株式会社オライリー・ジャパン 様のご厚意により,
書籍 "Knoppix Hacks" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
オライリー・ジャパン様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
最初に Knoppix と言えば CD で boot するので, これから LPIC の受験を考えている人にとっては, インストールの手間を省かせてくれる, とても良い Linux と言う印象でした. しかし, 本書のタイトルに, 「システム管理のテクニック」と記述があるように, システム管理の業務の中で, どうしようも無い状態になったときこそ, その威力を発揮してくれるディストリビューションであるとの認識を持ちました. また, 本書の感想を 一言で言うなら
「初心者にもありがたいが, システム管理をする人には, さらにありがたいノウハウ盛りだくさん」
"ありがたいノウハウ盛りだくさん" の部分の詳細は, 書店で少し眺めてみると解ります.
手元においてトラブルを颯爽と解決する, そんなシステム管理者を目指すために本書を購入するのがお勧めです. 個人的には, "正直に, ありがたい本をいただいてよかったなぁ" と言う感想です.
特に, 7 章 Windows の修復 の部分は, 壊れた Windows を修復するのに使ってみようかなぁと思います. 悩める Windows マシン管理者の人には, お得感確実です.
Knoppix ベースのその他のディストリビューションが紹介されていまして, その中でマルチメディアに強い MedianLinux やセキュリティツール満載の Knoppix-STD や INSERT などは, 本書を読んだあとで, 実際に使って見たくなり iso 形式ファイルをダウンロードして試してみたりしました. MedianLinux の場合は, TV チューナーボードにも多数対応しているので Knoppix で TV が見れたりなど, お遊びの機能満載です.
INSTRT はサイズは 50MB ほどなので, 今でもサイズの小さい CD-ROM 媒体を買いにいこうかなぁと言う衝動に駆られています. 名刺入れに忍ばせれば, かっこいいかなぁ.
続編が出るとすれば, 上記の Knoppix-STD や INSERT の活用方法の詳細や MedianLinux での遊び方の本なんかが出てくれるといいなぁと思います.
本書は, Knoppix を使って行う裏技の本です. しかも, Windows 系の記載もあるところがとても良心的です. "えーっ, こんなこともできるの?" と言う内容が本書にはあります. 是非, 眺めてみてください.
「KNOPPIX って何が出来ますか」
よく耳にするタイプの質問ですが, あまりにも漠然とした質問の為, 苦笑だけで解答を得られずに終わってしまうことが殆どです. しかし今後は, 最適な解として本書は如何でしょうか.
帯にも書かれていましたが, 対象読者は中上級者としているようです. 確かに, 独特の文章や専門的な収録情報が, 初心者にとっては難解であったり, 不要に感じるかもしれません. ですが KNOPPIX の利用を考えている方はレベルに関係なく, 本書を手に取ることをお薦め致します. 各種情報が関連種別によって章で分類され, Hack という単位で収録されていますが, 各 Hack が独立している為, 全体を通して見通しが良く, KNOPPIX の能力を容易に知ることが出来るためです.
内容は全九章に分類されていますが, 大きく分けて 4 種類の情報が掲載されています.
一つ目は「利用直前情報」です. ハードウエア認識やネットワーク設定など, 正常なブートへ導く為の, およそ必要な事は網羅されています. 特にチートコード (動作変更のオプションコード) が掲載されている点, ブート後によく使われるGUIベースのアプリケーションの紹介や設定方法など, KNOPPIX を障害無く利用開始できることを目指している点は, 非常に好感が持てました.
二つ目は「利用一覧」です. KNOPPIX を道具箱に見立て, 他システムへの各種管理・修復作業, セキュリティ問題に対する作業手順など, ハードディスクへインストールすること無く, リードオンリーのメディアから起動できる KNOPPIX 最大のメリットを活かした実際の作業方法が掲載されています. 当然ではありますが掲載されている情報の殆どは, Linux 全般で利用できるものばかりですから, KNOPPIX を利用しない方にも汎用情報として一読する事をお薦めします.
三つ目は「派生種情報」です. 目的に応じてカスタマイズされた KNOPPIX の派生種 (デリバティブ) が紹介されています. クラスタやセキュリティ, 果ては録画に関するものまで, 可能性の大きさに驚く情報です.
四つ目は「リマスタリング」です. カスタマイズに関する内容で, オリジナルの派生種を創るため, GNU/Linux を支えている豊富な資源で冗長・不足を解決し, 利便性を向上させるための情報です. ただ, 本書を元に作業を行ってみると判るのですが, 「KNOPPIX をハードディスクに移して, chroot して, 変更して, マスタファイル作成」だけでは不十分で, 補足情報を必要としました. もちろん掲載されている情報はこれだけではありませんが, 基礎のみと考えた方が良いです. 初めてのリマスタリングとして, 必要最小限の情報のみの提示であったため, 全体像は理解し易かったです.
通読して, 管理者にとって実践的な内容が多いことに驚かされました. ブートローダーやハードディスク管理, バックアップや各種復元など, よく目にする問題の解決手段が, 的確に KNOPPIX の利用で書かれています. おそらく著者自身の経験を元に内容を吟味されたものと思われます. またこれらの内容は, 管理者として仕事の幅を広げる目的の読物としても良いと思います. 本書の目的からすれば仕方の無い事ですが, 一般ユーザーにとっては馴染の無い項目が多く, 不満に感じるかもしれません. しかし, ブート時の問題解決など躓き易い点に関しても書かれていますので, 本書を手元に置かれることをお薦めします. 紙面上の文字密度が濃くなく見易いことや, 最小単位である Hack も非常にコンパクトで読み易く仕上っていますので, 本書はリファレンスとして最適です.
本書のレビュー記事を書くにあたり, 「自分のツールを持って歩くとしたら」本書の内容は KNOPPIX を総合的なツールとして活用する上で役立つのか, 時間の許す限り実行してみた.
最初に実行した作業は VMware 上にインストールした Windows2000 のパーティションサイズの変更で, これは HACK#74 (P.261) に記載されている. 「コマンドの実行」で qtparted を実行し, ほんの数分でサイズの変更は完了した. このあとで, ext3 ファイルシステムを新規作成してみたが, 作成したあとの変更は qtparted できなかったのは P.209 の記述とはことなる. 新規にパーティションを作成した実感としては, 最初に各パーティションの容量を決めておけばコマンドで作るよりは楽という程度に感じた.
また samba の conf ファイルを telnet 経由で編集しなければならない時があった. Windows のコマンドプロンプトから vi で編集しようとしても, 改行コードの問題があって使い物にならない. KNOPPIX はこんな時には重宝する. 実際の作業では firefox を起動して web 上の情報を見ながらだったので CD にアクセスするたびに一時停止状態が頻繁に起きるので, 緊急用で利用するということになるだろう.
なお本書には #5 に対策となる方法も記されているが Windows を利用していれば NTFS だろうし, ハードディスクに領域を確保するのも違和感があり, この対策は実用的とは思えず実行しなかった.
また #49 のハードディスクの消去は意外にお勧めと思っているし, 実際に試してみた. 消去用のソフトは有料の物がほとんどだからというのが最大の理由だが, とはいえ, コマンドを入力して消去を実行するとなると敷居が高いかなと思ってみたりする所はあるけれど, ぜひ使ってみてもらいたいと思う.
NT パスワードのリセット #75 を試そうとした. #73 に記述のある NTFS への書き込みが必須なのだが, なぜか KNOPPIX 3.9 には Captive が収録されていなかった. 英語版にも未収録だった. 時間の関係もあって NTFS の書き込み, NT パスワードのリセットは, 試す事ができなかったのは残念だった.
総論的にいって, 本書は実際に使う者から見て平易な記述になっており, 記述どおりに操作すればその作業がきちんとできるような「親切」な内容だと思う. 実際の判断は使用するものによるが, KNOPPIX 自身も「ツールを持ち歩く」という用途には十分使えると判断している. くわえて,「本書とともに持ち歩けば」私には十分役に立つと思える. 難を言えば, 全ての記述が最新のバージョンで完全に試されたうえでの記述ではなかったことは残念な点であった.
前半に KNOPPIX の紹介やプリンタの設定方法や, 設定内容を保存する方法等が記載されています. 中盤は本書のコアとなる部分で, 様々な Tips (本書では HACK と呼んでいます) が紹介されています. MBR の復旧方法, 緊急用ルータの作成方法, パスワードのリセット, フリーウエアを用いたウイルスチェックなどなど. 後半は KNOPPIX の亜種の紹介や, 自分専用 KNOPPIX の作成方法等が記載されています. 辞典のような構成で, 100 個の HACK が紹介されています. 各々は独立した内容となっており, 関連するページの記載などもされているので拾い読みをする際に便利だと思います.
本書には GUI のキャプチャも図表としてありますが, ほとんどはコマンドラインのログが実行の例として記載されています. GUI を好む利用者にはあまり楽しい本ではないでしょうが, 私のような古いタイプにはかえってわかりやすく感じました. 本書の著者自身がシステム管理 (以下, PC/AT 互換機のおもりのこと) を経験しているらしく, システム管理者にとって便利もしくは魅力的な内容の HACK に絞っているようです. ディスクパーティションの切りなおしや, PC からのデータサルベージ等トラブルシューティングの Tips が内容の多くを占めています. おそらく, 著者自身が実際に直面したトラブルと, KNOPPIX を用いて解決した事例が基になっているのではないかと感じました. 当然, そのような作業をすべき人間にとっては本書はお勧めです. さらに KNOPPIX を知らないという人であればぜひとも目を通していただきたいと思います.
1 ページから順をおって読んでゆくのも良いと思いますが, 目次を見て気になる HACK から拾い読みしてゆくのも良いと思います. さらに, 本書の中には 「システム管理者の日常は 90% が暇ですが残りの 10% は非常事態です」 といったくだりがあります (私も同感です). その 90% の間に KNOPPIX を起動して気になる HACK を実践しながら読み進めてゆくのが最も楽しい読み方ではないかと思います. あまり考えたくはないのですが, 残り 10% の時には良いリファレンスになってくれると思います.
いわゆる入門用の本ではなく玄人が読者対象となっているはずなのですが, やさしすぎる内容の記載もありました. 例えば OpenOffice の使い方などは KNOPPIX の利用法とは離れているように思いますし, K メニューの内容くらいは KNOPPIX を起動してしまえば説明は必要ないと思います. それらの分をもっと別な HACK に割いて欲しかったと思いました. とはいっても, KNOPPIX に関する他の書籍に比べれば初歩的な内容は少なく, ありがちなハードディスクへのインストール方法に関する記述は非常にあっさりしており, さほど紙面を取っておりません.
各々の Tips についての記述は日常的に Unix や Linux を触っている人でないと難しいと感じるのではないでしょうか. 読者層にずぶの初心者を対象としておらず, 玄人向けに書かれているからでしょう. 逆の言い方をすると, 本書の内容がすらすらと理解できるような人にとっては, KNOPPIX の良いリファレンスマニュアルになるのでないかと思います. 私は様々な OS が混在するシステムの管理業務を生業としており, KNOPPIX は 3.2 のころから愛用しております. 同業者に KNOPPIX を勧めるにあたり, 良い参考書がないのを常々不満に思っておりました. 本書はまさにその良い参考書として同業者へ紹介できる本だと思いました. CD-ROM も付属しており, 値段以上の価値がある本だと思います.