量の多いユーザを検出してメールを出すものなど, 小規模 LAN の初心者マークの管理者が, 必要になるであろうスクリプトが取り上げられているのは良いと思う.
第 4 章からは, 多くの SOHO や家庭で実際に使われているネットワーク構成を例にあげ, ファイルサービスやメールサービスの設定について, やさしく丁寧に解説してある. 本書を読みながら設定することで, 管理者としての知識を養うことができると思う.
ただ, メールサーバの設定のところでは, Postfix だけでなく POP3 環境か IMAP4 環境の構築まで説明があるといいのではと感じました.
インターネットでのセキュリティ被害の報道を見ない日はないくらいですが, 本書では, セキュリティの重要性について, 多くのページを割いて説明してあります. 初めてネットワークを管理するからこそ, セキュリティに注意してネットワークを構築すべきだという 著者のメッセージの現れだろうと思いました. クラッカーの攻撃方法から始まり, セキュリティ対策の基本, TCP Wrapper によるアクセス制御も手順を追って丁寧に解説してあります. 非常にわかりやすいと感じました.
付録に Vine Linux Tips があり, この中では初心者の管理者にとって役立つこと, また, Windows 環境と Linux 環境とのファイルのやりとりで, 注意すべき点 (漢字コードや改行コード) について書かれている.
Linux で小規模なネットワークを構築しようとしたときに, 躓きそうな部分に視点をおいて書かれており, 本書を片手にコンピュータに向かうと, Windows 環境とのファイル共有やメールサーバの構築を スムーズに行うことができると思う. 今まで, Windows 環境でのネットワーク管理はしたことがあるが, 初めて Linux を使ってネットワークを構築したいと考える Linux 初心者マークのネットワーク管理者には, お薦めできる本だと思う. すでに Linux を使用して LAN の管理をしているユーザにとっては, やさしすぎる内容だと思います.
この本は特に``ネットワークおよびサーバの基本設定''と``セキュリティ'' を中心とした構成になっていると感じました. また, 同内容の書籍では設定ファイルの説明に 多くのページを費やすことが多いのに対し, 設定に関する説明は必要最低限に抑え, メールサーバ等を構築する上で知っていなければならない ネットワークの基礎知識についても触れられている点が特徴だと思います. システムの管理を行う場合, ただ単に設定ファイルを用意するだけでなく, ネットワークとセキュリティの知識をもち, さらに実際の場面でそれらを常に意識して作業を行ってほしいという 著者の考えがところどころの文面で伝わりました.
また, システム管理ということで, ファイルおよびメールサーバの構築のみならず, 作業の効率化のために種々の方法が示されていた点に好感を持ちました. システム管理に関連するコマンドの解説, バックアップ方法, ハードディスク増設の際の作業手順などありますが, 特に作業の自動化で Cron デーモンの使い方が説明されているのが良かったと思います.
ただ, 気になる点がいくつかありました. それを以下に示します.
この本の内容を考えるとソース CD は必要ないのではないかと思いました. 3.5 節で「ソフトウェア管理」として APT が紹介されていることを考えれば, あえてバイナリ CD 以外に加えるならば Vine Plus を収録した方がよかったのではと思います. (アスキーご担当者様からのコメント)
4.4 節で Telnet や Ftp を不用意に使用することの危険性について 述べられているにも関わらず その代替手段について言及が少なかったと思います. SSH についてはコラムで簡単に説明されていますが, 本論で SSH や SFTP などについて述べられていてもよかったのではないかと思います.
4.3 節の「無線 LAN の導入」で, 著者の保有する環境において行った設定について述べられていることは, 読者が異なる環境であったとしても十分参考となる情報であると思います. しかし, 無線 LAN のセキュリティについて全く述べられていないのが残念でした. 全体の流れがこの部分だけ崩れている感じがしました.
Samba, Netatalk, NFS について説明されていましたが, もう少し Netatalk, NFS に関する情報があってもいいかなと思いました. しかし, SOHO など実際に使われている場面を想定すれば Samba に関する情報が中心となるのは必然かも知れません.
P.4 の「本書の位置づけ」に対象ユーザについて書かれていましたが, その通りまさしく Linux 初級〜中級ユーザを対象とした システム管理に関する本というのが全体的な感想です. ネットワークとセキュリティについて基本的な部分を学びながら, システム管理のノウハウを知ることができると思います. クライアント端末としての Linux の操作にある程度慣れたユーザが システム管理に挑戦する際, その指針となるであろう本だと思います.
本書が対象とする Vine Linux は, デスクトップ向けとして高い評価を受けているディストリビューションですが, サーバーとして活用するという話はあまり聞いたことがありません. そこで今回は, サーバー構築という点に注目して読み進めてみました.
本書は, そのタイトルに「システム管理ブック」とありますが, ここでいうシステム管理を具体的に表すと, "既存のネットワークに追加で接続したマシンのシステム管理" という意味が強いと思われます.
説明は, 丁寧でわかりやすいのが印象的でした. 量的にも, とっつき易さという意味では, 問題ないと思われます. また, CUI で説明をした後, GUI の事例を載せるという流れも良いと思います.
以下, 各章について感想を述べていきます.
ユーザー管理を始めとした, Linux Box の運用について, 一般的なことを述べています. 内容量的には, いわゆるインストール本に書いてある内容と同程度ではないかと思われます. 正直, シェルの操作方法まで述べる必要があるのだろうか? と思いましたが, 著者の前著である「Vine Linux 2.5 スタートブック」が GUI 環境を対象としたものから, 止むを得ない措置なのかと考えました.
なお, パスワードのセキュリティについてはしっかり述べられており, この点は非常によいと思いました.
TCP/IP の説明に始まり, 各種設定ファイルからセキュリティまで, 簡潔に説明してあります. 図表も適切に挿入されており, 非常に読みやすかったです.
サーバーとして, FTP , Samba/Netatalk/NFS, Postfix の説明をしています. 個々のソフトの説明は, 非常にわかりやすいです. ただし, 当初, サーバー構築に重点を置いた本と考えていたため, この 5 種類のソフトだけというのには, 物足りなさを感じてしまいました.
システム管理に便利なコマンドについて紹介しています. ただ, 確かに重要なコマンドが記載されていますが, 正直 "この本にして ls から説明が必要か?" という疑問も感じています.
本書は, 通常の「システム管理」という言葉から受ける印象よりも, ずっとユーザー側の身近な話題について述べた本であると言えます.
一方で, ある程度 Linux を触ったことがある人にとっては, さほど新しい内容は感じられないと思われます. 私も, 当初考えていた "サーバー構築" という観点からは, Web サーバー等についての記述がなかったため, 読み応えという物に欠けていることを, 認めざるを得ないです.
少々辛口のコメントも入ってしまいましたが, 説明のわかりやすさや丁寧さから判断して, 初心者, 初級者, および Linux をインストールした直後の人などが, Linux の設定を勉強するのには, とてもお勧めできる本だと言えます.
本書は初級〜中級ユーザ向けに Vine Linux を題材としてシステム管理を解説している. 俗にいうインストール本やサーバ構築本とは異なるアプローチの本である. ただ, 解説の対象となっているのはシステム管理全般ではなく, ある程度限定された内容である.
対象読者は Linux のインストールを終えたユーザである. CUI を用いた作業を中心にしており, エディタや基本的なコマンド操作ができることを前提にしている.
現在 Vine Linux を用いたファイルサーバを運用しており, あえて再度構築するようなことは行わなかった. また, 6 章のメールサーバ構築はレビューの対象から除外した.
インストール解説といったものは巻末付録に数ページのみ, 各種エディタの解説もあっさり省略している.
実際の管理作業の解説は 3 章以降となっている. 内容としては主にユーザ管理, ディスク管理であるが, 関連する設定ファイルの書式が詳しく解説されているなど 実際に作業する以外にも参考になるだろう. cron を用いたちょっとした自動化など実際に役に立つ.
4 章ではネットワークの基礎知識の解説から実際の設定まで解説されている. 図も多用されており, わかりやすい. ここでも各種の設定ファイルについて書式等の解説がある. ただ, bind, dhcpd などについては一切解説がない. またセキュリティに関しても解説があるのだが, 実際のセキュリティ対策については記述が少ないように思った.
本書のメインは後半のファイルサーバの構築である. 私が以前ファイルサーバ構築の際に参考にしたもの よりわかりやすい解説となっている. 設定ファイルに記述するオプションなど 多くのページを割いて詳細に解説されている.
8, 9 章の二章にわたって管理コマンドの解説に当てられている. 入門書の多くでシステム管理上必要なものは省略されがちである. なかでも特筆すべきは圧縮ファイルに関するもの, rpm コマンドについて詳細に解説している点であろう.
rpm の問い合わせオプションだとか 圧縮ファイルの拡張子と展開コマンドの対応など 初級ユーザにはありがたいだろう. man ページには実行結果の見方の解説はほとんど無いため, こういった実行例を示しながら解説されているのは非常にわかりやすい. 意欲的な内容である.
やはりある程度場数をこなすまでは 設定ファイルをエディタで書き換えるというのは戸惑うものである. 本書のように設定ファイルの書式について十分な解説があるのはありがたいと思う. また, Linux を理解していく上でも参考になる.
本書は初歩的なシステム管理, ファイルサーバ構築の解説書としては十分な内容を網羅している. 随所に注釈やコラムなど初心者が読み進める上での配慮がなされている. 内容自体も平易な内容を中心としているため非常に読みやすい. しかし一方で全体に扱う内容が無難な内容に終止しており読みごたえがない. 読みやすさと内容の充実のバランスは難しいと思うが 本書の場合はより踏み込んだ内容を扱ったほうが刺激的で良いだろう.
コラムであるとか巻末付録といった形で十分である. 例えば mkkpkg スクリプトを用いたカーネル再構築等を扱っても面白いだろう. せっかく Vine Linux を題材にしているのだから Vine の特色である apt についてはより詳細な解説があるとよいと思った. また些細なことだが後半のコマンド解説部分で若干誤植が目についた.
本書はすでにデスクトップとして Linux を使用しており, サーバとしても使ってみたいと言うユーザに最適である. Linux のインストールはしてみたものの 何をしようかといったユーザにもお薦めしたい一冊だ. ただ, 本格的に Linux を勉強したい, ステップアップを目指したいユーザには内容が簡単すぎるかもしれない. また, 小規模な LAN の管理者を育成する際の参考書 (手引き書?) としても有用な書籍ではないだろうか.
「ソース CD」は, 「ライセンスを尊重する」という意味から, Project Vine さまのご要望もありまして添付しております. 他の Vine Linux 関係の書籍もほぼ同様に添付されているかと思います.