翔泳社 様のご厚意により,
書籍 "「Debian GNU/Linux 徹底入門」" を
ブックレビューコーナー にご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
において公募を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します.
翔泳社 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
朝日, 東京に続き, 日本経済新聞にもシリーズで取り上げられるほど, 世の中, 「Linux」ブームのようです. Linux をやってみようという動機は, その人のパソコンへの関わり方や程度によって違うと思います. 「無償だから」というコストの問題もあるでしょうが, あくまでも「趣味」でという人も多いのではないでしょうか. これだけ「Windows」が流布している中で, 「Linux もおもしろそうだな」という人がいても不思議ではありません. その場合, Mac に行かないのは, コストの問題だと思います. かく言う私も, 「安い」と「おもしろそう」で, よせばいいのについ手を出したのが運の尽きでした.
「安い」の方は, 秋葉原のぷらっとホームで, 「Slackware」の CD 2 枚組を購入したのを皮切りに, これまでに 買った書籍が,
このほかに, 付録の Linux CD 欲しさに,
などの雑誌や, Linux で CD-R を焼きたいと思い, 「TRY PC 1999 春号」(CQ 出版社))まで購入してしまいました.
これまでインストールしてみたディストリビューションは, 「Slackware 3.5」「同 3.6」 「TurboLinux 2.0」「同 3.0」 「Debian/GNU 1.4」 「vine 0.9」 「RedHat 5.2」 「Plamo 1.3.1」 です. このうち, インストールに成功 (X が起動)したのは, 「Slackware 3.6」 「TurboLinux 3.0」 「Debian/GNU 1.4」 「RedHat 5.2」 でした. 「vine 0.9」と「Plamo 1.3」は, X Window System の起動でつまづきました.
第一印象は, 「厚い」「重い」でした. CD-ROM が 4 枚も付いてきたので, その点はうれしかったのですが, 抜き取った後の厚紙をどうするかで悩みました. 雑誌の付録なら, 厚紙は破りとってしまうのですが, 今回は取り去った後のバランスが悪くなると思い, そのまま残しています.
まずは, インストール作業です. 私の PC では, CD-ROM からブートできませんでした(^^; しかたなく, 本のとおりに「Windows98」の「C:\」に 「linux」ディレクトリを作り, HDDからブートするように必要なファイルをコピーして, MS-DOS プロンプトから起動しました.
インストールには, 2回失敗しました. おそらく, 基本システムの選択で, 欲張って「自宅マシン」を選択したのがよくなかったようです. 途中で, 「エラーが多すぎてインストール作業を続行できません」と怒られました. そこで, とりあえず, 「標準」を選択し, X は後からインストールしました.
「dselect」も初心者にはなかなかのみ込めませんでした. あれもこれもと選びたかったのですが, ここでも最低限のプログラムを選択し, 徐々に満足できる環境を構築するという作戦で進めました. しかし, 「dselect」を考えた人は, 偉い! 非常に合理的なシステムなんですね.
3 回目でようやく「X Window System」までインストールできました. 4 日も費やしました. しかし, LAN カードを PnP からジャンパーレスに設定し直して, Linux でも使えるようにしたので, 再インストールしたら, またインストールできなくなるという事態に立ち至りました (Windows のような, ハードウェアの追加の仕方がわかりません). そこで, 1日置いて, また, 冷静にインストール作業を進めた結果, ようやく「Debian GNU/Linux 2.0」 を私の PC に収めることができました. 「Slackware」でどうしてもできなかったサウンドカード(AWE32)の認識も, 「isapnptool」の導入で, ようやく, 完了することができ, IDE の CD-ROM ドライブで音楽を聴くことができました. 現在, 内蔵のモデムを認識させる作業に没頭しています. でも, PCI バス接続ですから, 無理みたいです. あきらめて, 56kbps の外付けを買えばいいのですが, ヒューコムの 28.8Kbps で我慢しています.
第一印象は, 「わかりにくい」でした. でも, 読み進んでいくうちに, というか読みながら設定しているうちに, 「わかりやすい」と思うようになりました. あちこちにちりばめられている「ためになること」を発見したときの喜びは, 経験したものでなければわからないでしょう. 今では, PC デスクの座右の書として, 「Linux 入門」と一緒に置かれています.
読んでいて気が付いた点は, 次のとおりです.
ある程度「Linux」という OS を理解していないと, 読みこなすのが難しいと感じました. 特に, 初心者には, この程度の説明だと, インストールの仕方がわからないと思います. いつも, Linux の本を読んで思うのですが, 「とにかくインストール」という書き方のものがないのです. たとえば, インストールするセットを選択するときでも, 「とりあえずはこれを」というかたちで指示してほしいです.
しかし, この本を読んで, ようやく自分の考えていた「Linux」環境の構築に近づくことができました. また, 勉強するというのはこういうものかなというのを実感しました. わからなければ, 自分でいろいろと調べるということですね. サウンドカードの導入でも, インターネットのお世話になりましたし. そういう意味で, 大変勉強になりました. まだまだ, 勉強することは多いのですが.
というわけで, 初心者には少々取っつきにくいかも知れませんが, 我慢して挑戦してみるには絶好の入門書です. もちろんベテランの方にも, 「!」と感じることが必ずあると思います. 皆さん, お試しあれ! もちろん, 元が「Linux」なので, どのディストリビューションを選んでも, 辞書的に使える本だと思います.
「Linux」を使っている人のほとんどが, 実は, インストールと設定ばかりやっているという統計もあるようです. 「その手間がいいんだ」と言われればそれまでですが, もう少しインストールや設定が簡単になればいいと思うのは, 私ばかりではないと思います.
とりあえずこの一冊があれば Debian について一通りわかる, ということを目指した本であろう. 内容についてはちょっと欲張り過ぎかなと思えるくらいボリュームがある. しかしそれは, 全体を通して読者にわかりやすいようになるべく多くの情報を具体的に書こうとした筆者の熱意の現れであろう. Debianを使う人にとっては頼りになる一冊である.
dselect が難しいということは以前から聞いていたが, 本書の中でも詳しく書かれているにも関わらず, やはりその扱いに慣れるまで時間がかかった. 他のディストリビューションに比べてインストール作業には時間と労力がかかる. しかし, インストールするパッケージ内容についてあまり深く考えなくても動いてしまう Red Hat や TurboLinux と違い, Debian はパッケージについて厳密な整合性が求められるので, 頑張って知識を付ければ美しいインストールが行える.
初めて Linux をインストールする人にとっては Debian は少々敷居の高いディストリビューションのように思える. とにかく Linux を動かしてみたいという結果重視の人よりは, コツコツと美しい Linux 環境を構築したいという人向け. 最初は取っつきにくいが好きになると抜け出せなくなるような不思議な魅力が Debian にはある. Debian が根強い人気を持っている理由がわかる気がする.
本書に対して点数を付けるとしたら・・・(5点満点)
Debian に詳しくなれる度 | ★★★☆ |
dselect 扱い易さ度 | ★ |
UNIX の知識も付く度 | ★★★ |
Linux 初心者におすすめ度 | ★☆ |
見た感じの読み易さ度 | ★★★★ |
内容の充実度 | ★★★★ |
CD 4 枚組お徳度 | ★★★☆ |
私は, Linux のディストリビューションは, 1993 年の終り頃に SLS, その後しばらく Slackware, 1 年半程前から Debian を使用しています. Debian は, パッケージ管理がしっかりしていて, バージョンアップが簡単とのことで Slackware から変更しました. 雑誌の記事や, CD-ROM のドキュメントを参考にしてインストールしてきましたが, パッケージのインストールコマンドの dselect の使い方には不安がありました. また, インストール後のシステムの設定は自己流にやっていたりして, 本当は Debian ならではの,もっとスマートな方法があるのでは? と思いながら使用しています. 今回,このブックレビューに応募したのは,本書がインストールの方法や, dselect コマンド実行時の対処方法, アップグレードについて, どのように書いているかに興味を持ったためでした.
本書は, 内容の 1/3 強が Debian の説明, インストール方法やシステム管理について述べられています. 残りは, UNIX のコマンドの使い方や, X Window System の使い方, XEmacs や TeX による日本語環境の使い方, グラフィックやサウンドなどのアプリケーションの使い方, PPPでインターネット接続し, mewによる電子メール, Gnusによるインターネットニュース, Netscape Communicator, Lynx, w3 の Web ブラウザの使い方等, Linux の様々な活用方法について述べれられています. また各種サーバーの構築手順, ノート PC へのインストール手順についても, Debian に即したそれぞれの設定や使い方で述べられています.
全体的に, 図を使い, 設定や使い方の手順がわかりやすく書かれており, 初めて, Linux や Debian に触れる人にとっては, 簡単に環境を構築できる手引書となると思いました.
少し残念に感じたことは, 設定や, 使い方の手順の説明が重視されており, ソフトの構成やメカニズムについての説明が略されていることです. それでも本文が 479 ページもあり, 手順書として割り切ると, 充実している内容だと思いました.
私が一番注目していたのは, パッケージインストールコマンドの dselect についての記述でしたが, ここは少し期待はずれでした. dselect の手順や, パッケージ管理コマンドの dpkg についてはきちんと書かれています. しかし, パッケージの依存関係の問題等でインストールがエラーで終ってしまう (私はよく経験しました) 場合の対処 (心の準備?) についての言及が足りないと感じました. 「使い方をよく読んで, 慣れてください.」との記述はありますが, 慣れる前に Debian を止めてしまった知人を知っているので, まず, dselect を簡単に成功させるための工夫があれば良かったのでは, と感じました. 例えば, パターンファイルが用意されていて, 取り敢えずは, dselect が問題なく動くことをアピールできれば良かったのではと思いました (実はパターンファイルがあることを期待したりして, と甘えたことを考えていたのでした). ゼロからパッケージの選択を, Debian が初めての読者に課すのは, 少し酷と感じました. Debian のバージョンアップに伴うアップグレード方法については, 記述を見つけることができませんでした. これは, CD-ROM の中のドキュメントを見ればわかることですが.
本書に添付される CD-ROM は, Official Debian JP 2.0 i386CD Set の他に, ボーナス CD-ROM として通常, 雑誌の付録等の CD では配布されない non-free のパッケージや, Netscape Communicator 等が含まれています. 速い回線を持たない私にとっては, これは非常に魅力があります. また, ボーナス CD-ROM の setup スクリプトを使用すると, dselect が CD の入れ換えで実行可能となるので, インストールが非常に楽でした.
ところで, http://www.debian.or.jp/ から手繰っていくと, 著者が作成する 本書のサポートページ があるのを見つけました. このページと組み合わせると,充実した Debian 環境が作れそうです.
本書は,他の Debian の入門書より高価なのですが, 初めて Linux や Debian を始める人や, Debian をインストールしたいのだけれど, なんとなくつまずいている人にとっては有用と思います. サポートページの情報によると,インストールがうまくいかなかい場合も あるようですが, 私の場合はすんなりインストールが完了し, 非常に良い印象を持ちました.