SNMP インターネットワーク管理

SNMP インターネットワーク管理 レビュー記事

[ ブックレビューコーナー 目次 ]

翔泳社 様のご厚意により, 書籍 SNMP インターネットワーク管理 を JLUG および JLUG Webmasters あて ご献本いただきました. 本 Web サイトおよび Linux Users ML においてレビューアの公募を行ない, 書籍への意見や感想などをレビュー記事にまとめていただきました.

ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します.

翔泳社様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.

なお, 以下のレビューは初版となっています.


Reviewed by 関 正弥 (seki@ooi.dai-ichi-life.co.jp)さん

Linux の使用歴
6カ月
UNIX の使用歴
6カ月
Linux Box の主な用途
TurboLinux ディストリビューションでSQLサーバー(労働者名簿)使用.
常時, メール(NMAIL) 使用. 今, PLamo Linux ディストリビューションで インターネットサーバーにチャレンジ.
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
Windows95
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
半々.

1. 著者・翻訳者(監修者)について

著者のマーク A. ミラー氏は M&T Books の Network Troubleshooting Library シリーズの執筆を手がけている. デンバーに本社を置く "データ通信工学企業 DigiNetCorporation" の社長で複合インターネットワークの設計と管理を専門にしている. IEEE 電子電気学会 (Institute of Electrical and Electronics Engineers) および NSPE (National Society of Professional Engineers) のメンバーであり公認の専門技術者.

監修者の宇野俊夫氏はソニー, コンパックを経て, 現在, 奥さんと宮崎で「ハラパン・メディアテック」を設立し SOHO を実践している. (www.harapan.co.jp)
「東京脱出! 2人でSOHO〜夫婦の独立奮闘記〜」の著者.
因みに「ハラパン」とはインドネシア語で「希望」の意味.

2 .本書を薦める人

LAN 管理実務の中級・上級者対象の書籍で, 内容はむずかしいですが, 翻訳書として丁寧で分かりやすく書かれてますので, 実務経験のない方でも十分興味がもてます.
また, 本書に次のような推薦文が載せてあります.

「今後, 家庭内機器(例えば冷蔵庫)が自動化されていく中で, 冷蔵庫の単なるリモコン化という発想を超えて, 自己判断機能をもち, 故障の事前障害報告情報を発し, 修理に必要な事前提供するようなフレームワークの機能が 重要になると思われる.
整備された SNMP の基盤を, 今までのフレームワーク管理の技術者だけでなく, この際, 家電や一般オフィス機器などの多くの技術者にも学んでほしい」

3. 構成

第1章..ネットワーク管理アーキテクチャ1〜 39
第2章〜第4章..ネットワーク管理構成要素機能 (SMI, MIB, SNMP)41〜157
第5章..改良版SNMP (SNMPv2) 改良された機能とセキュリティ159〜189
第6章..SNMP の OSI 下位レベルのプロトコル (UDP, IPなど)191〜220
第7章..SNMP の使用例 12 のケーススタディ221〜325
付録A..標準団体の連絡先327〜330
付録B..略語331〜342
付録C..インターネットに関する情報源343〜355
付録D..ネットワーク管理に関するRFC357〜381
付録E..RFC1700 で定義されたネットワーク管理パラメータ383〜471
付録F..MIB オブジェクト473〜522
参考文献523〜543

4. 内容

(1) 本書はネットワーク管理全般と特に SNMP に重点を置き, 抽象概念を具体的に, 図やチャートを使って分かりやすく説明しようとしています. 例えば次のようにネットワーク管理の要素となる概念を体系的に掘り下げていきます.

ネットワーク管理とSNMPの関係

SNMP はネットワーク管理という世界で利便性を挙げるための道具である. そもそも, ネットワーク管理とは次のようなことをねらっている. ...(ネットワーク管理機能)

また, このネットワーク管理の世界は次のように表現できる.

管理対象デバイスはブリッジ, ルーター, 交換機, ネットワークサーバーなどをいう. マネージャはネットワーク管理者(人)が上のネットワーク管理機能を 実行する際のコンソールをいう. エージェントは管理対象のデバイスとのインターフェースとなる エンティティをいう.
ネットワーク管理システムはマネージャとエージェントで構成される.
管理対象オブジェクトは管理対象デバイスの現在の動作に直接関係するハードウエアー, 設定パラメータ, パーフォマンス, 統計情報すべてをいう. これらのオブジェクトにアクセスするために, マネージャとエージェントが通信する手段として SNMP がある.
そして SNMP をサポートする構造として SMI, MIB がある. MIB は管理対象オブジェクトそのものを表すデータ構造である. SMI は管理対象オブジェクトを識別するための 規則を定義するものである.

以下 ASN1, MIB, SNMP(PDU), RMON, RMON2 などについて1章づつ丁寧に説明しています.

(2) 主要ベンダーの製品のアーキテクチャについてその特長を取り上げています.

(3) ケーススタディとして実装ベースの次の12の事例を取り上げています.

5. 感想

(1) ネットワーク管理を探究する著者の真摯な姿勢に触れられ大変良かったです. 付録の豊富な情報は読み進める上でかなり参考になります. また, ネットワーク管理技術の発展のプロセスに大変興味を持ちました. それはインターネットでSNMPの基準であるRFCのWebSiteが全世界に公表され, ネットワーク管理の枠組みを支える 新しいアーキテクチャが次々に開発されているというものです. 本書にも「インターネットに関する情報源」という付録があり, そこの www から RFC が入手できます. そして, SNMPの発展の背景にあるものが Linux とよく似ています.

「Linux はフリーウエアと呼ばれる無料ソフトでインターネットを通じ, だれでも手元のコンピューターに取り込める. そして注目されるのは世界中の優秀なプログラマーが無償で開発に参加し, 新たな協業の型を確立している. トーバルズ氏(Linux のうみの親)はネット上にソフトの "設計図" を公開, 互いに顔も知らない腕利き技術者がネット経由で寄ってたかって改良していく....数万人の英知を対価なしに結集, 使いやすさや安定性で高い評価を得た..」

という Linux の開発プロジェクトを紹介する記事が日本経済新聞の "新しい会社"特集に掲載され話題になりました. (www.nikkei.co.jp/topic7/tokushu5/eimi027505.html...98/12/11現在)

双方とも, 開発が全世界に向けたダイナミックなオープンシステムで, 広汎な技術 者がそのネットワークに参加しています. 本書でネットワーク管理を "我々がどんなに挑んでも到達できないテクニカルユートピア" と表現していますが, 著者の敬虔なまでの探究心に驚きました.

(2) 最近, SNMP を使って LAN 管理事業している会社を訪問する機会があり, 実装の話を聞くことができました. その会社はクライアントに LAN, インターネットなどネットワークの基盤である スイッチングHUBなどのハードウエアを販売し, ネットワークを導入する仕事をしています. 実務担当者から本書7章のケーススタディ 「プライベートエンタープライズトラップ」, 「RMONによるホスト統計情報の計測」 に関する体験談(特にトラップの限界値の決め方の難しさ)が聞け, 少し実装の世界が垣間見れ, 今まで知らない世界を覗け, 良い体験でした. (www.mdcom.co.jp)

(3) 本書全体を通しての文意の分かりやすさは, 翻訳の良さにもあると思います.

(4) このレビユーを契機にネットワークの知識をものにしようと取り組みましたが, 残念ながら今の自分のスキルでは実装の部分の理解が不十分でした. しかし, ネットワーク管理, その要素の SMI,MIB,RMON の意味, それらの概念・相互関係 (特に第6章の SNMP メッセージ転送のコネクションレスパスのしくみ) は実務を経験のない自分でも興味がもてました.
今後, 実務の機会があれば, 本書や今回の経験を是非役立てようと思います.

Reviewed by 佐々木 要 (kaname@japannet.co.jp)さん

Linux の使用歴
約6年
UNIX の使用歴
約6年
Linux Box の主な用途
会社では, HTTP STMP POP3 FTP DNS PROXY X サーバ
自宅では, Webブラウズ 各種アプリケーションの調査など
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
会社では, Linuxのみ. 仕事は別マシンで行なっています. OSはWin95 & WinNT
自宅では, Win95がゲーム用に入っています.
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
会社では, Linux:Win系は, 2:8
自宅では, Linux:Win系は, 6:4

細かい内容は, 後程書くとしていきなり総括ですが, 「ネットワーク管理者」と呼ばれる方は1冊持っていたほうが良い書籍だと思います.

帯にも 「SNMPの全体像, ASN.1の詳細な解説, そして豊富なケーススタディすべてが分かる, 信頼の1冊」 とあるようにこの書籍にはSNMP関係の情報がかなり網羅されています.

今までは, SNMP関係を1冊にまとめた書籍も無く, 学びたいと思ってもこつこつと色々なサイトから RFCなどの文書を集めてきて翻訳し理解するか, 多くの金銭, 時間を割いて講習会などに出席しなければなりませんでしたが, この1冊でSNMPの概要から詳細な情報を理解することが出来ます. また, SNMPを理解した後もMIBオブジェクトの各テーブルのNoと名称, 簡単な解説が載っているため実際の作業時にも参考書がわりになります.

内容的には, 1章で, SNMPのマネージャとエージェントの説明, 2章にに管理情報構造のASN.1について説明があります. 特にASN.1の仕様はかなり複雑で理解しずらいのですがこの書籍では, データタイプ, マクロ, モジュール, オブジェクトと順を追って詳細に解説してあり, これから学ぶ人は勘違いせずに理解することが出来ると思います.

3章では管理情報ベースのMIB, MIB2についての解説があります. ここでは各MIBテーブルがツリー構造の表で掲載されています. 私には, EthernetRMONのMIBがツリーで掲載されているのが特に役立ちました. この章はネットワーク管理を始めてからも何度も読むことになる場所です.

次からが実際のプロトコルの解説が始まります. 4章でSNMP, 5章で現在メインで使用されているSNMPv2, 6章で下位プロトコルの解説があります. またここからサンプルやSNMPのトレース結果が多く掲載されていきます. 通信フレームの詳細な説明が図とともに掲載されていて フレームの内容はよく理解できるのですが 自作でエージェントを作成する際に良く読まないと 各項目のバイト数が解り難いと思います. 但し, この点でも6章については解り易いです.

7章は, 「ケーススタディ−SNMPの実装」と題して SNMPの各コマンドの実行例がとても解り易く, 多くの具体的な例が図, トレース結果とともに約100頁にも渡って掲載されています. 6章までの内容をあまり理解していなくても 7章を読むことによって完全に理解できるようになる人も多いと思います. 逆に7章から読み始め, 7章を理解するために1〜6章を読んでも良いかもしれません. それぐらい7章では数多くの実際に役立つ数多くの例が載せられています.

本書は以上で本文は終わり, 以降は付録と索引になるのですが, 付録Eと付録FにはSMIコードとMIBオブジェクトの各項目のODIや名前, 簡単な説明が掲載されていて実際にSNMPエージェントを作成したり MIBにアクセスしたときに参照しやすくなっています. 実際にネットワーク管理を始めると一番役立つのはここだと思われます.

通して良書だと思いますが, Linuxユーザとして残念なのは ツールに関しての記述がとても少なく感じられたことです. 実際, SNMPを利用したネットワーク管理を行なう場合は, 本書にも解説されている通り, HP Openview, Sun SolsticeDomainManager, インタフェースにブラウザを利用するなら, Asante IntraSpectionを使用するかもしれません. が, この全てがLinuxでは動作せず, しかも高額で, 学習用に購入することもできません

LinuxでSNMPを利用したネットワーク管理を行なうには, フリーのsnmpパッケージをmakeして使用することになりますが snmpwalkの使用法ぐらいはコラムやそれこそ付録でもよいので 紹介して欲しかったと思いました.

Reviewed by 中神 肇 (nakagami@cosmo.co.jp)さん

Linux の使用歴
2年程度
UNIX の使用歴
5年程度
Linux Box の主な用途
ネットワークサーバー
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
なし. 普段は Windows NTを使用しています
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
Linuxが, 全体の 1%以下

まず, 最初にはっきりさせておきますが, この本は, Linuxと直接関係のある本ではありません. SNMPという TCP/IP 上で使用されている, ネットワーク管理プロトコルについての解説の本です.
まあ, まったく無関係かといえば, 決してそんなことはないので, ここのブックレビューに上がるのがおかしいとは, 思いませんが・・.

私としては, この本を読んで Linuxで動く (Cobaltみたいな)ネットワーク機器を作っている方が, その上で SNMPエージェントを実装したら, www.linux.or.jp 上で 本書のブックレビューをやったかいがあると思うのですが・・.

SNMPについて記述された何冊かの本を持っていますが, それらの本と比較して良い点に以下のようなことがあります.

反面, いまいちと思えるのは

書籍という点で言うと, 比較的誤字・脱字は少なく, 素直な訳だと思いました. 訳がこなれてないと言うことかも知れませんが, 下手に意訳されるよりは読みやすいと思いました. 最近, M&T Booksというシリーズの日本語訳の本を本屋でよく見掛けますが, どれも, どちらかというと, 実務方面の著者で, あまり, 理屈っぽくならないような書籍になっているようですが 本書も, その例に漏れません.

全体で p543の本ですが, ケーススタディを取り上げた7章と, その後の Appendix を除くと, p220しか有りませんので, SNMPについて調べなければならない方が, 取っ掛かりとしてまず, 読むのには良いかも知れません.
あとは, RFCを読むとか, SNMPの実装に携わった方々の書いたバイブル的な書籍を読むなど, していただければ良いと思います.

今後, SNMP v3が普及が確かなものになったら, 一刻も早く次の版を出して欲しい書籍です.

Reviewed by 酒井 重利 (sakai@pc174.smis-unet.ocn.ne.jp)さん

Linux の使用歴
3年
UNIX の使用歴
無し(Network等の環境を調整する程度)
Linux Box の主な用途
Unix の学習(unix一般、Network、programing)
Linux Box に載っている Linux 以外の OS
WindowsNT 4.0 SP3
Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
1:1

仕事柄, 興味のあった SNMP の解説本に反射的に応募していました. まず, 手元に届いた本を見て, 「こんなに厚い技術書を3週間で読んでレビュー記事を書かなければいけないの? しかも, 年末の忙しいときに?」でした.
しかし内容は大変満足のいくものでした. 特に, 厚さの半分は付録なのでした.

書籍名は「SNMPインターネットワーク管理」となっていますが, 社内ネットは TCP/IP に移行して, ホストコンピュータ全盛時代のプロトコルは TCP/IP にラップしてしまう方法が主流だと思います. そんな時に SNMP を使ったネットワーク管理が必要となります.

本書では, SNMP の基本的な内容を解説し, ネットワーク管理の方法論まで記述しており, たいへん濃い内容でした. 初心者が一般教養として読む本と言うよりは, 実務者が必要になったときに, 手元に置いておき, 参考書として使用するのに適した本だと思いました.


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