日本実業出版社 様のご厚意により,
書籍 "図解でわかるLinux環境設定のすべて" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
日本実業出版社 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
本書では, ブートローダやシステム起動時の設定からユーザ環境や X の設定まで, Linux を運用・活用していく際に必要な設定に関して広範囲に渡って解説されている. 構成は辞書的に使われることを想定されたものとなっており, 関連する内容が書かれている他のページや JF 文書などへのポインタが本文中に豊富に記載されている. 最初に通読したときにはこれらの情報が親切過ぎて逆に鬱陶しく思ったが, 後から見返した際には便利だと感じた.
本書の「はじめに」にも書かれているが, 「テーマごとに, まずは概要, それから詳細」という構成になっている. しかし冒頭の概要が詳し過ぎて, その後の詳細と重複している説明も多いように感じた.
定価 2500 円 (税別) は, web や雑誌の記事に分散している設定に関する情報が 1 冊にまとまって解説されていることを考えると, 妥当な値段だと感じられる.
「第 5 章 X Window System の設定」では, 複雑に入り組んでいる (と私は思っている) X サーバ, X クライアントの設定がわかりやすく説明されている. フォント (第 6 章でより詳細に解説されている) やリソースなどの設定方法が具体的に解説されていて, すぐにトライできそうな気がした.
「第 8 章 ブートローダの設定」では, 特に GRUB について画面のキャプチャをたくさん盛りこんで解説されている. ブートローダの設定には「もし起動しなくなったらどうしよう」という不安感がつきまとうが, それを解消できるくらい親切に説明されている.
「第 2 章 システム全体の設定」は, 「2-1 init と rc スクリプト」, 「2-2 起動パラメータ」, 「2-3 定期実行とシステムログの設定」の 3 節で構成されている. しかしシステム起動の順番を考えると, 最初に起動パラメータの説明をし, その後で init や rc スクリプトの解説をしたほうが, 全体の理解が容易になるのではないか?
「第 3 章 ファイルシステムの設定」では, fdisk によるパーティションの作成・削除の方法が淡々と解説されている. しかしパーティションの操作はデータを失う可能性のある危険な作業なので, その注意を促す記述が欲しかった. 第 2 章ではデフォルトのランレベルを 0 や 6 にしてはいけないとイラストで注意書きがされてたが, fdisk に関するページにはそのような記載がなかった.
「ファイルの内容」と「コマンドの入力例」が一部を除いて同じ様式 (タイプライタ体のフォント, 背景は網掛け) になっている. しかし, 互いに違う様式を用いるほうが良いと感じた. 理由は, ファイル中のコメントを示す # と root のコマンドプロンプトを示す # が紛らわしいためである.
また, 文章中に書かれているコマンドの入力例においてプロンプトの有無が統一されていなかった. 一般ユーザ用と root 用のコマンドの区別を付けるために, 全てにプロンプトを付けるほうが良いと感じた.
本書の全体を通読することで, Linux の運用・活用に関する概要を掴める. その後, 必要に応じてページを開き, さらに参考資料を調べていくことで, 知識を深めていけるだろう. そういった自助努力の足掛かりとして, 本書は役立つと思う.
最近デスクトップ環境に特化した Linux も発売されサーバ用途からクライアント用途へとシフトしつつある気配がある。 しかし, Linux の環境設定というと GUI で提供されているものばかりでなくまだまだ CUI (キャラクター・ユーザ・インターフェース) が主流で初心者には敷居の高い感がある. また, 変更したいところはあるがどうやって? と困っている人も多いことだろう. 本書はそんな人たちへ容易に設定変更ができるように手助けしてくれる 1 冊である.
この章のポイントはパソコンの電源を入れて起動するまでの仕組みを理解することである. 普段何気なくパソコンの電源を入れて起動していることだろう. 実際には起動のためのプロセスがありその一つ一つに重要な役割を持っている. その普段はあまり気にしない部分に焦点をあて コンピュータが OS を起動するまでという基本中の基本を図解入りで説明しているため Linux ユーザーならずパソコンを利用している全てのユーザーの参考となる章である.
Linux の起動プロセス中に実行されるファイルと設定について解説されている. 起動条件により設定を変えたいと考えてる場合には役に立つ章である. また, ログのローテーションやバッチジョブ (cron) についても説明されているので ログ管理の仕組みや定期的にプログラムを実行したいと考えている場合は例をもとに実践できるので簡単に理解できると感じた.
ディスクのパーティションやファイルシステムについて図解されており非常にわかりやすい. マウントやオートマウントについても図解されており設定も例にならって実行すれば容易にできる. NFS や Samba についても解説されているが, NFS はともかく Samba はサーバとして構築することが多いので別の章を設けて解説したほうがよかったと思う.
おそらく設定の中でも一番多く触れるであろう部分だと思う (管理者の弁慶の泣き所だ). ユーザ管理の全てを理解している人は案外と少ないのではないだろうか. いざ設定をすると, 思ったとおりに行かない場合もあるほどである. 特に気を引いたのはログイン時のプロファイルの読込まれる順番で, 見逃しがちな部分でもありきっちりとユーザ管理をしたいと考えている場合に役に立つ内容だと感じた.
Linux をクライアント的に使う場合に必要なシステムである X Window System について解説されている. これもユーザ管理同様ログイン時の参照プロファイルが書かれており, 管理者にとってはありがたい内容である. X については山のように設定項目がありそれを考えただけでも触りたくないが, ポイントを押さえて解説されているので X をカスタマイズする場合は本書を片手に設定すると苦もなく? できると感じた.
ロケールやフォントの設定, 日本語変換について事細かに解説している. ほとんど導入時に設定されるまま使っていた自分にとってはこんな設定もあるのかと感心した内容である. 普段, ディフォルト値で使っている人は是非, 本書でカスタマイズをしてみてはいかがだろうか.
今現在この設定ができずにネットワークにつながらないパソコンは使えないパソコンであるというくらい重要な設定である. スーパーデーモンである inetd や xinetd も解説されており, セキュリティー面でもファイアウォール, TCP ラッパー, SSH と基本はしっかりと押さえられている. iptables の解説部分はいざ設定するとうまくパケットが通らなくなることもあるため設定例を元に試して見るとよいと感じた. 特にサーバを立てている管理者には必読の章である.
LILO と GRUB についての解説である. 最近は LILO をブートローダーとして採用しているディストリビューションは減ったが, 古いシステムで LILO を採用していた場合は参考になるだろう. GRUB についてはコマンド一覧を見ながらいろいろと試してみることでどんな動きや振る舞いをするのか確認するのに役立つ. GRUB の使い方をマスターするには参考になるだろう.
カーネルの設定は非常に奥が深く さすがに本書では基本的なところにとどまっていると感じた. しかし, コンパイルの基本的部分については解説されているので, カーネルを自分仕様に変えたいと考えている人は本書を参考にチャレンジするとよいだろう.
とにかく図解入りで細かく説明されており基本的な設定に関する一通りのことを理解できる 1 冊である. また, ところどころ登場する「コラム」は見逃さずに読むことにより自分が何をしているのかが理解できるようになっている. Linux に多少なりともなれたユーザーであれば容易にその内容が理解できるようになっていることも非常によい点である. 本書は使いやすいデスクトップ環境を構築したいと考えているユーザーにお奨めしたい.
本書は, 「はじめに」にも書かれている通り, まったく初めて Linux に触るユーザよりは, 多少なりとも経験を持つユーザ向けであると言える. このような技術書籍を大きく分類するならば, 以下の 3 つになるだろう.
本書は 2 番目と 3 番目を足して 2 で割ったような, 常に手元に置いておきたい, しっかりと読み応えのある辞書のような書籍であると言える.
まず, 本書を書店で見かけたら, 何はさておき著者の記した「はじめに」を読んでいただきたい. これを見て, 今まで技術書籍を読む中で, その独特の難解な言い回しに辟易していたのとは違う感覚を覚えたならば, 本書は間違いなく「買い」である. 反面, なんとも思わない人には, 本書は向かないのかもしれない.
少なくとも私は, この前書きからこの書籍の著者が, 「本当に分かりやすく読者に伝えたい」と考えている事を感じ取った. 実際, 本書を読み進めるにあたり, 説明の一つ一つが分かりやすく, 理解する努力を強いられないのである. 各章, 項目ごとに何を狙いとしているか, 誰を対象としているかが非常に明快であり, この何とも心地よい読みやすさは, 1 冊を通じて最後まで持続していた点は高く評価したい.
本書全体に言えることだが, 文体が柔らかな感じで意味が分かりやすい. 文章が簡潔でまとまりがあり, 理解しやすいのである. そして構成もしっかりと考え込まれているようで, 起動の仕組みからシャットダウン, ファイルシステム, ユーザ環境設定, X Window System, ネットワーク設定, ブートローダ, カーネルと主たる要素が網羅されており, 順に読み進めば無理なく Linux の全体像を把握でき, その後はリファレンスとして充分役に立ちそうである. また随所に記されるコラムであるが, 主に主要 TIPS が記載されており, これを拾い読みするだけでも Linux のかなり便利な使い方を知る事ができる. また, Linux 使いとしておさえて置くべき基本事項は, JF へのリンクが示されており, 基本を正しく理解するための一助となっている. そして各項目ごとに関連ページが相互に参照されており, これも本書の使いやすさを向上させる一因となっているようだ.
ここまでの内容だと, やたら説明だけの書籍かと思われるかもしれないが, 実際には解説と実コマンドが対で記載されており, チュートリアル/演習手順書としても, かなり有用である.
概ね本書については好印象をもっており, ほとんどマイナス要素は思いつかないのであるが, 強いて言えば, タイトルが中身に比べて弱いような印象を受ける. Linux 全般を理解したいが, 「環境設定」に興味を持っていない人が, タイトルだけ見て「喰わず嫌い」となっている例も多かろう. 脱初心者を目指す人向けに強力にアピールできるようなタイトルが望ましい. また, 図解, とあるが, それほど図解が多いわけでもなく参考程度に記されている点も多少気になった. しかし, その図解はどれも本文を補足するに充分な内容で, その品質自体は高い.
今後改訂の機会があれば, これらの一意見を反映していただければ幸いである.
今回の書評を通じて, Linux は Windows と違い, 各種設定がクリアに各種テキストファイルに格納されている事を確認し, またスクリプトがスクリプトを呼ぶというシーケンシャルな流れについても見て取る事ができ, 非常に有意義であった. 動作がクリアなだけに, 自分が何をしているか, といった事が明確になり, いままで漠然と行っていた設定変更等も, 意味や影響を理解しながらこなせるだけのスキルが身についたと思う. 本書は, 個人的に Linux をマスターしたい人も, 企業において Linux を管理する人も必携の書といえよう.
本書は Linux Box を手に入れて (あるいはディストリビューションをインストールして), 次にやろうとすることの解説書として内容は盛りだくさんであり, 運用当初のマニュアルとしては十分な内容を備えていると思います. しかし更に Linux Box を様々な用途に向けて使おうとした時には物足りなさを感じるのではないでしょうか?
Linux Box の基本的な設定を行う際に参照するには十分な内容です. ただ残念に感じられたのが, コマンドの索引が無いことです. 「このコマンドはこの局面で使い, こういった結果になる」ということの確認の書としても有用なだけに残念でした. 前書きに「コマンドの解説書では無い」旨の説明があるものの, Linux Box の管理局面でコマンドから結果を逆引きするといった用途にも使えれば良かったと思います.
起動時の動作, ファイルシステム等 Linux とハードウェアの関係が詳しく述べられ, かつ理解しやすいものであると思います. 特に私にとってはランレベルに関する記述が有用に感じられました. 逆にブートローダの設定が第 8 章として後の方に扱われていることについては少々奇異に感じられました. またせっかく起動時の動作を詳述しているので (しかも x86 プラットホーム限定で), 起動時にトラブった場合の対処を詳述しても良かったのではと思われます (例えば FD, CD-ROM による起動とリカバリ). またハードウェアを増設した場合の Linux OS の挙動やその手順 (例えば /home ディレクトリの容量不足に陥った場合の HDD 増設からパーティションの作成, ディレクトリの移動の手順) が具体的に述べられていてもよかったのではないでしょうか?
Linux にユーザとしてログインした場合, あるいは X Window System を経由してログインし利用する場合の環境設定が述べられています. コマンドラインでシェルを利用する場合と X 環境の設定両方について詳しく述べられていますが, 今どきのディストリビューション (特に商用のもの) がほとんど, X Window System 環境を前提としている以上, X 環境の設定に絞って記述してあればよかったのではと思います.
この書籍全体にいえることですが, 今一つ書籍のターゲットユーザがハッキリしないという印象を受けました. サーバとして使おうという向きにもデスクトップとして使おうというユーザにとっても 基本的なインストールをしてしばらくは役立ちますが, いざ踏み込んで使い出した時に不足を感じるのではと思います.
7 章のネットワーク設定に関する解説では, iptables, ipchains に多くのページが割かれている点に好感を覚えました. 反面, 現状での Linux Box の使われ方として, 既存のネットワークにクライアントとして追加されるという局面を考えると DHCP クライアントとしての設定に詳しい解説があっても良いと思われます.
カーネルの再構築について解説されていますが, この本が Linux Box の設定全般を扱うものであるときに果たして必要かという点に少し疑問を覚えました (カーネルの再構築を行うようなヘビーユーザが, 他の章についてもこの書籍に書かれている程度の内容で満足できるのでしょうか?).
パッケージ (rpm, apt) の扱い方が付録として記載されていますが, 本書の内容からするとパッケージの扱い方は 1 章を割いて詳述すべき項目ではないかと思われます. OS の各種設定を行うことが究極には各種のアプリケーションを稼動させることである以上 (OS そのものを目的とする方もいらっしゃることと思いますが, そのようなディープな方には本書は物足りなく感じられると思います), アプリケーション導入の手順を詳しく解説することが必要だと感じました。