株式会社メディア・テック出版 様のご厚意により,
書籍 "1CD Linux入門今日からはじめるKNOPPIX" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
や本サイトにおいて
公募
を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)
メディア・テック出版様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
この『今日からはじめる KNOPPIX』は KNOPPIX を初めて利用する際に読むのにとても読みやすいものである. KNOPPIX は CD で起動するため設定が保存できないが, 設定を保存するための手順がきちんと説明されていたり, インストールされているソフトウェアの説明がされたりしているので, 実用するための情報をこの 1 冊で手に入れることができる.
この Part1 は KNOPPIX の起動と, その設定について詳しく説明されている. 特に CD からの起動なので, BIOS の設定が必要になるが, その手順についても丁寧に説明されている.
この Part2 では, Windows で使い始めたら最初に行うであろう, デスクトップの設定の変更について述べられている. これは Linux と Windows の見た目の違いを埋めたり, 自分の好みに設定を変更したりするための操作がわかりやすく表記されている. また, インターネットに接続するためのネットワークカードの設定の方法が記載されている. また日本語入力の違いについても述べられているので, Windows の IME や ATOK との違いについて知ることができる.
Part3 では, KNOPPIX にインストールされているアプリケーションソフトウェアについて説明がされている. 特に OpenOffice については比較的詳しく説明がされており, Windows で MS-Office を使ったことがあれば, OpenOffice については理解でき, 使用することができると思う. その他のソフトについても, 大まかな操作方法やソフトの概要が記載されている. 他の書籍では KNOPPIX についての機能については記載されていてもアプリケーションソフトウェアについての説明がないことが多いので, 実際に使用する際にはありがたい.
この Part4 ではシェルを用いたコマンドについて述べられている. Linux を使うについてやはりコマンドを使えることが重要であるとすると, ここで基本的なコマンドのみとは言え, その操作方法やコマンドの書式について知ることはとても重要だと考える. CUI は GUI 以上に操作がしやすい場合があるが, Windows を使っている人の中にはコマンドプロンプトを使ったことがない人もいるため, この説明はとても親切であると思う. ただもう少しコマンドについての説明が詳しければと感じたが, 初心者を対象と考えればちょうどいいかもしれない.
最後の Part5 ではインターネット, 電子メールについて記述されている.
ここでネットワークの設定について再び記述されているが,
これまでの経験上ネットワークカードの設定を失敗することがあったので, その確認の手順も記載されていると良いのではないかと思う.
例えばシェルで ifconfig
で確認をする方法で, どのように表示されるかである.
そうすることで, Part4 で記載されたコマンドの説明が生きてくると思う.
ここで KNOPPIX をハードディスクにインストールする方法が説明されているが, ここで説明されているのは Windows が入っている状態でデュアルブートの場合であるが, KNOPPIX のみをインストールする方法については何も記載がないので, そのことについても記載があるといいと思った. KNOPPIX-CD の作成の方法は意外に難しいので, その記載があるのは初心者にはうれしいのではないだろうか.
KNOPPIX の書籍を初めて買う際には第 1 候補になると思う. しかしながら, とりあえず触ってみたいと考える初心者には価格がネックになると思う. できれば 1500 円くらいの価格が基準になると思う. 今回の価格ならば紙面はカラーであって欲しいと思う.
KNOPPIX は CD-ROM からブートするだけで利用できる, いわゆる 1 CD Linux の代表的なディストリビューションです. 最近では, 手軽に自分のデスクトップ環境を持ち運ぶのに利用したり, 特定の目的に特化したアプリケーションをそろえて, 教育分野で活用されたりしています. 本書は日本語版の KNOPPIX の入門書として, 起動方法から設定の仕方, 主なアプリケーションの利用法について解説しています. またフリーソフトウェアの利点を生かして, 実際に使える KNOPPIX を添付しているのも本書の特徴です.
KNOPPIX についてはすでに多くの本が出版されています. その中で本書は特に初心者を対象にして, はじめての Linux 体験に必要な事柄がまとめてあります. ただし, 1 CD Linux といっても膨大な数の Linux のアプリケーションをそろえているので, 完全な解説が一冊の本でできるわけはありません. このような本の場合, いかにテーマを取捨選択して, 初心者にとって必要かつ十分な解説ができているかが重要なポイントとなると思います.
Part 1 は KNOPPIX の解説と起動方法および設定の保存法などが解説されています. Linux の歴史や, 最近行なわれた KNOPPIX を用いてのオープンソース活用のための実証実験についても触れられており, 丁寧な解説となっています. また, 起動方法の解説では, 起動オプションの表まで掲載されており, 起動がうまくいかなかった場合のよい手引きになると感じました.
Part 2 ではカスタマイズの方法について書かれていますが, 設定項目をほぼすべてカバーしようとしているため, 通読するにはやや退屈な内容でした. 手引きとして巻末につけるなどの工夫があるとよいと感じました.
Part 3 ではソフトウェアの使用法の紹介として, OpenOffice.org や Gimp の解説がなされています. 両者とも高機能なソフトウェアなので, 限られたスペースでの解説はむずかしく, 一通りいじれる程度の解説にとどまっています. できれば, それぞれのソフトを利用する上でのリソース (ネット上の解説など) を紹介するとよかったと思います. また, Windows のオフィスなどとの比較で, 「マクロが使えない」との記述があるのは正確ではないと思います.
Part 4 では Unix のコンソールの使い方が, CUI のコマンドの解説とともに紹介されています. この部分は Unix のコンソール利用法の導入として大変優れていると思います. ただし, 著者が便利だと強調している割には, CUI の優れた利用法が紹介されていないように感じました. もう一歩進んで簡単なスクリプトの紹介などがあると有用性が示せるのではないかと思います.
Part 5 ではネットワークの利用法として, メールの設定と Web ブラウザーの紹介をしています. ここでも, 主なメールソフトの設定法をステップごとに解説しているのですが, 実際に利用する人は複数のメールソフトを使うことはないと思うので, 一般的な説明, 例えば SMTP ホストには何を設定すべきかということと, それぞれのソフトウェア固有の設定に分けて記述すべきと感じました.
そのほか, 付録として, KNOPPIX をハードディスクにインストールする方法や, USB メモリーから起動する方法についても触れられています. 正直なところ, この部分が今回この本を読んで一番役に立ったところでした. (私の使用している Dell D410 では KNOPPIX が CD から起動できず, ハードディスクにインストールして評価しました. この文書もその KNOPPIX から書いています.)
本書は代表的な 1 CD Linux である KNOPPIX の初心者向きの解説書として書かれており, 記述も語り口調で読み易く, 全体として必要な情報が要領よくまとめられていると思います. 特に Linux の歴史や, Unix のコンソールの使用法や KStar のような有名ではないが優れたソフトウェアについても触れられている点は評価できると思います. 難点としては, ソフトウェアの解説に関して, 操作方法の解説に書面を割くあまり, それぞれのソフトウェアの特徴の記述が少ないように感じました. 初心者に対しては, 設定の解説に入るまえに, どのソフトウェアを選択すればよいかを示すための比較などが書かれているとよいと思います.
また, セキュリティーに関してですが, 随所に「1 CD Linux はセキュリティーも万全」との主張が見られるのですが, 逆に使いかたによっては, コンピュータのクラッキングにも使用できる危険性がある点についても触れるべきだと思います. 本書に, インターネットカフェで使用すると便利という記述がありますが, 私の考えでは, 一般的にはこのようなこと (インターネットカフェで, 持ち込んだ OS でコンピュータをブートすること) はセキュリティー維持の観点からやるべきでないと考えます. せめて, 「使用する場合には一言断ってからにしてください.」などの記述が欲しかったと思います.
本書はテキストの様に順序立てて読み, 学習して行くのに適した書籍であると感じた. 情報技術の書籍を読む際, 必要ない機能の個所や既知の個所を読み飛ばしたり, 逆に必要な個所をかいつまんで読む事をされる方もいると思う. この様な使い方には適さないが, 教育用のテキストの様な使い方には適していると感じた. 本書の中で KNOPPIX を試験的に小学校で導入した事例が紹介されているが, 小学生に直接読ませるには難しいので, 先生が生徒に教えるために事前に読み理解するために良い書籍だと思う. 後述するが用語の解説やアプリケーションの使い方に重点が置かれておりそれほど知識がなくても分かりやすい様になっている.
最初に本書を手にした時, 写真がフルカラーでオペレーション中心の書籍を想像していたが全編白黒の写真であった. 期待していたのとは異なるが, かなりの個所を図解してあるので良いと思われる. 本書は A5 サイズでスペースの問題もあるが図をもう少し大きくした方が良いと思う.
Linux の歴史に始まり環境構築, アプリケーションの使い方, コマンド一覧, OpenOffice の使い方まであり, 内容の幅が広い. 一冊で KNOPPIX に収録されているアプリケーション全般が分かる様になっており, 良い書籍であると思う. 既に他のディストリビューションで Linux を使っている方にはコマンドの使い方から掲載されているのでお勧めできないと思うが, Linux という用語しか耳にしたことが無い方には理解がし易いと思われるのでお勧めしたい. 特に目を引いたのは用語の解説である. Linux に初めて触れた読者に理解しやすい様に用語を分かりやすく記載してある. 用語の解説があっさりと 1 行 2 行でかかれているので Linux を使い慣れている方に取ってはやや物足りなかったりすると思うが 初めて Linux に触れる人にとっては理解がし易いと思う.
本書は環境構築から記載されているので, 実際にデスクトップ PC とノート PC を使って学習してみた. 環境構築の際にトラブルが発生しうまく起動できなかった場合の手引きも書かれていて, 評価できると思われる. 実際, テストしたノート PC では, 本書のトラブルシューティングだけでは起動させる事はできず, 検索エンジンを使って対応を調べたりした. しかし, 起動できなかった場合の手引きが参考になり解決の糸口になったと思う.
KDE の使い方や収録されているアプリケーションの使い方については丁寧に書かれており大変役に立った. 特にページャの解説は役に立った. ページャの機能があるのは理解していたが, 名前やカスタマイズの方法は今回知った. この他, アプリケーションの説明に多くのページを割いており学習する上では大変重宝した. 今まで読んだ事がある Linux の書籍はサーバ用の設定が多く Samba や IP マスカレードの方法等で KDE の使い方についてこれまで記載されたものは購入した事が無かったので良かった.
今回のレビューした PC では KNOPPIX が重かったため HDD へのインストールを実施した. 本書はこの点についても巻末に記載されていた. しかし, Windows の場合のみであった. テストした PC が Linux であったため, どのようにすれば良いかが分からなかった. どのコマンドを実行すれば良いのか位は記載して頂けるとありがたいと感じた.
自分が最初に Linux に触れた時にこんな本があれば分かりやすいのにと思った書籍であり, 良い書籍であると思う. これから Linux を使いたいと思う方にはお勧めしたい. しかし, 他のディストリビューションで使っている方が KNOPPIX を触ってみようと思われる方には 若干物足りないと感じる事があるので注意して欲しい.