株式会社アスキー様の
ご厚意により, 書籍
Run Run Linux 第2版 を
JLUG および JLUG Webmasters あて ご献本いただきました.
本 Web サイトおよび
Linux Users ML
においてレビューアの公募を行ない,
書籍への意見や感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します.
株式会社アスキー様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, レビューの対象は第2版を対象としています.
RUN RUN Linux
Linux初心者向けの本としては, トッパンの「Linux入門」 と共に定番と言われています.
お決まりのLinux(UNIX)に付いての簡単な解説から始まります. PC-UNIXの種類とか, Linuxディストリビューションの説明, ハードウェアーの選択法などが親切に解説されています.
次にインストールに入ります. Linux用のパーテーションの作り方に始まり, 起動ディスクの作り方と進みますが, boot diskの選択について解説があまり詳しくないので, もしかして迷う事がある かもしれません. また, NOTE-PCへのインストールには全く触れられていませんので, NOTE-PCにインストールしようとしている人は注意です. これ以降はSlackwareのsetupの解説になりますが, 画面のハードコピーを載せていますので それを見ながら進めば全く問題ないと思います.
インストールが終わったら USERの作成, パスワード, 環境設定, 主要なコマンド, エディタ(vi)の使い方, ディスクの使い方, の解説になるのですが, この部分は30ページにも満たない量の解説となっているので ちょっと物足りない気がします.
っで, X Windowです. X Window Systemの概要説明から始まり, xf86configによる設定の説明がありますが, この解説だけでX Windowが一発で起動する幸せな人は少ないでしょう. (^^; もうちょっとうまく行かない時の対処法を書いてくれればよかったと思います. その後はちょっとだけXアプリの説明とXの設定の説明がありますが, あまり役に立たないような感じです.
この後が, 日本語環境の構築です. JEを使います. 現在はPJEに移っています. JEのインストールは簡単なので, 単に読み進めば良いです. 日本語入力にはCannaを使う解説になっています. X上ではKterm上でKinput2を使う解説があります. ここで, Muleが登場します. 基本的な使い方の解説があります. 日本語入力の方法は簡単過ぎて寂しいです. 最後にプリンターの設定の解説があります.
そして, Networkに付いてです. Linux(UNIX)の最大の特徴がNetwork環境ではないでしょうか? この本でも最も多いページ数をこの部分に割いています. (約65ページ) ネットワークの基本的な解説から始まり, netconfigによる設定, PPPによるインターネット, 電子メールの使い方, ネットニュース, Netscape Navigatorでのwwwアクセスと 一通りの解説があります. 解説通りに設定すれば使えると思います. wwwは日本語入力の問題があるので本当は不便なのですが, その点の解説はありません.
突然, なぜかゲームです. JGと言うプロジェクトでLinux用のゲームを集めて 日本語環境で使おうと言うものです. 個人的にゲームには興味が無いので良く分かりませんが, 入門用の本にゲームについての解説があるのも珍しいと思います. ゲームするためにLinuxを使いたいと思う人って…? (個人的見解でした. )
ゲームからいきなりmakeなんです. ゲームで遊んだ後はカーネルの再構築です. make configやmenuconfig, xconfigの設定項目についての解説が ほとんど無くこれでうまく行くとは思えません. 日本語メッセージの出し方の記述がありますが, カーネルが2.0.13から2.0.19 の場合の話であって付属CD-ROMのSlackware3.1では2.0.0がインストールされるので 意味が無いと言えます. 新しいカーネルでの起動に失敗した場合の解説もLILOを使った方法が 最初にあるのですが, 個人的にはFDを使う方が簡単確実だと思います. この部分はとっても重要だと思うのでもっと詳しい解説が望まれます.
終わりはAppendixです. TEX, 商用XサーバーのAccelerated-X, 問題解決のヒント, FM-TOWNSへのインストールの解説があります.
総じて初心者向けとして良く出来ていると思いますが, X Windowの設定と, カーネル再構築に付いては少々不満が残ります.
また, 付属のCD-ROMが古くなっているので早急に新しい物を添付した 改訂版が望まれます. ただ, このままでも, 一通り付属のCD-ROMを使って解説通りにインストールや 設定を行い, ある程度理解し, その後, 最新のCD-ROMを使ってインストールする と言った使い方をすれば現在でも十分実用になると言えます.
最近, 雑誌付録のCD-ROMにLinuxが収録されることが多いですが, 雑誌の記事では インストールの方法や各種設定の説明が少なく, インストールできなかったり, できたとしてもその後の設定がわからなくて, そこまでになってしまうことがあ りました. そこでインストール本の登場になるわけですね. このRunRun Linuxは インストールはもちろん, 日本語環境の構築, ネットワークの接続, ゲーム, そして, カーネルのmakeまでふれています.
それでは各章を順にみていきます.
以上のような流れの本です. 初めてLinuxにふれる人には最適の本だと思います. 唯一残念なのは, 発行が2年前なので, 内容や付録CD-ROMが古く感じてしまうと ころです. ぜひ早く, 第3版を発行して欲しいです.
【書評】
「この本は素晴らしい本である!」
これが, 私のこの本に対する総評である.
書評として冒頭一番こう書くと「なーんだ, よいしょ記事か」と思われるかも しれない. 確かに「よいしょ」は入っているかもしれない. (って, をいをい) しかし, それだけでこう云っているのでもない. 「素晴らしい本」といったのは, この本のコンセプトというか, 意図, 目的と いうものが実に明快だからなのである.
本の良さというのは, それを読む側がその本に求めるものといかにマッチして いるか, だと思う. そこで, その本の意図, 目的がはっきりしていれば, それを手にした人が, 自 分の求めるものかどうかの判断が容易となる訳である. その結果本当にこれを必要とする人だけがこれを使用する. これはその人とその本の双方にとって幸せなことといえるであろう.
逆に, この本の読者として相応しくない方々は,
そういう人にとっては, この本によってすんなりインストールを終えてしまう ことは, 楽しみを奪うことになるかもしれない. なにしろ, この本に従えばさしたる苦労を背負い込むことがなく済んでしまう からです. (もちろん, インストールの対象としているハードウエアがインストールメニ ューの中のドライバーで対応されていないと, やや苦労するかも)
つまり, この本のは何なのかと(少なくとも私は)思うかというと. 独断と偏見でいいますと, 「この本はインストール手順書である!」 もちろん, ただの「インストール手順書」ではない. 初学者に対しての, 必要にして充分なる関連知識を補足しつつ, ワンランク上 の知識を得るための道標をこの本は忘れていない. この本の随所に付記された脚注などによっても, 私の理解が助けられたところ 大である.
次に, 中身についてですが, まずLinuxの世界で重要な(?)要素として のディストリビューションはSlackwareを対象に書かれている.
そして, ソフトウエア本体がCD−ROMに収録されていることも, 初学者に とって助かるところである. 内容は, 以下の通り.
- Slackware−3.1 ・・・ Linux2.0
- JE−0.9.8a ・・・・・・・ 日本語環境パッケージ
- JGβ3 ・・・・・・・・・・・・ 日本語環境で動くゲーム
- JF ・・・・・・・・・・・・・・ 日本語ドキュメント群
- FM−TOWNS ・・・・・・・・ FM−TOWNS版のLinux
では, 全体の構成について簡単に紹介させていただくことにしよう.
- Part1 はじめる前に
- Chapter1 UNIXって何?
- Chapter2 Linuxって何?
- Part2 さぁ!はじめよう
- Chapter3 Slackwareのインストール
- Chapter4 UNIXの基礎知識
- Part3 Xの世界
- Chapter5 X Window System
- Chapter6 XFree86を使おう
- Part4 Linuxをもっと快適に使おう
- Chapter7 日本語環境の構築(JE)
- Chapter8 ネットワークで情報収集
- Chapter9 Linuxで真剣に遊ぶ(JG)
- Part5 Linuxの舞台裏
- Chapter10 システム設定
- AppendixA TEXの印字環境
- AppendixB Accelerated−X
- AppendixC わからなくなったら
- AppendixD TOWNS Linux
- AppendixE 付録CD−ROM
各章ごとに述べていきたい.
最後に. インストールなんかで苦労したくない人, とにかく早く使いたいと思っている 人, この本でさっさとLinuxを立ち上げてしまおう! そして, 一通りいじってみてこの素晴らしいLinuxの世界の住人になろう, と決心したら・・・. そのあと, 上級コースの本で知識を増やしていけば良いのである. この本だけですべてが学べる訳ではない. しかし, あれもこれもと欲張って, どっち付かずになるより, まずLinux の良さに触れてみること. この本は, そのためにこそお勧め出来る一冊といって良いであろう.
原稿未着.