Linux 超入門

Linux 超入門 レビュー記事

[ ブックレビューコーナー 目次 ]

セレンディップ社 様および著者の中山様のご厚意により, 書籍 "Linux 超入門 【さくさくLinux】" を ブックレビューコーナー にご献本いただきました. この本のレビューをして頂くべく, Linux Users ML や本サイトにおいて公募を行い, これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.

ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します. (原稿到着順)

セレンディップ社 様, 中山様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.

なお, 以下のレビューは初版を対象としています.


Reviewed by 冨園慎一郎 (tomii@urawa.cabletv.ne.jp) さん

Linux の使用歴
2 年半. ずっとルーターとして使っており, デスクトップ使用歴は 3 ヶ月.
UNIX の使用歴
2 年半. つまり, Linux のみ.
Linux Box の主な用途
以前は職場におけるルーター. 現在は, 自宅における日常用の PC. つまり, ワープロ, 計算, メール等.
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows 2000 RC2. これは評価用に最近入れた.
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linux : Windows = 24 : 1.
ちなみに, 半年前までは, Linux : Windows (95/NT) = 1 : 300.
現在, Windows は評価目的でのみ使用.

全体の評価

読みやすい. Linux を少し使い始めた人が, Unix のコマンドを学んでいくにはちょうど良い. 気になるのは, 対象としている読者層がそれほど明確にされていないところ. インストールした後の入門書だという位置づけをもっと正面に出した方が, 読者が本を選定しやすくなる.

良し悪し

良い

悪い

各論

全体の構成

インストールすることでなく, インストールした後の使い方に力が入っている. その点を最も高く評価したい. 初めてのインストールをいかに成功させるかに重点を置いた入門書が 多く見られる中で, その次の一歩を中心に据えたものは比較的少ないので, 存在価値が高い.

一方, 初めての人が, この本の解説を見ただけでインストールするには ちょっと無理がある. 確かに Laser5 Linux は楽だが, 一度つまずけば, その先には進めないだろう. インストールには雑誌や他の書籍を参考にして欲しいという由を明記した方が, この本の位置づけが, より際立ったものになる.

コマンドの解説

パイプやリダイレクションの説明と実例にページを割いているのが良い. Windows との違いを見せることで, 別の OS としての存在感が出ている. Gnome や KDE の操作なら Windows からの類推で何とかなるので, 類推できないコマンド操作に力を入れていることは非常に有りがたい. 家庭にせよ仕事で使うにせよ, Windows を「事務」的に使っていて, 「不便だ」と思ってる人に奨めたい本だ.

ところで, コマンドの説明で, cp a b といった表記の, パラメーター区切りを示すスペースが, かなり狭い. これは初心者にはつらいぞ. たとえば,

cp latest_date.txt~ backup/latest_date.txt~

なんていう風に, 記号が混ざってきたらもう, どこが区切りなのか判らなくなる. これは意識して広く

cp    latest_date.txt~    backup/latest_date.txt~

などとして欲しい.

超入門の次は?

初級の本ゆえ, 全体的に広く浅い説明にとどまっているのだから, 個々の内容を掘り下げる時には, もっと詳しい情報が欲しい. そのために, 「市販の本などを参考に」ではなく, 具体的に, 「これこれこんな本があるいはホームページが参考になる」. という記述が欲しい. Appendix に有効な情報源としてホームページの一覧があるが, こういう総論的なものだけでなく, 本文中にも, それぞれの内容に密着した資料で, 次のステップに相応しいものの紹介が欲しい.

Netscape の解説は蛇足.

Netscape の設定を説明したページがあるが, Windows と何ら変わるところが無いのだから, この部分は必要ない. どうせなら, Netscape での日本語機能がどうなっているのか, そして, それが万全でないことに触れた方がいい.

ブラウザの解説をするなら, なぜ, Lynx のようなすぐれたブラウザの紹介をしなかったのだろうか. Windows に比べて, ブラウザの選択肢はむしろ広いはずなのに.

vi 派? それとも LinuxConf 派?

テキストエディターの説明に力が入っていて, 特に, vi と Emacs が選ばれた点は, X サーバーの無い環境でも使えるようにとの配慮が感じられる. このあたりを読んでいると, エディターで各種設定ファイルを直接編集していく方法の解説を 基本としているかに思えるのだが, 後半になって, 様相が変わってしまう.

「ユーザーアカウントとグループ定義」のところから, 急に, Gnome 上の userconf に偏った説明になってしまい, 「LAN への接続」では, linuxconf のみで, 設定ファイルのかけらも出てこない. そういうツールが入ってない Linux の場合にどうすべきなのか, という話が出てこない. もし, LAN の設定を各種ファイルを直接書き換えて行うことの説明が, 本書の守備範囲を越えると判断したのなら, 少なくともそれを読者に通知すべきだろう. Apache の解説では, その点も考慮されて, 設定ファイル名が併記されている. 同じような記述を, なぜ LAN 接続でも用いなかったのかという疑問が残る.

Reviewed by 黒坂 早苗 (sanny@tka.att.ne.jp) さん

Linux の使用歴
2 年
UNIX の使用歴
なし
Linux Box の主な用途
ファイルのエディット作業とその効率化の学習, システム管理やサーバ (ftp, DNS, Samba, WWW) 運用の学習
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows95, Windows98
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linux : Windows95 : Windows98 = 8:1:1

これまで, 何故か RPM 系には触れる機会がなく, その他のディストリビューション (Vine, Slack, Debian など) でインストール遍歴を重ねてきた私ですが, 今回レビュアーに立候補したのは何を隠そう, 『Linux 超入門』というこのタイトルにピンと来たからでした. 自宅マシンに複数の Linux をインストールし, それぞれを比較したり, 様々な設定に悩んだり, エディターを使ったりして遊んでいるのは楽しいです. でも, そんな気ままなユーザー役に専念するだけではなく, 同時に賢い管理者役もこなさなければならないという現実に いかにして立ち向かえばいいのかと, 大した進歩もないまま, 日々悶々・・・というのは大袈裟にしても, かなり途方に暮れてもいましたので.

こんな私にとって, 本書は, 色々なとっかかりを作ってくれました. 先に書いた事情のため, 実際に Laser5 Linux のインストールは行いませんでしたし, また, 私は xdm は使用していませんので, はじめのログインに関する記事はささっと流し, shutdown コマンドの -k オプションなどを「へぇ〜」と確認しながら, 続く記事に専念することになりました.

3 章「Linux 環境に慣れよう」では, ファイルの種類の説明など, Windows 経験者にとって, あるいは, 必ずしもそうでない人にとっても分かりやすい, たとえを用いた解説がおもしろかったです.

3 章, 4 章ともに, 避けては通れない基本的なコマンドについての親切な解説がありました. これまで, 見よう見まねで使ってきたコマンドの解説にも少なからぬ発見があり, また, これまで一度は目にしたであろうオプションでも, 使ってこなかったために忘れてしまっていたものを再確認することもできました. 4 章 ファイルを操作してみようでは, リダイレクションや, ファイルのリンクについての解説も分かりやすかったです.

5 章「エディターを使いこなそう」では, vi や emacs の使い方が, 非常に実際的に, かつ簡潔に取り上げられていました. 入門者にとってはとてもありがたいです.

このような感じであっという間に, 私にとっては, 今回の最終的な目標である 6 章「システム管理にチャレンジ」まで苦もなく読み進むことができました. GUI での定義に関する箇所は斜め読みすることになりましたが, 環境変数やコマンド, シェル・スクリプトの紹介などの記事から得られたことは, 今後先に進むためのヒントになりそうです.

また, 7 章「ネットワーク」では, プロトコルなど一般的な知識についての解説も, 適切な長さの読み物としてまとめられていましたので, 丁度, 気分転換になりました.

普通なら, それぞれに解説書を買い求めるか, 雑誌の特集記事などの中をさまよい歩くうちに, 一休み後, 挫折というパターンに陥りがちなのですが (少なくとも私は・・・), そのような多岐にわたった内容を, 入門の段階で必要な事に焦点を絞って一冊の流れの中で 一気に読み通すことができる構成は, まさに「超入門」 (入門を超えること) を目標として書かれた本書にふさわしいものだと思いました. 読み終わって, 挫折とその逆を隔てる大きな溝は, 「さくっと」一気に読み通せるかどうかによって分かたれていたのだなぁ, とふと気付きました. これで入門者の躓きの石が一つ取り除かれたのではないかという気がします.

最後に, 小姑的指摘で申し訳ないのですが (我ながら, 時間との戦いでこれだけのものを作り上げられた方々に対して, こんなことを申し上げるのは鬼になったような心地ですが), 誤植が見られたことが残念に思われます.

Reviewed by 若林信夫 (wakn@wak-s.otaru-uc.ac.jp) さん

Linux の使用歴
4年
UNIX の使用歴
15 年
Linux Boxの主な用途
インターネット, 文書作成, データベース
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows 98
Linux とLinux 以外のOSの使用頻度の比
7:3

はじめに

私は商科大学で OR や情報科学を学生に教えています. 大学 3 年生対象のゼミでは UNIX の基礎, インターネット, 電子商取引, LaTeX を扱ってきました. 最近は, 学生の要望で Linux についても扱わなければならない状況になってきました.

私自身は Slackware の早い段階からインストールして使っていましたが, 1 昨年より RedHat に乗り変わっています. 今回の本には, Laser5 Linux6.0 が添付されていますが, 6.1 を昨年 11 月ころインストールしていますので 添付されたものはインストールしてありません.

自分が使うときはマニュアル (インストールガイド) を読むとか, man コマンドなどで調べて不自由はないのですが, 学生に教えるとなると, 系統だって書かれた 分かりやすい書物が必要になります. それを探していた所, 本書に巡り合ったというわけです.

構成・内容

349 ページの中に 9 章と Appendix が 5 つ あり 必要なことは網羅されているように思われます. バランスもとれていると思われます. ただ 出版を急ぐ余り, 若干, 未完成な部分も見受けられるようです. 今後の改訂版のためにいくつか ややシビアな注文をつけさせていただくことをご容赦願います.

まず, 著者の略歴が, 奥づけに見えないのは少し残念でした. 著者が Linux とどのように関わってきたのだろうか. これだけの本を書くのですから関わりは十分推察できますが, 「はじめに」の中にでも書いていただきたいと思いました.

内容とは別に校正が十分でないのは若干 気になりました. 例えば, 初心者は, ktem をみて kterm の誤りと分かるでしょうか. 検討 (p.3), 粋 (p.5), 以外 (p.23) といった意味不明の漢字は別にして, Macintosh は正しくスペルしていただきたいと思いました.

「3.6.2 計算機がわりに使用してみる」 (pp.95-100) について感想を述べてみます.

私のような旧人類は, 「計算機」というと今どきの「コンピュータ」を連想しましたが, それは, 高級「電卓」のことでした. 内容は, bc コマンドの説明と使用例でしたが, 突然, 表題とは関係なく 時計やカレンダーの表示の話に移っています. そして, 最後に xcalc の図版が説明もなく参照されては 混乱してしまうのではないでしょうか. 次のページ (3.7.1) には man (jman) コマンドが説明されていますが, もっと早い段階で説明されていた方がいいと思いました. そうすれば, bc コマンドについても man bc とすることによって, そのほかにもいろいろな使い方があるということがわかるでしょう.

「5.1 vi をマスターする」 (p. 144) で 日本語版の vim の存在をはじめて知りました. 「vim での便利な機能もあわせて紹介していきます」 というので期待していたのですが, 残念ながらどこに書かれているのか分かりませんでした.

まとめ

超入門とあるからには, Linux の通り一遍の図解付きの入門書ではなく, GNOME を前提にした初心者のための Linux の手ほどきを期待している読者も 多いのではないでしょうか. 巷にある入門書とは違う差別化された箇所が多くあるというわけではありませんが, 本書を座右において Linux の世界を楽しみたいと思います.

最後に 2,940 円を投資する価値を見い出す理由 (と付帯条件) を述べます.

1. UNIX と Linux の基礎知識 を得ることができます.

ただし, SunOS UNIX や Tru64-Unix (旧 Digital Unix) と Linux がどのように違うかは説明されていません.

2. Linux の世界で一応の活動ができます.

活動には, 目的や動機がともないます. 例えば, 美文書作成, 表計算, データベースのいずれかひとつを行なおうとしても 本書は解決のヒントを与えてはいません.

3. ネットワークの基礎を知り, インターネット接続をすることができます.

PPP 接続以外にも (専用線, 無線) LAN 接続が重要である読者もいることでしょう.

4. 超入門書でありながら 「カーネルの再構築」が丁寧に書かれている.

Linux のカーネルは 激しく改版がなされています. しかし, Linux は 無償で公開され, 雑誌等の付録に付いてきますので, そちらの方を利用した方が てっとり早いこともあります.


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