エーアイ出版株式会社様の
ご厚意により, 書籍 "エーアイムック200
挑戦! Linux [Debian インストール編]" を,
JLUG および JLUG Webmasters あて ご献本いただきました.
この本のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
において公募を行ない,
これにご応募頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々から寄せられたレビュー記事を公開します.
エーアイ出版株式会社様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
なお, 以下のレビューは初版を対象としています.
今回, JLUG の第一回 Book Review として上の本を読んでみた感想と 出版社への注文を述べさせていただきます.
独断と偏見で選んだこの本を使用を薦める人
この本の使用を薦められない人
私の感じたことを述べる前に, この本を読んでLinuxをインストールしたいという人に 注意しておきたいことがあります. それは, この本はタイトルの通りインストールを目的とした本であり, Linuxの日常的な使用法に関する本ではないということです. 特に, 普段使用する際に重要な日本語環境, 各種アプリケーションの導入・使用法, インターネットへの接続については"全く"ふれられていません. (付属CD-ROMにも日本語環境構築に必要なものは何一つ入っていません. 他のアプリケーションに関しては, それなりに使えるものが入っていると思いますが)
ですから, 今回初めてLinuxにふれる, Debianを扱うという人はこの点に留意して別途情報を集めてください. (UNIXの入門書を読む, インターネット) 参考までに以下のものが役立つと思います.
それではまず, 読んでみて感じたこの本の特徴は
以上が読んでみてたときに主に感じた印象です.
これからは, インストール本の要諦であるインストールに関する章を中心に 細かいことを述べます.
最初にお決まりのハードウェアの話があります. インストール本を読んでいつも思うことですが, どの本もたいていどのパーツが使えるかということを書いてあります. しかし, この世の大半の人は近くのパソコンショップに売ってある メーカー製のPCを使用しています. しかも, そのかなりの割合の人がその中に使われているパーツの種類を知りません. (せいぜいCPUとメモリ・ハードディスクの容量くらいでしょう) このような人たちのためにも, どの会社のどの製品ではこんな問題があります, この製品なら問題はないでしょう, 等の情報が入っていればいいと思います. (例:私の家のPC IBM Aptiva785 内蔵モデム MWAVE Linuxで使用不可 等の情報)
実際のインストール作業に関する内容は他の本と比べてもかなり分かりやすく, かつかなり気が利いています. Debianの場合, 基本システムのインストールと パッケージソフトのインストールは別々に行います. 基本システムのインストール作業自体, 定められたステップを踏めば何も難しいことはありません. この本では, このステップ一つ一つを画像写真付きで詳細に説明しています.
さらにこの本の最大のお勧め, ただ一つ問題になりそうな"英語"も, その大半が日本語に訳されていますので 英語恐怖症の人も安心してインストールできます. (どうせこれくらいやってくれるのならインストーラ自体を 日本語化して欲しかったのだが, そこまでいうのは贅沢であろう) この後パッケージソフトのインストールに入るのですが, ここでほとんどの人に大問題が発生します. それは"キーボード"の問題です. この本では"英語キーボードを前提とする"と明言していますが, やはり読む人の大半が日本語キーボードを使うことを考えると その対処法くらいは書いて欲しいところです. dselectは"+"を多用しますのでせめて"+"の位置が どこにくるのかくらい書いていて欲しかったです. また, デフォルトではインストールされないパッケージに関しても, よく使うであろうものには, 説明をつけて欲しかったです. この二つの点を除けば, 私としては文句のつけようがないわかりやすい内容です.
以上がこの本を読んで感じたことですが最後に一言.
はやく"活用編"を出して欲しいですね.
本書は「挑戦!」というタイトルの通り, 「Linuxとは」から始まって, 付属のCD-ROMからディストリビューションをインストールするまでに重点をおいた, いわゆる「インストール本」です. Linuxの背景や基礎的なことがらについて, 比較的新しい情報をもとにていねいに説明されており, Linuxについて理解するのに充分わかりやすい内容になっていると思います.
本書では解説の対象となるディストリビューションとして, "debian"を選んでいるのが特徴です. "Slackware"や"RedHat"ではなく, "debian"を選択した理由として, 「最も初心者に扱いやすい, インストールが簡単」であることを挙げています. 本書が対象としているdebianのバージョンは1.3です. ちなみに現時点でのdebianの最新は2.0 "Hamm"であり, 続いてDebian JPも2.0がすでにリリースされています. 従ってこれからdebianを試そうという人は, 本書では既に古いパッケージを 対象としていることに注意する必要があるでしょう.
本書の解説の中心となるインストール方法の説明では, 実際のインストール画面のハードコピー(英語版なので英語ですが) をふんだんに取り入れて, 実にていねいに書かれてあります. まるで初心者向けのWindows95インストール解説本に 近いものがあるように感じました.
さて, boot方法の説明においては, liloではなくSystemCommanderを利用してbootする方法にページが割かれています. あえてliloではなく, 商用(有償)のSystemCommanderを 導入利用することを前提にした書き方になっています. LinuxインストールにはSystemCommanderを買わないといけない, と勘違いしやすいような気がして, ちょっと気になりました.
さて本書の付属CD-ROMには, (Debian JP Packages)が含まれていません. 実際にLinuxを日本語な環境にして使うためには, 別途パッケージをftpなどで入手してインストールする必要があります. しかし, インターネット接続の方法については書かれていませんし, 具体的なパッケージ追加の方法についても http://www.debian.or.jp/を見て下さい としか書いてないので, これは残念なことだと感じました.
インストールしやすいということは, 初心者にとっては確かに重要なことです. しかし, インストールして, Xが起動するようになって, それでおしまいという 人も以外と多いのではないでしょうか. 従ってこの手の本では, 「インストールは終ったがその後は?」 というアフターフォローがどれだけなされているかが重要であるように思います. 結局この本一冊だけでは, 本当に「挑戦」で終ってしまう人がでてしまうやも しれません.
せっかくですから, 本書を元にインストールしてLinuxの雰囲気に触れられたLinux入門者の方は, ぜひ別の書籍をもう1, 2冊揃えて勉強することが望ましいと思います.
ぜひエーアイ出版殿 には, 「挑戦」が終った人に向けに, その続きとなる「活用編」のような本を発刊して欲しいと望みます.
一言で言うと, タイトルどおりの本です.
パソコンで普段 Windows95 を使用している人を対象として, 読者に Debian Linux のインストールを挑戦してもらい, Linux の世界を体験してもらおうという内容です.
内容は主に, 前半のインストール挑戦 (Linux 基礎知識, インストール手順, コマンドの初歩の初歩) と 後半のパワーツール体験 (X Window System セットアップとゲーム紹介) で構成されています.
特別付録として AT互換機版の Debian Linux 1.3.1 のバイナリとソースを収録した CD-ROM が 2枚付属しており, この CD-ROM を使ってインストールを行なうことが できます. 私も今回のレビューでは, 実際に Sharp Mebius MN-7650 へインストールを試してみました.
その他の記事としては, System Commander 4 および LILO によるマルチブート, ftp サーバとしてネットワークを設定する方法, トラブルシューティングのQ&Aとコラムが載っています. このコラムには, BIOS 設定方法やネットワーク基礎知識など.. 割と重要な事柄を取りあげているので, インストール時にはよく目を通した方が 良いです.
# p.99 「(14)マウスの設定」の説明 ......... 説明漏れ? # # 「What type is your mouse(or help) [bare]? → そのまま[Enter] を押します」 # と書いてありますが, 私が試したところ ps/2 マウスの場合には ps2[Enter]と # 入力する必要がありました.
インストールしてみて気付いたことは, 基本的に 1枚めのバイナリ CD-ROM で 事足りてしまうということです. 2枚めのソースを収録した CD-ROM は本の内容にも ほとんど絡んでこないし, 特に必要ないような気がします. 対象読者を考えるとソースよりも 日本語パッケージ Debian JP を収録した方が有用 ではないか? と感じました.
また, 収録されている Debian Linux 1.3.1 が今となっては 少し古いのも気になる点です. これに入っている XFree86 は バージョンが 3.3.1 と若干古いために, 最近のグラフィックチップではうまくいかないことも多いと思います. ちなみに, 私がインストールに用いた Mebius では Trident のチップが完全にサポートされておらず, SVGA モードの設定では うまく動作しませんでした. できれば, 数多くのチップが 利用可能になった XFree86 3.3.2 が収録されていれば良かったと思います.
本の内容については各章立て毎にライターさんが記事を担当しているため, 綺麗に全体としてまとまって構成されていないのが残念な点ですが, 紙面は A4変形版と広く 1ページに図がたくさんあって, インストール画面などが 見やすくなっています.
最後に, この本はあくまで 「インストール編」なので, 日常 Linux を使用する ための記事がほとんどありません. 後半の ftp サーバ設定は, LAN 活用とも言える 内容で丁寧に解説していて良いのですが, あまり個人ユーザ向きとは言えません. 私には, ダイアルアップやメイル,WWW ブラウザ設定などの内容をまったく 扱っていない点が, 非常に物足りなく感じました.
ぜひ続編として, 次のワンステップに進めるような「活用編」が欲しいところです.