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Webmasters コラム(1999/4/28)

10 回を迎えたブックレビュー

当初 Webmasters に対する献本のお申し出から始まった ブックレビュー企画10 回を数えるまでになりました. これまでにのべ 60 名の方々に, 15 の書籍 をレビューしていただいたことになります, これまでに書籍を提供していただいた出版社各位, レビューをしていただいた皆さまへのお礼を兼ねまして, ブックレビューの現状や, 今後ブックレビューに期待したいことなどを書いてみたいと思います.

ブックレビューの作業プロセス

外部からは「公募」「決定」「公開」しか見えないブックレビュー企画ですので, 内部でどのような作業が行われているかについてちょっと解説してみます. これだけ回数が多くなってきますとさすがに我々の経験値も上がり, 最近の作業はかなりスムースに流れるようになってきています.

書籍提供のご提案→条件確認
出版社の方などから書籍の提供のご連絡を受けたら,
  1. 送付時期はいつになるか
  2. レビューアへの直送が可能か
  3. 何冊の提供が可能か (希望は 3〜4 冊)
についての確認をお願いします. レビューア直送はボランタリな作業をしている Webmasters に金銭的負担がかからないようにするため, 複数冊のご提供は特定レビューアの意見に偏らないようにするために お願いしています.
公募
送付が可能な時期がわかったら, それにあわせて linux-users ML へのアナウンスや本サイトの公募ページを準備します. この際出版社の方には, 10 行程度の書籍紹介文をお願いしています. また Web ページや書籍表紙の画像ファイルなどがネット上にありましたら, それらの情報もいただいて公募ページに掲載します. 応募はメールで受付けます. 現在はおよそ一週間程度の公募期間をおいています.
選考
応募メールが集まったら, Webmasters ML の参加者によって投票を行います. 投票に参加するかどうかは任意としているため 回によって投票メンバーはまちまちですが, 現在のところ平均して 7〜8 名程度が参加しています. 期間はおおよそ公募終了から 24h 以内, 応募メールそれぞれを 5 点満点で採点します. 原則的に合計得点の高い順にレビューを依頼します.
連絡・書籍発送
選考されたレビューアに, 書籍送付先の住所を問い合わせるメールを出します. 返事がまとまりしだい, 出版社の担当の方へ連絡します. 折り返し書籍送付が完了したとのご連絡をいただいたら, 原稿提出の時期や体裁に関する説明を各レビューアに送ります. 締切までには書籍送付後 3 週間を確保するようにしています (ので, 当初のアナウンスからは遅れるのが通例になっています(^_^;).
原稿提出・タグ付け
レビューアの方々から原稿が集まってきたら, CVS のブランチを作成し, 公開ページの準備をはじめます. 原稿をプレインテキストでいただいた場合には, この時点で html のタグ付けを行います (これが一番大変. だから HTML 原稿はとっても嬉しい...). 締切が過ぎ, 全員の記事が揃ったら, Webmasters の誰かの www サーバにタグ付けしたイメージを置き, レビューアと出版社担当の方へチェックをお願いします. 基本的に Webmasters による文章の編集はしない方針ですが, 明らかな typo などについては赤入れして, 公開前にレビューアに確認をお願いするようにしています.
公開
チェック・校正がすんだら, メインのブランチにマージされ, レビュー記事が公開されることになります. 出版社の方から依頼があってから, だいたい 5〜6 週間後になります.

どんな人がレビューアに選ばれやすいか?

レビューアの選考は, 応募メールの文面を見ながら Webmasters による投票で行われると書きました. ではどのような人が, どのような応募文章が高く評価されるか, 今後レビューを希望される方のためにこっそり :-) お教えしましょう.

正しい文章・簡潔な文章を書ける人
あたりまえのことですが, 誤字脱字があったり, 句読点の打ち方がおかしい文章はまず採用されません. あとこれは意識されていない方が多いようですが, 文章が簡潔な人には高い得点が集まりやすいです. 応募メールでは, 自己紹介やレビューに関する所信などを 200〜400 字で記述していただいています. 実際のレビューにおいても字数制限 (1000〜2000 字程度) があります. 簡潔な応募メールはその方の推敲能力の高さを証明しているわけですから, 本番でも簡潔かつ内容の濃いレビュー記事を書いていただけるのでは, と期待できます.
「記事執筆」に関する熱意のある人
「是非書籍を読んでみたい」 「是非 xxxx をインストールして試してみたい」(CD-ROM付の書籍の場合) というのは歓迎されません. 「是非レビュー記事を書いてみたい」人のポイントが高いです. さらに自分の現在のバックグラウンドを適切に示し, どのようなレビューをするつもりかという内容が書いてある応募は, 非常に高く評価されています. レビューア募集にあたっての我々のニーズは 「レビューをして欲しい」というところにあります. それに対して 「私はこういうレビューができます」という的確な返答をくださる方は, すなわちレビューに対する能力も高いと考えて良いでしょう.
以前に良い記事を書いていただけた人
これは筆者だけかもしれませんが, 以前のブックレビューで優れた記事を書いていただけた方からの再応募は 通る確率が高いような気がしています (「卵が先か鶏が先か」はわかりませんが). 再応募・再々応募において制限を設けるようなことは一切していませんので, 以前にレビューされた方もご遠慮なく手を挙げてくださいますようお願いします.

レビューの楽しみ

ブックレビューの作業をやっていての一番の楽しみは, なんといってもレビュー記事を最初の読者として読めることです. 一冊の書籍に対するさまざまな立場からの意見を読んでいると, その書籍の購入判断に役立つということはもちろん (ある記事を読んで,おもわず書店に走ってしまった Webmasters メンバーも過去に存在します(^_^;), その書籍が Linux 環境のなかで占める位置や, ひいては Linux の現在がほの見えてくるような思いを抱くこともしばしばです.

これまでに, ご年輩の方や中学生の方(!), 男女を問わず様々な方々からすばらしい記事を寄せていただきました. パワーユーザからの記事が嬉しいのももちろんですが, 特に Linux 初心者の方 (でも文筆のスキルは高い方) の記事は, 今 Linux に足りないものはなにか, Linux でどのようなプロジェクトをすすめるべきか 等々について非常に貴重な示唆を与えてくれます. まさに (失礼なものいいですが) 「タコは財産」 の好例といって良いでしょう.

ブックレビューは書籍プレゼントとは違うものではありますが, レビューアの方から「レビュー書籍のおかげで見識が広がった」, 「新たな発見ができた」という感想をいただくのも, こちらとしては大変嬉しいものです. またそのレビューア各人の「喜び」が反映された記事を読みますと, 思わず頬が緩み, 作業の苦労もふっとびます.

もうひとつ嬉しいのは, 献本していただいた出版社の方が 「今後の書籍制作に役立つ意見だった」と言って下さった時や, そのような方から次の書籍で再びレビュー依頼をいただけた時などです. 私たちが, またおそらくは本サイトを訪れる人たちが感じている 「レビュー記事の楽しさ」を書籍の企画に生かしていただければ, また Linux 書籍の出版に対するフィードバックの一部を ブックレビュー企画が担うことができれば, それは非常に素晴らしいことだと思います.

今後のブックレビュー

すでに本記事の執筆時点で 18 回分までの献本のご連絡をいただいています. とても嬉しいことですが, ちょっと最近人手の方が足りません(^_^; ブックレビューに関る作業に興味を持っていただいた方はもちろん, Webmasters へのご参加は常に歓迎しています.

ブックレビュー企画や記事に関するご意見もお待ちしています. 例えばですが, 「この人のレビューは良かった」というような反響が集まれば, そのような方々に常設書評グループ「book reviewers」を構成していただき, 一般公募分とは別の枠を用意すると言う試みも面白いかもしれませんね. また, 「amazon.com のような形式の, 献本をベースとしないレビューも考えてはどうか」という ご意見も以前いただいたことがあります. これも一考に値するアイディアだと思います. さらに現在, 初めての「ソフトウェアレビュー」の企画も進行しています. 今後はこのような書籍以外のレビューについても随時実施していきたいと思います.

先にも述べましたように, 現在ではブックレビューのスタイルはほぼ定まり, (供給量とのバランスはともかく) 作業の方には少し余裕ができてきました. しかしここで固定してしまっては面白くない. 新たな試みをどんどん取り入れていきたいと思いますし, そのためのアイディア, 作業ボランティアを いまこの記事を読んでいる皆さんに是非期待したいと思っています.

おわりに

皆さんご存じのとおり, 最近は Linux 関係の書籍が数多く出版されるようになってきました. 書籍売り上げの ランキングでも Linux 関連書籍の人気ぶりがうかがえます. しかしそれゆえ, ユーザとしてどの書籍を選べば良いかについて 悩むことが多くなってきているとも感じます. 特に Linux 入門時においては, うまく自分にあった本と巡り合えないと, 「Linux ? あんなのダメダメ. 難しすぎ. 」といったことになりかねないでしょう. 率直な感想が満載のブックレビューコーナーをぜひ活用していただき, 自分自身にとっての良書を見つけ出していただければ...と, Webmasters 一同願ってやみません.

最後になりましたが, これまで書籍をご献本いただいた出版社各位, また素晴らしい記事を執筆して下さったレビューアの皆さんに 改めて感謝の意を表し, 結びに代えさせていただきます. どうもありがとうございました.

(中野 武雄 = nakano@apm.seikei.ac.jp)
(武井 伸光 = takei@cc.kochi-u.ac.jp)
(大畑 純 = ohhata@aurora.dti.ne.jp)

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