Linuxを256倍使うための本 改訂新版 レビュー記事

[ ブックレビューコーナー 目次 ]
Linuxを256倍使うための本 改訂新版

株式会社アスキー様の ご厚意により, 書籍 Linux を 256 倍使うための本 改訂新版 を JLUG および JLUG Webmasters あて ご献本いただきました. 本 Web サイトおよび Linux Users ML においてレビューアの公募を行ない, 書籍への意見や感想などをレビュー記事にまとめていただきました.

ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します.

株式会社アスキー様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.

なお, レビューの対象は 改訂新版を対象としています.


Reviewed by 榊枝 信一 (sakaki@kaps.co.jp)さん

Linux の使用歴
3ヶ月
UNIX の使用歴
2年3ヶ月
Linux Box の主な用途
UNIXシステム管理の勉強等
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows95
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
50:50

本書は, 「Linuxを256倍使うための本」という題名である. がしかし, その内容は Linux の大方の表面をさらっとなぞったものになっている. つまり書店を賑わす「徹底解説!〜」のようなものとは, 少々赴きが違う. Linuxを使用している, もしくはこれから使用するユーザへの活用のヒントとなろう事柄が書かれている.

ただ, 内容的にはカーネルのことであったり, コンパイルのことであったり, 結構コアな部分にまで触れるものであり, Linuxをこれから始める人, UNIX系のシステムに触れたことのない人には, 辛い部分があるだろう.

少なくとも, メーリングリスト等で「初心者な質問ですみません」な人には, なんだか難しそうなんだよなぁと感想を抱かせてしまうだろう.

本書を手に取ることを想定している人
本書を手に取るにはちょっと早い人

本書でLinuxを使いこなすのは, 正直言って無理だろう. ただHTML文書のようなレイアウトや軽妙な語り口は, 読んでいて疲れない.

1995年初版からの改訂版ということで, 多少の古くささは否めない. だが, 用例のほとんどは, これから先も変わらず使用されるサービスであり, 活用頻度の点でも的を得ている.

私がもう少し, パワーユーザであればもう少し楽しめる内容になったであろうと思う. もう2年くらいLinuxを触ってから, もう一度開いてみると, また今と違ったものが見えてくるだろうか.

Reviewed by 角 誠(すみまこと) (makotos@spw.co.jp)さん

Linux の使用歴
1997年11月から1年ぐらい
Linux Box の主な用途
  • 研究のシミュレーション
  • エディタ
  • ブラウザ
Linux Box に入れているLinux以外のOS
Windows95
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linux 60%
Windows95 40%

改訂新版以前の256は読んだことがなかったけど, 最初の感想は次のようである. 「これは経典だ!」って感じです. 構成は一貫して「Linux 教の布教」を貫いている. 自分は大いに賛同したが, これは好き嫌いが分かれるところであると思う. この本は, 「タコ以上, ハッカー未満」の私のような者に最適な「道標」である. 例えば, お約束?の xcalc のカスタマイズの章を読むと X のアプリケーションのカスタマイズのヒントのような経験的カンを手に入れることができると思う.

PJE のことが依然と JE となっていたりする.

これ1冊を読むと立派なハッカーのたまごに慣れそうな気がしてくる. 文章の体系として感じたところは, 強調する部分は改行して太字で書いてあり非常に印象深くなっていることである. しかもその文章は他の本にはないような, 本音がぶつけられている. こんなこと書いちゃやばいんじゃないか?って言うようなタブーなことも書いてある. 思いっきりが良く, 逆にさわやかな感じがした.

「ioperm の Lunux 文化の象徴」の章では, Linuxの思想が書かれている. 私は PC-UNIX を始める際に, BSD か Linux にするか迷った. ただペンギンの絵が気に入って Linux にしたのだが, その選択に誤りはなかったとこの章を読んで確信した.

ゲームについて30ページ以上も割いているのには少し「?」である. Linux のゲームについて, あまり知らなかったので自分としては役立ったが…. 「30ページも使う必要あるの?」って感じもした.

「ほとんど体育会系のノリ」, 「宗教のノリ」ってあとがきに書いてあるけど, こんな「ノリ」の本ってあまりないからどんどん増えて欲しいって思った. むしろ, かしこまった「辞書的な本」よりも「体育会系のノリ」や「宗教のノリ」の方が実際には分かりやすい. 大いに賛成である.

また, 教祖である???生越さん, 大内さん, 阿倍さんの人柄?が伝わってきて非常に有意義かも? 実際に「体で覚えろ Linux」で口車に乗せられてしまいカーネルにも興味を持ってしまった. これ読んだ人って私みたいに口車に乗せられると思う!

最後に, 「タコ以上, ハッカー未満」な人にはレベルアップに欠かせない「必携書」となることは確かであろうと思う.

Reviewed by 藤田 真史 (fj@true.rim.or.jp)さん

Linux の使用歴
3〜4年
UNIX の使用歴
12年
Linux Box の主な用途
{Mail, News, local web, file} server
Xserver, Mail client, News client, ...etc.
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows95
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
95%以上 Linux

私が Linux を使い始めた頃に買った, 数少ない Linux 本の内の 1冊. それが「Linux を256倍使う本」でした. 当時は FreeBSD の 256倍本と一緒に本屋に, お互いに「まだ BSD ですか?」「Linux でいいんですか?」などと書かれた赤い帯をつけて, 並んでいました. その帯には, お互いに指を指し合うようなイラストがそれぞれ描かれていました. しかし, 本改訂新版の帯には「もう Linux で決まりでしょ. 」という文句と V サインが描かれているのでした. それを見て世の中は Linux に流れているんだなぁと感じました.

当時の私はその初版本と Run Run Linux (これも初版) を頼りにしながら自分の Linux Box で ppp, uucp, mail, news などの各種設定を行ったという過去があります. あれから 3年. 知らない内に改訂版が出ていたとは. 奥付を見ると, 私が読んだ頃から 2年後, つまり今から 1年前に本書が発売されていたようです. というわけで, 改訂前の物, そして現在の状況を意識しながら, この改訂版を読んでみたのでした.

かねてより ASCII の256倍シリーズは, 単なる Knouhow 本というより, ちょっと関わってるけど少し離れたトコから冷めた目で見てる解説本といった感じがしています. 最初は MS-DOS の 256倍本だったと思うのですが, 上記のような怪しげな位置づけになってしまったのは C 言語の 256倍本あたりからでしょうか? (自信が無い) 何にせよ, 入門書でも無く, 技術書とも言えず, そのくせオイシイ話が載ってたりするのでつい買ってしまう本なのです.

そういえば, どうもこういった口調が肌に合うらしく, 会社の同僚にこの本の文体が私好みなんだと指摘されたことがあります. 言われてみると私が HomePage などでひそやかに公開している文章など, 確かに 256倍シリーズからの

影響を受けている.

などと書いた後に, このレビューを見せたところ, この文章すら影響を受けまくっているとのことでした.
# しかも話が本題からずれるところまで, 影響されていたりします.

さてさて, 本書を読んで一番感じた事は, 「今更」でした. 私にとって 256倍シリーズは, 読み物であって技術書では無いので, 普段は 1度読んでそれっきりにしてしまうのです. だのに, 時代を変えて 2度目を読むことになったのです. しかも, インターネットの 256倍本では vol.2 であったのに, 本書は改訂に留まっています. あとがきに, 「時間が無かった. アップデートに終った」と書かれているのですが, 一度読んだ身としては, もっと更新部分が多くあって欲しかったです. 今の時代と, 本書が書かれた時代の差と言うのもあります. そんな事が重なって, 「今更」と感じだのだと思います.

旧版を見ると, 「カーネルをいじろう」の対象が 1.1.70 となっていました. (新版は 2.0.30) 旧版の頃と, 新版が書かれた当時と, そして私が読んだ現在とでは, Linux をとりまく世界がかなり変わって来ています. そのため, Linux をあまり知らない人にこの本を読ませるのはためらいが生じます. 下手に紹介すると「昔はこうだったんだ」みたいな, オヤジの懐古趣味的な雰囲気がただよってしまいそうです.

たとえば, 今更 xcalc のリソースをいじって, どこが Linux を 256倍なのでしょうか. (旧版の頃にも NetNews とかで指摘されてた記憶があります) そういった事は X の入門書にでも譲って, fvwm95 で Windows モドキにして知らない人をだましてみるとか, 豊富なアプリケーションを使った幸せな世界を紹介した方が, より 256倍らしさが出るのにと, 残念に思ってしまいます.

また, uucp についても, 当時は実に助かったのですが, 現在となると一体どの程度の人が uucp などやろうと考えるでしょうか. 最近は存在すら薄れ始めて来ている気がします. (もっとも, 私はいまだに使っている身なので, あまりデカイ口は聞けないのですが...)

「せめて taylor uucp の HDB 互換が紹介されている部分を taylor の書き方にして, UUCP over TCP の紹介もして, ppp と共存, しかも kerneld でオンデマンド なんてことにすれば, ずいぶん今風になったと思えるのに. 」なんて思いました.

そして ppp についても, 仲間と接続なんて書かれていますが, 今ならどう考えても即座にプロバイダへ接続したいと思うコトでしょう. どうも書かれていること, ひとつひとつが, 古い世代の課題に感じられました.
# それとも本書に書かれている事は, 私の知らない世界の話なのかも知れません.

そのくせ解説としては欠けていると感じられる部分も多いです. 例えばネットワークについて, イマドキの環境であれば, 外部との接続だけでなく屋内, つまり LAN について外せないと思えます. 自宅サーバで samba による Windows との共有なんて, 例の調子で「もう NT なんて要らない」とか書けそうなんですよね.

他にも Internet での Linux 情報の収集や, Java について, モバイル環境について, 日本語環境について, などなど. まだまだ 256倍(の書き方)で紹介して欲しいことがいっぱいあると感じられました.

そのためなのかはよくわかりませんが, この改訂新版を読んで, 欲求不満になってしまいました. ぜひとも現在の Linux をとりまく状態をベースにした vol.2 を期待したいです.

その時には, Linux 「普及」の歴史や, 「経典」のその後の紹介も忘れないで欲しいですね. (^^)

感想と言うよりは, 私が期待する「256倍」とっいた内容で, 大変見苦しくなってしまいましたが, 楽しくブックレビューをすることができました. こういった機会を与えていただき, 誠にありがとうございました.

Reviewed by 大井 博 (ohi@quest.co.jp)さん

Linux の使用歴
1年
UNIX の使用歴
1年
Linux Box の主な用途
UNIXの勉強
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows95
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linux:5% Windows95:95%

私が Linux を使い始めたのは1年前. 仕事で UNIX を使い始めるようになったのですが, UNIX をほとんど知らないため勉強する意味で Slackware3.1 をインストールしました. 勉強とはいえ, 使用頻度からも想像できる通りほとんど使っていない状態でして, その後 Slackware3.3 を入れた現在もあまり変わっていません. 今回のブックレビューで「Linuxを256倍使うための本」を選んだ理由は, 他の本が難しそうだったためだったりします.

[まえがき]にこの本の対象は「タコ以上, ハッカー未満」とあるので, タコになりかけの私には難しかったようです. [X をいじり倒そう!]までは読めたのですが, [インターネットごっこやろう!]になると, 私の理解を超えています. その証拠にこの本の特徴でもある強調文字(?)が極端に減ってきます. きっとこの章を書かれた大内さんは真面目な人なのでしょう. (生越さんと阿倍さんが不真面目ということではありませんよ)

[怒涛のゲームレビュー]になると強調文字(?)が復活します. この章は阿倍さんが書かれており, この本の真骨頂(と私は思っている)ではないかと思います. [コンパイルをしよう]からは生越さんが書かれており, 以前 C 言語でちょっとだけ開発をしていた私はなんとなく懐かしく読めました.

私が読んだ感想としては, この本は Linux に興味のある人が興味のあるところを読めば, より楽しめる本であると思います. 現に [カーネルをいじろう] では, カーネルの中身に興味が無ければ「この章は読まなくても構わない」と書いてありますしね.

私がこのまま Linux を使い続けて行けば, そのときはきっと違う感想になるでしょう. というか, なって欲しい.

Reviewed by 四反田 迅人 (anton@mba.sphere.ne.jp)さん

Linux の使用歴
2ヶ月
UNIX の使用歴
上記に同じ
Linux Box の主な用途
UNIXの勉強
ネットワークの勉強
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows98・NT4.0 server・BeOS
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Windows98      :10%
WindowsNT4.0 server : 50%
BeOS 3.2      : 30%
Linux(plamo)    : 20%

率直な感想を言わせてもらうと, 初めて2ヶ月(当時はまだ使用していなかった.)の私には敷居の高いものでした.
しかし, 読めば解る部分もあり, DOSやWindows3.1をマニュアルなしで独学で取得した私にとっては, 心が踊る読み物でもありました.

最初の「とにかく触れLinux」のタイトルも, 共感できます. 触る前からいろいろマニュアルを読み漁るよりも, 「パニックが起こってもいい」と言う気持ちで触りまくれば, 大概は解ってくるし, その後でマニュアルを読めば良くわかるような気がします. また, 「最後は自分で何とかするさ」が好いですね. 次の項の, 「Linuxの特性」の中の「BSD互換か?」は, ちょっと良くわからなかったです.

「Xをいじり倒そう!」では, 「本当にこういうこと出来るの?」と, 言う感じで読み今度やってみようなんて思いました. Windowsと比べるとなんか違いますね.

この本を読んでいると, 「インターネットごっこやろう」や「怒涛のゲームレビュー」「コンパイルしよう」等などで解る様でなかなか解らない悔しさがあります. 私自身の経験の無さからくるものでしょうが, 非常に悔しい思いです. でも楽しい読み物だと思います.

結論から言うと, 初心者の経典にはならないですよね, この本は. でも非常に面白いと思います. 読み物としては.
しかし, 初心者の私がこのような批評をしてはいけないかも.
出来れば, もう少し私なりにLinux(UNIX)が解ってきた頃に, もう一度読みなおしてこのような批評が出来ればと思っています.


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