技術評論社メディアセンター 様のご厚意により,
Linux ディストリビューション,
"Vine Linux1.1CR with Wnn6" を
ソフトウェアレビューコーナーあて ご提供いただきました.
この製品のレビューをして頂くべく,
Linux Users ML
において公募を行い,
これにご希望頂いた方々より感想などをレビュー記事にまとめていただきました.
ここに, レビューアの方々に書いていただいたレビュー記事を公開します.
技術評論社メディアセンター 様および レビューアの皆様のご厚意に感謝いたします.
- Linux の使用歴
- 約 4 年
- UNIX の使用歴
- 約 4 年
- Linux Box の主な用途
- 電子辞書 に関するオープンソースソフトウェアの開発など
- Linux Box に載っている Linux 以外の OS
- なし
- Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
- 4 (Linux) : 6 (MacOS)
- 評価に利用した Linux BOX のハードウェア (ベンダ名, CPU, Memory, HDD, NIC etc.)
- CPU : PentiumPro 200 MHz
Memory : 128 MB
HDD : SCSI 2 GB, IDE 1 GB
PCI cards : BusLogic BT-946C (SCSI), Diamond Stealth 64 Video (Video), 3Com 3C905B (NIC)
Vine Linux 1.1 そのものは, 以前から同じマシンで利用していたので, 今回のレビューは「CR (Commercial Release) with Wnn6」の部分を中心 に書こうと思います.
付属のマニュアルは, ほとんど「Vine Linux」のマニュアルであり, 「Vine Linux CR」のマニュアルではありません. 私のように, すでに Vine Linux をインストールしている人が CR 版をインストールするとい うケースもありえるでしょうが, その差分についての詳細な説明がありま せん. 仕方がないので自分で調べましたが, 少なくとも, 更新された/追 加された/削除された rpm ファイルの一覧と, 変更された設定ファイルの 一覧くらいは必要だと思います.
私はデザインを生業としていることもあり, 日常的な「読み書き」の環境 における書体 (特に明朝体とゴシック体) の品質は重要だと思っています ので, ダイナラブ書体のバンドルには不満があります. 同じバンドルする なら, Turbo Linux のように, 高品位なリョービの書体をバンドルして欲 しいものです. こういう所のこだわりが, CR 版の価値を左右するのだと 思います.
私が Turbo Linux から Vine Linux に乗り換えたのは, セキュリティー 関連のアップデートが Vine の方が早そうだった, というのが直接の理由 なのですが, 間接的には「企業とコミュニティーのどちらに期待するか」 というのが決め手でした. Vine Linux は, ある調査で 使用ディストリビューション第 1 位という結果からもわかるように, 絶大なコミュニティー のパワーに支えられています. 私自身もそんな Give and Take の中でお 世話になったり貢献したりしようと思って Vine Linux を選びました. も ちろん実際は, Vine-users ML でも「あきらかに自助努力の欠如した人」 や「take ばっかりの人」が見受けられるのが現実ですが, それでもそれ なりに相手されているところに, コミュニティーのパワーを感じずにはい られません.
Turbo Linux のように商用ソフトウェアをバンドルしまくるのではなく, 書体と日本語入力環境といういわば「縁の下の力持ち」のみを商用ソフト ウェアでサポートする, という Vine Linux CR のポリシーにはとても好 感を持っています. まもなく Vine Linux 2.0 がリリースされますが, 今 後の Vine Linux の CR 版にも大いに期待しています.
- Linux の使用歴
- インストールのみ経験
- UNIX の使用歴
- なし
- Linux Box の主な用途
- WEB 制作
- Linux Box に載っている Linux 以外の OS
- ウインドウズ NT ワークステーション 4.0
- Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
- 1:9
- 評価に利用した Linux BOX のハードウェア (ベンダ名, CPU, Memory, HDD, NIC etc.)
- マザーボード: Asustec P/I-XP55T2P4
CPU :ペンティアム MMX166
メモリ: 64MB
HDD : 4.3GB
ネットワークカード: 3com 3C509
ビデオカード: ATI MACH64
私は基本的に MAC なヒトです. Linux は MkLinux2.1 をインストールして日本語化して使用した経験がありますが, もう 3 年前のことですっかり Linux 環境を忘れています. しかし Linux ムーブメントに興味があり, 雑誌の付録にあった RedHat6.1J を インストールして Linux 学習を再開していました.
VineLinux を選択したのには, 販売元が出版社というだけあって (技術評論社) マニュアルが充実していることを期待していました. で, パッケージを 見てみると, CDROM が二枚と A6 版, 125 ページのマニュアルが一冊. 以下にそのマニュアルの目次を書き出してみます.
第一章 VineLinux とは Vine Linux1.1CR の特徴 第二章 Vine Linux 1.1CR のインストール 2-1 はじめに 2-2 ディレクトリ構成 2-3 インストール 2-3-1 インストール手順 2-3-2 事前準備 2-3-3 ブートディスクの作成 2-3-4 インストーラーの起動 2-3-5 インストール開始 2-3-6 初期設定 2-3-7 インストール方法の選択 2-3-8 インストールの種類を選択 2-3-9 パーティションの設定 2-3-10 インストール内容の設定 2-3-11 環境設定 (1) 2-3-12 Xwindow System の設定 2-3-13 環境設定 (2) 2-3-14 インストールの完了と Linux の起動 2-4 インストール後の操作 2-4-1 コンソールでの日本語表示 2-4-2 Xwindow System 2-5 いろいろな情報の検索など 2-6 おわりに 第三章 VineLinux の使い方 3-1 Vine Quick Start Guide 3-1-1 一般ユーザーの登録 3-1-2 ログインとログアウト 3-1-3 Linux の終了 3-1-4 Xwindow System の起動と各種アプリケーション 3-1-5 日本語入力 3-1-6 情報収集 3-1-7 システム設定 3-1-8 ノートでの注意点 3-2 Window Maker Usage for Vine 3-2-1 ウインドウマネージャーとは 3-2-2 Window Maker の特徴 3-2-3 ウインドウの操作 3-2-4 各種メニュー 3-2-5 ワークスペースと Clip 3-2-6 Dock 3-2-7 メインメニュー 3-2-8 Window Maker の設定 3-2-9 Window Maker の終了 3-3 Vine Tools for Usage 3-3-1 どうして Vine Tools なの? 3-3-2 vedit 3-3-3 vmail 3-3-4 vfetchmail 3-4 PPxP QuickStart for Vine 3-4-1 必要なパッケージと操作 3-4-2 PPxP のインターフェース 3-4-3 接続の設定 3-4-4 保持した設定を利用して接続する 3-4-5 オンデマンド接続 3-5 Using RPM 3-5-1 はじめに 3-5-2 rpm パッケージのインストール 3-5-3 rpm パッケージのアップグレード 3-5-4 rpm パッケージの削除 3-5-5 rpm パッケージに関する情報を得る 3-6 カーネルのアップグレードおよび設定方法 3-6-1 カーネルパッケージ 3-6-2 カーネルパッケージのアップグレード 3-6-3 カーネルを自分の設定でつくり直す 第四章 Appendix 4-1 ライセンスについて 4-2 制限事項 4-2-1 インストーラ 4-2-2 日本語表示 4-2-3 X Window System 4-2-4 Netscape Communicator 4-3 メーリングリストのご案内 4-4 本製品のサポートについて (以上)
いかがでしょうか?
筆者はこれでも物足りなかったのですが, マニュアルとしてはかなり詳しい方だと思います.
余談ですが, 別売りマニュアルとして, 技術評論社には名シリーズ『ポケットリファレンス』 のラインナップにぜひこの VineLinux を加えて欲しいものです. パッケージにも添付されるとうれしいんですが.
あらかじめ Linux 動作パーツを調べて慎重に中古パーツを購入したので, インストールにつまずくこともありませんでした. 実は直前に雑誌付録の RedHat6.1 日本語版をインストールしたんですが, インストーラ画面はかなりグラフィカルにデザインされていました. それに比較すると Vine の場合は 見慣れた RedHat 系インストーラの青い文字中心の画面でしたが, 見かけよりも中身といった感じで, これはこれで骨太でいいのです. マザーボードが CDboot に対応していたので, インストールフロッピーを作成することなく, 直接 CDROM でブートしてインストールしました.
インストールが終わると初期のシステム設定画面ですが, あんまり何も考えずに (インストーラの初期設定のまま) 先へすすんでもトラブルはありませんので, すぐに使える環境を構築できます.
インストールの際にログイン画面を「コンソール」と「グラフィカル」 のどちらかを選択できますので, 私はグラフィカルを選択しました. インストールが終了すると自動的にリスタートし, X ウインドウシステムのログイン画面が立ち上がります. 問題なしです.
デフォルトのウインドウマネージャーは Window Maker です. 最近のディストリビューションが GNOME を デフォルトのウインドウマネージャーとしているのに比較すれば 若干の見劣りがあるかもしれませんが, 機能上困ることのない, 必要十分なデスクトップ環境です. ウインドウ上でマウス右ボタンを押せば, ウインドウメニューが日本語で現れます. このメニュー内の「外観の設定」や「一般の設定」の項目を選択すれば, デスクトップの設定パネルが立ち上がります. これも完全に日本語化されているようです. ウインドウズを普段使用している人もあまり迷わずに設定できるはずです. また, 日本語 Redhat6.1 に比べてかなり動作が軽いようです.
とにかく充実しているのはやはり日本語環境です. なにしろこの Vine 特別パッケージは Wnn6 同梱版なのです. Mule も日本語, このレポートも Mule で書いていますが, Macintosh 上で FEP を使用するより変換効率は優秀に思えました. 特別な設定なしでもこんなに優秀なのは驚きです. Netscape は 4.08 の Navigator で, メニューその他日本語で表示できます.
さらに便利なのは, 日本語検索エンジンの Namazu が 最初からインストールされていて, へルプ文書が検索/表示できる仕組みになっています. グラフィカルな検索インターフェイスが備わっているので, コマンド入力も必要ありません. この機能を使いたければ, デスクトップ右上の[ i ]アイコンをダブルクリックするだけ. ほとんどのへルプ書類をこの検索ウインドウから探して読むことができます.
これはこのディストリビューションの大きな利点だと思います.
このディストリビューションのもうひとつの特徴は, オリジナルのエディタ Vedit と同じくオリジナルメーラーの Vmail でしょう. どちらも GUI ソフトで, デスクトップ上のアイコンをダブルクリックすれば立ち上がります. 使い勝手は...うーん, Vedit はあんまり使わないような気がしますが... ちょっとした設定ファイルの修正はやはり定番の vi を使用しないと Linux に申し訳ない気がするのです. Vmail はというと, これは Linux 環境では待ち望まれたソフトだと思います. 従来, Linux でメール読み書きというと, Mew を利用するみたいですが, セッティングが複雑なので筆者はためしたことがありません. この Vmail があれば, マウス操作でコマンドが使用できます. 画像添付もできます. デザインもけっこう好きです. 時計もついてるし...と思ったら, Vmail 上の時計は選択しているメールの到着時間を表示するためのものでした. ちょっとまぎらわしくて慌てました.
WEB サーバーはディフォルトで立ち上がっていますので, ネットスケープでお馴染の「It worked!」画面を確認します. バージョンは 1.3.3 です. 手元の Apache 参考書には, /usr/local/apache がデフォルトのインストール場所だと説明されているので, さっそく Apache の設定ファイルを探すために Apache のディレクトリを探しましたが見当たりません. これは Vine 特有のディレクトリ構成かな? と思い, httpd.conf ファイルを find で探してみると, /etc/httpd/conf/にありました. さっそく参考書片手に設定ファイルを書き換えてリスタートしましたが, なかなか思うように動いてくれない Apache さんでした. もちろんこれは OS の責任ではありません.
筆者は普段は仕事に Mac を使用しているので, さっそくファイル共有のセットアップを考えました. VineLinux の初期設定では Windows 向けに Samba はインストールされていますが, Mac のための Netatalk はインストールされないようです. 添付の VinePlus にも見当たらなかったので, 雑誌の付録からインストールしました. RPM コマンドを使用してあっさりインストール, 再起動すれば Netatalk が自動で立ち上がります. Linux で設定したユーザー名とパスワードを使って, Mac から「セレクタ...」でサーバーを選択すると あっさり共有ディスクが Mac のデスクトップにマウントされました. 簡単ですね.
以上, 簡単な用途でしかまだ試していませんが (筆者の実力不足で) 全体的にシンプルなソフト構成のように思えます. サーバー構築という面でいえば, 自分ですべて設定するぞ!! という人におすすめだと思います. ディフォルトでは余分なサービスはいっさい立ち上がりません. バグ情報もセキュリティパッチも, ProjectVine のページで簡単に探すことができますので, 商用サポートをよぶこともなさそうです. しかしなにぶん RedHat5.2 ベースなので, パッケージ内のソフトが皆バージョンが古いのが そろそろ気になり出すころだと思います. このレビューの最中に Vine の次期バージョンの販売時期も発表がありましたので, 筆者はこの 1.0CR の完成度を次期バージョンにも期待して, 発売と同時に購入しようと思います.
最後になりましたが, レビューの機会を与えてくださいました関係者の方々に改めて感謝申し上げます. ありがとうございました.
- Linux の使用歴
- 約 2 年
- UNIX の使用歴
- なし
- Linux Box の主な用途
- プログラミング, 文書作成, メールの読み書き等
- Linux Box に載っている Linux 以外の OS
- なし
- Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
- (記載なし)
- 評価に利用した Linux BOX のハードウェア (ベンダ名, CPU, Memory, HDD, NIC etc.)
- Dell Dimension V400c (CPU:Pentium Celeron 400MHz, HDD:8.4GB, Memory:128MB)
私は今まで半年ほど Vine Linux 1.1 の FTP 版を使用していました. そのため, インストールや基本的な使い方に関しては 結構慣れてしまっていると思います. そこで今回は, Vine Linux 1.1 CRW と FTP 版との主な相違点である,
の三点を中心に感想を述べたいと思います.
マニュアルは全部で四章あり, 「Vine Linux とは」「Vine Linux 1.1 CR のインストール」 「Vine Linux の使い方」「Appendix」となっています. Vine Linux 1.1 CRW なのですが, マニュアル自体は Vine Linux 1.1 CR のもので, Wnn6 の使用方法等について記述された紙が一枚入っていました.
私はインストールやその後の使用について慣れていたので (慣れるほど繰り返していたので...) 特に問題はなかったのですが, 初めて Linux に接するようなユーザーにとっては, 全部で 130 ページ程度のマニュアルは, 量的にも質的にも少し不足しているように思います. ディストリビューションのマニュアルではなくなるかもしれませんが, Linux でよく使用するコマンドについてのドキュメントや, Linux のシステム運用に関する簡単なドキュメント等があれば, 初心者にとってはもっと親切なものになるのではないでしょうか.
また, 少し慣れてきたユーザーにとっても, 同様に情報量が少ないように思います. 例えば,インストールするパッケージについては, 「X Window System」や「Mail/WWW/News 関連」 といったように大きなカテゴリーについての説明はあるのですが, ではそのカテゴリーにはどんなパッケージが含まれているのか, といったことに関する記述はありません. その一覧のようなものがあれば, どんなパッケージが用意されているのか知ることもできますし, インストール時に不要なものを インストールしないようにすることもできるでしょう.
以上述べてきたようなことは, メーリングリストのアーカイブで調べたり, インターネットで調べたりすれば知ることができるはずです. しかし, それではマニュアルとしての役目を十分に果たしているとは言えないでしょう. 「商用」なのですから, 今後のより一層の充実を期待したいところです.
商用の TrueType フォントとして, ダイナラブ社のものが四種類 (明朝, ゴシック, 行書, ポップ) 添付されています. 私は Linux で印刷を行ったことがないので Netscape Navigator での話をします.
FTP 版との相違点として商用のフォントがついてくることに かなり期待していたのですが, Netscape Navigator 上で見る限りは, 「まあこんなものかな...」という感じで, 「おぉ, 美しい!」とは思いませんでした.
フォントの設定は, プロポーショナルフォント・等幅フォント共に Dfgothicp (Dynalab) をサイズ 12.0 としています. FTP 版を使用していたときはそれらを, Fixed (Alias) でサイズ 14.0 としていましたが, そのときと「美しさ」という点ではあまり変わらないように思いました. もし私が「フォントに期待して」 Vine Linux 1.1 CRW を購入していたとしたら, 少しがっかりしてしまったかもしれません.
しかし, 使用に際して問題になることは全くありませんし, 個人的にはこれだけ表示されていれば十分満足です.
FTP 版 の Vine Linux 1.1 のデフォルトの IM は Canna ですが, どうもこの変換効率に満足できず, 文書を作成するたびに精神的にあまりよろしくない状況になっていました. なので,今回のレビューで最も期待していたのがこの日本語入力についてでした. 「もっと文章をさくさく書きたい!」
というわけで, 今文章をさくさく書いています. かなり変換効率が良いです, Wnn6. Canna も鍛え上げれば賢くなってくれるのかもしれませんが, Wnn6 は最初から賢いです (自分の名前を単語登録せずに変換できたのもちょっと嬉しかったりして...). 文書作成に関しては, Wnn6 を使うことで作業効率がアップすること間違いないように思います. この変換効率を手に入れることができるだけでも, Vine Linux 1.1 CRW を購入するメリットがあるのではないでしょうか.
ただ, Wnn6 の設定や使用方法については, それらが記述された紙が一枚だけしか入っていなかったことは多少気になりました. 特に問題が発生することはなかったのでそれを使用する機会もなかったのですが, もう少しドキュメントがあっても良いように思います.
私は Vine Linux 大好きで, 普段から愛用しています. 今回初めてその製品版を使用しましたが, マニュアルがもっと充実していれば, より良い製品になると思います. 快適な日本語環境を手に入れたければ, Vine Linux 1.1 CRW, おすすめです (が, もうすぐ Wnn6 を標準搭載した Vine Linux 2.0 CR が発売されますね).
なお, 今回送っていただいた製品のユーザー登録を行ったところ, 技術評論社様からバージョンアップのお知らせをいただきました. 製品を購入したわけでもないのに, ありがとうございました.
最後に, 今回このような機会を与えてくださって, 本当にありがとうございました.
- Linux の使用歴
- 1 年
- UNIX の使用歴
- 0 年
- Linux Box の主な用途
- 好奇心を満たすため
- Linux Box に載っている Linux 以外の OS
- WindowsNT/98
- Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
- 1:9
- 評価に利用した Linux BOX のハードウェア (ベンダ名, CPU, Memory, HDD, NIC etc.)
- 自作機 Cleron500*2 128MB 10GB
メーカー製 PC の独自にカスタマイズされたハードウェアや 自作機での最新のハードウェアを利用していない場合は ほとんどつまづく事なくインストール作業を完了し X の画面を拝見できると思います. 日本語されたデスクトップはシンプルで使いやすい様になっています. 今まで商用フォントを含まない非商用版を使っていたため 日本語フォントがやや見づらかったのですが, 今回レビューさせてもらった商用版には DynaFONT が組み込まれています. Netscape を使ってのブラウジングは このフォントを使っているため大変見やすくなりました. ただノート PC や GeForce, Voodoo3, TNT2, G400 を利用している自作機ユーザには Vine の XFree86 で対応していない場合もあるため別途アップデートする必要があります. それも VineLinux の公式サイトへいくと情報があるため対応できると思います.
RedHat5.2 ベース, VinePlus の追加パッケージ, 日本人の有志による制作 Redhat と互換性があるため rpm 形式のソフトをインストール/アンインストールが 比較的簡単にできます. 確かにソースコードを手に入れて自分でコンパイルするよりは 簡単であると思います. ただ私もソフトを rpm でインストールしますが 「このソフトをインストールするには **** が必要です.」などとよく怒られます. Setup.exe をダブルクリックすると インストーラが立ち上がることに慣れている Windows ユーザには つまづき易いと思います. VineLinux では CD 一枚に納まるコンパクトなパッケージになっています. 自分の使いたいソフトが最初から入っていないかも知れません. それをフォローするようによく使うソフトを VinePlus というパッケージ集があります. 製品版 CD を購入すると付属 CD として付いてきます. また, 日々プロジェクトやユーザによって新しいパッケージが ftp に追加されています. ここでプロジェクトということが出てきました. VineLinux は鈴木大輔氏を代表とする (今回利用した VineLinux1.1 発表時は羽根秀也氏) プロジェクトで運営されているようです. 現在主流のディストリビューションは企業で開発されているものがあります. そうするとどうしてもユーザとの距離は遠くなっていまいます. しかし VineLinux ではプロジェクトが ML を開設していて そこで様々な交流が行われています. 初心者にとって ML での過去ログ検索や質問は 問題解決のために実に参考になります. 質問を投げれば開発者をはじめ数百人のユーザが質問に答えてくれます. 一般的に敷居が高い ML でも初心者でも入りやすい雰囲気があります. ユーザフレンドリーで充実した日本語環境を求めるなら VineLinux は最適な選択肢だと思います. 友人が「Linux を使ってみたいのだけど」と聞かれた時は VineLinux を奨める事でしょう.
VineLinux に限らず Linux はここ 1 年やたらと話題になっているので多くの方が知っていると思います. 私が知った理由も自作機関係の雑誌に特集がくまれていたからです. 多くの紹介文には「フリーである」「WindowsNT に勝るネットワークの性能」等を うたい文句にしている文を見かけます. 確かにそいう面も持っています. そこが目当てで Linux を使ってる人も多くいると思います. フリーである事により, 自分の好きなディストリビューションを インターネットから手に入れたり, 雑誌や, 書籍からも簡単に手に入れることができます. そして, 高性能なサービスをを提供できる事でしょう.
しかし, 私なりの Linux の利用目的はそこにあるのではないのです. ある程度 PC に慣れてくると退屈になった時があったのです. 初めて PC に触った時のエキサイティングな感触がなくなっていました. そこで雑誌で紹介されている新しい OS が目についたのです. 全くの未知の世界であった Linux には多くの関心がありました. さっそくインストールしてみる事にしました. しかし 1 回で成功することは無かったです. fdisk や X や NIC の設定につまづきました. そこで Web や ML, 書籍で情報収集をしはじめました. そうする事により多くの情報を手に入れることができました. やっと思いでデスクトップの Login 画面が出た時はそれなりに感動したものです. インストールに成功すると色々な事を試してみたくなります. 色々なソフトをインストーリしたり, カスタマイズして自分の好みのデスクトップにしたり, gcc で C のプログラムの練習をしたりと, 久しぶりにエキサイティングさを感じました. まるで Windows ユーザがまず始めに壁紙を変更したり, 雑誌からフリーソフトをインストールして 自分の環境を構築する事を楽しむように. 私にとって Linux をいじくり回す事が楽しみでありました. まるで RPG の謎解きをするように.
私は今まで雑誌に付属の物をずっと使い続けて来ました. 私の用途にはこれで十分だったからです.
VineLinux は最新のディストリビューション (俗に言う 6.0 系) に比べると発表から約 1 年経過していて古さを隠せません. SMP に正式に対応した Kernel2.2, 最新の Xfree86, Gnome や KDE などを採用した VineLinux2.0 も完成間近となっているようです. 今後の VineLinux の活躍に期待しています.
- Linux の使用歴
- 約 1 年
- UNIX の使用歴
- 9 年
- Linux Box の主な用途
- メール, NetNews の利用, Tcl/Tk を用いたプログラミング (滅多にやらない)
- Linux Box に載っている Linux 以外の OS
- Windows98
- Linux と Linux 以外の OS の使用頻度の比
- 1:2
- 評価に利用した Linux BOX のハードウェア (ベンダ名, CPU, Memory, HDD, NIC etc.)
- Panasonic 製 Let's note CF-A77
CPU: Celeron 300MHz
メモリ: 128MB
HDD: 6.4GB
実にお手軽なディストリビューションである. ほとんど設定をせずとも一通りのことを始めることができた. ほとんどが GUI で可能だったように思う. Linux ユーザのほとんどを占めるインストール & 設定マニアは 大いに不満を抱くのではないだろうか. ただ, 完成度が高いだけに些細な欠点が非常に気になってしまう. そういった点をあげつらってしまうことになるかもしれないが, 全体に対する評価が高いためであると思っていただきたい.
インストールには 3 種類のモードがある. 「ノート PC」, 「デスクトップ PC」, 「カスタム」である. このうち, 前 2 者は全くのオートマチックであり, ほとんど何もする必要がない. パーティションも勝手に設定されてしまうし, パッケージのインストールもどんどん進んでいく. 面倒くさくないとも言えるし, さみしいともいえる. Linux の初心者は, 最初から挫折を味わわない方がいいという意味からも これらのモードを選んだ方がいいだろう. インストールに失敗して Linux から離れてしまう人は結構多そうな気がするからだ. また, パーティションを特に切り分けたりせず, パッケージもおまかせで良ければこのモードでかまわない.
「カスタム」モードではインストールするパッケージを選択できる. パッケージは 10 のコンポーネントにまとめられているため, 初心者にとっては下手に選択肢が多い場合より迷わないだろう. もちろんパッケージ単位での選択も可能である. 今回は「カスタム」モードで「全て」を選択, 全てのパッケージを入れた. 「カスタム」を選択した場合, パーティションの設定には 「Disk Druid」か「fdisk」を選択できる. 「カスタム」以外のモードでは「Disk Druid」が Linux パーティションを自動的に拡張パーティションとして作成する. この時, 既存の Linux パーティションは 全て消去されてしまうので注意が必要である. ちなみに, 「ノート PC」と「デスクトップ」との違いは PC カード関連と APM 関連のパッケージである. また, 「デスクトップ」 には開発環境やサーバ関連のパッケージは含まれない.
総括すれば, インストールは非常に簡単であったと言える.
今回評価にはノート PC を使った. ノート PC で Linux を使用する場合何かとトラブルが生じやすいが, 今回はほとんど問題となる点はなかった. PC カードはインストール直後から問題なく利用できたし, 内蔵 NIC を使用していることによるトラブルも生じなかった (以前 TurboLinux3.0 を使用した時には 「ノート PC では NIC は PC カードを使用するもの」 という前提があるかのような設定になっていて苦労した). ただ, PC カードをコントロールするためのアプリケーションが cardctl のみというのは少々寂しい. GUI のある PC カード用アプリケーションが欲しいところである. また, カードのコントロールについて Vine ドキュメントに何も記載されていないのも不十分な感じがする.
APM も問題なく使用できたが, ブートオプションとして「apm=on」が必要である. この設定に関しては, 「カスタム」を選択していればインストール時に設定を促されるが, 「ノート PC」を選択した場合には ブートオプションの設定はインストール時には行われない. これはちょっといただけない. 「ノート PC」を選択した場合には APM 関連のパッケージがインストールされているのであるから, ブートオプションの設定も自動的にされていてもいいのではないか. 少なくとも「カスタム」選択の際と同様に設定を促すべきであると思う.
Vine の特徴の一つが独自のツール群である「Vine Tool」であるらしい. 現在のバージョンに含まれるツールは「vedit」と「vmail」, 「vfetchmail」 の 3 つである. このうち, 「vedit」は簡単なエディタであるが, 特色らしい特色は特に見つけられなかった. 簡単かつ手軽なところが特色であろうか.
「vmail」は MH に GUI をかぶせたメールソフトであり, 使い勝手はなかなかよい. 基本的なメールの管理は MH が行っているため, Mew 等の MH を用いた他のメールソフトにも簡単に切り替えられる. 筆者もその時の気分によってこれらのソフトを使い分けている.
「vmail」はローカルのスプールしか読まないため, メールサーバのメールを読むためには サーバからローカルのスプールにメールを取り込む必要がある. このためには「vfetchmail」が利用できる. これも fetchmail に GUI をかぶせたものであるが, GUI のために設定が非常にやりやすくなっている. この「vfetchmail」が「Vine Tool」の中では 最も役に立つもののように思われるが, 解せないことに「カスタム」でないとインストールされないようになっている. そのため, デフォルトのメニューにも含まれていない. 数少ない「Vine Tool」, 全てインストールしていても問題ないと思うのだが.
Vine ではウィンドウマネージャとして「Window Maker」が使われている. 頻繁に使用するアプリケーションは アイコン化されたメニューとして並べておくことができる (「ドック」と呼ばれている). このドックにアプリケーションを登録する手順は非常に簡単で, 使用中のアプリケーションのアイコンをこのドックに ドラッグ & ドロップするだけである. それぞれのアイコンの設定も, アイコンを右クリックするだけでメニューが出てくるため, 簡単に設定できる. また, デフォルトの色使いは非常にきれいで, センスが感じられる. しかし, デフォルトでドックに WMMail が入らないのは困る. これは xbiff と同様のメール到着を知らせるツールだが, PPP 用のパッケージがインストールされている場合, xppxpm と呼ばれる PPP 用ツールがかわりにドックに入ってしまい, WMMail は画面上に現れない. xbiff 的なツールはメール利用の際には必須であり, デフォルトで使えるようにしておくべきではないだろうか.
PPP によるネットワークへの接続も, GUI を使ったツールによって設定できる. 設定は「qdial」, 接続は「tkppxp」によって行うが, これによってシリアルポートを介した ISDN 接続も PHS を用いた PIAFS 接続も簡単に設定できた. 特に詳しい知識は必要はない. ネットワーク用のソフトウエアも, 先にのべた「vmail」の他, Mule 上のメールソフト「Mew」, ニュースリーダ「Gnus」共に最初からインストールされており, 設定も済んでいるためすぐに利用できる. ここまで至れり尽くせりだとすることがなくて困るぐらいである.
その他, Vine が優れていると思われる点は, ドキュメントへのアクセスがしやすくなっていることである. 前節で述べたドックの中に Vine のアイコンがあり, Netscape を立ち上げておいてここをクリックすると 各種 HOWTO 等のドキュメント群にアクセスできるようになっている. Vine のマニュアルにもここからアクセスでき, インストール後に行うべき各種設定に関する情報が得られるようになっている. しかし前もって Netscape を立ち上げておかなければならないのは解せない. Netscape も自動的に立ち上がるようにはできないのだろうか. また, namazu に GUI をかぶせた 「Tknamazu」による全文検索もできるようになっている.
以上述べたように, 細かい点でいくつか気になる点はあるものの, 実用に耐える環境を実現するための設定は非常に簡単である. Linux を勉強したい初心者も, 開発環境として使う上級者も, 余計なことに労力を割かずにすむ, 非常に優れたディストリビューションである. Linux に使われるのではなく, 使いこなしていける, そんな気にさせられる というと誉めすぎだろうか.