ソシム株式会社 様のご厚意により,
書籍 "KNOPPIXで基礎から学ぶLinux" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
ソシム様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
『KNOPPIX で基礎から学ぶ Linux』は, これから Linux について学びたいと考える読者にとって, うれしい一冊になると思います. 今まで私が手にした Linux 関連の書籍の中で一番分かりやすいと感じました. KNOPPIX にかぎった説明ではなく, 他のディストリビューション等にも及んでいて Linux を広く理解するのに最適です. OpenOffice.org 等のアプリケーションについての説明も他の Linux 解説書と比較して丁寧です. 日本語入力の設定なども十分な説明がされています. 用語や説明で気になるところもありましたが, 本書の好感さはそれを上回ります.
Linux を平易に説明されていて, 初めて取り組むには理解しやすいでしょう. 初心者というのはほんの小さなことでつまずきます. 16 ページと 96 ページに「パイプ」という言葉が出てきますが, コマンドでこの記号を入力するのにどのキーを使うのか悩んだ時期がありました. キーボードによって「|」と表示されているものと, 中央が切れて上下 2 本の短い破線になっているのがあります. 初心者用の書籍ではこんなことも配慮されることを希望します.
KNOPPIX のインストールについての説明は丁寧にされていて, 迷うことはありません. 最新バージョンのインストール方法など, この本の範囲以上の情報があり後々役に立ちます. CD-ROM から KNOPPIX を常時使うのは正直耐えられないところですが, HDD へインストールして使う方法が紹介されているのはありがたいです.
以前購入した Redhat の解説書などと比較して, 本書はアプリケーションの使用方法に多くのページを割いていて, Windows を使用していた人が移行を目指す第一歩には助かります.
特に, 文字コードの違い, フォントの違いによって思いどおりに表示できず「Linux は使えない」とあきらめている例を聞いていますので, この本の説明でそういったトラブルも避けられるでしょう.
添付の CD-ROM をセットして説明どおりに立ち上げるだけで Samba サーバーが使用できました. KNOPPIX はサーバーには向かないと本書の中でも説明していますが, 家庭内や SOHO での使用やとりあえずサーバーを経験してみる範囲で使用するには好適です.
この章を読んで, KNOPPIX のセキュリティについて認識を改めました. また, 293 ページのコラム「KNOPPIX は最強のクラッキングツール」を読んで, 怖さも感じます.
知人の OS が壊れた Windows XP の HDD からファイルを救出するのに, 使ってみました. 見事に復元できたのです.
Linux 関連の他の書籍では, Microsoft Office から OpenOffice.org へ簡単に移行できるように書かれていますが, 実際はそう簡単ではありませんでした. 本書では「十分ではない」「初期設定を変更する必要がある」と書かれ, その方法も説明されています.
私同様これから Linux に取り組まれる方へお勧めの一冊です.
本書は, 今までに Linux に触れたことのない, または今から Linux を勉強してみたいという読者をターゲットに書かれた本です. Chapter 1, 2 では, 「Linux とは何か」, 「Linux のディストリビューション」の説明が丁寧に説明してあり, Chapter 1, 2 を読むことで, KNOPPIX が Debian をベースに開発されていることが理解できるような構成となっています.
私自身, 学生時代から Linux を使用しており, 現在も職場や自宅で, Red Hat Linux や Vine Linux を利用していますが, 最近, 話題になっている KNOPPIX については使用したことはありませんでした. しかし, CD-ROM 1 枚で利用可能な KNOPPIX については, かねてから興味を持っており, またいくつかの疑問点も持っていました. それは,
などです.
Chapter 3 は, KNOPPIX 初心者が疑問に思うような上記のような疑問点を想定して構成してあり, 例えば,
などは豊富な図と丁寧な説明で非常に理解しやすいと思います.
Chapter 4 は, 「KNOPPIX で Linux の基礎を学ぶ」となっており, 簡単なコマンドの説明やファイルのパーミッションの変更方法などが紹介してあります. Chapter 5 「KNOPPIX のアプリケーションを使いこなす」では, 多種多様なアプリケーションの紹介がなされています. 例えば, エディタについても vi, KWrite, Kate, Emacs と 4 種類, また, 他のアプリケーションについても, OpenOffice.org (Writer, Calc, Impress), GIMP, Konqueror, Firefox, lynx, Elinks, w3m, KMail, Thunderbird, Sylpheed, Mutt などが紹介されています.
本書は, Linux を今から始めようとする読者をターゲットにしていることを考えると, テキストベースのブラウザの説明や何種類ものメールクライアントを紹介することよりも, 1 つのブラウザ, メールクライアントに絞って説明を丁寧に加えたほうが良いのではと感じました.
また, 「デスクトップをカスタマイズしよう」では, KDE コントロールセンターの各項目について, およそ 40 ページにわたって簡単な説明がなされています. これも, 初心者に設定が必要な項目を厳選し, 丁寧に説明すべきではと感じました. 画面ダンプと簡単な説明のあと, 「ほとんど使用することはありません」と書かれているのには, 少し違和感を覚えました.
KNOPPIX を用いると, 今までに Linux に触れたことのないユーザでも簡単に Linux の世界を体験することができます. 本書はそのようなユーザにターゲットを絞っていますが, 多くのことが簡単な説明とともに羅列されているだけという印象を持ちました. もう少し, 初心者には最低, 「これ」と「これ」といったポイントを絞って深く丁寧に説明すべきではないかと感じました. Chapter 3 の説明が丁寧で分かりやすいだけに, 他の章の薄い説明が残念な感じがしました.
本書は, Knoppix を例に Linux というものの基礎を教えようという本で, 概して良書といえる.
まず, インストールの章から, 他の書籍では避けがちなパーティションやデュアルブート, ISO イメージの焼き方など, ディストリビューションに捕われない解説があり, 好感が持てる. Knoppix の利用法についても, よくある CD ブートだけでなく, ハードディスクにインストールして使う方法やデータ保存法など, ありきたりな利用法だけに留まらない運用法を示している. サーバーの解説に続いてセキュリティの章を設けたり, NTFS の利用法の解説, ごく基本的なファイルツリーの説明など, 「インストールとアプリの解説をして終わり」という本になっていないのは, 高く評価できる. 要するに, Knoppix を通じて, Linux という世界の案内をしている書籍といえる.
が, それだけに, 基本的な部分の誤解を招く表現が散見されるのは, 非常に惜しい.
全体として「Linux (または Unix)」という単語でカーネルもアプリケーションも一括して扱おうとし, その上で Win/Mac と比較しようとするから, ひどく無理のある解説になってしまっている. これでは, せっかくの解説が台無しである.
繰り返すが, 本書は, 基本的には良書である. Linux, Unix について, 開発の始まりからきちんと解説しているし, 基本的な概念の説明から, スキルのいるものまで満遍なく取り上げてあり, これ一冊を繰り返し読むことで, Linux という世界の鳥羽口に立つことができるようになるだろう. それだけに, 上にあげた間違いがあるのは, もったいない. もし, 今後, 同様の書籍を出すことがあったら, もう一度チェックを行って, 誤解を招く記述を改めてくれると, うれしい.