株式会社グッデイ様のご厚意により,
書籍 "オープンガイドブック OpenOffice.org 2.0" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
株式会社グッデイ様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
最初に OpenOffice.org を開発しておられる皆さんに敬意を表します. 本書を読むにあたって, 職場での環境を OpenOffice.org で置き換えられるのかを主な目標にして 私なりの問題意識をもって読んでみました.
本書は OpenOffice.org ではじめて office ソフトを使うという人にとっても, MicrosoftOffice からの移行を考えている人にとってもよい入門書であると思っています. 基本的な操作の解説として Chapter2 から 5 までがあてられており, 文書作成の Writer, 表計算の Calc, プレゼンの Impress, その他のツールと, それぞれの使用法について章をあてています. 必要な章をまず読めば, 使いはじめるのに支障はないでしょう.
この機会に, 職場でどのようにオフィスソフトが使われているか観察してみました. 結局のところワープロ機のかわりか, 縦横の数値を合計するというのがほとんど (集計がつかえればいいということ) で, マクロ 1 件でした.
これなら互換性の問題だけで OpenOffice.org で作業は置き換えられるというのが結論でした (後で述べますが, 一部にちょっと手間取るものもあります). とりあえず自分の作業を置き換えてみましたが不都合はありませんでした.
互換性と移行については Chapter7 に詳しく解説されていますので, 移行を考えている方には短い章ですが重要です. 私の場合, 箇条書きの文書がほとんどでしたが P267 から解説されている一括変換は使わず, まず読み込み, 確認して, 拡張子を変えて別名で保存する方法をとりました. その際 Writer で図を貼り付けている案内チラシは, 用紙からはみ出しがあったため短時間でしたが手作業で修正が必要でした. 本書には Calc では P258 に「細かな違いがあり・・・戸惑うかもしれません」と書いてあるのですが, 集計に使っている程度の私の利用では, 何の問題も感じられませんでした.
ちょっと戸惑ったのは用紙の設定で, P44 に解説がありますが大切な部分だと思います. メニューの位置が MicrosoftOffice と違うことで直感とのずれが大きいからでしょうか, 本書を読み直すことに私はなりました.
ここで問題になるのは操作性なのですが, 操作性でどちらが有利という事は無いと思います. 慣れた感覚というか, 今までの操作を変えることのほうが大きいと思っています.
実際に戸惑った例も紹介しておきます. ひとつは友人に「試しに使ってみないか」と渡し, しばらくあとに彼から「添付して送信したところ, ファイルが読み込めないと苦情がきた」と言われました.
そのことは P263 にファイルの互換性の問題で記述してるのですが, 「大多数のユーザーは拡張子の意味を知らない」ようです. その後の対応は .doc ファイルで保存するか PDF に変換して送るかしているようです.
私の場合は P231 から葉書印刷が紹介されていますが, 高度な機能になると操作性が大きく変わるため, 入れ替えにかなり時間がかかりました.
マクロ機能については試す時間がありませんでしたが Chapter9 以降に簡単な解説が記載されています. マクロ機能については, 独立した書籍が出版されるよう希望するところです.
多くのことは本書を通読しておけば解決できます. 本書を手元において OpenOffice.org に多くの方々が触れられるようになればと思っています. 同時に OpenOffice.org はオープンソースの運動のなかで開発・発展してきたものです. 私の稚拙な文書がこの運動にすこしでも貢献できればさいわいです.
本書を読んでいる途中で, 『一太郎』が OpenOffice.org の標準ファイル形式である OASIS に対応することを発表したそうです. 現在 OpenOffice.org には『一太郎』のファイルを読む機能はありませんので, ファイルの互換性が広がったことは朗報です.
本書は, OpenOffice.org について, 基本的機能から, いわゆる中上級者向けの機能まで, 幅広く紹介してある解説書であり, MS-Office 機能をより廉価に使いたい MS-Office のユーザーや, Linux 上で MS-Office のデータを処理したいユーザーが, OpenOffice.org を検討するのに薦めたい. ただし, OpenOffice.org は Writer, Calc, Impress といった各機能だけで 1 冊の本になるくらいの内容があり, 中上級の内容までカバーした広範囲の内容を 1 冊の本にまとめてある. したがって, 解説の深さには自ずと限界があり, できれば MS-Office についてある程度知っていることが望ましい.
操作方法については, こういったソフトの一般的な解説書にあるように, 例題を用いて, その操作方法について操作画面のハードコピー上に追加された各種吹き出し等を使って解説するといった手法で構成してあり, 一応問題はない. ただ, 紙面の関係もあり, ひとつの機能について見開き 2 ページにステップごとの操作とその結果について解説してあるような解説書とくらべると, 操作にともなう画面変化を読者が補完する必要があり, Office ソフトについて全く初めての読者の場合, どの程度理解できるかは, 疑問が残る.
ホームユースでは, Office ソフトユーザーが最も利用すると思われる葉書宛名印刷については, Word に相当する Writer ではなく, 各機能の連携に関する「便利な機能を使いこなす」として解説されている. テンプレートの利用のほか, マクロについて別途章立て解説している点が, この本の守備範囲の広さを示していると思う.
通常の解説の他に, 必要に応じて囲み記事が「ONE POINT」として挿入され, 操作に関する TIP 的な内容や関連事項が記載され, 理解を深める助けになっている. また, 別の囲み記事として「COLUMN」と称し, OpenOffice.org のファイルの中身の構造についてまで, 簡単ながら解説しているのは, Open なソフトの表れか.
OpenOffice.org と MS-Office の間には, 高機能なことを利用すればするほど, 現在のところ互換性の問題がでてくる. この点については, 各機能面の相違点および MS-Office と OpenOffice.org 間のファイル交換の方法等についての簡単な解説がある.
Windows にしろ Linux にしろ Office ソフトの導入にあたっては, 何と言っても現在市場を支配している, MS-Office との互換性が気になるところである. 互換性に問題が残ることは誰しも予想がつくことであるが, その程度が許容できるものかどうかが一番の問題である. そういう意味においては, 本書の記述は少々物足りない. 「互換性の無い機能は切り捨てられるというメッセージが表示される」と書いてすますのでなく, 具体的にどんな不具合が生じるかについて記載して欲しかった.
もっとも MS-Office であっても 97/2000/XP/2003 といった間においても, 微妙な仕様の違いによって文字化けしたり, 色が変わったりしているのが現実であるので, 難しいこととは思うが, OpenOffice.org への移行を考えるだけでなく, MS-Office との共存というスタンスでの互換性を考えた記述をして欲しい.
付属の CD-ROM には Windows 版と Linux 版の両方が収録されている. Windows 版は, XP の Home Edition に特に問題なくインストールできた. MS-Office と共存させたが, 機能・ファイルの互換性の問題は別として, ファイルの関連付けを変更してしまうこともなく, MS-Office は従来どおり動いている. 但し, インストール先は指定できず, 無条件に C ドライブの Program Files フォルダになってしまった.
Linux 版は, Fedora Core 4 の既にインストールされていた同じ 2.0Beta 版が本書の CD-ROM 版より古いようだったので, その上に update インストールした. 一見問題なく作業完了したにもかかわらず, 残念ながら動作しなかった. ディストリビューションの問題かと思うが, Fedora Core 版は別途 Fedora の公式サイトに最新版があったのでそれ以上追求はしていない.
紙面が限られている都合上, OpenOffice.org の詳細な使用方法の各部までは残念ながら記載されてはいないが, 主だった機能については何らかの解説がされている. MS-Office についてある程度使い込んだユーザーであれば, 本書を導入の手掛かりとし, 以後の詳細についてはヘルプや Web 上の情報等を活用することにより OpenOffice.org を十分に使いこなせることと思われる.
本書をもって, より多くの人が OpenOffice.org に触れることを期待したい.
本書は約 380 ページという限られた紙面ながら, OpenOffice.org (以下 OOo) のアプリケーションについて一通り解説されている点は評価できる. しかしその内容はオフィスソフトの利用経験者にとって十分満足できるものではない. また, 本書と同じ内容が発行元の Web サイトで公開されており, 無料で読めることから, 価格設定にも不満が残る.
ただし今後の改定によって内容が充実していく可能性があり, 期待は持てる.
本書における, Writer, Calc, Impress, Base の各アプリケーションの解説内容は非常にシンプルだ. 普段頻繁に使いそうな機能のみに絞られており, 無駄がないように思える. オフィスソフトの未経験者にとっては, 余計な部分がないだけ読み進めやすいといえるが, 逆に使い慣れた者には感覚的に理解できてしまう部分も多く, 物足りなく感じるだろう.
また本書では, マクロのプログラミングについても解説されているが, これは初心者向きではないし, 内容も十分と思えない. むしろ, 汎用的に使えそうなマクロをメディアに収録し, その使い方を解説したほうが実用的だろう.
Microsoft Office (以下 Office) との互換性については本を通じて最も知りたいと思っていたところだった.
このトピックについて 1 章を割いているのはよいが, その内容はあっさりとしており, 非常に物足りなく感じた. 特にファイルの互換性は Office との連携の要であり, もっと詳しく徹底的な解説が欲しい.
本書で解説されている OOo の機能はほんの一部であり, Office と比べても遜色ない程の豊富な機能が他にも用意されているようだ.
しかし, それらを知る上での参考となる Web サイトや文献などはコラム程度にしか掲載されておらず, あまり参考にならなかった. 本書の情報量不足を補い, 次のステップへの手掛かりとするためにも, ここは丁寧に取り上げて欲しい部分だった.
本書はオフィスソフトの初心者向けの操作解説が中心となっており, OOo ならではの使い方やメリットの理解, または徹底的な機能解説を期待していた筆者にとって, この点は残念ながら期待はずれだった. 価格設定についても, 本の分量やメディアの収録内容を考慮しても, 気軽に手に取れる価格とは思えない.
一方, 本書の内容は Web で公開されており, 今後も柔軟な改訂が積極的に行われることが予想される. それに伴った内容の充実に期待している.
もしこの本を初心者向けの位置付けとするのであれば, ぜひとも「上級編」を作成し, その中で深い, 濃い内容を解説して頂きたいと思う.
今回, OpenOffice.org を実際に触るきっかけを頂いた株式会社グッデイの皆様に心よりお礼を申し上げます.